軽く・明るく・長持ちでお洒落になったARROWS NX F-01F
富士通からNTTドコモの冬モデル「ARROWS NX F-01F」が発売された。6月に「ARROWS NX F-06Eの消費電力を測定! はたしてユーザーはモバイルバッテリーの呪縛を逃れられるか?」という記事で紹介したARROWS NX F-06Eの後継機であり、スペックや見た目的には「デキル男のスマホ」から「誰でも使えるスゴ・スマホ」にイメチェンしたという印象だ。
ARROWS NX F-01F最大の武器は、フル充電にすれば最長3日間の充電いらずという点。苦節数年、スマホもようやくガラケー並に電池が持つようになったんだな~と感涙にむせぶ筆者。先代のF-06Eは「電池持ち2日間」を謳っていたが、半年過ぎた今回はなんと1.5倍の「3日間」だ。でも内蔵バッテリー容量はほとんど変わらず、従来の3020mAhから3200mAhへ6%増えているだけだ。実はここには、省電力なのに高性能というF-01Fの大きな秘密が隠されている。
省電力でも明るいWhiteMagic™ディスプレイが「3日間持ち」のカギ
先代のF-06Eは、大容量バッテリーの搭載や、ヒューマンセントリックエンジンによる省エネなどにより、「1日すら電池が持たない」と言われるスマートフォンを2日間充電なしで使えるレベルまで高めた。
今回富士通は、さらなる駆動時間アップを実現するため、液晶ディスプレイの省エネ化に着手した。そして採用されたのが「WhiteMagic™ディスプレイ」という液晶ディスプレイだ。
一言で言うと従来型のR(赤)G(緑)B(青)の画素を持つディスプレイとは違い、R(赤)G(緑)B(青)W(白)を持つ液晶ディスプレイだ。でもこれがなんで省電力なのか、少し説明をしておこう。
液晶ディスプレイのピクセルは、さらに小さなサブピクセルで構成されている。スマートフォンで一般的に使われている液晶ディスプレイの場合、R(赤)G(緑)B(青)のサブピクセルを持っているが、実際にその色で発光しているわけではなく、白色LEDによるバックライトがそれぞれの色のカラーフィルターを通すことで赤、緑、青に発光して見えている。この多色のサブピクセルの組み合わせで、ディスプレイはフルカラーに見えるのだ。
サブピクセルはそれぞれに「シャッター」を持っていて、たとえば赤いサブピクセルを表示するなら、赤のシャッターを開けて青と緑のシャッターを閉じれば、フィルターを通して赤く見えるLEDの光が見えるというわけだ。黄色なら赤と緑のシャッターを開け、黒ならすべてのシャッターを閉じる。そして「白」を表示するには、RGBすべてのシャッターを開ければいい。
しかし、実はバックライトから出た光はRGBそれぞれのカラーフィルターを通すことで、明るさが落ちてしまう。ちょうど色セロファンを目に当てたり、赤青の3Dメガネをかけると暗く見えるのと同じだ。
さて、WhiteMagic™ディスプレイは、RGBに加えて白のサブピクセルを持っている。この白のサブピクセルは、RGBのサブピクセルと違い、バックライトの白色をほぼそのままの明るさで活かせる。この白色の追加によって、バックライトの利用を効率化し、ディスプレイをさらに高輝度/省電力にするのがWhiteMagic™ディスプレイなのだ。
これは屋外で使うスマホにとって超絶に好都合。スマホを使っていると、直射日光が当たって、画面がぼんやりしか見えなくなるなんて体験をしたことがあるだろう。しかも、バックライトを明るくすれば、電池がみるみる減っていくというオマケ付き。
しかしWhiteMagic™ディスプレイなら、バックライトの明るさはそのままで、高輝度の白のサブピクセルの効果で、真夏の太陽の下でも、スキー場のゲレンデでもはっきり画面が見えるのだ。まさに未来の省エネ液晶パネル! 富士通によれば、WhiteMagic™ディスプレイを使ったF-01Fは、一般的な液晶ディスプレイを使うより45%も省エネ化できるとしている。
何も白の画面ばかりが強いだけでない。ピンクなら白とわずかに点灯する赤、水色なら白をわずかな青を点灯すればいい。さらにこれまでの液晶では輝度を最高にしても500カンデラ(明るさの単位)程度でしか発光できず、晴天の直射日光下などでは画面が見えづらくなってしまった。しかしWhiteMagic™ディスプレイなら「RGBとW」のシャッターを開けることで、スペシャル高輝度な白が表示できるため、1.6倍近い800カンデラまで発光できる。ここまで明るいと、直射日光上等っ!ってほどに画面がよく見える。これからのシーズン、スキーによく行くなら、F-01Fが超オススメだ。
四六時中使うヘビーユーザーでも確実に1日は持つ
フツーに使えば3日も余裕、人によっては4日も期待できる!?
