色彩規格のPANTONE社とのコラボレーションは、2007年のフィーチャーフォン「SoftBank 812SH」からスタートしており、一時は最大で24色も展開するなど、話題を振りまいてきた。PANTONEケータイは、単に色だけではなく、その機能や操作性にも配慮しつつ進化してきたのも特長で、その使いやすさから、今年はウィルコムのPHSにも採用されるなど、存在感を不動のものにしつつある。そのPANTONEシリーズが、満を持してスマートフォンに初登場というわけだ。これまでのPANTONEシリーズのファンで、これからスマートフォンに乗り換えを考えているなら、注目せざるをえないだろう。
やはり最初に印象に残るのは、なんといってもカラーバリエーションの豊かさである。ローマンブラック、ローマンホワイト、ローマンピンク、ローマンビビッドピンク、ローマンパープル、ローマンブルー、ローマンイエロー、ローマンオレンジの8色展開。1~3色が多いスマートフォンにおいて、ありえない豊富さなのだ。見る角度によってフロスティな輝きも見せるなど表情も豊かで、見ているだけで元気が出そうなポップな仕上がり。フロントにある「クイック起動キー」の色もアクセントになっており、持つ喜びを満たしてくれる。
サイズも特長的だ。突起部を除いたサイズは、幅約58mm、高さ約115mm、厚さ約12mmで、重さは約116g。画面サイズは3.7インチ(854×480ドット)のフルワイドVGA液晶。スマートフォンの液晶が大画面化する傾向にある中で、かなり小型なのだが、従来のPANTONEシリーズ同様に、丸みを帯びたラウンドシェイプは手の馴染みもよく、持ったまま歩きたくなる絶妙なフィット感だ。しかも、女性でもグリップした状態で画面の両端に親指が届くというのは、片手で操作するうえで大きなメリットだ。
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フロントのクイック起動キーがデザイン上のポイントになっている |
近年のスマートフォンの中ではかなり小型な部類 |
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全体的に丸みを帯びたボディ |
画面は、ダイレクトトラッキング技術によりスクロールはなめらかで、指の動きにしっかり追従してキビキビとしていて気持ちよい。操作の要となるのが「Feel UX」だ。初めてスマートフォンを操作する方でも、そのまま自然に使いこなせるように開発されたインターフェイスで、これまでのロック画面が、アプリの起動も可能な、待受画面風の表示機能を持つ「ウェルカムシート」になり、ホーム画面が、「アプリケーション」「ウィジェット」「ショートカット」という、あらかじめ3つに分けられたシートで構成された「3ラインホーム」になっている。
起動して、最初に目にするのは「ウェルカムシート」だ。アイコンに邪魔されずに壁紙やライブ壁紙を大きく楽しめるのが特長だが、107SHの場合、他の端末とはちょっと違った工夫が施されている。通常の端末なら設定できる静止画の壁紙は5枚までなのだが、8色展開の107SHは、8枚まで設定できるのだ。フリックすることで8枚の壁紙が次々と切り替わるわけで、ちょっとしたアルバムとしても楽しめるのである。さらに、ライブ壁紙には、上戸彩が登場する「アヤちゃん in スペイン広場」や、ゲーム感覚で楽しめる「お父さんと行く、ローマの旅」という特別コンテンツが用意されており、つい触りたくなる仕上がりになっている。
日時が表示される「インフォエリア」はスクロール可能で、フリックするごとに、日時、後述する放射線量の常時測定結果、天気や株価など、表示情報を変えられる。タブのような「ロックキー」を上に少しドラッグすると、カメラ、電話、メールのアイコンが現れ、ロック解除しなくてもすぐ起動できるようになっている。逆に下に引き下げると、ロックが解除されて「3ラインホーム」が現れ、さまざまなアプリやウィジェットがそのまま使え、必要に応じてショートカットを登録して、自分なりの使いやすさを追求できる仕組みだ。
「Feel UX」はこの夏デビューしたばかりだが、そのインターフェイスは、107SHの中で生きていると感じている。「Feel UX」のスクロールには、アイコンを区切る「セパレータ」単位で停止できる設定がある。このモードを使うと、タップしたいアイコンを含むセクションを、セパレータのある位置で確実に停止させ、そのまま目的のアプリを片手で起動できるのだ。やってみると、これが実に便利。手や指のサイズにもよるだろうが、3行程度にグループ化できれば、ササッとスクロールし、パッと操作できる。
