魅力的なモデルやサービス、料金プランなど、業界にさまざまなインパクトを与えているソフトバンクだが、ここ数年、ユーザーの利用がスマートフォンへシフトし始める中、トラフィックの面で必ずしも十分に対応できないケースがあることが指摘されてきた。つまり、つながりにくいと感じるユーザーが増えつつあった。
こうした状況が生まれてきた背景には、やはり、ソフトバンクが他社に比べ、周波数帯域の面で不利な状況にあったことが挙げられる。たとえば、他社は3Gケータイ共通の2.1GHz帯の他に、携帯電話サービスにもっとも適していると言われる700~900MHz帯などに割り当てを持っているのに対し、ソフトバンクは2.1GHz帯のほかに1.5GHz帯を割り当てられているのみだった。周波数は一般的に高い方が直進性が強く、ビルや山間部などでは電波の陰ができやすいのに対し、低い周波数はそういった場所でも電波が回り込むことで届きやすくなるという特徴がある。そのため、他社はビル陰や山間部でもつながるのに対し、周波数帯域の面で不利な状況にあるソフトバンクはつながりにくいという状況が生まれていたわけだ。
こうした状況を改善することが期待されているのが今年2月にソフトバンクが割り当てを受けた900MHz帯、つまり、「プラチナバンド」だ。前述のように、900MHz帯はビル陰や山間部などでも電波が回り込み、端末に届きやすいという特性を持つため、エリア内であれば、当然のことながら、対応機種の方がつながりやすいということになる。すでに、2012年3月に発表された「PANTONE® 4 105SH」をはじめ、すでに数機種がプラチナバンドに対応しているが、本格的に対応となるのは今回の2012年夏モデルからということになる。
今回発売されたAQUOS PHONE SoftBank 102SHIIは、昨年末に発売され、各方面で高い評価を得たAQUOS PHONE SoftBank 102SHをベースに、900MHz帯に対応させたリニューアルモデルだ。モバイルデータ通信はソフトバンクが展開するULTRA SPEEDに対応し、受信時最大21Mbpsを実現する。プラチナバンドに対応することで、一段とそのパフォーマンスが活きてくることになるわけだ。
102SHIIは基本的に昨年末発売の102SHの仕様を受け継いでいる。
まず、ボディはフラットでスリムなデザインを継承しており、IPX5/IPX7等級の防水に対応するが、ボディカラーは落ち着きのあるクラッシーブラック、さわやかなシルバーに加え、女性も持ちやすいピンクが追加されている。この3つのカラーバリエーションの内、クラッシーブラックについては、塗装に触感塗料を採用しており、他とは少し違った手触りを実現している。
ディスプレイは1280×720ドットのHD表示が可能な約4.5インチのNewモバイルASV液晶を搭載する。一般的に人間の眼で判別できるのは、300dpi程度と言われているが、102SHIIの液晶ディスプレイは329dpiという高精細さを実現している。今後、スマートフォンの解像度も1280×720ドット表示が標準になると言われており、その意味でも十分なスペックと言えるだろう。
また、画面サイズが約4.5インチと大きいため、周囲からののぞき見が気になるが、102SHIIの液晶ディスプレイはカラーベールビューに対応しており、アニメパターンを含む6種類のフィルタパターンがあらかじめ用意され、カラーベールビューを有効にしたときの見え方や濃さなども調整可能だ。
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4.5インチHD液晶を搭載
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液晶下部に[MENU][ホーム][戻る]の3つのハードキーが配置されていて使いやすい
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スマートフォンのパフォーマンスを左右するCPUについては、Texas Instruments製のデュアルコアチップセット「OMAP4430/1GHz」を搭載しており、複数アプリの実行やブラウジングを同時に処理できることによるパフォーマンス向上に加え、高負荷の稼働時間を短くすることによる省電力も実現している。ちなみに、102SHIIは従来モデル同様、Android 2.3搭載しているが、今夏以降、Android 4.0へのアップデートに加え、2012年夏モデルで新たに取り組んでいる「Feel UX」の搭載も予定されている。
