今年の夏は暑く、そして2016年夏モデルの富士通製Androidタブレット「arrows Tab F-04H」もなかなかアツい。いや、実際には”薄い”のだが、家庭向けの用途としてタブレット端末の存在感が一時期より目立たなくなっているように感じるなか、7月29日に発売されたこのarrows Tabは、久しぶりに我が家で長く使いたくなるタブレットだった。
「軽っ!」という言葉がリアルに出てくる驚きの軽さ
日常的に使う自宅用のタブレットとして最も重要な点といえば、やはり軽さ、薄さだろう。スマートフォンより大画面でWebや動画が見やすく、パソコンより軽量で持ち運びやすい。つまり、スマートフォン以上パソコン未満の微妙な隙間ニーズを満足させられる扱いやすさをタブレットは備えていなければならないのだ。
arrows Tabは、端末の厚さ6.8mmという”極薄”ボディで約439gの軽さ。今回のレビューにあたって筆者の妻にしばらく使ってもらったのだが、持った瞬間に「えっ、軽っ!」という言葉がリアルに出るほどだった。持った感じの薄さからか「なんか折れそう」というコメントもいただいたが、もちろんそんなことはない。実際には筐体の剛性は高く、いつもどこへでも気兼ねなく持ち運んで使うことができる。
薄さ、軽さに加えて、arrows Tabは富士通のタブレットとして初めて米国防総省の物資調達基準であるMIL規格の14項目に対応し、耐久性の面でも大きく進化を遂げている。水濡れ、水没、ほこり、落下、他のものにぶつけることによる傷など、家庭内使用とはいえ、外にも持ち運ぶスマートフォンと同等以上のトラブルがつきものであるタブレットにとって、タフネス性能はこれ以上にないうれしい装備。使いやすさと同時に安心感にも配慮されているのだ。
というわけで、薄軽&タフネスによって、タブレットの家庭内使用は果たしてどんな変化を遂げるのだろうか。結論から先に言えば、実はこれまでと用途が大きく変わることはない。しかし、新しいarrows Tabに盛り込まれたさまざまな機能や工夫によって、今までと同じ用途であってもその使い勝手ははるかに高まっており、”お家タブレット”がより一層はかどることは間違いないと断言できる。
キッチンで便利な「grip edge」とフルセグ機能
そのarrows Tabの注目しておきたい機能や工夫、1つ目はgrip edge(グリップエッジ)だ。grip edgeは、端末両サイドと下端の側面に設けられたラバーのことで、これにより端末を壁などに立てかけた際、ほどよいグリップ感で端末の滑りを抑えることができる。両サイドと下端にあることから、端末を横置きにしても、縦置きにしても、常にgrip edgeの恩恵にあずかることができるのだ。
例えばキッチンで料理レシピを見るべくタブレットを利用する際には、単純に平置きにして使っているとまともに水をかぶってしまうことがあるし(もちろん防水なのでarrows Tabには何の問題もないのだが)、そもそもキッチンが狭い家庭では10.5インチディスプレイの比較的大きなarrows Tabをべたっと置くことが難しいこともある。かといって、タブレットスタンドを常にセットで使うのもちょっと面倒だ。
そこでgrip edgeが役に立つ。キッチンで壁に立てかけるように置けば、水がかかったり、汚れが付いたりする危険が減るし、設置スペースも最小限に抑えられる。設置場所の素材にもよるけれど、筆者宅のステンレス製キッチンでは、少なくとも非grip edgeな他のタブレットやスマートフォンだとほぼ直立状態でないと立てかけられなかったのが、arrows Tabでは実用的な角度に傾けた状態を維持できた。
また、キッチンでは料理レシピを見るだけでなく、なんとなくテレビを見ながら料理したいと思う時もあるだろう。夕食の準備をする夕方の、その日1日の出来事を伝えるニュースなんかは、いちいちスマートフォンやタブレットの画面を操作していられない料理時の重要な情報源だ。
しかし、キッチンからリビングのテレビまではそれなりに距離があったりするもの。筆者宅もキッチンからテレビまではそこそこ離れており、今どきの大画面でもないので見にくいし、音声もかなりボリュームを上げないと聞き取りにくい。
そこでarrows Tabが備えるフルセグ機能が役に立つ。arrows Tabではモバイル端末向けのワンセグだけでなく、通常の地上デジタル放送を見られるフルセグも搭載している。遠くのテレビよりも、近くにあるarrows Tabで見る方が、ずっと見やすく音声も聞き取りやすい。
2560×1600ドットというディスプレイは、地上デジタル放送の元映像を軽く上回る解像度ではあるものの、うまく補完処理され、不自然さは一切ない。それどころか、独自の映像処理エンジン「Xevic(ゼビック)」の性能や、200万:1という高コントラストもあいまってか、普段見ているリビングのフルHDテレビよりも美しく感じるほどだ。
お風呂タブレットがはかどる高音質サウンド
arrows Tabはお風呂でもその真価を発揮する。MILスペックに加え防水についてもIPX5/IPX8に準拠し、お風呂のように湿度の高い場所にも対応することから、筆者が最近ハマって日課のようになっているお風呂での動画視聴がさらにはかどる。
というのも、主にお風呂で見るのはNetflixなどの動画配信サービスで、それまではお風呂対応のスマートフォンを手に持って視聴していたのだが、動画視聴だとそもそも画面操作は少ない。だから、端末をどこかに固定して両手をフリーにして見たかったのだ。
