今回は番外編として、多数のラインアップを揃える「ReadyNAS」からビジネス環境にマッチする機種を選ぶにはどうすればいいか、紹介していきます。
自社のビジネスシーンに合った最適なNASは? 目的別に整理するReadyNASの最新ラインナップ
2015.4.1 清水理史
新年度に向けたストレージ環境の強化を
前回、個人向けのNASのラインナップをシーン別に整理したが、同様に、今回はビジネス向けReadyNASのラインナップを用途ごとに整理していくことにしよう。
ネットギアが販売している、ビジネス向けのNASは、大きくラックマウントとデスクトップの2タイプに分けられる。前者は、データセンターなどでの利用を想定した製品でなっており、非常に高い性能と大容量が要求される環境に対応できる。
一方のデスクトップタイプは、オフィス内に設置するNASで、個人事務所から大企業まで幅広いシーンで活用できる製品だ。ファイルサーバとしてはもちろんのこと、基幹業務向けのサーバや仮想環境のストレージとしても活用可能となっており、用途によってさまざまな活用ができるようになっている。
今回、ラインナップを整理するのは、後者のデスクトップタイプだ。新しい事業年度を迎えた企業も多いだろうが、人員の整理や業務の見直しなどと共に、自社の用途に合ったReadyNASを導入することで、ストレージ環境も一緒に見直してみてはいかがだろうか。
300/500/700の大きなラインナップを整理
デスクトップタイプのReadyNASは、大きく300/500/700という3つのシリーズに分類される。各シリーズの特徴は以下の表の通りだ。
機種 | ReadyNAS 300 | ReadyNAS 500 | ReadyNAS 700 |
---|---|---|---|
CPU | Intel Atom | Intel Core i3 | Xeon |
メモリ | non ECC 2GB | ECC 4GB | ECC 16GB |
LAN(Gigabit) | 2 | 2 | 2 |
LAN(10G) | - | - | 2 |
eSATA | 1 | 3 | 3 |
拡張ユニット(EDA500対応) | ○ | ○ | ○ |
HDMI | 1 | 1 | 1 |
価格(税抜) | \110,000(1TB×2)~ \490,000(3TB×4) |
\800,000(3TB×6) | \660,000(ディスクレス) |
保証期間 | 5年 | 5年 | 5年 |
主な違いは、個人向けの製品同様に搭載されるCPUなどのハードウェア構成となる。上位のモデルになるほど、多くのアクセスに対応したり、さまざまな機能を高速に処理する必要があるため、CPUやメモリなどのスペックが高くなる。
たとえば、CPUに注目してみよう。ReadyNAS 300シリーズに搭載されているIntel Atomプロセッサーは、個人向けのNASでの採用例も多い一般的なCPUだ。このCPUでも、通常の用途であれば十分過ぎるほどの性能を発揮できるが、上位モデルのReadyNAS 500シリーズにはIntel Core i3、ハイエンドのReadyNAS 700シリーズにはクアッドコアのIntel Xeonが搭載されている。
これらは、ビジネスシーンで求められるより高度な機能に対応するためのものだ。単純に多くのアクセスを処理するのはもちろんのこと、データを暗号化したり、同期処理を実行したり、Webサーバやデータベースサーバなどの機能を使ったりと、NASにさまざまなタスクを実行させても、高性能なCPUが搭載されていれば、日常業務の妨げにならない。
メモリも同様に、高度な処理のために上位モデルになるほど大量に搭載されるが、注目すべきは500と700にはECCメモリが搭載される点だ。エラー訂正機能を搭載することで、データの信頼性を確保できるようになっている。
ビジネスシーンでは、単純なパフォーマンスはもちろんだが、安定性や信頼性という点が、それ以上に重視される。このため、Xeonのようなサーバ向けのCPUやECCメモリが搭載されていることになる。