モバイルデータ通信はHSPA+方式によるULTRA SPEEDに対応し、受信時に最大21Mbpsという高速通信を可能にする。周波数帯は標準の2.1GHz帯、今回、新たに対応したプラチナバンドの900MHz帯に加え、一部の海外メーカー製端末が対応していない1.5GHzにも対応するため、混雑の少ない環境での利用が期待できる。無線LAN(Wi-Fi)については、102SHIIもIEEE802.11b/g/nに対応しており、自宅やオフィスなどに設置された無線LANアクセスポイントに最大54Mbpsという速度で接続できる。Webサイトの閲覧などが快適なのはもちろんだが、YouTubeのような動画コンテンツもストレスなく、閲覧することができる。Wi-Fiのセットアップについても業界標準のWPSに対応しているため、市販の無線LANアクセスポイントとの接続設定も数回、ボタンを押し、画面をタップするだけで、簡単にセットアップができる。公衆無線LANサービスの自動ログインもサポートしており、カフェやファストフード、ホテル、空港、ショッピングモール、駅など、さまざまな場所で快適にインターネットに接続することが可能だ。
また、昨年の冬モデルから搭載されている「エコ技」機能も忘れてはならない機能のひとつだ。シャープが独自に開発した省電力技術である「エコ技」機能は、ユーザーの利用シーンを必要以上に制限することなく、バッテリーのロングライフを実現する。内容としては、表示される映像や周囲の環境に合わせ、液晶ディスプレイのバックライトの明るさをコントロールしたり、バックグラウンドで動作するアプリが自動的に通信をするようなときでもアプリを終了させることなく、動作を自動で制御し、バッテリーの消費を最小限に抑える。設定も非常に簡単で、「エコ技」機能を起動し、あらかじめ用意されている「通常モード」「技ありモード」「お助けモード」という3つの動作モードを選ぶだけで使うことができる。フルに速さを求めるときは「通常モード」、普段は「技ありモード」、バッテリーの残量が厳しいときは「お助けモード」を選ぶように使い、技ありモードについては自分の好みに合わせて、個別の項目をカスタマイズすることも可能だ。電池残量に応じて、「エコ技」機能の動作モードを自動的に切り替えたり、自分のライフスタイルに合わせ、昼間は技ありモードで使い、夜、自宅に帰宅したら、通常モードに切り替えるといったこともできる。「エコ技」機能を簡単に切り替えるためのウィジェットも用意されており、初心者にも操作しやすく、わかりやすい。
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1210万画素カメラを搭載し、光学手ぶれ補正に対応
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102SHIIには、1210万画素の裏面照射型CMOSセンサーによるカメラが搭載されており、高画質撮影を可能にしている。裏面照射型CMOSセンサーは、その構造上、より多くの光を受光部に取り込めるようになり、薄暗いところでも高感度・低ノイズの写真を撮影できる。この1210万画素の裏面照射型CMOSセンサーによるカメラに、ケータイのカメラでも搭載されてきた画像処理エンジン「ProPix」を組み合わせ、一段と美しい写真や映像の撮影を可能だ。
さらに、102SHIIのカメラは、最大1920×1080ドットのフルHD動画の撮影にも対応。毎秒30フレームのなめらかな映像を撮影することができ、撮影した映像をYouTubeにアップロードして、友だちや家族と共有するといった使い方もできる。
そして、102SHIIのカメラで最も特長的なのが光学手ぶれ補正に対応することだ。手ぶれ補正についてはケータイをはじめ、これまでのスマートフォンにもソフトウェア的に処理する手ぶれ補正機能が搭載されてきたが、102SHIIでは、ジャイロセンサーで撮影時の手ぶれを検出し、レンズ駆動で補正する光学手ぶれ補正を採用する。ソフトウェア的な手ぶれ補正はISO感度を上げる関係上、ノイズが増え、画質が劣化してしまう傾向があったが、光学手ぶれ補正であれば、夜景などの暗いところでの撮影にも十分な効果が発揮できるうえ、子どもを追いかけて撮影する動画撮影でも手ぶれがすくなく、見やすい映像を撮影することが可能だ。
撮影時の機能としては、シーン自動検出やシーン別設定、個人検出、ペット検出などを搭載する。シャッターについては、笑顔検出や振り向きシャッターなどを設定することもでき、オートフォーカスも被写体を追うチェイスフォーカスや人物の顔を優先する顔優先AFなどを選ぶこともできる。
ケータイからスマートフォンへのシフトが進みつつある中、我々のモバイルライフも大きく変わろうとしている。ケータイのときも常に持ち歩き、さまざまなサービスや機能を利用してきたが、スマートフォンになると、さらにその利用シーンは拡大し、もっと速く、もっと快適に使いたいという欲求が生まれてくる。その分、モバイルデータ通信のトラフィックは増え、より快適なネットワークが求められる。102SHIIは受信時最大21Mbpsを実現するULTRASPEEDに加え、ソフトバンクは新たに割り当てを受け、7月25日からサービスを提供する「プラチナバンド」に対応することにより、ユーザーの多様なニーズに応えるモデルだ。大画面と充実した機能を快適に使いたいユーザーなら、「買い!」のモデルと言えるだろう。
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