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サン山本氏、サーバー戦略を語る
「メインフレームユーザーも納得できるシステムを提供する」


 「いつ64ビットに移行するか?」エンタープライズサーバー市場におけるCPUプラットフォームが今、注目を浴びている。先日、インテルが64ビットCPU戦略の変更を発表し、同社のCPUを使った各サーバーベンダーは、戦略の変更を余儀なくされている。そんな中、2003年11月にAMDとの戦略的提携を発表したサン・マイクロシステムズ(以下、サン)は、新CPU「UltraSPARC IV」を搭載したエンタープライズサーバーと、Opteronを搭載したローエンドサーバーを2004年2月に投入した。両分野において一気に巻き返しを狙う同社プロダクト&ソリューションマーケティング本部 本部長の山本恭典氏に今後のサーバー戦略について伺った。


■UltraSPARC IVとSolaris 10の組み合わせでメインフレームからの移行を促進する


プロダクト&ソリューションマーケティング本部 本部長 山本恭典氏
 サーバー市場を区分けするとき、主にWebサービスなどを提供する1~4CPUのフロントエンドサーバー、アプリケーションなどを実行する8CPU程度のミッドレンジサーバー、そしてデータベースなどを実行する12CPU以上のハイエンドサーバーの3層構造で語られることが多い。しかし、最近では、スケールアップ(垂直統合型)とスケールアウト(水平分散型)の2つに分けて考えられるようになっている。山本氏はこのことについて、「サンでは3年前からスケールアップの製品をエンタープライズプロダクト、スケールアウトの製品をボリュームプロダクトと呼んで取り組んできている」と、市場の変化に先駆けて対応してきた点を強調する。

 それでは、それぞれの製品に対し、サンはどう対応しているのだろうか。「スケールアップを求めるユーザーの考え方は、小さなサーバーをたくさん入れるくらいなら、それらをまとめて大きなサーバーをひとつ入れましょうというもの。これには、今回発表されたCMT(チップマルチスレッディング)技術を採用したUltraSPARC IV搭載のエンタープライズサーバーを投入する。これに対して、箱ごとに保守が行えるよう、ブレードサーバーや1Uのラックサーバーを入れて、グリッドエンジンなどでCPUをシェアして使おうというユーザーもいる。これには、今回発表したOpteron搭載の1Uサーバーやブレードサーバーなどを投入する。こうした対応ができるのも、早い段階からスケールアップ・スケールアウトという考え方で製品を開発してきたおかげ」と、山本氏は説明する。


■CMT技術により、スループットが2倍に向上したエンタープライズサーバー

 2月に発表されたUltraSPARC IV搭載のエンタープライズサーバーはどういった特徴があるのだろうか。山本氏は「Sun Fireエンタープライズサーバ」について、「CMT技術を採用したUltraSPARC IVの搭載により、膨大なトランザクション処理にも対応することができる」と話す。


CMTのイメージ。メモリ待ち時間の間に別のスレッドの処理を行う。UltraSPARC IVが同時に扱うスレッドは2つ

Sun Fire エンタープライズサーバ E20K/E25K
 サンでは、CPUの処理性能を表すのに、周波数だけでなく処理系の数と稼働率をかけた値をスループット(実行処理の総量)と呼び、性能を評価する基準としている。UltraSPARC IVに実装されたCMTとは、高速なCPUの処理速度と比較的低速なシステムバスの速度の違いから発生するメモリ待ち時間を利用し、1CPUあたり2つのスレッドを同時に処理することを可能とする技術で、既存製品の2倍のスループットを実現するという。山本氏は、「今回発表した製品は、既存製品とほぼ同じ価格となっているので、価格性能比では2倍になった」と説明する。

 UltraSPARC IV搭載サーバーに適した用途として、山本氏は「例えば金融機関で使われる勘定系システムなどが考えられる」と、これまでメインフレームが使われている分野での利用を目指していると話す。

 基幹業務システムについては、コスト負担の大きいメインフレームからオープンシステムへの移行を検討するユーザーが多い。最近では勘定系システムにWindowsを採用した金融機関や、Linuxを使ったシステムを発表するベンダーなどの例があるが、山本氏は「オープンシステムでLinuxが注目されているが、現時点で基幹業務に安心して使えるかというと不安だという声がある。そうすると、信頼性や実績からUNIXが主役であることは間違いない」と断言する。


