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なぜ、スマートフォンよりも取り回しがしにくい、大きくて重い10インチ級タブレットが必要なのか。その答えがここにある気がする。2018年2月よりNTTドコモから販売されている「arrows Tab F-02K」は、タブレットが欲しいけれど明確なメリットが見つからなくて購入を踏みとどまっていた人も、自然に迎え入れたくなるほどの製品になっている。新生活スタートの季節、家電をまとめて買おうと思っている人も、ちょっと待ってほしい。その中にF-02Kを入れたら、ひょっとすると他の家電がいくつか不要になる可能性もありそうだ。
全く新しい2機能+arrows定番の高耐久、高音質など多数の機能
最初にタブレット端末としての機能と性能をチェックしてみよう。
今回のF-02Kの目玉となるのは、なんといってもタブレットがスマートスピーカーになってしまう「音声エージェント&エージェントVoice」という機能だろう。詳しくは後述するとして、Google Homeなどのスマートスピーカーの代わりになり得る高いポテンシャルを秘めた機能だ。もう1つの注目は、パソコン用ペンタブレットで有名なワコムとのコラボレーション。4096段階の筆圧感知機能を備えた付属スタイラスペンで、プリインストールアプリやアプリストアのアプリをより便利に使うことができる。
端末としては、10.1インチのWQXGA(2560×1600ドット)液晶ディスプレイをもつLTEタブレット。電話は使えないが、下り450MbpsまでのLTE通信が可能で、Wi-Fiは受信最大867MbpsのIEEE 802.11ac MU-MIMO、ビームフォーミングに対応。クアッドコアチップセット、4GBメモリ、32GBストレージを搭載する。フラッグシップとは言えないまでも、ハイエンド相当の基本性能をもつ端末だ。重量は約441gで、500g超の10インチクラスタブレットが多いなかでは、軽い部類に入る。
arrowsシリーズのスマートフォンでは定番となった、米国防総省の物資調達基準であるMIL規格にも準拠している。防水・防じん、耐衝撃、高温・低温動作を始めとする14項目に対応していて、もちろんお風呂タブレットも可能だ。セキュリティ面では虹彩認証のIris Passportを搭載。サウンド面ではオンキヨーが監修しており、ハイレゾ音源を歪みの少ない音で再生する。
アウトカメラは810万画素、インカメラは500万画素。インカメラの横には虹彩認証用のセンサーがある
その他、フルセグ・ワンセグのテレビ受信機能にNFC(FeliCaではない)も用意するなど、機能は多い。6000mAhの大容量バッテリーで動作時間はさらに伸び、定額音楽・動画配信やテレビの視聴、スタイラスペンによるお絵描きなど、じっくり使いたい機能もバッテリー残量のことをあまり気にせず、余裕をもって楽しめるのがうれしい。あとは細かいところだが、充電端子がUSB Type-Cとなり、他のデバイスと充電環境を共通化しやすくなった。端末下部には滑り止めが設けられ、スタンドなしで立てかけやすいのも特徴だ。
デザイン面については、ベゼルがやや広めに感じるものの、ボディのフォルムはシンプルそのもので、最薄部が約6.9mmと一般のスマートフォンより薄い。ベゼルの広さは前面配置のステレオスピーカーを内蔵していることや、高速なLTE、Wi-Fi、テレビの各アンテナをもっていることも考えれば仕方のないところ。ある程度大きさのある10インチタブレットとしては、保持のしやすさを考えると、これくらいのマージンがあった方がかえって使いやすいはずだ。
「スマートスピーカー」を朝から晩まで身近に
というわけで、「音声エージェント&エージェントVoice」である。これは、タブレットに3つのアレイマイクを内蔵し、離れた場所からしゃべったユーザーの声を精度高く捉えて、音声アシスタント機能を使えるようにしたもの。ノイズ源が周囲にあったとしても、ユーザーの声だけを正確に認識できるようになっているのが特徴だ。Google Homeなどのスマートスピーカーでも、複数のマイクでユーザーの声を聞き分けているが、それと全く同じことをタブレットで実現しているというわけ。
音声アシスタント機能として使えるのは、「Google アシスタント」やドコモが提供している「しゃべってコンシェル」など。タブレットがスリープ状態でも、「OKグーグル」などと話しかけてスリープから復帰し、音声入力でさまざまな命令を実行できる。まさしく、タブレットがスマートスピーカーとして使えるのだ。
F-02Kをスマートスピーカー代わりに使うことのメリットは何だろうか。一番のポイントは、バッテリー内蔵で気軽にどこにでも持って行けるということ。通常のスマートスピーカーは、常に音声入力を待ち受けている都合上、待機時も電力を消費してしまう。そのため、多くの製品が外部電源を必要とする作りになっていて、自由に位置を変えながら使う、といったことが難しいのだ。
