4G LTEをはじめ、最新サービスにも対応!
スマートフォンの資産を活かせる
新世代フィーチャーフォン
わずか4〜5年ほどの間で、一気に普及したスマートフォン。端末そのものの進化もさることながら、ワンセグやおサイフケータイ、防水などの日本仕様も実装され、多彩なコンテンツサービスもスマートフォンで利用できるようになった。しかし、その一方で従来型のケータイの人気も根強く、国内市場でも6000万を超える契約が存在している。スマートフォンへの移行が進み、ここ数年、ケータイの進化が感じられなくなってきたが、auからスマートフォンの資産を活かし、最新の4G LTEネットワークに対応する新時代のケータイ「AQUOS K SHF31」(以下、AQUOS K)が発表された。発表直後から異例とも言えるほどの高い注目を集めたモデルだが、実機を試すことができたので、その仕上がりをチェックしてみよう。
今だからこそ求められる新世代へ向けたケータイ
移り変わりが激しいと言われるモバイル業界。なかでもこの4〜5年のスマートフォンへのシフトは、あまりにもドラスティックな動きだった。国内市場においては、スマートフォン登場以前、進化を続けてきたケータイ(フォーチャーフォン)があまりにも高機能であったため、なかなかスマートフォンへの移行は進まないだろうという見方もあったが、プラットフォームやハードウェアのスペックが急速に向上し、サービスの拡大とも相まって、またたく間にモバイル市場の主役の座を勝ち取った印象だ。
しかし、正しく現状を分析してみると、また別の状況が見えてくる。これだけ普及したと言われるスマートフォンだが、株式会社MM総研がまとめた2014年12月末の調査によれば、国内のスマートフォンとケータイを合わせた約1億2511万の契約の内、スマートフォンが約6544万契約で約52%であるのに対し、ケータイは約5967万契約で約48%を占めている。つまり、これだけ圧倒的にスマートフォンが普及したと言われる状況下でありながら、まだ半数近くはケータイがしっかりと使われている。普段からスマートフォンを活用している本誌読者からすれば、ちょっと意外かもしれないが、こうした統計データだけでなく、実際に街中を注意深く観察していると、思いの外、ケータイのユーザーが多いことに気付かされる。
スマートフォンが登場して以来、さまざまな形で各携帯電話会社やメーカーがケータイからスマートフォンへの移行を促してきたが、彼らはどうして現在でもケータイを利用し続けているのだろうか。ユーザーごとにそれぞれ考え方や事情はあるが、よく耳にするのが「スマートフォンは必要ない」という考え方だ。この「必要ない」という文言だけをピックアップしてしまうと、「ITリテラシーが低いのでは?」「そうは言ってもいずれはスマートフォンにするでしょ」「変化を求めていないだけでは?」といった解釈をされてしまうこともあるが、現在のケータイユーザーには普段からパソコンでインターネットを使い、十分なITリテラシーを持ちつつ、テンキーをはじめとしたケータイの扱いやすさとアドバンテージを重視するユーザーも多い。つまり、現在でもケータイを使い続けるユーザーの中には、明確な『こだわり』を持って、ケータイを活用するユーザーが存在するわけだ。
ただ、現在のケータイを使い続けることにもいろいろな面でストレスが増えてきているのも事実だ。現に、毎年、数十機種の新製品が投入されるスマートフォンに対し、ケータイの新製品は年に1〜2機種しかなく、ハードウェアとして十分に熟成されていることもあり、機能面でも新しいものがあまり追加されていない。むしろ、最近ではコストダウンのために機能が削られてしまうこともあるくらいだ。同時に、コンテンツプロバイダがスマートフォンへシフトしていることもあり、ケータイのコンテンツサービスが終了してしまったり、スマートフォンユーザーからメールなどで送られてきたURLがケータイのブラウザーでは表示できないといったことも起こり得る。「LINE」のように、スマートフォンでの利用が前提で、ケータイでは実質的に使いにくいようなサービスも存在する。
そして、何よりも各社のデータ通信サービスがLTEネットワークに切り替わり、スマートフォンの半分以上が対応機種に置き換わってきているのに対し、ケータイは相変わらず、各社とも3Gのみに限られているうえ、Wi-Fiについても非対応の機種が多いため、自宅や会社だけでなく、街中の公衆無線LANサービスも利用できない状況にある。せっかく通信インフラストラクチャやサービスが充実してきても現状のケータイでは対応できず、ケータイユーザーとしては不満を感じつつあるわけだ。
