前回は、とりあえず最新のARROWS NX F-06Eを使ってみて、エラく電池が長持ちするなぁ~♪と肌で感じた。しかし普段モバイルバッテリーの性能テストをやりまくっている筆者だけに、長持ち具合が目に見えないと気がすまない。ということで、ARROWS NXの電池の持ちを実験で数値化していこう。
ただ、単体で数値化しても比較になるものがないと、性能がわかりづらい。そこで、今回は家電 Watchで連載中のモバイルバッテリー性能テストに使っているARROWS X F-10D(2012年夏モデル)と比較してみることにしよう。
待受だけなら2週間はイケるんじゃネ!?
モバイルバッテリー絶滅の危機!
まず計測するのは、待受時間だ。敷居の低いとこから始めるな~と思われそうだが、いまどきのスマートフォンはヘタレの極みで、ウチに帰って充電し忘れたりすると、帰宅してから特にさわっていなくても、夜にピピピピ!という断末魔の叫びとともにバッテリー切れ&強制シャットダウンしてしまう。そのあいだ風呂にでも入っていようものなら、スマートフォンの電源が切れたトコに気がつかず「今日はメールも来ないし静かだな」な~んて、のんきな父さんになってしまう。それはそれで、原稿の催促が来なくて助かる機能(?)なのだが、同時に原稿依頼も来なくなりデンジャラス。
というわけで、実験。待ち受け状態で、Wi-Fi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ONの設定で自宅の室内にて計測した。まずは2012年夏モデルのARROWS X F-10Dの待受時の電池の減りを見ておこう。
6月10日の0時には92%だったバッテリーだが、12時間後の昼の12時には73%まで減っている。この間スマートフォンには一切触っておらず、電話を待ち受けていただけだ。それでもバッテリーは20%減った。つまり、まったくスマートフォンを使わず待受にしているだけで、1日におよそ40%バッテリーを消費するのだ。電池が長持ちというのを謳っている場合を除けば、皆さんがお持ちのスマートフォンもこんなモンだろう。スマートフォンの場合、待受しているときにもバックグラウンドでOSやアプリが動いているから、フィーチャーフォンに比べるとバッテリーの減りが早いのだ。しかもスマートフォンで「待ち受けているだけ」なんてことはまずないので、1日使ったあとは充電しないと翌日までに電源が切れているのもうなずける。
かたやARROWS NX F-06Eの結果は次の通りだ。CMで電池が超長持ちすると謳うアノ端末もびっくりするぐらい? っつーか、対戦させてみたいぞ!
6月5日の昼12時の段階で98%あったバッテリーは、日付が変わった12時間後の0時には95%。えっ!えええ!たった3%しか減ってない。っていうか、夜の2時まで95%のままなんですが......。つまり1日待ち受け状態でも電池はたったの5~6%しか減らない。単純計算すると待ち受け16日可能という驚愕の結果に! 減らないにもほどがありすぎっす!
しかしこれは数字のマジックもはらんでいる。従来機のARROWS X F-10Dは1,800mAhのバッテリー、かたやARROWS NX F-06Eは3,020mAh。電池の割合で比較したら、電池容量の多いNXの数値がよくなって当然だ。そこで、待ち受けで1日に消費する電池容量をザックリ計算してみると、こんな感じになった。
その差は歴然。ARROWS NX F-06Eは1年前のARROWS X F-10Dに比べて、なんと電力75%カットしているのだ。75%OFFなんてスーパーのタイムセールでもまず出てこない驚きの数値だ。
HDムービーを2時間見てもまったく電池の心配なし!
