UQコミュニケーションズがWiMAXによるモバイルブロードバンドサービス事業者としてビジネスをスタートさせてから約5年。今年9月末には427万契約と躍進を続けている同社は、いよいよWiMAX 2+をサービスインする。
使い放題で、速度制限がない「ノーリミット」をキャッチフレーズに、多くのユーザーの信頼を集めているUQコミュニケーションズは、これからWiMAX 2+でどのような道を歩むのか。今回は、同社代表取締役社長、野坂章雄氏に話を聞いてきた。
(インタビュアー:山田祥平)
なぜ今、WiMAX 2+なのか
―いよいよWiMAX 2+のサービスが始まります。そこに至るまでのWiMAXの近況について教えてください。
野坂氏WiMAXは今年、サービスを開始してから5年目に入りましたが、9月には427万契約を達成しています。サービス面でも、J.D.パワー“モバイルデータ通信サービス お客様満足度No.1”をいただくなど、トータルで質の高いビジネスができていると自負しています。サービスの品質を維持するため、今は都市部での容量拡張と高速化を目的に、さまざまな対策を続けているところです。
例えば東京・新宿アルタの前ですとか、新宿区役所の前、渋谷の繁華街など、すでに基地局の配置が過密状態になっているエリアもあり、こうした場所ではこれ以上の基地局増設は厳しい状況です。ここまで密集すると、隣接する基地局間で電波の干渉を防ぐことがポイントなんですよ。
これまでは、セルを縮小し、高度な干渉制御で対応してきたのですが、今後は、電波利用効率の向上や新技術の導入を積極的に進めていく必要があります。そんな中で、新たな周波数帯の追加、特に連続した周波数帯の確保は、WiMAXにとって、悲願だったといっても良いでしょう。
おかげさまで、7月末に総務大臣から新規周波数帯20MHzを割り当てていただきました。もともとオークション方式が議論されていたのですが、政権が交代したことで比較審査方式になりました。結果的には、UQは400万契約を超えるユーザー数を背景とした特定基地局開設計画が評価されて認定されたわけです。
つまり、これまで我々を支えてきてくださったお客様のおかげで新周波数帯を獲得できたといって良いでしょう。
―新周波数帯を得たことで、何が変わるのでしょう。
野坂氏新周波数帯のポイントは、今までの2595MHzからの30MHz幅に加えて、20MHzが追加されたことで、連続する50MHzを得ることができた点です。
今後は、この連続した50MHz幅を柔軟に運用し、従来のWiMAXと新たなサービスであるWiMAX 2+を併用したサービスを提供し、トータルでいろいろな問題を解決していくことができます。
WiMAX 2+を最初は110Mbpsから初めて、2014年には220Mbps、将来は1Gbpsでの超高速ブロードバンドサービスを提供するべく準備を進めています。WiMAX 2+のサービス開始によって、UQコミュニケーションズが擁するサービスのネットワークキャパシティは大幅に向上するはずです。WiMAXから、高速/広帯域のWiMAX 2+への移行が進むことで、ネットワークにだいぶん余裕が出てくるわけです。
WiMAXからWiMAX 2+へ。どれだけ快適になるのか?
