Watchの10周年記念サイトもラストが近づいてきた。
各Watchの来歴や思い出についても、たくさんのコラムを執筆していただいている。今回は趣向を変えて、内側から見たWatchの歴史を、Watchの殖やし方をベースにお話しよう。
なお、自分が管轄していることもあって、PC Watchを中心とした編集第一グループのメディアを中心にお話するのでご容赦いただきたい。
● PC
Watchができるまで
Watchの源流はいくつかあるのだが、「Watch」という名前を使い、「毎日更新するメディア」というアイデアは「Internet
Watch」から始まった。媒体はメールマガジンで、Webはまだなかった。
「PC Watch」は、その週末別冊の日曜版みたいな形で開始されて、最初は私一人が担当だった。
PC Watchの独立時に、初めてWebという形を開始した。PC分野では形のある製品が多いので、ハードウェアの写真などを載せるためにWebをやりましょう、という理由だったと記憶している。しかし、インターネット広告も創世記だったので、収益の大半は会員制の全文メールに頼っていたと思う。
なんせ、2つしか媒体がないので、ハードウェアを中心とした形のあるものはPC Watch、サービスなど形のないのはInternet
Watchぐらいの区切りで十分だった。
したがって、初期のPC Watchは、パソコンだけではなく、デジカメも携帯電話も扱っている。また、PCゲームやゲームコンソールの記事も掲載されている。社外の人に説明するときは「コンシューマー市場向けのハードウェア全般を扱っています」とか、「だいたい100万円以下で個人の物欲をそそるものならなんでもやります」とか言っていた覚えがある。
● GAMEとAVを創刊
その後、Internet Watchのグループから、「ケータイWatch」ができたほかは、IT系のWatchは増えていなかった。
「MUSIC Watch」、「MOVIE Watch」、「SPORTS Watch」、「JIJI News Watch」、「GOLF
Watch」、「Finance Watch」が創刊されては消えていったが、これら“ライフ系”と称されていたWatchは、人事的交流があまりなくちょっと別グループという感じだった。ちなみにInternet
WatchなどのIT系Watchは“テック系”と呼ばれていた。
GAME分野を独立させて、「GAME Watch」を作りたいと思い始めたのは、PLAYSTATION 2発売がきっかけだった。簡単に言えば、PS2の発表会に招待してもらえなかったのだ。つまり「PC分野」かつ「Web媒体」では入れない場所があり、専門誌を立てる必要があると強く認識させられたのだ。
「AV Watch」についても同様で、ソニーからHDDレコーダー「Clip-On」が登場したことがきっかけとなっている。これとMP3プレーヤーの隆盛で、この分野の専門の媒体があったほうが良いだろうという判断した。
この2誌は、同時に準備がはじめられ、2000年末から2001年初頭にかけて創刊された。
スタッフの構成については、PC Watchの編集部の中で、やりたいと言って手を挙げた人を中心に置いた。デスク以外のスタッフは、GAMEについては経験者を社外募集した。AVについてもサブに一人つけたほかは社外募集した、こっちは未経験者ばかりの集団になった。どちらもなかなか人が集まらず、他部署から借りたりして、やりくりに苦労した覚えがある。今は、GAMEもAVも5人体制だ。ちなみにPCも5人体制になっている。
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PLAYSTATION
2 |
Clip-On |
● デジカメWatchの創刊
「デジカメWatch」の創刊は2004年だ。
GAMEとAVが、取り扱う分野を広げるという方向だったのに対し、デジカメはPC Watchでもよく取り上げている分野だった。
コンパクトカメラが中心だったデジカメが、転換期を迎えたことが創刊の理由だった。デジカメは、下はカメラ付き携帯電話に追い上げられ、上は低価格化した一眼レフへの移行が見えていた。
PC Watchのような“総合誌”で、「レンズの味」とかまで語れるのか、語って良いのかという疑問から、独立を決意した。
スタッフはPC Watchから一人、AV Watchから一人、社外募集が一人の3人体制で始め、今に至っている。
PC Watchとしては、パソコンと並ぶ主力コンテンツが独立したことでアクセス数の低下が心配されたが、なんとか維持している。
デジカメWatchについては、創刊から2年強を経て、ようやく業界内でも認知されはじめたところだ。
● 意地で始めたRobot
Watch、苦労している家電Watch
2006年は「Robot Watch」と「家電Watch」を創刊した。
Robot Watchは、正直に言えば「意地で始めた」という印象が強い。創刊のあいさつでも書いたが、2002年頃に盛況だったロボット業界が、ソニーの撤退によって退潮気味になっていたことへのあせりがあった。
ロボットの新製品発表会や大きなイベントについては、PC Watchで扱っていたが、やはり認知されやすい専門媒体を立てることによって、多少はこの業界に寄与できるのではないかと考えたのだ。
これは、手を挙げてくれたスタッフが一人でやっているので、社外のライター諸氏の力添えがあって続いているメディアだ。
一方、家電Watchは、ずっと前からやりたかったメディアで、本当はもう1年早く創刊したかった。
商業Webサイトで家電のニュースを専門に扱っているところはなかったので、じゃあ作っちゃいましょう、という発想だ。
まず、社外募集で一人を確保したのだが、景気がよくなったこともあって人が集まらない。しかたがないので、PC Watchで「そこが知りたい家電の新技術」というコラムを始め、家電のニュースは「やじうまPC
Watch」のコーナーで無理矢理に取り上げて準備を進めた。
しかし、この準備期間は無駄ではなく、取材の進め方やニュースの分量など、始めてみないとわからないことが多く、たいへん勉強になった。いきなり創刊していたら、行き詰まっていたことだろう。レビュー中心の紙面構成も準備期間無しでは考えつかなかったと思う。人が集まらないのは相変わらずで、いまでも二人体制で動いている。
この2つのWatchについては、始めたばかりで、しばらくは苦労が続くという状態だ。
● 好きじゃないと続かない
簡単に各誌の創刊の流れをなぞってきたが、各メディアとも、自分がそのジャンルが好きだ、という人間がいて始めて創刊できた。
正直な話、思い入れもないヤツが作った専門誌なんて、読んでいてつまらない。また、スタッフのほうでも、好きでもない仕事をやっていて面白いことが書けるわけがないと思う。労働時間当たりの単価とかで考えたら、編集なんて実入りの良い仕事ではないのだ。
Watchの10周年を支えてくれたのは、そのジャンルが好きだというスタッフだと思っている。いろいろな事情で編集部を離れた人も含め、Watchに関わったスタッフと、それにつきあってくださったライター諸氏と、毎日読んでいただいた読者の方々に感謝の言葉を述べて、この稿を終わりたい。
(PC Watch 編集長 伊達 浩二)
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