第8回: CES 2011に見た新世代AQUOSパワー
2011/02/28
日本で最大規模の家電ショーといえば、毎年10月に開催されているCEATECが有名ですが、アメリカでは毎年1月にラスベガスで開催されるInternational CES(Consumer Electronics Show,以下CES)は、世界最大級の規模で行われる家電ショウとして世界に知られています。
今年、2011年も1月6日から4日間の会期で開催され、今年は昨年比約+10%の14万人の来場者を記録し、大盛況のうちに閉幕しました。
詳しいCESのレポート記事は、筆者も取材に参加し記事執筆にも携わったAV Watchのイベントレポートリンク集(http://av.watch.impress.co.jp/backno/2011ces/)を参照して欲しいところですが、今回の連載では、シャープ・ブースがどのような展示を行っていたかをレポートしてみようと思います。
AQUOSとして、そしてクアトロンとして最大サイズの70インチAQUOS発表
昨年2010年は「3D元年」とも言われ、昨年のCESでも3Dテレビは空前の盛り上がりを見せていました。3D元年翌年の2011年もブームは冷めやまず、各社とも、3Dテレビには継続的に力を注いでいくようです。
シャープも、CES2011において3Dテレビ関連の一番の目玉は70v型(正確には69.5v型)の3D-AQUOSのアナウンスでした。
これまで液晶テレビAQUOSとしてリリースされた製品としての最大画面サイズは65型であり、しかもそれは従来型のASV液晶パネルを採用したモデルであり、Quatronパネル採用のAQUOSで最大サイズは60v型まででした。そう、今回発表されたこの70V型の3D-AQUOSは、液晶テレビAQUOSとして最大サイズであり、クアトロン採用機としても最大サイズということになるのです(なお、シャープは、かつて108型の液晶ディスプレイ「LB-1085」を発売したことはありましたが、あれは"液晶テレビ"製品ではありませんでした)。
70v型3D-AQUOSにまつわるホットトピックはこれだけではありません。
北米現地時間1月5日に行なわれたシャープ・アメリカのプレスカンファレンスでは、同社のプレジデント、John Herrington氏が「70v型のクアトロン採用AQUOSの"3D対応モデル"では、エリア駆動を復活させる」と言及したのです。
エリア駆動とは、表示映像の明暗分布に呼応して、液晶パネルの直下に配したLEDバックライトの明暗を局所的に制御して、同一フレーム内において最大限のコントラストと最大ダイナミックレンジの階調表現を両立させる液晶パネルの駆動手法です。
AQUOSにおけるエリア駆動初採用モデルは、2008年に発売された直下型RGB-LEDバックライト採用が注目を集めたAQUOS XS1シリーズになる | AQUOS XS1を用いたエリア駆動のデモ。左が製品版の表示。右は同一シーンの液晶パネルを取り外した表示。バックライトの明暗を局所的に制御している様子がよく分かる。この仕組みにより、液晶パネルでも自発光映像パネルに近い表示が可能になる。 |
UV²A光配向技術を応用して製造したクアトロンのパネルでは、理想的な光出力特性が得られることから、直下型LEDバックライトシステムを採用しつつも、エリア駆動は不要......という立場を取ってきていましたので、このアナウンスはとても興味深いものになります。ちなみに、AQUOSにおけるエリア駆動採用は、2008年にRGB-LED採用モデルとして登場して注目を集めたAQUOS XS1シリーズ以来となります。
なお、同じ70v型クアトロン採用AQUOSでも、3D非対応の2D専用機にはエリア駆動は採用されないとのことです。
なので、この「エリア駆動の復活」は、局所コントラストを上げるだけでなく、きめ細かいスキャニングを実現することで3D表示時のクロストーク現象を低減する狙いがあるのでしょう。70v型の3D対応機ともなると高価なハイエンド機となるため、製造コストがやや上乗せとなるエリア駆動を組み込んだとしてもそれほど大きな問題にはなりませんから。
なお、このCESで発表/展示された70v型モデルの話題は、あくまで北米モデルについてです。北米では、3D未対応の70v型クアトロン採用AQUOSは「LC-70LE732U」として5月からの発売が予定されており、3D対応モデルの「LC-70LE935」の方は未定としながらも「2011年内の発売を予定」と告知されています。
