ただの2台セットじゃない! ホームWifiをメッシュで管理
大量機器や移動機器の接続も快適なネットギア「Orbi」
2016.11.16 清水理史
これまでのルーターとは一線を画すデザイン
家庭内無線LANもエリア設計が求められる時代に
単一のアクセスポイントで、可能な限り電波を飛ばし、エリア内のクライアントを集中管理する――。
家庭内の無線LANで主流だった従来の単一ネットワークの設計思想に、どうやら限界の時が訪れることになりそうだ。
通信規格の高速化や機器の高性能化によって、無線LANルーターは、その通信速度や通信範囲、収容可能なクライアント台数を増やしてきたが、モバイル機器の普及や家電のネットワーク化が急速に進んだことで、家庭内の特定の部屋で通信できなかったり、接続機器が多すぎて十分なパフォーマンスが実現できないなどの課題が見え始めている。
もちろん、今後も無線LANの速度や機器の性能は向上を続けるうえ、通信範囲を広げるためのソリューションとしての「中継器」のニーズも高まっている。
しかしながら、時代はもはやスピードと通信範囲だけでは解決できない状況になっている。
スマートフォンやタブレットはもちろんのこと、テレビやSTB、照明やスマートロック、温度や湿度、ドアの開閉などを検知する各種センサーなど、無線LANを利用する機器は飛躍的に増えている。ある調査結果では数年内に家庭内で無線LANにつながる機器が100を超えるだろうと予想されているが、実際、今の段階でも数十の機器がつながっているケースは決して珍しくない。
家庭内のWi-Fi機器は今後もますます増加すると予想されている
しかも、単に機器が増えるだけではなく、これらの機器のうちのいくつかの機器、たとえばスマートフォンやタブレット、スマートウォッチなどは、特定の位置に留まることなく移動しながら通信する可能性がある。
こういった機器に快適な通信環境を提供するには、既存の中継器のソリューションでは対応できない。たとえば、移動で接続先のSSIDが変更されるたびに接続と切断が繰り返されたり、エリアの判定が子機任せになるため中継器の範囲にあるのになぜか遠い親機側の電波をつかんでいたりする場合がある。
実は、このような状況は、すでに企業のネットワークでは課題として認識され、その対策も進んできた。多くの機器、移動する機器への対策として、フロア内に複数台のアクセスポイントを設置し、各アクセスポイントをコントローラーで管理しながら、エリアごとに周波数を使い分けたり、移動する端末がローミングできるようにしてきた。
街中の携帯ネットワークのように、もはや複数の基地局を活用し、それぞれを協調させながら利用することが求められているが、それと同じ状況が、いよいよ家庭内の無線LANにも訪れたというわけだ。
ただの2台セットじゃない連携する「Orbi」
とはいえ、このようなエリア設計やコントローラーを利用した設定を一般的な家庭ユーザーに求めるのは、あまりにも酷だ。
Orbiは連携するのが特徴
そこでネットギアが新たな提案として発表したのが、今回の「Orbi」だ。一見、照明や加湿器などのデザイナー家電を思わせるようなイメージの製品だが、中身はトライバンド対応のIEEE802.11ac(1733Mbps@5GHz+833Mbps@5GHz+400Mbps@2.4GHz)に対応した無線LANルーターとなっており、ルーターとサテライトの2台がセットで提供されるのが最大のポイントだ。
この2台は、出荷時設定でペアとして構成されており、ルーターとサテライト間は1733Mbps(5GHz)で接続済みとなっている。
ここまでであれば、従来のルーターとイーサネットコンバーターのセットモデルでもあった構成だが、Orbiが画期的なのは、前述した企業向けのコントローラーと同様に、ルーターとサテライトが連携して動作する点だ。
具体的には、以下のようなメリットがある。
・1つのSSIDで運用ルーター、サテライトともに同じSSIDで運用できるため、クライアント側の接続設定がシンプル。また、クライアントがルーターとサテライト間で接続先を切り替えたとしても、切断されることなく、シームレスに接続先が変更される。