ブラウジング中に画面の端を軽くフリックすると、「クイックツールボックス」とよばれるメニューが現れる。これも、ブックマーク、新規タブ、タブ一覧、画面の再読込や戻る、進むといった操作が、片手で簡単にできる機能だ。メニューボタンから機能を呼び出してもいいのだが、どうしても操作が断続的になりがち。「クイックツールボックス」を使えば、フリックした場所にメニューを表示できるので、最短距離で操作できるのである。
ちなみに、フロントに設けられた「クイック起動キー」も片手操作には欠かせない。画面消灯時に押すと「ウェルカムシート」が現れ、ウェルカムシート上で長押し、もしくはロック解除後に短押しすると、デフォルトでは「放射線測定機能」が起動する。実はこのキーには違うアプリを割り当てることもできる。頻繁に使う機能を割り当てることで、さらに機能的に活用できるようになるのだ。
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「セパレータ」は、どのシートでも利用可能。挿入したい場所を、ピンチアウト・ピンチインで挿入・削除が可能 |
Webブラウザのメニューを手軽に呼び出せる「クイックツールボックス」 |
クイック起動キーには 自由にアプリを割り当て可能 |
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AF対応の490万画素CMOSカメラ
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1000万画素を超えるカメラを搭載するスマートフォンが多い中、107SHのカメラは、有効画素数が約490万画素のCMOS(AF対応)である。端末サイズ同様に画素数もコンパクトなのだが、ハイビジョン動画もしっかり撮影できる。ボディに適度な厚みがあるため、安定したグリップが可能で、さらに「ON速起動」により、ロック中の「ウェルカムシート」から約0.4秒でカメラを起動できる。自分撮りも可能な30万画素のインカメラも備えており、その携帯性と機能の点で使いやすい仕上がりになっている。
撮影時のシーンは自動検出可能だが、標準、人物、夜景+人物、風景(自然)、夜景、料理、テキスト、セピア、モノクロの9種類からも簡単に選択できる。フォーカス設定は、顔優先AF、センターAF、接写AF、AF OFF、チェイスフォーカスの5種類。通常「AF OFF」を選択することはないかもしれないが、トイカメラで撮影したような写真を撮りたいときは役立つので、覚えておいて損はないだろう。
撮影後は、あらかじめ用意されている「画像編集」や「フォトスタジオ」といった機能を使えば、撮影後の写真に文字を追加したり、明るさや彩度の調整、トイカメラ風の効果の適用、トリミングといった、一通りの画像編集作業が可能だ。しかも、保存したら「共有」により、メール添付やSNSへの投稿にスムーズに移れる。おかげで、 「次はどれを起動すればいいの?」 「それはどこにあるの?」 「アプリのダウンロード?」 「どうすればいいの?」 といったことで悩まなくていい。
携帯しやすく、グリップしやすく、さらに防水で起動が速いということは、何をしていてもシャッターチャンスを逃しにくく、確実に撮れるといえる。しかも、「アウトドアビュー」や「リフレクトバリアパネル」によって、屋外でも液晶、つまりファインダーが見やすい。ピントを合わせたい箇所に触れるだけで、合焦後に自動的に撮影もできる「ワンタッチシャッター」や、「手ぶれ軽減」「顔優先AF」などを組み合わせれば、ライフスタイルの記録もバッチリ。撮影がリズミカルに楽しめること間違いなしである。
107SHでは、絵文字やデコレメールに対応した「S!メール」、Gmail、PCメール対応アプリの3種類のメールをサポートしている。いずれもメール作成画面の本文入力欄を選択しただけで、時間帯に応じた候補が現れる「いきなり予測変換」が使える。たとえば日中なら、「こんにちは」「お疲れさま」といったフレーズをタップするだけで即入力できるので、元来の精度の高い予測変換性能とあいまって、効率よく入力できる。しかも変換辞書は定期的にアップデートされるので、トレンドワードなどの新語も、変換に苦労することなくタイムリーに利用できる。知っているフリをしたら変換を間違えて、恥ずかしい思いを……ということも避けられそうなのだ。
