UQコミュニケーションズがモバイルインターネットのネクストステージに向けて動き出した。「ギガヤバ革命」をスローガンに「ネットのあらゆるストレスから人々をカイホー(解放)」するという。その戦略の概要を追いかけてみよう。
いよいよギガヤバ革命がスタート
1/15に東京都内で開催された発表会で、UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂章雄氏は、1940年代の米国の通信会社の様子をビデオクリップで紹介、テレタイプによる当時のデータ通信が毎秒英単語60語程度だったのに対して、現代は、個人がギガを自由に、そして気楽に持ち出す時代になっていると切り出した。
そこまでさかのぼらなくても、たとえば日本において、電気通信事業法によって個人がパソコンを自由に通信に使ってもよくなった1985年当時、一般的なデータ通信速度は理論値300bpsだった。それが今、30年が経過して、たとえば今回のUQはWiMAX 2+で220Mbpsを実現しようとしている。計算すると、300bpsの約70万倍と、びっくりするような数字がはじき出される。
UQコミュニケーションズが、40Mbpsのスピードをひっさげてモバイルシーンに颯爽と登場したのは6年前の2009年のことだ。以降、常に市場をリードし、その料金も業界のベンチマークとなるなど、同社はモバイルインターネットのリーダーとして君臨した。
2013年には、新たな周波数を獲得し、業界標準のTD-LTE準拠規格であるWiMAX 2+が登場、スピードは110Mbpsになった。今度はそれが、さらに倍の220Mbpsになるわけだ。「ヤ倍速」という表現にも頷ける。
野坂氏は、2014年前半はケータイ各社が新プランを出してきたことで、1GBあたりほぼ1000円という従量制的料金体系が定着してしまったことを指摘する。従量という言葉から想像できる通り、使えば使うほど料金が高くなるわけだ。
さらに、昨年後半はMVNOが低価格サービスを開始した。こちらはこちらで安いけれども自由に使えるデータ通信量が少なかったり、無制限だとしても速度が遅かったり、実効速度が不安だったりするとし、ユーザーをこうした不安から解放したいというのが同社の考えだ。
つまり、UQは、速度と通信量のジレンマから顧客を解放する。それが、ギガヤバ革命のマニュフェストだ。
2つの方法でWiMAX 2+を倍速化
「ギガヤバ革命」のネーミングは、「ヤ倍速」と「ギガ放題」の合わせ技で推進されることに由来する。
まずは「ヤ倍速」。
これまで110MbpsだったWiMAX 2+のスピードが、倍速化され220Mbpsに達する。UQが提供するサービスには、WiMAXとWiMAX 2+があるが、両者は基本的な通信方式が異なる。WiMAXのスピードは40Mbpsで、WiMAX 2+の110Mbpsの半分以下である。
通信のスピードは、ブロードバンドといった言葉から想像できるように、「バンド幅」で表現されることが多い。これは、早い話が高速道路の車線のようなものだと考えればいい。無線通信の場合は、占有する周波数の範囲が道路の幅に相当する。
つまり、広い道を効率のいいクルマで走れば結果として大量輸送が可能になるというのが原則だ。大量輸送実現のため、UQはテクノロジーの進化により、今となっては効率が悪くなってしまっているWiMAXが占有している周波数帯を縮小し、効率のいいWiMAX 2+で使える周波数帯を増やすことにした。
本来は110MbpsのWiMAX 2+を倍速化する方法として、UQは2種類の手段を提供する。
ひとつはキャリアアグリゲーション(CA)。これは、WiMAX 2+通信を2つの周波数帯で併行して行うことで倍速化する方法だ。今、携帯電話事業各社のネットワークにおいて、LTE通信での採用が進んでいる方法で、UQでは2/12の栃木県真岡市でのサービスインを皮切りに、順次全国に展開する予定としている。
もうひとつの方法が4×4 MIMOだ。こちらは、基地局と端末の双方が複数のアンテナを使うことで通信の効率化を果たす。今回、UQがモバイル通信として初の商用化を実現した4×4 MIMOは、4つのアンテナを送受信側に実装して220Mbpsを実現する。こちらはすでに基地局の準備は整っており、この3月のある日、全国でほぼいっせいに機能が有効になり、対応端末ならその日を境に4×4 MIMOでの最大220Mbpsの通信が可能になる。