日本での展開も気になるところですね。
シャープブース内には、この復活したエリア駆動の有り/無しの効果を2D映像表示で比較できる体験コーナーを設けていました。
今回のエリア駆動の復活は、3D表示の高品位化を主眼としたもののようですが、やはりクアトロン(UV²A)とエリア駆動の組み合わせは強力です。この「クアトロン(UV²A)×エリア駆動」が70v型以下の3D-AQUOSにも展開されるとしたら、3Dに興味がない人にも2D画質の究極を求める意味合いで、画質重視ユーザーには強くお勧めしたいと感じました。
エリア駆動あり(上)となし(下)の比較デモ。共に液晶パネルはクアトロン。色域、輝度ピーク、黒の沈み込みが桁違いであることが写真からもうかがい知れる |
シャープブース、その他の見どころ
展示...という意味では、ブース内で一際明るく目立っていたのは業務用インフォメーションディスプレイ「PN-V601」を複数枚用いたデジタルサイネージシステム「i³wall」(i³3=infomation、intelligent、imaging)でした。PN-V601はマルチディスプレイ構成時、ベゼルの継ぎ目が前後左右6.5mmに押さえられるという世界最"狭"を謳う60v型業務用液晶ディスプレイです。今回の展示では正面及び上下に4×4構成、左右側面を2×4構成にした5面表示を実現し、"映像サラウンド"の体験が味わえるようになっていました。
シャープは、3Dテレビでは液晶シャッター機構を搭載したアクティブ3D眼鏡を用いるフレームシーケンシャル方式を採用していますが、パーソナル向けの中小サイズの3D表現においては視差バリア方式の裸眼立体視を推進しています。これは本連載でも既に紹介済みの戦略ですが、CES2011のシャープブースでは、こうしたシャープの「3Dへの取り組み」も紹介されていました。ブース内には、タブレット型情報端末やスマートフォンへの採用が想定される10.6v型及び3.8v型の裸眼立体視の3D液晶が展示されており、3D眼鏡を掛けて楽しむのとは違った、カジュアルな3D映像体験が楽しめるようになっていました。
10.6v型視差バリア方式の裸眼立体視液晶パネル | 3.8v型視差バリア方式の裸眼立体視液晶パネル |
シャープブースには、この他、大画面☆マニアを連載する筆者には魂を揺さぶられるような日本未発表の製品もありました。それは3D対応単板式DLPプロジェクタ「XV-Z17000」です。
「液晶のシャープ」というイメージが色濃いシャープですが、実はプロジェクタ製品に関しては近年ではDLPに注力しています(1990年代は液晶プロジェクタ製品も手がけていたことがありますが)。
そんなシャープが手がけた「XV-Z17000」は、同社初の3Dプロジェクタで、フルHD(1920×1080ドット)DMDチップを採用し、今期の3Dプロジェクタの中では最も明るい部類に属する1600ルーメンのスペックを誇ります。実際に、ブース内の特設シアターで3D映像を見てみましたが、なるほど、明るさはかなりのものでした。1600ルーメンの最大輝度モードを利用すれば部屋を完全暗室にせずとも、カジュアルにゲームコンテンツなどを3Dで楽しむこともできそうです。
映像関連...という括り以外で見れば、今年のCESは、なんといっても、タブレット型の情報端末機器が大きな盛り上がりを見せていたように思えます。それこそ有象無象のメーカーがタブレット型情報端末を展示しており、2011年は空前のタブレットブームを予感させてくれました。
シャープブースはといえば、そうです、日本でも人気を博しているタブレット型情報端末、スマートフォン「GALAPAGOS」が展示されました。日本では既発売のGALAPAGOSですが、北米では一般向けとしてはCES2011が初公開の場となったため、来場者から熱い視線が注がれていました。
また、シャープのタブレット関連展示コーナーでは、タブレット側とテレビ側の、映像や電子書籍などの各種コンテンツを互いに共有し、相互にシームレスに楽しむ...というタブレットとAQUOSを連動活用するデモが行われていました。タブレットがテレビと繋がることで、デジタルコンテンツの新しい楽しみ方を切り開いてくれるかもしれませんね。
(トライゼット西川善司)