宣伝に謳われている「電池が3日間持つ」という触れ込みだが、ご存知のとおり、スマホは使い方によって利用時間は大きく変わる。筆者がF-01Fを試したところ、短い通話が1日に数回、通勤の行き返りでWebニュースを30分ほど閲覧、あとは10通程度のメールを読み書きした程度なら、1日に消費するバッテリー容量は、だいたい14%というところだった(WiFi:OFF、GPS:ON、Bluetooth:OFF、画面明るさ:自動-中)。電池が長持ちってのにもほどがあるだろ!と叫ぶほど省エネ。
ちなみに、待ち受け状態で24時間放置してみると、バッテリーの減りは7~8%程度だった。これは先代のF-06Eとほぼ同等の数値だ。ディスプレイを消した状態では、あまり差はでないようだ。
やはり、ディスプレイを表示した状態のベンチマークで、WhiteMagic™ディスプレイの実力を検証してみなくてはなるまい。
というわけで、眩しい屋外でのカメラ撮影でテスト。もちろんディスプレイはつけっぱなしだ(輝度はオート)。1時間ぐらいで100枚の風景を撮影したが、なんとバッテリーの減りはたったの1%。これはズゲー! 前回も同様の実験を行なったが、先代や先々代のバッテリー消費量と見比べれば、F-01Fの省エネ性が良く分かるだろう。
最後に、条件をそろえてF-06Eと比較してみた。実験は次のようにして行った。
・F-06Eのディスプレイの明るさを最大にして、画面中央の明るさを照度計で測定
・F-01Fの明るさをF-06Eと同じ明るさに設定
・Wi-Fiなどの設定をどちらもOFFにして、SIMも抜いた状態にする
・本体メモリーに書き込んだ1時間45分のムービーを再生
F-06Eの最高輝度は、F-01Fの明るさ設定スライダーの8割程度となった。F-01Fの輝度を最高まで上げると、照度計ではF-06Eのほぼ倍の明るさまでまぶしくなった。これなら炎天下の下でも、雪山のスキー場でもハッキリ画面が見られるだろう。
通常の液晶を搭載したF-06Eは、再生し終えると28%のバッテリーを消費したのに対して、WhiteMagic™ディスプレイ搭載のF-01Fは22%で済んだ。なおバッテリー容量に換算すると、次のグラフのようになる。
ここから言えるのは、通常の液晶画面と同じ輝度に設定した場合、少なくても20%は省エネできるということだ。先に掲載した公式の「画面輝度と消費電力の比較」グラフでは、40%近く省エネになると図示されているが、これは再生したのが映画で、比較的暗いシーンが多かったためかもしれない。つまりWebブラウザなどで白く眩しい画面を表示させたときなどは、 さらに省エネ性を発揮するはずだ。
ARROWS NX F-01Fは、高性能エンジンを載せた
万人向け最高級ラグジュアリー・スマートフォン
いかがだっただろうか。今回のARROWS NX F-01Fは、前モデルから操作性やフィーリングを万人にも使いやすくマイルドにしつつ、パワフルさや高機能性、省エネ性はさらに進化した、最高級ラグジュアリーな仕上がりになっている。
細かいところでは、心臓部のCPUも、1.7GHzから2.2GHzまで高速化している反面、さらに省電力面で進化しているという。液晶は0.2インチ小さく5インチに変更されたが、持ちやすさは背面のなだらかなカーブとあいまって向上している。さらにわずかではあるが、画面サイズが小さくなることで省電力への貢献もありそうだ。
ちなみに、筆者の奥さんが使っているスマホの2年縛りが来月終わるということで、奥さんはこのARROWS NX F-01Fにする!と言い張っている。って、オマエこの前まで「りんご」がイイって言ってたじゃん!
藤山哲人 家電を機能からだけでなく、科学や物理からも斬り込むテクニカルライター。しくみを知らずして家電を語るべからず!をモットーにする、ただのメカフェチとも......。使った家電は、おもむろに分解......。エンジニアたちの汗と涙をパーツと機構から読み取るのが趣味! プログラムやハードウェア開発もするバリバリの技術者かと思いきや、アニメやフィギュア、コスプレの撮影・執筆もする「萌え」の分かるオヤジ少年。秋葉原のいいカモとなっている。 |