第9回: AQUOSで楽しむブルーレイ・ワールド
2011/03/29
ブルーレイって?
今回は、ブルーレイとAQUOSについての話題です。「今さら」と言われそうですが、ブルーレイとは何か、簡単におさらいをしておきましょう。
ブルーレイは、青紫レーザー(波長405nm)で読み出す(書き出す)ディスクメディアで、ディスクサイズこそDVDと同じですが、ブルーレイは二層メディアで50GB、DVDは二層メディアで8.5GBの容量がありますから容量は約6倍に高められています。DVDは650nmの赤色レーザーを用いていました。波長が短いレーザーほどビームスポットが小さくできるため、ディスク面に記録されたより細かな情報を読み出せるため、ディスクサイズが同じでもブルーレイの方が大容量なのです。
また、DVDに映像を記録したDVD-VideoはSD解像度と呼ばれる720×480ドット相当の映像を記録することを想定していますが、ブルーレイに映像を記録したブルーレイビデオ(BD-MV)は1920×1080ドットのフルハイビジョンの映像を記録することを想定して設計されています。画素数にしてSD映像の6倍も高密度なフルHD映像を記録するために、ブルーレイではビットレートにして最大40Mbpsに高められています。DVDは最大9.6Mbpsなので単純なビットレート値だけで比較すると約4倍どまりなので「もう一声欲しい」と思う人もいるかも知れませんが、BD-MVでは「同ビットレートでDVD(MPEG2)の1.5倍から2倍高画質」と言われるH.264方式で映像を圧縮しているので問題はありません。
ハイビジョン画質の映像を取り扱うメディアとして主役となったブルーレイ
今思えば「何だったんだろう」と思い返される「ブルーレイ対HD DVD」の次世代ディスク型映像メディア戦争ですが、終わってしまえばあっけないもので、"戦後"の混乱もなく、今ではすっかりブルーレイが一般ユーザーにも浸透した実感を覚えます。
3年ほど前、筆者の地元さいたま市の大型ショッピングモール内のCD/DVDショップにて「ブルーレイの棚ってどこですか」と訊いて「え?洋楽のバンド名ですか?」と聞き返されたことも今ではいい思い出です。なにしろ、そのショッピングモールのテナントにもブルーレイコーナーができましたからね。
ただ、セル(レンタル)の映像メディアとしてはいまだにDVDの方が主流であることは否めず、映画以外の映像ソフトは未だにDVDオンリーでリリースされることが珍しくありません。しかし、逆に、映画ソフトに関して言えば、そのほとんどがDVDと同時リリースになっており、価格差も実勢価格では1000円未満になることも珍しくなく、ビッグタイトルに関してはブルーレイ&DVDのツーインワン・パッケージで発売されることも多くなってきています。アニメや音楽などのソフトはDVDに比べてブルーレイの方が価格差が大きいようですが、DVD版だけでなくちゃんとブルーレイ版もリリースされているのは嬉しいことです。
セル(レンタル)の音楽メディアに関しては未だにCDが主流であり、DVD-AudioやSACDへの移行に成功したと言い難い状況ですが、セル(レンタル)の映像メディアに関してはその移行は"一定の成功"を収めていると言えるのではないでしょうか。これには地デジ対応ハイビジョン(HD)テレビの普及が後ろ盾になっているでしょうし、画質(特に解像度)の違いが一般の人にも分かりやすいレベルで劇的に向上していることも大きな要因となっていると思います。
セル(レンタル)ソフトはそんな状況ですが、録画メディアに関して言えば、現在、ほぼDVDからブルーレイに主流が移ったという実感があります。
これはやはり主流放送がデジタルハイビジョン放送になったからでしょう。一層4.7GB、二層8.5GB程度のDVDメディアではハイビジョン放送をハイビジョン画質のまま録画するにはどうしても容量不足ですからね。