■大規模システムを支えるSolaris 10

 サンのUNIXといえば、Solarisがすぐに思い浮かぶ。では、Solarisはどの程度の信頼性があるのだろうか。山本氏は、「Solaris 10では、従来基幹業務用途として求められてきたサービスレベルでのリスタートやエラーチェックなどの機能が追加される。UltraSPARC IVとSolaris 10の組み合わせにより、オープンシステムでメインフレームとほぼ同等レベルまでの性能と信頼性を実現する」と話す。

 2004年の秋に正式リリースを予定しているSolaris 10の特徴のひとつに「N1 Gridコンテナ」という機能があげられる。これはシステム内にZoneと呼ばれる仮想のSolarisシステムを持てる仕組みだ。これにより、1つのシステムで複数のブレードサーバーが稼動しているのと同じ仕組みができあがる。また、障害を予測し自己修復する「セルフヒーリング機能」や問題箇所を追跡する「ダイナミックトレース機能」により、システムの安定性能が大幅に改善している。「これらの機能は、メインフレームを重視している人に対し大きくアピールできる点。これらの仕組みがあれば、バッチ処理が実行できないなどシステムが不安定な状態になるのを事前に予測し、不安定なZoneのみリブートするだけでシステム全体の安定性は確保できる。つまり、システム全体が落ちるということが限りなくゼロに近づけられる。UltraSPARC IVとSolaris 10の組み合わせにより、オープンシステムでメインフレームとほぼ同等レベルまでの性能と信頼性を実現する」と、メインフレームに求められる“絶対落ちない”環境をUltraSPARC IVとSolaris 10との組み合わせで再現できる点を強調する。「現在13,000台あまり稼働しているメインフレームのリプレースに加えて、新規導入ユーザーの取り込みにも力を入れていく」と意気込みを語った。

 また山本氏は、別の面からもサンへの注目度が高まっていることを説明する。「まず、これまでCOBOLやVisual Basicなどを利用してきた開発者が、新たにJavaを使い始める例が多いこと。さらに他社の64ビットCPUの方向性が不明確であったり、従来との互換性に問題があることなどが挙げられる」。こうした要因から、これまで「新しいもの好き」が中心だったサンのユーザー層が、それ以外のユーザー層にも広がっているとのことだ。


■32ビットアプリを動かしながら64ビット化を推進


Sun Fire V20z
 一方、スケールアウトはどうだろうか。同社は2月にOpteronを搭載した2Wayサーバー「Sun Fire V20z」を発表したが、山本氏によると6月に同じくOpteronを搭載する4Wayサーバーを、年内中には8Wayサーバーやワークステーションの発売も予定しているとのことだ。

 山本氏は「32ビットアプリケーションを動かしながら、徐々に64ビット化が進めたいというニーズが大きい。ローエンドサーバー市場は、これから64ビットへの移行が本格的に始まる」と分析する。このため今後もOpteronを搭載した製品中心のラインアップで展開していくことは間違いない。

 しかし同社はこれまでUltraSPARCプラットフォームを中心に展開してきており、x86での実績が薄いのではないかという指摘もある。山本氏はこれについて「確かにx86ベンダーの中では後発」とした上で、「ただしそれは32ビットプラットフォームの話で、64ビットでは他社に先駆けて取り組んでいる。サンは32ビット互換の64ビットソリューションが最もそろっているベンダーだと自負している」とあくまで強気だ。

 同社は1月にRed Hat LinuxやSuSE Linuxの販売を発表しており、秋ごろにはx86・64ビット版のSolarisの発売を予定している。また、ブレードサーバーなど並列化されたサーバーを制御するソフトウェアとして「N1 プロビジョニングサーバー」を提供しているほか、グリッドコンピューティング環境を実現する製品も一部提供が始まっている。

 Sun Fire V20zは価格をサーバーとしては異例のオープンプライスとしたことも話題を呼んだ。山本氏は「他社の価格戦略に対抗するための手段」と明かし、「サンには『ルールを変える』、『イノベーションを起こす』という企業風土が根付いている。製品でも戦略でも他社より先行したものを打ち出していく」と語った。


(編集部)
2004/03/10 12:00



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