・チャネルを自動的に調整クライアントが接続する833Mbpsの5GHz帯と400Mbpsの2.4GHz帯のチャネルをルーターとサテライトのそれぞれで重ならないように自動的に調整可能。チャネルが重なることによる速度低下などを防止できる。
・クライアントの移動を管理移動するクライアントの場合に、ルーターとサテライトのどちらに接続したほうがいいかを判断したり、現在、どちらに接続されているかという接続情報をネットワーク全体で把握できる。
Orbiの接続イメージ
同様の発想の製品としては、先日発表されたGoogle Wifi、海外で発売されているeeroなども存在するが、Orbiが優れているのはルーターとサテライト間が最大1733Mbpsで接続される点だ。
他社製品では833Mbpsが上限となるところ、Orbiではルーターとサテライトの基幹部分が2倍の1733Mbpsで接続されるため、高い転送速度が実現できるのはもちろんのこと、複数クライアントの通信が集中しても高い速度での通信ができることがメリットとなっている。
また、ルーター、サテライトともに背面に有線LAN用のポートも備えているため、1Gbpsの有線をブリッジするような使い方でも十分な帯域を確保することも可能だ。高画質なビデオ伝送なども、Orbiなら十分に対応できるだろう。
設置も簡単! 色で状態を判断可能
設置の手軽さもOrbiの特長のひとつだ。前述したように、ルーターとサテライト間の接続は出荷時に設定済みのため、基本的にはルーターを回線の近く、サテライトを別の部屋や廊下など、離れた場所に設置し、スマートフォンなどから設定画面を表示して数タップで設定するだけでいいという。
もちろん、効率的に2つのアクセスポイントを機能させるには、サテライトをどこに設置するかが重要になるが、Orbiではルーターとサテライト間の通信状況に応じて、サテライト本体上部のLEDが色分けされて表示されるようになっている。具体的には、ブルーは快適、アンバーは普通、マゼンダは接続不可を示すようになっている。
本体上部の色で接続状況がひと目でわかるとのこと
また、コンセント直結の中継器と異なり、約2mほどのACアダプタを利用して設置場所を自由に決められる点もOrbiのメリットと言える。
上記のLEDで通信状況を確認した際、必ずしも最適な通信ができる場所にコンセントがあるとは限らない。中継器の場合は、この時点で製品の実力をフルに発揮させることができなくなるが、設置場所の自由度が高いOrbiなら、通信状況を優先して設置場所を決めることを難しくないだろう。
ACアダプタ
このほか、将来的には本体背面のUSBポートを利用したストレージ共有が可能になるなど、豊富な機能も備えており、ホームネットワークの活用という意味でもメリットのある製品となっている。
背面のUSBポート。Syncボタンを押すと、ルーターとサテライトがシンクロされる
発売が楽しみ
以上、ネットギアから発表されたOrbiを事前に見せてもらった。現状は発売前の製品となるため、電源を入れたり、通信している様子を見ることはできなかったものの、その斬新なコンセプトに驚かされた。
本体サイズが若干大きいが、アンテナが内蔵(しかも6本)されているおかげでスッキリとしたスタイルとなっているため、リビングや廊下などに設置しても違和感がないのはメリットと言える。
価格は、セットで4万円前後ほどが予定されているが、最大1733Mbpsでルーターとサテライトが接続されるトライバンド対応である点を考慮すると、結果的により高速で、しかも多くの機器を接続可能になるため、コストパフォーマンスは高いと言える。
海外のような広い住宅では多くのサテライトを設置する必要があるが、日本の住宅ならルーター本体と1台のサテライトで十分にまかなえるので、台数よりも、基幹の速度などの中身を重視して製品を選ぶ方がいいだろう。
今後、無線LANの主流はメッシュネットワークに移行すると考えられるが、その先駆けとして大いに注目される製品だ。
関連リンク
- Orbi先行予約
- https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01N8WS9MD/impresswatch-6-22/ref=nosim
- Orbi(アメリカ版サイト)
- https://www.netgear.com/home/products/networking/orbi/