ちなみに録画対応のブルーレイとしては大別するとライトワンスの「BD-R」とリライタブルの「BD-RE」があります。共に一層メディアで25GB、二層メディアで50GBの容量があり、ハイビジョン放送をそれぞれ約2~3時間、約4~6時間の録画ができます。最近では100GBの3層メディア「BD-R XL」も登場してきており、これには約8~12時間の録画が行えます(シャープのAQUOSブルーレイ機器の10倍モードならば、それぞれその10倍まで可能)。
デジタル放送の録画を考えるならば、もはやブルーレイは必須...と言っても過言ではないでしょう。
AQUOSブルーレイで広がるブルーレイワールド
シャープは、ブルーレイ陣営の初期メンバーだったこともあり、いわば次世代光学ディスク戦争の勝者でした。そのこともあってか、シャープはブルーレイ機器に関してはかなり初期から充実したラインナップ展開を行ってきています。
特に強力なのは、認知度が非常に高いAQUOSブランドを掲げたブルーレイ機器の製品シリーズです。「AQUOSブルーレイ」のロゴがあしらわれた製品はこのシリーズに含まれています。
AQUOSブルーレイの製品群は比較的分かりやすいラインナップで構成されています。
ハードディスク内蔵のブルーレイレコーダー機器は2番組同時録画(W録)か1番組録画かで基本ラインナップが分かれていて、W録対応モデルには型番に"W"が付いています。ちなみに1番組録画モデルはSingle録画の意を込めた"S"型番になっています。
2番組同時録画対応モデルのフラッグシップ「BD-HDW700」と「BD-HDW70」 | シングルチューナーモデル「BD-HDS63」 |
この他、ハードディスク内蔵なしのブルーレイ録画専用機や、ブルーレイソフトの再生に特化したモデルがあったり、VHSビデオカセットスロットを装備した、VHS→ブルーレイへのダビングに対応したユニークなモデルもあります。
BD録画専用(HDDなし)で薄型・縦置き対応の「BD-AV70」 | VHSカセットスロット搭載の「BD-HDV22」。2008年からラインアップされ続けるロングセラー |
そうそう。一部のエントリ機を除けば、AQUOSブルーレイの最新モデルは、ほとんどが3D(立体視)に対応しているのもポイントです。
なお、こうしたAQUOSブルーレイ機器は、ただAQUOSブランドにあやかっているだけではありません。実際、ブランドの本家である液晶テレビのAQUOSとの強力な連携が図れるようになっています。
そう、「AQUOSファミリンク」ですね。
AQUOSファミリンクはAQUOSブランドの機器同士をHDMIケーブル一本で接続するだけで、1つのリモコンで全てのAQUOSブランドの機器を操作できるものです。難しくいうとHDMI(High-Definition Multimedia Interface)規格のなかのHDMI-CEC(Consumer Electronics Control)規格を利用した機能になります。
これまでだと、外部AV機器側の映像ソフトなどを見るときには、まずテレビ放送から外部入力に切り換えて、関連機器の電源を入れて...という具合にとても面倒でしたが、AQUOSファミリンクならば、1つのリモコンで全ての機器、システム全体を1つの機器のように扱えるのです。例えば、ブルーレイの再生ボタンを押すだけで、自動的にテレビ側の入力切換はブルーレイ機器が接続された入力系統に切り替わりますし、同時にサウンドシステムなどの関連機器の電源も自動で入ります。
よく言われる「テレビとブルーレイ機器のメーカーを揃えた方が便利」というのはこうした機能が利用できるからです。初心者は、液晶テレビがAQUOSならば、ブルーレイ機器もAQUOSブルーレイにした方がよさそうです。
液晶テレビAQUOSシリーズとブルーレイ
このように、AQUOSブルーレイは充実のラインナップといえるわけですが、日々のテレビライフにおいて、これだけブルーレイに対するニーズが高まってくると、ユーザーからの呼び声が高まってくるのが「ブルーレイの液晶テレビへの統合」です。
これをうけて2008年にシャープが世界初のブルーレイレコーダー内蔵型液晶テレビとして発売したのがAQUOS DX1シリーズになります。
