下り最大110Mbpsを実現する超高速ワイヤレスインターネット接続サービス、WiMAX 2+がサービス開始して、そろそろ2カ月が経とうとしている。当初は首都圏、環七内側からスタートした対応エリアも、徐々に広がりつつあるのが実感できる。実際、UQはWiMAX 2+のエリア拡大計画として、2013年度末には東京・大阪・名古屋、さらにその1年後には、全国に拡大を予定。まずは2014年3月までに、一気に東名阪までエリア拡大を目指し準備するとしている。ユーザからはもっと早くエリア展開を望む声もあるが、これは、WiMAXのサービス開始当初のペースをはるかに上回る勢いだ。そのスピード感がなぜ可能になるのか、今回は、UQコミュニケーションズの福島徹哉氏(執行役員 建設部門担当)に話をうかがった。
WiMAXのころをはるかに上回るエリア拡大スピード。今年度末には東名阪まで拡大も
―WiMAX 2+のエリア拡大は、具体的にはどのくらいのペースで進んできて、これからどのように進んでいくことになるのでしょうか。
福島氏7月末に新規周波数帯が総務省から割り当てられて、そこからわずか3カ月という驚異的な期間でサービスインしたWiMAX 2+ですが、実は、建設計画にとっては、短期間での部材調達、およびエリアを設計していくことは、前代未聞のスケジュール感での立ち上げとなりました。第1号基地局はサービス開始2カ月前の9月初旬に完成しており、サービス開始までに昼夜問わず、全力でエリア化してきました。
電波割り当てからサービス開始までの短い期間を考えればそれだけでもかなりのスピードですが、サービス開始後はさらにペースを上げ、現在は基地局数1,000局を超え、東京23区のWiMAX 2+屋外エリアカバー率71%まで進みました。これから国道16号線内に拡げていきます。
そして今年度末には首都圏に加え大阪、名古屋まで、一気にエリアを広げる予定です。WiMAXのときは、同程度のエリアに達するまでに、サービスインから14カ月もの月日がかかりましたが、今回WiMAX 2+は当時の2倍以上の速さという、業界の常識を超えるスピード感でエリア化を進めています。
そして、最終的には全国にある既存基地局の全てをWiMAX 2+対応に置き換えていきます。
―ユーザーの立場からいくと、エリアがまだまだという声も聞きますが、なぜ免許取得後わずか3カ月の短い期間で開始に踏み切ったのでしょうか?
福島氏はい。確かにそのようなお声もお聞きしており、エリア拡大に向けて日々奮闘しております。しかし弊社としては、次のように考えて、サービス開始に踏み切りました。
まず、ベースとしてWiMAXのエリアが整備できており、お使いいただけること。WiMAXの月額料金は変わらずの3,880円でサービス提供すること。そうであればWiMAX 2+の基地局が開局しエリア化され次第、出来立てホヤホヤの超高速エリアをお客様に次々とお届けしていこうというスタンスでエリア構築し、サービス開始致しました。
これにより、お客様が気づけば「この場所でも使えるようになっている!」「本当に1日刻みでエリアが広がっている」と実感いただている感動の声も頂戴しています。とはいえ、もっとエリア化してほしいというお客様の声はしっかりと認識しており、とにかく1日でも早く、1局でも多くエリア化できるよう邁進しています。
「日々、拡大」が実感できるWiMAX 2+エリア
―ユーザーとしてはエリアの拡大具合を見える化してほしいという要望があると思いますが、公式サイトではかなり頻繁にエリア情報を更新されているようですね。
福島氏最新のエリア拡大情報については、お客様にきめ細かくお伝えできるよう、UQホームページでご案内しております。
一般的に通信業界では、月1回から3カ月に1回の頻度でサービスエリアマップを更新されています。弊社のサービスエリアマップもこれまでは月1回の更新でしたが、WiMAX 2+開始以降は月2回の頻度で更新しています。
さらに「速報! エリア拡充情報!」では週2回、まだサービスエリアマップに反映されていない新たな開局エリアをお知らせしています。また、お客様が希望された地域が開局されるとご連絡する、「エリア通知メール」というサービスも提供しております。お客様には是非こまめにチェックして頂きたいと思います。
au建設部門との協力体制でさらにスピードアップ
―WiMAX 2+のエリア拡大スピードは、WiMAX開始当初よりもはるかに速く進んでいるとのことですが、そのあたりは作業量の減少によるものでしょうか。
福島氏そうですね、確かに作業量は減っていて、それが前例のない驚異的なスピードのエリア化に寄与していることは間違いありません。しかしそれだけでなく、現在のエリア拡大スピードを実現するために、様々な努力をしています。