したがって、ここでもgrip edgeが活躍する。水がたっぷりかかっているバスタブの縁でも、arrows Tabはちょうど良い角度で立てかけられる。手に持たないから腕が疲れることがなく、リラックスして視聴できるのでいつまでもお湯に浸かってしまい、長風呂になってしまうのが弱点といえば弱点だろうか。
思わず長風呂になってしまうのは、動画そのものの面白さや、リラックス姿勢で見られることだけでなく、ステレオスピーカーによる音の良さも関係しているかもしれない。そのままでも十分に音の広がりが感じられるarrows Tabのスピーカーだけれど、「Dolby Audio」によるサウンドエフェクトを加えることで、1段も2段も上の臨場感がプラスされる。
特に浴室のように狭くて音が反響しやすい場所では、標準の音質だとぼんやりした印象になってしまうのだが、Dolby Audioをオンにするだけで、キレが良く、解像感のあるサウンドに早変わりする。動画だけでなく音楽を再生する時もDolby Audioは有効だ。このおかげで、浴槽に浸かっている時は動画を見て、洗い場で身体を洗っている時は音楽をかける、というように、新しいお風呂での活用方法も発見してしまった……ヤバい。
ちなみに、arrows Tabはハイレゾ再生にも対応。きめ細かな音の表情を鑑賞できるハイレゾサウンドは、お風呂で、というより、どちらかというとイヤフォンやヘッドフォンでじっくり聞きたいところ。お風呂の後、布団に入って就寝する際のBGMとしてハイレゾを楽しむのもおすすめだ。
クルマでも大活躍するarrows Tabの高速通信+軽さ+電池もち
自宅使用という意味からはちょっと離れてしまうが、arrows Tabはクルマの中で使う際にも意外なマッチングを見せてくれる。受信最大262.5MbpsのLTE通信が可能で、移動時であっても高速インターネットを利用できる、のは当然といえば当然なのだけれど、なにかと調べ物をしたくなるクルマでは、近隣スポットの検索や、同乗者のひまつぶしツールとして、やはり通信できる大画面タブレットの存在は貴重だ。
また、我が家のように小さな子供がいる家庭では、子供が移動時間の長いクルマの中でじっとしてくれないため、気を紛らせる何らかのアイテムが不可欠。子供をおとなしくさせる2大アイテムといえば、お菓子か動画。つまりarrows Tabで動画を見せておけば、ひとまずしばらくは安心なのである。
騒ぎ出した子供に対してさっとタブレットで動画を見せる時、arrows Tabの軽さが本当にありがたい。助手席から、まだ画面操作ができない後部座席の子供に、何が見たいかを確認しながら再生する際のやりとりには、どうしても一時的にタブレットを手で持って後ろに向けたりする必要もある。このやりとりは端末が重いとかなり厳しく、arrows Tabだからこそできるものだと(隣の助手席でやりとりする妻を見て)実感した。
ちなみに泊まりがけで遠方移動した際には、2日間で少なくとも5〜6時間は動画を見ていたようだが、充電せずに使い続けたにもかかわらず、最終的に35%もバッテリーが残っていた。この電池もちの良さもarrows Tabの優れた部分だ。
気になるプライバシーもマルチユーザー機能&虹彩認証でしっかり保護
家族で使う共用タブレットということで、心配なのがアプリやWebの閲覧履歴などが互いに丸見えになってしまうこと。家族とはいっても、筆者としては秘密にしておきたいあれやこれが、どうしても、わずかながら、ある……ような気がする。arrows Tabはこういったプライバシー保護の面で役立つ強力な機能をもっている。
1つはAndroid OSの機能であるマルチユーザーの仕組みだ。複数のユーザーがそれぞれ異なる端末設定、アプリ設定でタブレットを使えるようになるマルチユーザー機能では、使っているアプリやデータの一部もしっかり区別され、自分のタブレットの利用内容が他の人に知られることがない。
マルチユーザー機能が利用可能。ユーザーごとに異なる設定を扱え、アプリの一覧やデータも(一部を除き)ユーザー固有のものになる
当然ながら端末のロック解除時の認証もユーザーごとに異なり、arrows Tabの最もユニークな機能の1つである虹彩認証「Iris Passport」においても、ユーザーごとに瞳のパターンを登録しておける。端末を見るだけでロック解除やドコモサービスの認証などが行なえ、パスワード入力の手間を省けるのも大きいが、虹彩認証ならパスワードやパターン入力を子供に覚えられて、勝手にタブレットを使われてしまうような心配がないのもありがたい。
ロック解除やドコモの一部サービスの認証に使える虹彩認証「Iris Passport」
長く付き合って、多彩な要素を使いこなしたくなる端末
grip edgeによってキッチンや浴室で立てかけて使える便利さ、フルセグ機能で手元テレビになるうれしさ、ステレオスピーカーとDolby Audio、ハイレゾ対応による音質と臨場感の高さ、そしてプライバシーを守るマルチユーザーやIris Passportといったセキュリティへの配慮などなど、arrows Tab F-04Hには多彩な要素が詰まっている。
筆者の家庭でこれら全ての要素をまんべんなく使いこなすのは、慣れの面で実はまだちょっと難しい部分もあるのだけれど、軽さと薄さからくる小回りと使い勝手の良さが、家族のarrows Tabを便利に活用し続けたいと思うモチベーションにつながっている。そういう意味でも家庭向けに最適な端末であり、長く付き合っていきたいと思う端末でもあるのだ。