それまでにも録画機能内蔵液晶テレビは存在しましたが、DX1シリーズが提案した「ブルーレイディスクに録画できるテレビ」のイメージインパクトは大きく、このモデルの登場を機によりブルーレイの認知度が高まりました。吉永小百合さんと香取慎吾さんが共演した「ついに一緒になりました」がキャッチコピーのDX1シリーズのTVCMは今でも印象に残っている人は多いのではないでしょうか。
なお、このDX1シリーズは、2010年にDX3シリーズへとモデルチェンジしています。
さらに、2011年には、DX3シリーズの上位機的な立ち位置として、ブルーレイレコーダーの機能をそのままに、500GBの大容量ハードディスクを追加内蔵したDR3シリーズがラインナップに加わっています。
もともとブルーレイ内蔵液晶テレビのAQUOSは"オールインワンのハイコストパフォーマンス機"のコンセプトが強かったのですが、より高性能と高画質にこだわったブルーレイ内蔵型液晶テレビのハイグレードモデルも誕生しました。
それが2011年に発表されたAQUOS LB3シリーズです。
LB3シリーズは、液晶パネルにはハイエンドAQUOSの証である4原色(RGB+Y)パネルのクアトロンを採用しているのが、何よりのホットトピックです。DX3,DR3はUV²A技術ベースの高画質パネルを採用していましたが、RGBの3原色パネルでした。ブルーレイ一体型で、クアトロン採用のLB3シリーズは、名実共にハイエンド機ということができます。
液晶テレビAQUOSと3Dブルーレイ
昨年は3D元年とも言われ、各メーカーがこぞって立体視対応の3Dテレビを発売しました。シャープもLV3シリーズを3D対応AQUOSとして製品投入しています。このLV3シリーズは、映像パネルにクアトロンを採用していたので、3D対応のほか、高画質AQUOSの本命としても注目を集めたモデルでした。
そして、その3Dコンテンツの主役と言えばなんと言ってもブルーレイ3Dソフトです。
ビッグタイトルの映画の多くは3D版パッケージもリリースされていますし、2010年後期からは(かつての旧作の3D版ではなく)、新作タイトルの3D版が通常2D版と同時にリリースされることも当たり前のようになってきています。
2010年時は、AQUOSファミリーでのブルーレイ3Dを再生しようとすると、3D対応のAQUOSと前述した3D対応ブルーレイ機器を組み合わせる必要がありました。ブルーレイ内蔵AQUOSとしてリリースされていたDX3シリーズは、テレビ部分もブルーレイ部分も3Dに対応していなかったのでブルーレイ3Dは楽しめなかったのです。
しかし、先ほど紹介したLB3シリーズでは、テレビもブルーレイも3Dに対応しているため、3Dブルーレイを楽しむためのオールインワンモデルにもなっています。
ところで、3D映像を視る際には、左右の目に反対側の目用の映像が漏れ見えてしまう「クロストーク」現象が問題になりがちです。
シャープは、この問題を根本的に低減するために「ハイスピードUV²A液晶パネル」を開発し、2011年に新設されたAQUOS Z5シリーズへと採用しました。
シャープは「Z5シリーズではLV3シリーズと比較してクロストーク現象が約70%も低減された」と発表しましたが、これは平均応答速度が3msにまで高速化されたというハイスピードUV²A液晶パネルの恩恵が大きいと思われます。
表向きのスペックだけ見ると「3D対応クアトロンモデル」ということになり、LV3シリーズと被るように見えるZ5シリーズですが、実は3D画質を劇的に強化したモデルなのです。
それにしても、昨年、登場したばかりのクアトロンが、もう第二世代機に進化してしまうとは凄いものです。
他社はLEDバックライトの構成やその駆動法の工夫でクロストーク現象対策を練っているところですが、いち早く、液晶パネルレベルでの対策を行ってきたのは、シャープが液晶パネルメーカーでもあるからでしょうね。
さすが「液晶のシャープ」といったところでしょうか。
(トライゼット西川善司)