このほか、各モデルで大きく違うのは、LANポートになるだろう。全シリーズとも冗長性を考慮して複数のLANポートが搭載されているのは当然だが、700シリーズには10G対応のポートがさらに2ポート追加されている。
文字どおり、10Gは10Gbpsの通信が可能なインターフェイスだ。いくらNAS自体が高性能になっても、そこにアクセスするためのネットワークの帯域が狭ければ、性能を使い切ることができない。
そこで、ハイエンドのReadyNAS 700には、より高速な10G対応のLANポートが追加されているわけだ。
SOHOや中小企業には過剰なスペックと考える人もいるかもしれないが、3Dデータや動画データなど、大容量のデータをタイムラグなく扱うデザイン事務所などでは、ニーズの高い機能と言える。
一般的なNASでは、10Gはオプション扱いになっているケースもあり、NICの取り寄せに時間がかかったり、装着の手間がかかることがあるが、ReadyNAS 700であれば標準で搭載されるため、すぐに環境を整えることができるのがメリットだ。
このほか、ラインナップ全般に言えることだが、ReadyNAS 700以外は、ハードディスクが標準搭載のモデルがラインナップされているのもビジネス向けReadyNASの特徴と言える。個人向けのディスクレス製品と異なり、到着後にすぐに利用できるうえ、ディスクも含めて保証を受けることができる。
ここまで長期の保証を、ハードディスク込みで受けられるのは、企業にとっては大きなメリットと言えるだろう。
用途ごとのベストモデルを選ぶ
このように、ビジネス向けとなる各モデルの特徴を整理してみたが、実際に購入する場合は、より詳細な検討が必要になる。用途ごとにReadyNAS 300/500/700シリーズからベストなモデルを考察していこう。
用途1:個人事務所などのデータ保存やリモートアクセスに
自宅をオフィス兼用にしている人や個人事務所を開設している人、小規模な会社を経営する人にとっては、リーズナブルな価格でありながら十分な容量とパフォーマンスを備えたReadyNAS 312がオススメだ。
機種 | RN31222E |
---|---|
価格(税抜) | ¥135,000 |
CPU | Intel Atom 2.1GHz デュアルコア |
メモリ | 2GB |
ドライブベイ | 2 |
RAIDレベル | JBOD/0/1/X-RAID2 |
搭載HDD | 2TB×2 |
最大容量 | 8TB |
LAN(Gigabit) | 1 |
LAN(10G) | ― |
sSATA | 1 |
USB | USB 2.0 x 1/USB 3.0 x 2 |
HDMI | 1 |
消費電力(動作時/待機時) | 35W/627mW |
ステータスディスプレイ | × |
サイズ D×W×H(mm) | 220 x 101 x 142 |
重量(kg)※本体のみ | 2.22 |
保証期間 | 5年 |
コンパクトなサイズで設置場所に困らない製品でありながら、2.1GHzのデュアルコアIntel Atomを搭載しており、高いパフォーマンスを実現可能な製品となっている。搭載可能なハードディスクが2台となるため、容量や設定できるの種類(RAID1)は限られるが、2TB×2のRN31222Eなどを選んでおけば、文書を中心としたデータの保存やPCのバックアップであれば、まったく不足はない。
ReadyNASならではのクラウド機能である「ReadyCLOUD」を活用することで、出張中や営業先への訪問時も社内のデータにアクセスできるようになる。たとえば、急なビジネスチャンスに巡り合っても「後ほど資料やデータを送ります」というもったいないシーンもなくなるし、急に必要となった資料を社内の人にアップロードしてもらえば、チャンス獲得の確率も高まるだろう。また、取引先とのデータのやり取りに活用することもできるし、外出中に大切な資料やデータを入れたUSBメモリが壊れたり紛失するリスクもなくなる。
このほか、遠隔地の営業拠点や全国に点在する店舗などに設置するのもよい選択だ。データの同期機能を使って、本社と拠点で同じデータを扱えるようにすることもできる。単なるデータの安全な保管場所としてだけでなく、業務の幅も広がるし、効率を高めることにも役立つだろう。