今回、auから発売されたシャープ製端末「AQUOS K」は、まさにこうしたアクティブなケータイユーザーの要望に応えるべくして誕生したモデルだ。
プラットフォームはスマートフォンAQUOSでも採用されているAndroid 4.4をベースにしているが、折りたたみデザインというボディ形状だけでなく、端末の仕様やユーザビリティの含め、基本的には既存のケータイに準拠した設計になっており、スマートフォン時代を反映し、スマートフォンのリソース(資産)も上手に活用することを狙ったケータイとして開発されている。かつて、シャープでは「AQUOS PHONE SL IS15SH」でスライド式、「AQUOS PHONE THE HYBRID 007SH」でスウィーベルスタイル(二軸回転式)など、ケータイのフォームファクターを採用したAndroidスマートフォンを開発してきたが、当時のモデルはケータイからスマートフォンへ移行しやすくするために、ケータイのデザインを活かしたモデルだったのに対し、今回のAQUOS Kは同じAndroidプラットフォームを採用しているものの、あくまでも「ケータイ」「フィーチャーフォン」として開発されたものであり、根本的なアプローチが異なる。折りたたみデザインのボディや押しやすいテンキー、[電源/終話]キーによるバックグラウンド通信の終了(プリインストールアプリのみ)など、ケータイとしての基本的な使い勝手を維持しながら、スマートフォンの進化によって培われたハードウェアと最新のサービスに対応することで、新しい時代へ向けた新世代のケータイとして仕上げられている。スマートフォン市場が拡大する今だからこそ、ユーザーに期待に応えられるケータイを具現化したモデルというわけだ。
こだわりの折りたたみデザイン&ダイヤルキー
新しい時代へ向けた新世代ケータイとして開発されたAQUOS Kだが、その外観はこれまでのケータイで広く愛されてきたスタンダードな折りたたみデザインを継承しつつ、全体的に上質で高級感のある仕上げとなっている。
最近のスマートフォンとは比べるまでもないが、ボディは手のひらにすっぽり収まる約51mm幅のコンパクトな形状で、ディスプレイ部とテンキー部の合わせ部分は片手での開閉がしやすいように、わずかな凹みが付けられている。
ボディのカラーバリエーションはレッド、ホワイト、ブラックの3種類が用意されており、ボディカラーごとにトップパネルの仕上げをストライプ柄、メッシュ柄、カーボン柄に仕上げ、テンキー部周囲のフレームと共に、上質なイメージを演出する。ユーザーが長く利用することを考慮し、一般的な塗装ではなく、インモールド成型を採用する。さらに、個性を追求したいユーザーのために、au+1 collectionでは本体の「着せかえシール」「着せかえカバー」が各カラーバリエーションごとに販売される。
ボディ右側面には音量UP/DOWNキーとシャッター/マナーキーが備えられ、左側面には卓上ホルダ(別売)利用時の充電端子、左側面の角にはストラップ穴、テンキー部底面にはスマートフォンでも広く利用されているmicroUSB外部接続端子を備える。シャッター/マナーキーはカメラ起動時にシャッターとして利用できるほか、長押しでマナーモードに切り替えることができる。本体は防水に対応しており、microUSB外部接続端子はキャップレス防水となっている。
トップパネル側の中央には着信時やメール受信時、アラーム鳴動時などに情報を表示できるサブディスプレイが備えられており、ディスプレイ部の枠内にはLEDによる充電/着信ランプも内蔵される。背面にはカメラ、赤外線通信ポート、モバイルライト、スピーカーが内蔵されており、背面カバーを外すと、着脱式の1410mAhの電池パックが装着されている。電池パックを取りはずすと、au ICカード(SIMカード)とmicroSDメモリカードのスロットにアクセスできる。ちなみに、au ICカードはnanoSIMカードを採用しており、microSDメモリーカードは最大32GBのmicroSDHCに対応する。
ディスプレイは960×540ドット表示が可能な約3.4インチのQHD液晶を採用する。従来の一般的なケータイと比較しても大画面に入る部類であり、高精細さも328ppiとスマートフォンにまったくひけを取らないレベルとなっている。スマートフォンのような大画面ではないが、非常に視認性も良く、スマートフォンAQUOSでも採用されるバックライト「PureLED」の採用により、写真やグラフィックを美しく再現できる。シャープ製端末ではおなじみののぞき見を防止するベールビューもサポートされており、ダイヤルキー左下の[アプリ使用履歴]キーの長押しで切り替えられる。
