今となっては貴重な、国内工場で生産した「MADE IN JAPAN」のスマートフォンを供給し続けている富士通。2015年にリリースした前モデルのSIMフリー端末arrows M02が、近年の”格安スマホ”ブームを支える数多くのMVNO事業者に、その信頼性と機能性の高さ、リーズナブルさが受け入れられ、セット販売用端末として広く採用されたのも記憶に新しい。
新しく登場したSIMフリー端末「arrows M03」も、コストパフォーマンスの高いミドルクラス端末として、すでにMVNO各社から発売されている。一部のMVNOではオリジナルカラーモデルも登場するなど、SIMフリー端末としてもarrowsブランドが着実に浸透し始めている状況だ。必要十分な性能を持っていることだけでなく、万が一の故障時に、確実に修理対応が行える国産端末は、MVNO事業者はもちろん、ユーザーにとっても他の海外製端末にはない安心感があるのではないだろうか。
今回は、信頼、安心、高機能のSIMフリー端末arrows M03について、前モデルのM02と比較しながら、注目すべきポイントを紹介したい。
強い、薄い、カッコいい!
今回のarrows M03、旧モデルのM02と比較してものすごくパワーアップしたかというと、実は性能自体はほとんど変わっていない。詳しくは以下の比較表をご覧いただきたいが、特にCPUは全く同じ、内蔵ストレージやメモリも同容量で、米国防総省の物資調達基準であるMIL規格への準拠についても、14項目である点はどちらも同じだ。
とはいえ、小さな変化のようでも、大きな違いに感じられるところも少なくない。例えば端末のサイズは、縦横方向に3mmずつ伸びてわずかに大きくなったけれど、厚さを見ると一気に1.1mmも薄い7.8mmになっている。十数センチメートルの端末幅における数mmはほとんど誤差みたいなものだが、元々数mmしかない厚みで1mm以上の差となると、もはやドラスティックな変化と言ってもいいほどだ。
ちなみに富士通製のフラッグシップ端末arrows NX F-02Hの薄さは約7.9mmなので、M03はこれ以上に薄いことになる。比較的入手しやすいミドルクラスでありながら、デザイン性を考慮したスリムさは、他のフラッグシップに勝るとも劣らないクオリティとなっているのだ。
デザイン性という意味では、やはり左右側面のラウンドしたメタル素材に注目したいところ。手に持った際のひんやりした心地よさは、ミドルクラスとは思えない質感で、剛性感も高い。トップパーツとボトムパーツは樹脂素材が用いられているが、ウルトラタフガードを施し強度を高めたもので、一見すると金属素材のような風合いがあり、全体的に統一感のあるフォルムをなしている。
背面はアクリル素材ながら、こちらもハードコート加工を施しているため、傷に強い。透明感と鋭さを感じさせる処理になっていて、ボディカラーがブラックの場合はもしロゴがなければ、正面と背面、どちらがどちらなのか一瞬迷ってしまうほどの対称性を意識したデザインも見どころだ。
最新の機能、進化したカメラが使用可能
OSは最新のAndroid 6.0。さらに洗練されたインターフェースで、Android 6.0ならではのいくつかの新機能が使えるのも魅力だ。その1つは、アプリとアプリデータのバックアップがサポートされていること。一定の条件を満たすアプリとそのデータがGoogle ドライブに自動でバックアップされるようになっているので、将来的に機種変更する際などでも、大量のアプリデータの移行に頭を悩ませたり、いちいち設定をし直したりすることがなくなる。
細かいところでは、Dozeモードと呼ばれる「電池の最適化」機能が盛り込まれ、アプリ個別に動作が自動で最適化されるようになった。この機能についてはユーザーが意識することはほとんどないけれど、バッテリー容量が2580mAhに増加していること、HD解像度のディスプレイでもともと消費電力が少なく、しかも電流を低減したディスプレイパネルが採用されていることもあり、電池もちはかなり高まっている。公称で3日間もつ、としているが、常駐しているプリインストールアプリが少ないこともあって、本当に3日間くらいは使い続けられる印象だ。