―WiMAX 2+は、WiMAXとはどう違うのでしょうか。
野坂氏今、モバイルネットワークの世界では、LTEが話題にのぼることが多いのですが、その方式には2種類あります。どちらも世界標準でFDD-LTEとTD-LTEの2方式です。WiMAX 2+は、TD-LTEとの互換性を持っていますから、それによってグローバル化によるコストメリットなどが得られます。
すでに第1号基地局を墨田区に設置していますが、そこはもともとWiMAX基地局でした。WiMAX 2+の周波数帯はWiMAXと隣接しているので、簡単な機器の交換で、今までの基地局をそのまま使えるというメリットがあります。いわば2-in-1の基地局でWiMAX 2+のサービスエリアを拡げていきます。
―WiMAX 2+では、どのくらい快適なデータ通信が期待できるのでしょう。
野坂氏データ通信では、データを流す速度が重要になります。WiMAXは40Mbpsですから、これを一般道だとすると、WiMAX 2+は110Mbpsですから、2.5倍の速度を出せる高速道路ということになりますね。ですから、できるだけそっちを使ってもらうようにしたいと思っています。
エリア的には、既存のWiMAXエリアの上にオーバーレイする形になります。もちろん、今でもWiMAXは都市部を中心に日本全国をカバーしていますから、つながらないで困るといったことはほとんどありません。そのWiMAXエリアにかぶせるかたちで、さらに高速なWiMAX 2+のエリアを拡張していくわけです。
最終的にはWiMAX 2+に完全移行していくことで、ネットワーク帯域の逼迫問題は解決していきます。そのためにはお客様にWiMAX 2+をどんどん使ってもらわなくてはいけないので、当初の料金体系もそれを意識したものになっていますが、それについてはのちほどお話ししましょう。
通信効率をいかに向上させるかは重要なテーマとなります。4アンテナデバイスの開発によって、そう遠くない未来に220Mbpsへの拡張を実現したいと思います。
WiMAX 2+の特長
- 下り最大速度は当初110Mbps、2014年に220Mbpsの高速通信
- 既存WiMAXとのシームレスな利用
- 周波数利用効率のさらなる拡大(ネットワークキャパシティの向上)
- TD-LTEとの互換性確保によるエコシステム構築(端末や設備のコスト低下)
- 高速モビリティ機能の拡大。時速350kmでの高速大容量通信を実現
最強のWi-Fiルーターを用意
―WiMAX 2+のサービスインに際して、新しいWi-Fiルーターを用意されましたね。どのようなデバイスなのでしょうか。
野坂氏デバイスとサービスは不可分であり、超高速モバイルブロードバンドを極限まで活用できる最強のWi-Fiルーターを用意しました。
通信方式としては、WiMAX、WiMAX 2+、さらに、au 4G LTEの3種類をサポートするトライブリッドモデルです。
つまり、このルーターひとつで、速度制限ナシのWiMAXと、超高速のWiMAX 2+、そしてプラチナバンドを含む全国でエリアカバー率97%を誇るau 4G LTEの3種類を堪能できるのです。
タッチパネル対応のスクリーンを装備し、5秒でクイック起動します。充電はQiに対応しているのも便利ですね。バッテリ容量は3000mAhで連続9時間以上の利用が可能です。
―WiMAX、WiMAX 2+、au 4G LTEの切り替えはどのようなイメージになるのでしょうか。
野坂氏ルーターは3種類のモードをもち、タッチ操作で簡単に切り替えることができます。各モードの通信はノーリミットモード(WiMAXのみ)、ハイスピードモード(WiMAXとWiMAX 2+)、ハイスピードプラスエリアモード(WiMAX 2+とau 4G LTE)となっています。
WiMAXのみを使うノーリミットモードは、現在のWiMAXサービスに引き続き、使い放題で速度制限もありません。最大速度は40Mbpsですが、いつでもつなぎっぱなしにできる安心感でお使いいただけます。
それに対してハイスピードモードは、WiMAX 2+の最大110Mbpsの速度を利用できるものです。こちらに関しても、契約後2年間は使い放題でサービスを提供します。
ハイスピードモードでは、エリアに応じてシームレスにWiMAXとWiMAX 2+をハンドオーバーします。
最後に、ハイスピードプラスエリアモードですが、全国97%のエリアカバーを誇り、プラチナバンド800MHzに対応したau 4G LTEが使えます。