用途2:小規模オフィスの情報共有に
複数のユーザーでの利用を想定している場合は、最低でも4ベイクラスのNASを選んでおきたい。法人向けのラインナップから選ぶとすれば、ReadyNAS 314 RN31442Eが妥当な選択肢となるだろう。
機種 | RN31442E |
---|---|
価格(税抜) | ¥370,000 |
CPU | Intel Atom 2.1GHz デュアルコア |
メモリ | 2GB |
ドライブベイ | 4 |
RAIDレベル | JBOD/0/1/5/6/10/X-RAID2 |
搭載HDD | 2TB×4 |
最大容量 | 16TB |
LAN(Gigabit) | 2 |
LAN(10G) | ― |
sSATA | 2 (1つは USB/eSATAコンボ) |
USB | USB 2.0 x 1/USB 3.0 x 2 |
HDMI | 1 |
消費電力(動作時/待機時) | 49W/842mW |
ステータスディスプレイ | ○ |
サイズ D×W×H(mm) | 223 x 134 x 205 |
重量(kg)※本体のみ | 3.97 |
保証期間 | 5年 |
4ベイであれば、RAID5など冗長性と容量のバランスが取れた構成が可能になるので、2TBハードディスクで6TB、3TBなら9TBの容量を確保することができる。複数台のPCのデータをバックアップするのに十分な容量を確保できるだけでなく、最近ではビジネスシーンで写真や動画などのデータを扱う機会も多いことを考えると、大容量は魅力だ。
また、スタートアップ企業など、最初は小規模でも将来的な成長が見込める企業にも適している。たとえば、最初は1TB×4のRN31441E(270000円)を導入し、データ容量が増えてきた時点でハードディスクをより大容量のものへと交換するといったことができるうえ、別売りの拡張ユニット(EDA500)を使って容量を拡張することもできる。何よりも設定や管理が簡単なので、専任のIT管理者をおけない環境でも使えるのも魅力だろう。
もちろん、ReadyNASシリーズは全モデルで基本的に同じソフトウェアを採用しているため、リモートアクセスや拠点間の同期などの機能も利用可能だ。オフィスでの利用という点では、VPNサーバ機能で安全に外出先からオフィスに接続できるのも大きな魅力だろう。複数案件を同時進行する場合には、当然、案件ごとにパートナー企業や社外スタッフとの共同作業が発生することも多くなるだろうが、そんな場合には案件のフォルダごとにアクセス権を割り当てておけば、それぞれの関係者も外出先からアクセスできるようになる。
4ベイクラスのNASは、さまざまなメーカーが製品を提供する競争の激しい市場だが、ReadyNASは、その中でも長期の5年保証といったアドバンテージを備えているのが特徴だ。将来的な企業の成長に十分対応できる基本性能と長く使える安心感を兼ね備えたNASと言えるだろう。
用途3:中小企業や部門サーバに
数十名前後のユーザーをかかえる中小企業や大企業の一部署での利用を想定しているのであれば、より高性能かつ、信頼性の高い製品を選ぶ必要がある。そういった意味では、ReadyNAS 516の利用が適しているだろう。
機種 | RN51663E |
---|---|
価格(税抜) | ¥800,000 |
CPU | Intel® Ivy Bridge Core i3-3220 3.3GHz デュアルコア |
メモリ | 4GB ECC |
ドライブベイ | 6 |
RAIDレベル | JBOD/0/1/5/6/10/X-RAID2 |
搭載HDD | 3TB×6 |
最大容量 | 24TB |
LAN(Gigabit) | 2 |
LAN(10G) | ― |
sSATA | 3 |
USB | USB 2.0 x 1/USB 3.0 x 2 |
HDMI | 1 |
消費電力(動作時/待機時) | 88W/798mW |
ステータスディスプレイ | ○ |
サイズ D×W×H(mm) | 287.5 x 192 x 259 |