さらに、Android 6.0の機能ではないが、M03からはマルチユーザーにも対応した。ユーザーを切り替えると、ホーム画面の設定やアプリ一覧、一部のデータなどがそのユーザー専用のものに切り替わる。つまり、他のユーザーがスマートフォンで使っているアプリやデータは見えなくなる、ということ。
スマートフォンはプライベートなアイテムなので、あまり他人と共用することはないだろうけれど、家族のように信頼できる相手に渡す時なんかには、相手の好きな設定で好きなように使えるので、互いに安心できるのではないだろうか。
カメラ機能については大幅に性能が向上している。アウトカメラが1310万画素になっているのに加え、インカメラも一気に500万画素まで引き上げられた。特にインカメラは、セルフィー人気の高まりもあって重視されている部分。高解像度化したのに加えて、画角も約85度と広がり、自分と背景を楽に広く撮れるようになった。また、アウトカメラとインカメラの切り替えを、カメラのプレビュー画面にあるボタンからワンタッチで行えるようになっている。ちょっとした変化だけれど、意外にこれがカメラの使い勝手を大きくアップさせているのだ。
ところで、arrowsといえば指紋認証や虹彩認証がよく知られているところ。残念ながらM03にはそのどちらも搭載されていないけれど、最近のAndroidでは標準で「SmartLock」と呼ばれる機能が用意されており、指紋や虹彩に代わる画面ロック解除の認証方法として十分実用可能だ。
SmartLockでは、端末のカメラを利用した顔認証による画面ロックの解除が行えるようになっているほか、端末を持ち運んでいる時や、Bluetooth接続の外部機器とペアリングした状態であればロック解除を省けたり、あるいは自宅やオフィスといった特定の場所ではロック解除を不要にもできる。セキュリティを損なわずにユーザーの使い勝手を高める仕組みになっているので、M03を入手したら真っ先に設定しておきたい。
モバイルSuica対応で、200GBまでの外部SDカードも装着可
国産端末らしく、NFCだけでなくFeliCaによるおサイフケータイ機能も装備。もちろんモバイルSuicaにも対応しているので、大手キャリアのスマートフォンと同レベルでおサイフケータイを活用できることになる。
その他の機能では、個人的に注目したいのがSDカードの対応範囲が拡大したこと。M02まではmicroSDHC、つまり最大でも32GBまでしか認識できなかったのが、M03では64GBや128GB、さらにその上の200GBまでのmicroSDXCを利用できるようになった。
残念ながら内蔵ストレージは16GBのM03だけれど、それだけでは足りないというユーザーは、大容量のSDカードを組み合わせることで不足分をある程度補える。筆者も128GBのmicroSDXCを常用しており、これに歴代のarrowsで撮影した写真や動画、ハイレゾ音源、ハイレゾじゃない音源、秘密の重要データなんかを常に格納している。その消費容量はすでに79GB超で、128GBのmicroSDXCに対応していなければ、もはや成り立たない状況だ。
大容量SDカードでスマートフォンを拡張性高く、最大限に活用できるようになったという意味でも、M02からM03の進化は決して小さくないものがある。過去のフラッグシップ端末からM03に移行する場合も、いずれM03から他の端末に移行することになった時も、大容量SDカードを使い回し続けられるのはありがたい。
入手しやすい価格帯。必要な機能を全て取り揃えた「SIMフリーのスタンダード機」へ
各MVNO事業者がそれぞれのプランのなかで提示している端末代金は、一括支払い時が3万2000〜3000円前後、月々の分割払い時は1300〜1500円前後で、ミドルクラスらしいちょうど良い価格帯だ。国内ではドコモ系とau系のSIMの両方に対応し、もちろん海外でもM03がカバーしているバンド(周波数帯)を利用している国で、正しく契約して設定すれば問題なく使える。
M02から受け継ぐ必要十分な性能にさらなる機能性が加わり、ちょっとした”拡張性”とキャリア系端末にはない”自由度”も兼ね備えるリーズナブルなarrows M03は、いよいよ「SIMフリーのスタンダード機」に成長した感がある。派手な”飛び道具”のない無難な1台、という印象ももしかしたら受けてしまうかもしれないけれど、国産端末らしい安心と安定を求めているなら、間違いのない決定版的な1台と言えるのではないだろうか。