キーは2011年1月に発売されたau向けシャープ製端末「SH011」などに倣ったレイアウトをベースにしており、中央上には決定操作に利用するセンターキー、方向操作に使うカーソルキーを組み合わせたものをレイアウトし、その周囲の左上に電話帳キー、右上にカメラキー、左下にメールキー、右下にブラウザー/アプリキーを配置する。ダイヤルキーの左下にはアプリ使用履歴キー、右下にはテザリングキーを備える。ダイヤルキーはかつてのシャープ製ケータイにも採用されていた「クリートラインキー」と呼ばれるキートップに角度を付けたものが採用され、ボディカラーごとに異なるデザインのキーフォントを使うなど、細かい部分もこだわって仕上げられている。
画面は待受画面に標準でカレンダーと検索ボックスが表示され、すぐにそれぞれの機能にアクセスできる。センターキーを押すと、これまでのケータイと同様、3×4段表示のメニュー画面が表示され、カーソルキーを操作することで、各機能を呼び出すことができる。ちなみに、メニュー画面には「LINE」のアイコンが表示されているが、端末を購入後、アイコンを押下して、アプリをダウンロードし、必要な情報を設定すれば、LINEを利用できるようになる。バックグラウンド通信により、LINEのメッセージが届けばすぐに情報が表示されるので、スマートフォンに近い感覚で利用することができる。
タッチクルーザーEXでWebブラウザーも快適操作
AQUOS KはAndroidプラットフォームを採用しているが、従来のケータイのフォームファクターを利用したスライド式などのAndroidスマートフォンと違い、あくまでもケータイとしての使い勝手を重視し、片手でも操作できるように開発されている。そのため、ディスプレイはタッチ操作に対応していないが、WebブラウザーなどではWebページ上のリンクなどをクリックする必要がある。そこで、AQUOS Kでは「タッチクルーザーEX」と呼ばれるポインティングデバイスを搭載している。
タッチクルーザーはかつてのシャープ製端末でも採用されていたので、覚えている人もいるだろうが、本体に埋め込まれた静電式センサーを使ったもので、指などが触れた静電容量の変化により、タッチ操作を実現するものだ。従来のモデルではタッチ専用のエリアを配置するなどの手法を用いていたが、AQUOS Kではダイヤルキーとカーソルキー部分のエリアに内蔵しており、指などが触れた静電容量の変化により、キー表面の指の位置を検出することで、指先をキーの表面で滑らせて、スクロールさせたり、軽く叩くことでタップ操作をできるようにしている。ちなみに、電話番号や文字入力など、ダイヤルキーを押す操作のときはタッチクルーザーがオフになっており、Webブラウザーを使うときなど、タッチ操作をするときに切り替わるしくみとなっている。
タッチクルーザーEXの実際の操作感については、WebブラウザーでWebページを閲覧するときなど、スクロール操作やタッチ操作が多いところでも快適に使える印象だ。スマートフォンと同じ使い勝手というわけではないが、端末そのものを常に片手で扱えるうえ、ケータイのときのようにカーソルキーを何度も連打する必要がないため、ストレスなく使うことができる。
CPUは最新のスマートフォンにも採用例が多いSnapDragon 400 MSM8926/1.2GHzを搭載する。これまでの一般的なケータイに比べ、約4倍以上の処理能力を持っており、動画などもスムーズに再生することが可能だ。特に、タッチクルーザーEXを使い、ブラウザーでWebページを閲覧するときの操作感は、従来のケータイのようなカクカクした動きではなく、スマートフォンと同じようにサクサクと使うことができる。
モバイルデータ通信機能については、ケータイと同じ3Gだけでなく、auが全国にエリアを拡大した4G LTEのネットワークに対応する。Wi-FiはIEEE802.11b/g/nに対応しており、自宅などだけでなく、国内のau Wi-Fi SPOTでも利用できるうえ、テザリングにも対応する。
バッテリーは前述の通り、本体背面に1410mAhの着脱式の電池パックを装着する。最新のスマートフォンが搭載する3000mAhの大容量バッテリーと比較すると、半分の容量になるが、一般的なケータイは700〜800mAhであり、その2倍近い容量を確保していることになる。一般的なスマートフォンは利用するアプリによって、バックグラウンドで自動通信を行なうため、データ通信量も電力消費も多くなる傾向にあるが、AQUOS Kは[電源/終話]キーを押すと、プリインストールされているアプリについてはバックグラウンドでの自動通信を抑止するなどの対応により、データ通信量や電力消費を抑えることができる。今回試用した範囲に限られるが、AQUOS Kは一般的なスマートフォンのような電池残量の減り方ではなく、従来のケータイにかなり近いレベルの電池の持ちで、安心して使うことができる印象だ。