CPUに負荷がかかる処理でも50%電力カット
スマートフォンを使っていてみるみる電池が減るシーンとはどんなものだろう? YouTubeの動画を見ているとき? ゲームをしているとき? ナビをさせているき? PCと接続してテザリングしているとき? 筆者の経験上、一番減りが早いのはフラッシュライトを点灯してムービー撮影をしたときだが、スマホで長々と動画撮影するユーザーは少なそうだ。多くのユーザーが電池の減りを実感するのは、動画再生だろうか。
電池を食うHD動画ファイル(720P)を再生して、バッテリーの減り方を見てみたい。動画の時間はたっぷり1時間45分。新幹線で東京-名古屋間を移動しながら映画1本を見るという感じだ。スマホの設定はやはりWiFi:ON、Bluetooth:ON、GPS:ON。ディスプレイの輝度はオートで、自宅の室内にて計測した。
さっそく実験結果を見てみると、やはりその差は歴然としている。
従来機のARROWS X F-10Dは再生前95%だったバッテリーが27%まで減った。内蔵バッテリー容量は1,800mAhなので、その69%の1,242mAhを消費した計算だ。一方ARROWS NX F-06Eは、再生前が100%だったが82%止まりとなった。消費電力は、19%で3,020mAhのバッテリーを内蔵しているので574mAhとなる。
グラフを見ると一目瞭然、消費電力は54%カットされている。ARROWS NX F-06Eは単にバッテリー容量を大きくして長持ちさせているわけではない。消費電力を大幅に抑えているのだ!
ちなみに、カメラ機能で100枚の写真撮影をしたデータも取ってみたところ、ARROWS X F-01Dが9%(162mAh)、ARROWS NX F-06Eが3%(91mAh)を消費した。同様にグラフにしてみると、次のようになる。
機能によりカットされた消費電力に差があるものの、HDムービーの再生と静止画の撮影を見る限り、従来型スマートフォンの約半分の消費電力と見てよさそうだ。
1日1回スマートフォンを充電する人が乗り換えると
3日間充電しなくてもサクサク動く!
ARROWS NX F-06Eは、3,020mAhという大容量バッテリーが魅力だ。2012年頃までは、スマートフォンのバッテリーはおおむね2,000mAh前後が多かったので、ARROWS NX F-06E はそれらより1.5倍長持ち......と思いきや、それだけで終わらせなかったのが富士通だ。ここで見てきたように消費電力を数値化してみたところ、前モデルの約半分の消費電力で動いちゃうことが分かった。しかも従来機よりもサクサク快適に......。
大容量バッテリーで従来機の1.5倍長持ちする上に、従来機の半分の電力で動くので、事実上従来機の3倍長持ちということになる!ってことは、アレか?赤い彗星のシャア専用機なのか!? いやそんなことはない。ドコモショップに行けば誰にでも手に入るし、ニュータイプでなくても使いこなせるのだ。
スマートフォンが3倍長持ちといってピンとこない人は、こう考えて欲しい。もしあなたが1日に1回充電しているなら、3日間充電しなくてもいい。富士通は「2日間持つ」としているが、これはかなりマージンを見た値だ。
必ず1日1回は外でモバイルバッテリーを使って充電しているという超ヘビーユーザーでも、2日は持つだろう。なぜなら1日のうち8時間は寝ているので、その間は待ち受けで75%の電力が節約されているからだ。
われわれは長いことスマートフォンに飼いならされてしまったが、今一度、ガラケーを週に数回だけ充電していたアノ日の便利さを思い出して欲しい。モバイルバッテリーなんて持ち歩かなくても、安心して電話やデータ通信できたアノ日を思い出して欲しい。
富士通は「ARROWS NX」の「N」には、「Next」と「New」の意味が込められているとしている。しかし筆者の考えは違う!これは「Nagamochi」の「N」に他ならない。え?ダサイ? じゃぁ「Nageeeeeeeee!!」の「N」ってことで。
藤山哲人 家電を機能からだけでなく、科学や物理からも斬り込むテクニカルライター。しくみを知らずして家電を語るべからず!をモットーにする、ただのメカフェチとも......。使った家電は、おもむろに分解......。エンジニアたちの汗と涙をパーツと機構から読み取るのが趣味! プログラムやハードウェア開発もするバリバリの技術者かと思いきや、アニメやフィギュア、コスプレの撮影・執筆もする「萌え」の分かるオヤジ少年。秋葉原のいいカモとなっている。 |