そのひとつが、auとの協力体制です。WiMAX 2+の基地局建設は、UQ単独ではなく、KDDIの建設部門と協力しながら進めているんです。たとえば、auの基地局を整備するついでにWiMAX 2+基地局の作業もしてもらったり、その逆も然りです。そのために最近、UQの建設部門だけ、新宿にオフィスを移転しました(※UQ本社は品川)。ここにはauの工事部門と営業部門約3,000人がいて、auといっしょに顔をあわせながら建設計画の話を進めることができますので、効率よくスピード感を持って作業を進めていくことが出来ます。
既存WiMAX基地局に設備を追加・交換することでWiMAX 2+に対応
―ひとつのWiMAX 2+基地局を整備するのにどのような作業が必要なのでしょう。
福島氏既存WiMAXの基地局は、基本的にアンテナ3本、無線機3台、附帯盤1台で構成されていますが、これら設備を交換・あるいは追加することで、既存基地局をWiMAX 2+に対応させることができます。具体的にはアンテナ3本の交換、無線機3台をそれぞれRRHに交換、さらにBBU2台と附帯盤1台の追加を行ないます。
作業の順序としては、まず、無線機の交換にさきだって、アンテナ3本を取り替えます。WiMAX用のものをWiMAX/WiMAX 2+用のものに取り替えるのですが、ビルの支柱などに登って作業するのはやはり特殊技術で、作業員が安全に作業できるようにしなければなりません。当然、天候にも左右されるので、晴れた日に前もってやっておく必要があります。ちなみに、アンテナを取り替えても、WiMAXで接続している既存ユーザーの利用には影響がありません。
作業時間がちゃんと確保できれば、1日でアンテナを3本とも取り替えるのですが、屋上に設置してあるようなパターンだと午前9時に始めておやつの時間くらいには完了といったところでしょうか。でも、中吊りになって作業しなければならないような現場では、もっと時間がかかります。
アンテナ交換後に、無線機や無線機や附帯盤の交換・追加します。これに要するのがほぼ丸1日ですね。とにかく日没前に作業をすませるようにしています。無線機は、交換作業中は停波してしまいますが、ひとつの基地局が動かなくても大きな穴が空かないエリア設計をしているので、ご不便をおかけすることのないようにWiMAX 2+基地局への交換対応を進めています。
こうして、全部のハードウェアの接続ができたら、本部に連絡をとり、制御装置にソフトウェアをロードし、パラメータの設定を行います。無線機がどういう設定で電波を吹くかとか、端末側に隣の基地局との調整をどのように指示をするかなどのデータがあります。それらをロードして、そのパラメータが無線を介して端末に伝わるようにします。
―エリア拡大は、基本的には既存の基地局の置き換えということになりますから、4年前のWiMAXのスタート時、一から基地局を整備したときに比べれば、効率的になったのですね。
福島氏はい。それに、開業した当時の基地局建設は、UQコミュニケーションズそのものの認知度が低くて、設置をお願いにいっても、どこの会社だと思われて親身に聞いてもらえないという苦労もありました。そのため、すごく手間がかかったことを思い出します。しかし今回は、既存の無線機の取り換えがほとんどですので、そのような手間が軽減され効率的になっています。
―基地局をWiMAX 2+に対応させることによって、WiMAXの電波やエリアに影響はあるのでしょうか。
福島氏いいえ、現状WiMAXをご利用頂いているお客様には、何の影響もありません。エリアも、電波の強さも同じです。弊社が持っている電波、50MHz幅のうち、既存の30MHz幅をWiMAX、新規で取得した20MHz幅をWiMAX 2+に割り振っていますから。
WiMAX 2+のエリア化に際しては、WiMAXを利用しているお客様の接続に何も影響しないよう、進行しています。
ただ、今後、WiMAX 2+を拡張していく中で、これまでWiMAXが使用していた電波をWiMAX 2+に割り当てていくと、変わるかもしれません。でも、そのころはWiMAXのお客様はほとんどWiMAX 2+に移行している、という状況を想定していますので、あまり心配はしていません。
―屋外だけでなく、屋内基地局の整備も是非進めていただきたいのですが、いかがでしょう。
福島氏基本的に、現在は屋外基地局を優先して作業していますが、屋内基地局についてもニーズに応じて整備をしていきます。例えば家電量販店の中にはすでにWiMAX 2+対応基地局を設置しているところがありますね。それに、東京駅 銀の鈴広場付近や、秋葉原駅構内の中などでもすでにWiMAX 2+に対応しています。
―いまWiMAXが使える場所では、ゆくゆく必ずWiMAX 2+が使えるようになるわけですね。早期の完了を期待しています。がんばってください。どうもありがとうございました。
(Reported by 山田祥平)