これらの新技術に対応する新しいモバイルルーターは、今回2機種が追加される。ファーウェイ製「W01」がCA対応機、NECプラットフォームズ製「WX01」が4×4 MIMO対応機だ。これらの端末には「Speed Wi-Fi NEXT」というブランドが冠される。同社ではWiMAXのユーザーに、効率のいいWiMAX 2+へと移行してもらうべく、この2機種を、従来のWiMAX 2+端末からの無償交換プログラム「WiMAX 2+史上最大のタダ替え大作戦」の対象としても提供する。
カンのいい読者はもうおわかりだと思うが、将来的には、この2つの手段を併用することで、速度はさらに倍の440Mbpsになる。これは2016年以降に実現とのことだが、要は端末の対応を待つだけともいえる。
UQが持つ合計50Mhzの周波数帯は、バラバラではなく、完全に連続した帯域で、それがギガヤバ革命の核となっている。今回、これまでWiMAXのための帯域となっていた30MHz帯のうち20MHz帯をそのままWiMAX 2+に移すことでCAによる220Mbps化が実現可能になったように、連続した帯域をフル活用することで、この先の「ヤ倍速」を進めていくことができる。UQが持つ連続50MHzの周波数帯と、UQの技術により、2020年までには1Gbpsを目指す―それが、今回発表された高速化計画だ。
そして、高速化は「単に速くなる」ことを意味するのではない。速度が速くなるということは電波利用効率が上がることで、より多くのトラフィックを捌いていくことが可能となる。WiMAXの代名詞である「使い放題」をWiMAX 2+で実現しえたのも、50MHzを有効利用できることが背景にある。
「使い放題」も健在、ストレスのないデータ通信
どんなに高速なネットワークでも、ユーザーの利用できるデータ通信量に制限があっては興醒めだ。だがUQは革命の名に恥じず「ギガ放題」を高らかに宣言した。
「ギガ放題」は、WiMAX 2+対応の新料金プランで、4380円/月でデータ通信量月間上限なしのサービスを提供するというものだ。7GB上限のプランも併行して提供され、こちらは3696円/月となっている。体感期間として、加入から3カ月間はギガ放題でも従来プランと同額、以降は月単位で何度でも見直しができ、プランを相互に行き来できるようになる。
仮に実効速度を100Mbpsだと仮定しても、約36GB/時のスピードだ。天井なしの通信量は、まさにストレスのないデータ通信をかなえてくれるはずだ。ただし、3日間あたり3GBを超える通信をした場合は速度制限の対象になる。この点について野坂社長は、規制下においてもYouTubeを標準画質で観るのに支障のない程度の速度は維持されると話した。また、この規制も3日間あたりの通信量が3GBを下回った時点で解除される。うまく使えば、まさに無制限そのものだ。
UQが抱える基地局は、現在約22,000局。現在、ギガヤバ革命を成功させるべく突貫で 工事が進行中だ。2015年3月末には、WiMAX 2+のエリアがWiMAXに追いつく。これまでWiMAXでつながっていたエリアは、ほぼ全国、超速エリア化するわけだ。
以上が、ギガヤバ革命の概要だ。この革命が実現しようとしている、1Gbpsにも及ぶ速度や使い放題などが本当に必要なのか、首をかしげる人もいるかもしれない。しかし、インターネットとデバイスがますます不可分になる時代において、この2つは不可欠になってくる。今でも多くのユーザーが月に数GB、もしかしたら数十、数百GBのモバイルデータをネット動画やクラウドストレージでやりとりしている。この数字も、スマートデバイスだけではなくPCまでもがクラウドと一体化していくことで、さらに増えていくだろう。
本連載では、この「革命」について、数回にわたって継続的に追いかけていく。端末のこと、新プランのこと、エリアのこと、基地局のこと、技術のこと、そしてこれからのことなど、知りたいことはたくさんある。順次レポートしていくので、どうかご期待いただきたい。
(Reported by 山田祥平)
関連リンク
- UQ WiMAX ホーム - 超高速モバイルインターネットWiMAX2+
- http://www.uqwimax.jp/
- WiMAX 2+ 新サービス・新デバイス発表会
- http://www.uqwimax.jp/lp/220m/