重量(kg)※本体のみ | 7.97 |
保証期間 | 5年 |
6つのベイを搭載したReadyNAS 516であれば、2ベイや4ベイのモデルよりも多くの容量を確保できるだけでなく、RAID6構成での利用も現実的となる。RAID6では、最大で2台のハードディスクの故障にも耐えられるのが特徴だ。RAID5の場合、1台のハードディスクが故障した際のリビルド中に別のハードディスクが故障するといったケースも考えられるが、RAID6であれば、こういったケースでもデータを保護できる。
メモリもエラー訂正機能を備えたECCメモリとなっており、データをワンランク上の環境で保護できるのがメリットだ。
CPUもIntel Core i3を搭載することで、高い負荷がかかる環境でも快適に利用できるようになっている。同じ6ベイの製品としては、前述したReadyNAS 300シリーズのReadyNAS 316も存在するが、より安全で、より確実で、そしてより快適なストレージ環境を望むのであば、このReadyNAS 516が適しているだろう。
用途4:中規模以上の企業や基幹業務に
ユーザーが数百にもなる大規模な環境での利用には、ハイエンドのReadyNAS 716Xが適しているだろう。Intel Xeonプロセッサを搭載しているのはもちろんだが、メモリも標準で16GBも搭載しており、潤沢なリソースを活用できる高性能な1台となっている。
機種 | RN716X |
---|---|
価格(税抜) | ¥660,000 |
CPU | Intel® Xeon Ivy Bridge E3-1265Lv2 2.5GHz クアッドコア |
メモリ | 16GB ECC |
ドライブベイ | 6 |
RAIDレベル | JBOD/0/1/5/6/10/X-RAID2 |
搭載HDD | ディスクレス |
最大容量 | 24TB |
LAN(Gigabit) | 2 |
LAN(10G) | 2 |
sSATA | 3 |
USB | USB 2.0 x 1/USB 3.0 x 2 |
HDMI | 1 |
消費電力(動作時/待機時) | 96W/800mW |
ステータスディスプレイ | ○ |
サイズ D×W×H(mm) | 288 x 192 x 259 |
重量(kg)※本体のみ | 7.97 |
保証期間 | 5年 |
通常のGigabit Ethernetに加え、10Gbps対応の10Gポートも標準で2ポート搭載しており、大量のアクセスが集中するようなケースでも高いパフォーマンスを維持し続けることができる。もちろん、10Gの性能を活かして、ファイルサーバとしてだけでなく、iSCSIを利用して既存の業務サーバのストレージや仮想環境のストレージとして活用することも可能だ。
eSATAポートを3ポート搭載しており、拡張ユニットのEDA500利用時で、最大84TB(4TBハードディスク使用)もの大容量に対応することもできる。部署横断の大型プロジェクトなどが発生しても安心して使える。
これまでのモデルと異なり、ディスクレスモデルとなるため、別途、ハードディスクの購入が必要になってしまうが、かなり大規模な環境にも対応できる魅力的な製品と言えるだろう。
共通OSで「できること」はどのモデルも共通
以上、ReadyNASシリーズのビジネス向けラインナップを紹介しつつ、具体的な用途ごとにオススメのモデルを紹介してきた。あくまでも一例に過ぎないが、自社のビジネスにあったストレージ環境を構築する際の参考になれば幸いだ。
なお、今回紹介したモデルに限らず、ReadyNASシリーズには、すべてReadyOSと呼ばれる共通のOSが搭載されている。このため、用途1などで紹介したReadyCLOUDなどの各種機能も、基本的にどのモデルでも利用可能だ。アプリを追加することで、データベースやグループウェアなど、さまざまな機能を追加できるのも、ビジネス向けのNASとしては大きな魅力と言えるだろう。
(Reported by 清水理史)
関連リンク
- ReadyNAS 製品情報
- http://www.netgear.jp/business/nas