カメラは1310万画素CMOSイメージセンサーを採用し、F値2.2の明るいレンズ、暗いところでの撮影にも強い画像処理エンジン「NightCatch」との組み合わせにより、これまでのケータイよりも格段に美しい写真を撮ることができる。
撮影機能も充実しており、スマートフォンAQUOSに搭載されている最新の機能がしっかりと継承されている。たとえば、明暗差のあるところでの撮影に強いHDR(High Dynamic Range)は、最新のスマートフォンAQUOS同様、リアルタイムHDRに対応しており、普段から「AUTO」に設定しておけば、いつでもそれぞれのシチュエーションに最適な写真を撮影可能だ。同じくスマートフォンAQUOSで好評を得ている「フレーミングアドバイザー」も搭載されており、自分が撮りたいシーンに合わせた構図のガイドを見ながら、撮影することができる。この他にもカメラをかざすだけで、英文を翻訳できる「翻訳ファインダー」、「魚眼カメラ」や「ミニチュアライズカメラ」といったユニークな撮影機能などのサポートされており、今までのケータイよりも進化したカメラ撮影を楽しむことが可能だ。
タブレットなど、他製品との連携機能も充実している。現在もケータイを愛用するユーザーの中には、自宅や外出先などで、タブレットを使う人が多いと言われているが、これまではケータイで音声通話をしつつ、タブレットでインターネットに接続するといった使われ方が多かったようだ。これに対し、AQUOS Kに搭載されている「PASSNOW」という機能を利用すれば、AQUOS Kとタブレットを連携させながら使える環境を提案している。たとえば、AQUOS Kにかかってきた着信をタブレットの画面に表示したり、AQUOS Kで撮影した画像をタブレットに転送、タブレットに表示されているWebページの電話番号をタップして、AQUOS Kで発信、タブレットからAQUOS Kのテザリング機能をリモートで有効に切り替えて使うといったことができる。
スマートフォンのリソースを活かした新世代ケータイ「AQUOS K」は買い!
この4〜5年、スマートフォンの進化があまりにも著しかったこともあり、私たちの目はスマートフォンにばかり向いていた。しかし、市場を冷静に見てみると、まだ半数以上のユーザーがケータイを愛用しており、なかにはケータイのアドバンテージをしっかりと理解したうえで、敢えてケータイを活用している人も少なくない。AQUOS Kはまさにそういった「アクティブなケータイユーザー」のために開発されたモデルだ。ケータイが持つ良さをしっかりと継承しながら、Androidスマートフォンのプラットフォームを活用し、最新の4G LTEネットワークやWi-Fiなども利用できるようにすることで、今までのケータイでは利用できなかった多彩なサービスにも対応させることができた新世代のケータイ、新世代のフィーチャーフォンとして仕上げられている。こだわりを持つケータイユーザーはもちろん、スマートフォンとは違ったアドバンテージを積極的に活かしたいユーザーにもぜひ体験して欲しいモデルだ。
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執筆: 法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話やスマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。主な著書は「できるWindows 8.1」をはじめ、「できるポケット docomo AQUOS PHONE ZETA SH-01F 基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるゼロからはじめるタブレット超入門 Android 4対応」、「できるポケット au Androidスマートフォン 基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるWindowsタブレット Windows 8.1 Update対応」など、数多く執筆。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。ホームページはこちら。