WiMAX 2+のサービスインにともない、対応モバイルルーターとして「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」が発売された。ブライトシルバーとメタリックレッドという2色のカラバリを持ち、スマホ風のタッチスクリーンで操作できるスーパーモバイルルーターだ。新しいサービスを利用できるのは当初、この端末だけとなり、事実上の一択だ。さっそく試すことができたので、そのインプレッションをお届けしよう。加えて、端末の企画担当である佐藤達生氏(企画部門事業開発部長)にも話を聞くことができた。あわせて紹介しよう。
3つの通信モード+Wi-Fi
HWD14は、3つのモードを持つトライブリッドルーターだ。そのモードは、
1. ノーリミットモード(WiMAX)
2. ハイスピードモード(WiMAX 2+ と WiMAX)
3. ハイスピードプラスエリアモード(WiMAX 2+ と au 4G LTE)
の3種類となっている。
さらに、「Wi-Fiスポット接続」機能が実装され、任意のWi-Fiアクセスポイントにも接続できる。1~3のどの通信モードにおいても、Wi-Fiスポット機能を設定してオンにしておけば、そちらに優先してつながる仕組みだ。
つまり、24時間365日、電源を入れっぱなしにしておけば、それだけで、外出先ではWANや公衆Wi-Fiサービスに、また、オフィスや自宅に戻ってきたら、あらかじめ設定したワイヤレスLANに接続するといった運用が可能だ。
「モバイルルーターはもはや空気のような存在になるべきだと考えています。HWD14では、カバンの中に入れっぱなしでも使える、ずっとつながりっぱなしで意識せずに使える、という世界観を提供しています。」(佐藤氏)
HWD14で、まさにそうした世界が手に入るわけだ。
WiMAX 2+を使う場合の契約は、サービスインにともなって新設されたUQ Flat ツープラスプランに加入する必要がある。このプランは、契約から24ヶ月を契約期間とし、
基本使用料 4405円/月
UQ Flatツープラスおトク割 △525円/月(最大25ヶ月間割引)
合計 3880円/月
というものだ。
つまり、契約期間が2年になったものの、その間は、これまでのUQ Flat 年間パスポートと同額で、WiMAX 2+が利用できる。
少なくとも2年間はハイスピードモードに固定して使おう
HWD14は、3つのモードを持ってはいるが、通常はどのモードに設定しておくべきなのだろう。佐藤氏いわく、
「少なくとも2年間は、ハイスピードモードの速度制限は無いわけですから、その間はノーリミットモードを使っていただく必要はありませんね。」(佐藤氏)
この先2年間は、WiMAX 2+の利用において、7GBで速度が制限されるといったことはなく、従来のWiMAXと同様に、使い放題が約束されているので、基本的にはWiMAXとWiMAX 2+に接続する「ハイスピードモード」に常時設定しておけばいいわけだ。
ハイスピードモードでは、WiMAX 2+ が使えるエリアではそこにつながり、つながらなければ WiMAXと、ハンドアップ、ハンドダウンを繰り返しながら接続を維持する。だから、2のハイスピードモードに設定しておけば、そのときに位置しているエリアに応じてどちらかのWiMAXが利用できるわけだ。
UQでは、WiMAX 2+対応エリアを、首都圏から開始し、2013年度末には東名阪、2014年度末には全国へ拡大する予定だが、そのエリア整備は毎日進んでいく。だから、ハイスピードモードにしておけば、エリアのことを気にすることなく、WiMAX、WiMAX 2+を楽しめるわけだ。きっと、いつのまにか自分の行動範囲がWiMAX 2+エリアに対応し、スクリーンにそのことが表示されるようになっているだろう。
WiMAXのみを使用する「ノーリミットモード」は、将来的にWiMAX 2+で速度制限が課せられるようなことになったときの緊急避難的なものと考えておけばいい。 このモードを使う日が来るのか来ないのかは、今のところはわからない。
まさかのときのハイスピードプラスエリアモード
ただ、休暇でリゾートなどに出かけたときなど、WiMAX 2+はもちろん、WiMAXすらつながらないエリアがあるのは事実だ。また、都心にいても、ビル内の奥まった場所などでは圏外となってしまうゾーンも存在する。
「ハイスピードプラスエリアモード」は、そんなときの頼もしいモードだ。このモードでは、実人口カバー率97%を誇る au 4G LTEが利用できる。利用に際する申し込みなどは必要なく、必要になったときにいつでも使用することができる。使った月だけ1,055円のオプション課金が行われるリーズナブルな料金で、月に1回も使わなければ利用料金はかからない、魅力的なサービスである。
佐藤氏は「少なくとも2年間は速度制限ナシのWiMAX 2+が使えるハイスピードモードを使っていただき、いざというときにワイドエリアのLTEが使えるハイスピードプラスエリアモードを使ってください。LTEは7GBの制限があるので、ここぞというときに使う位置づけです。通信量カウンター機能を使って各ネットワークの現在のデータ通信量を知ることができますから、是非ご利用ください。」とコメントする。
WiMAX 2+エリアを体験