これらの利用をオールインワンにしたのがこのルーターで、まさに3つのネットワークの良いところが入った最強のデバイスだといえるでしょう。
WiMAX 2+も速度制限ナシで2年間使い放題
―気になるのは価格ですが、どのような料金体系になるのでしょうか。先ほど、2年間はWiMAX 2+も使い放題とのお話もありましたが……。
野坂氏まず、ノーリミットモードのWiMAXでは、これまでどおり速度制限がなく使い放題でお楽しみいただけます。
次に、ハイスピードモードのWiMAX 2+も、お客様が加入された月から2年間、速度制限ナシでご利用いただけます。従来のWiMAXと超速のWiMAX 2+、両方が月額3,880円で使えます。
本来は月額4,405円/月間データ利用量7GBのサービスが、今なら2年間3,880円/月で使い放題、と言えば分かりやすいかもしれません。
ハイスピードプラスエリアモードは、au 4G LTEが利用できるオプションとなります。こちらは、使った月だけ1,055円という設定です。たとえば、旅行や出張に行く月だけ利用するといったように、気楽に利用できるわけです。
なお、月間データ通信量は7GBまでとなっています。ただ、7GB使い切ってしまっても、ノーリミットモードに切り替えればWiMAXが速度制限ナシで使えます。他社のサービスでは7GB使って速度制限になると、速度を戻すには2GB毎に2,625円を支払わなければいけないというのが一般的です。WiMAXならノーリミットモードがあるので、最低でも40Mbpsは確保できるということになりますね。WiMAXは速度制限ナシなので、当然そうなります。
結局のところ、今回のサービスは、今までのWiMAXの速度制限ナシに、2年間使い放題のWiMAX 2+を足したことに意味があります。しかもそれが3,880円/月でご利用いただけます。
まずは2年間安心してお使い頂きたい。3年目以降は、マーケットやお客様の声を聞きながら、何がお客様のベストかを考えていきたいですね。
―WiMAX 2+が使えるエリアはどのあたりなのでしょう。
野坂氏今、WiMAXがサービスしているエリアの中で、どこを手当していくかを考えているところです。具体的には渋谷、秋葉原付近等でトラフィックを緩和していきたいと考えています。11月のサービス開始時点では東京の環状七号線の内側からスタートし、来年3月末には神奈川と埼玉、千葉、さらには愛知、大阪、京都、神戸に拡げます。2015年3月末には全国の主要都市に拡大を予定しています。
使用可能エリアは、WiMAXのときと同様、ピンポイントエリア判定で確認できるようにしますから、利用される地域がサービスエリアに入ったらすぐに使ってほしいですね。
WiMAXの「これまで」が結実したのがWiMAX 2+
―WiMAX 2+としてTD-LTE互換の道を選んだことで、その大きな舵取りにより、UQコミュニケーションズの未来が拓けたということですね。
野坂氏はい、その通りです。今から2年ほど前、当時、WiMAXは、その後継規格として、IEEE802.16mを推進しようとしていました。実証実験もやりましたし、WiMAXの次はWiMAX 2として、この規格でサービスを提供することを考えていました。
ところが、グローバルでTD-LTEが急遽クローズアップされるようになりました。そこで、世界標準との互換をめざして方向転換し、WiMAX Forumで協議した結果、TD-LTE互換に路線を変更し、WiMAX 2+という名称でいくことにしたのです。もともとTD-LTEとの親和性が高かったことも功を奏しました。
世の中がどうなるかわからなかったこともありますが、それでよかったと考えています。TD-LTEは、中国でも普及が始まっていますし、韓国も同様です。結果として、かなりのシャープターンではありましたが、時代にうまくマッチングしてきたといえます。
何が正しいかをその都度見極めるのは大変なのですが、UQらしく迅速な判断で、方向を変えていけたのは大きかったと考えています。
結果的には、これまでの努力があり、育んできたグローバルなコラボレーションがあり、そして時代の流れにも乗れたことで、WiMAX 2+が結実したというわけです。もちろん、多くのお客様の存在も非常に大きいです。これからもWiMAXとWiMAX 2+をよろしくお願いします。
―ありがとうございました。