一方、F-02Kはバッテリー内蔵のタブレットなので、そんな悩みとは無縁。例えば、朝はキッチンで朝食を準備しながら、F-02Kに話しかけてニュースや天気予報を確認できる。日中は通勤・通学の移動中のエンタメ端末として活躍させ、夜はお風呂に一緒に入ってお風呂テレビとして使ったり、フィットネスアプリで日課のストレッチを実践したりできる。さらに就寝時は寝室にF-02Kを持って行き、眠くなったら布団に入ったまま声で操作して部屋のスマート電球の明かりを消す、といったことも可能になる。
F-02Kは、まるでディスプレイ付きのスマートスピーカーのようだ。おそらくスマートスピーカーを使ったことのある誰もが、「ディスプレイがあればいいのに」と一瞬でも感じたことがあるのではないかと思うのだが、F-02Kはそれを正しく実現しているデバイスと言えるだろう。もしこれからスマートスピーカーを買おうとしているなら、F-02Kを1台買うだけで、「多機能10インチタブレットにスマートスピーカーが付いてくる」のである。自分で書いていて、激安通販のウリ文句みたいだな、と思ったが、その通りなのだから仕方がない。
お絵描きマシン兼ゲームマシンにもするスタイラスペン
もう1つ注目したいのが、パソコン用ペンタブレットで高い人気を誇るワコムとのコラボによる「arrowsスマートスタイラスペン」が付属していること。4096段階の筆圧感知機能と極細のペン先をもち、紙に近い感覚で小さな文字や精細な絵を描けるのが特徴だ。
動作には単6電池一本が必要で、電池が収まる位置がペン先とは反対側になることから、若干後ろ寄りに重みを感じることになる。それでも、構えたときにちょうど重心が手に当たるところにくるせいか、バランスはとりやすい。書き味が軽いおかげで、長いあいだ手書きメモをしていても疲れにくいように思う。
スタイラスペンはホーム画面や通常のアプリの操作にも使えるが、本領を発揮させたいなら、やはり筆圧感知に対応したアプリがおすすめ。すぐに試せるように、F-02Kにはワコムのメモアプリ3種「Ink Memo」「Ink Note」「Bamboo Paper」がプリインストールされている。このうち「Ink Memo」は、Google Playでは配信されていない、F-02Kのために用意された新しいアプリだ。
Ink Memoは、3色のペン先で手書きできるシンプルなメモアプリ。Ink Noteはキーボードからのテキスト入力と、手書きメモ、画像を組み合わせて記録できるノートアプリ。Bamboo Paperは多彩なペンツールを使い分けてメモやスケッチを行えるアプリだ(標準で使えるブラシは2種類。3種類目以降は有料)。
3アプリとも筆圧感知に対応しているので、軽く書けば細い線で、力を入れて書けば太い線で描画できる。また、ペンの腹にあるボタンを押すことで、ペンの色変更や消しゴムへの切り替えが可能になっている。スタイラスペンに完全対応しているこうしたアプリがあれば、これまでにない圧倒的な効率の良さで手書きできるだろう。
Google Playで配信されている他のアプリのなかにも、筆圧感知に対応しているものがいくつかある。富士通のWebサイトでは、スタイラスペンで便利に活用できるアプリを紹介しているので、ぜひダウンロードして試してほしい。これら以外にも筆圧感知に対応するアプリがあるので、自分の使い方に合うものを探したいところ。筆圧感知には対応していなくても、繊細な操作が求められるゲームアプリなどでペン先の細さを活かせば、ハイスコアが狙えたりするかもしれない。
従来の機能・性能を融合することで「進化」
これまでの多くのタブレットは、新しいチップセットで処理性能を大きく向上させたり、あるいはディスプレイの美しさや反応速度の速さ、端末の軽さといった部分で「進化」を演出してきた。F-02Kでも、もちろんそういう面での進化はあるけれども、どちらかというと新しい機能を、既存の機能・性能とうまく融合させる、という方向での進化を遂げたと感じる。
今回F-02Kでは、スマートスピーカーになる「音声エージェント&エージェントVoice」と、ペンタブレットとして使えるようになる「arrowsスタイラスペン」が、進化の鍵となった。けれども、以前からあるフルセグ・ワンセグ機能や、高い耐久性を保証するMIL規格準拠、虹彩認証などのセキュリティ機能があったからこそ、今回の新しい機能、特にスマートスピーカー化できる機能が生きたとも言えるのではないだろうか。
お風呂場で使えるテレビ機能や防水性能があるから、スマートスピーカーとしての活用範囲を広げることができ、広げる意味もできた。さらに虹彩認証があるから、タッチ操作なしにロック解除して、セキュリティを保ちつつスマートスピーカーとして使うことができる。スタイラスペンの筆圧感知機能も、もしかするとディスプレイやボディの耐久性が高いおかげで無理なく実現できている、という部分もあるかもしれない。
総合的には、富士通が昔からずっと取り組んできているHCE(ヒューマンセントリックエンジン)による、「持ってる間ON」やディスプレイの明るさ・色合いの自動調整といった節電につながる仕組みが、長い稼働時間が必要なスマートスピーカー機能の柔軟な活用にもつながっている、とも考えられそうだ。
多くの人が気持ちを一新してスタートを切るこれからの季節。スマートフォンを新調して、さらにPC、テレビ、スマートスピーカーを部屋に置くのか、それともそれらを全て代替できそうなF-02Kを1台だけ導入して、身軽でスマートな生活を始めるのか、どちらが良いかは確定的に明らかだ、と思うのである。