また、入力方式の切り替えにも工夫が凝らされている。たとえば、かな入力は12キーボードで携帯風に入力したいが、英字はQWERTYキーボードのほうが入力しやすいということがある。こんなときでもキーボードのスライドだけで切り替えられるのだ。実はキーボードの切り替えは左隅の「あA1」キーで切り替わるのだが、片手で操作する場合、押しにくいと思ったことはないだろうか。それを解決するのがこの「かんたん入力切り替え」というわけだ。フリックするだけで、文字入力の流れを止めることなく切り替えができるのである。
キーボード入力が苦手な方は手書き入力も可能だ。画数の多い漢字を省略して「会ぎ」と入力しても、しっかり「会議」が候補として現れる。キーボードに慣れないうちは、この「漢字かな混じり手書き予測変換」が重宝するだろう。
4つの入力方法をフリックだけで切り替えられる
ウェブブラウザの中の文字列やURL、写真に移った文字など、気になるフレーズをメールで送りたいときは、「どこでもコピー」機能があれば入力の手間が省ける。コピーしたい画面で通知パネルを開いて「どこでもコピー」を選ぶと、コピーしたい範囲を指先でぐるりと指定するだけで、テキストとして抽出できるのだ。あとはメール本文などにペーストするだけ。写真で撮影しておいたメモのテキスト化に便利に活用できる。
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画像データに写った文字などもOCRで読み取ることができる「どこでもコピー」。読み取りたい画面で通知パネルを開き、「どこでもコピー」を選択 |
読み取りたい部分を範囲指定すると…… |
文字列をテキストにすることができた |
“107SHといえば”、といえるほど話題になったのが、「放射線測定機能(エアメータ)」の装備である。これは「放射線量」という見えないものに対する不安に対応したもので、常に携帯するスマートフォンで測ろうという世界初の試みだ(2012年5月29日時点 ROA社調べ)。慶應義塾大学の地球環境スキャニングプロジェクトの監修のもと、ガンマ線(Cs-137を基準)を対象に、0.05~9.99マイクロシーベルト/時の範囲で最長約40分(放射線量率による)測定でき、誤差(相対標準偏差)は±20%となっている。
測定方法は「常時測定」と「しっかり測定」の2種類が用意されており、「クイック起動キー」で簡単に計測できる。「常時測定」は、設定をONにしておけば自動的に計測され、ウェルカムシートのインフォエリアや、ウィジェットでいつでも確認できる。「しっかり測定」は、特定の場所で時間をかけて測るもので、「クイック起動キー」を長押しすると測定開始画面が起動し、後は画面に従って操作するだけで簡単に測定でき、測定履歴をいつでも確認できるというのが特長だ。一定線量を超えると、音、バイブ、インフォメーションで通知する機能ももつ。専用機器ではないため調査目的には使えないが、漠然と不安を抱えて暮らすよりも、状況が可視化されたほうがいいという方には、有効な機能といえそうだ。ただし、得られた結果の扱いは慎重に行いたい。
これまで107SHの使用感をご紹介してきたが、搭載されている機能に不足がないことはすでにおわかりいただけたと思う。スマートフォン全体で懸念されるバッテリー問題については、省電力技術の「エコ技」機能により、無駄なアプリの動作を抑えてかしこく節約できる。液晶も、「エコバックライトコントロール」によって、画質はそのままに、消費電力も抑えるなど、細かい工夫が凝らされており、スタミナも十分。ユニークなところでは、顔認証によるロック解除や、USBマウスやキーボードを接続して使える「USBホスト機能」もサポートされており、拡張性のある小型のスマートフォンを望む人に、十分活用していただける性能なのだ。
すずまり
プログラマからISPの営業企画、Webデザイナーを経て、現在はIT系から家電関連まで、全身を駆使してレポートするフリーライターに。カメラを中心にガジェットを好む。趣味は写真と料理。著書に「Facebook仕事便利帳」「iPhone 4S 仕事便利帳」(ソフトバンククリエイティブ)、「Facebook Perfect Guide Book」(ソーテック社)など。
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