さて、HWD14をハイスピードモードに設定して、WiMAX 2+のエリアに入るべく山手線内を徘徊してみた。リッチなスクリーンを持つHWD14では、今、どのモードに設定されていて、どのネットワークにつながり、何台の端末が接続しているかがひとめでわかるようになっている。ときどきスクリーンを確認しながら、WiMAX 2+への接続を試行してみた。
都心から郊外に延びる私鉄沿線は、ターミナル駅に近いところは環七の内側に位置しているが、ある日、所用で駅を降りてHWD14のスクリーンを見てみると、WiMAX 2+につながっていることが確認できた。
さっそく、パソコンを取り出してWi-Fiでルーターと接続、スピードテストを試みてみた。測定結果は下り33.7Mbps、上り7.7Mbpsと、かなり速い。同じ場所でWiMAXでの測定結果は下り15.2Mbps、上り3.2Mbpsとなっていたので倍近いスピードだ。
さらに、HWD14は、USBケーブルでパソコンに直結することもできる。接続すると、CD-ROMドライブとして認識され、そこにあるautorunを実行すると、ドライバ等がインストールされて、パソコンからはイーサネットアダプターのように見えるようになる。もちろん、この作業は初回だけで、次回以降は、ケーブルをつなぐだけで、イーサネット接続されたかのようにふるまう。
都心のWi-Fi状況は過密状態に近く、電波の干渉などでうまくつながらなかったり、つながっても期待されるスピードが出ないといったことも起こっている。そんなときは、HWD14をケーブルで直結することで、Wi-Fi電波の干渉に悩まされることなくWiMAX、WiMAX 2+の接続を堪能できる。速度的にもWi-Fi接続を超えるのは確実だ。実際、このとき試した結果、下り73.8Mbps、上り7.7Mbpsを記録した。
豊富な省電力機能を駆使しよう
HWD14の公称バッテリー駆動時間は、WiMAX 2+でずっと通信していた場合、9時間ちょうどとなっている。WiMAXなら9時間30分、LTEでは9時間10分と、そう大きくは変わらない。おおむね9時間と思っていればいいだろう。実際に使ってみても公称値よりも長持ちすることは確認できた。
少しでも長い時間使いたいのなら、豊富な省電力機能をうまく活用したい。HWD14にはECOモードとクイックアクセスモードという2種類の省電力機能が搭載されている。
ECOモードでは、5分、10分、15分のいずれかを設定し、それらの時間を超えて疎通されるデータが無い場合、Wi-Fi側、WAN側、双方の通信が止まった状態になる。再開には電源ボタンをちょんと押す必要があるが、数秒で通信が再開する。この状態で待機させておけば、バッテリーが約950時間もつ。これならまるまる一週間くらいは、充電しなくても平気かもしれない。
また、クイックアクセスモードではWi-Fi側を切らない。だから電源ボタンを押す必要はなく、パソコンやタブレットからアクセスするだけでWAN側が復帰する。こちらは、約30時間のスタンバイが可能なので、丸1日はカバンに入れっぱなしにして使えるだろう。
ECOモード | クイックアクセスモード | |
---|---|---|
Wi-Fi側通信 | 指定時間内にデータ通信が無いと停止 (5/10/15分) |
停止しない |
WAN側通信 | クライアント未接続時は停止 | |
接続復帰の方法 | 電源ボタン短押し | クライアントがWi-Fi接続 |
待受時間 | 約950時間 | 約30時間 |
また、HWD14には、クイック起動と呼ばれる機能も搭載されている。これは、電源をオフにしても、パソコンのスリープやサスペンドのように本体の状態を保持したままにすることで、次回の電源オンでの起動を素早くするための機能だ。バッテリーの保ちは、完全な電源オフとほとんど変わらないという。
「クイック起動はとても速いです。他社のモバイルルーターを含めて、通常は、通信ができるようになるまでは30秒程度はかかるので、電源を落とすのがめんどうになっていたのですが、この機能を使えば、数秒ですみます」(佐藤氏)。
バッテリー容量は3000mAhと、しっかりしたものだ。同梱のOTGケーブルを使えば、スマホに給電することもできるというのもいい。
SIMが必要になったWiMAX 2+で広がる可能性
この他の機能としては、接続する端末を最初の一台に限定するブリッジモードもある。セキュリティを気にしなければならない企業ユースなどで、VPNを使う場合などには安心な機能だ。また、本体にはmicroSDスロットが装備され、その内容をWebブラウザーを使って読み書きすることもできる。ウェブ設定画面を開くには、管理者のパスワードが必要なので、限定的な使用になりそうだが、簡易的なモバイルNASとしても利用できそうだ。
ちなみに、WiMAX 2+のサービス開始と対応端末の発売にともない、UQコミュニケーションズのサービスの利用にはSIMカードが必要になる。この端末にも、SIMカードスロットが装備されており、SIMを装着して利用できる。
WiMAX 2+が3GPP規格の一部を参照してTD-LTE互換となったことから、SIMが必須になったわけだが、不便なようではあるが、この先、他社製含めて豊富にTD-LTE端末が揃ってきたときに、SIMを入れ替えるだけで、それらの端末を使い分けるといったことができるようになるかもしれない。また、逆に、UQの端末に、他事業者のSIMを装着し、海外事業者のTD-LTEネットワークが使える可能性も考えれば、将来の夢が広がるというものだ。
(Reported by 山田祥平)