SIMフリーのLTE対応モバイルルーター ネットギア「AirCard AC785」レビュー

2015.07.10 清水理史

ネットギアから3G/LTEに対応したモバイルルーター「AirCard AC785」が発売された。SIMフリーとなっており、MVNOなどのSIMを使って手軽に外出先での通信環境を整えることができる製品だ。さっそくその使い心地を検証した。

SIMフリーで自由に使える

MVNOなどの手軽な通信サービスを利用して、PCやタブレットなど、複数の端末で利用できるモバイル通信環境を整えたい――。

そう考えている人にとって、ネットギアから登場した「AirCard AC785」は魅力的な製品と言えそうだ。Amazon.co.jpなどの通販サイトを通じて、回線なしの本体のみで手軽に購入できるうえ、2015年7月時点の実売価格は17,800円とリーズナブルな設定になっている。

同様に通販サイトなどで手軽に入手可能なSIMフリーのモバイルルーターには、NECプラットフォームズのAterm MR04LNなどがあるが、価格的に見てもAirCard AC785の方が7,000円前後も安い。

もちろん、対応する無線LANの規格の違いやBluetoothサポートの有無など、機能的に同等ではないが、入手のしやすさを重視するのであれば、AirCard AC785は良い選択だ。

image AirCard AC785

NTTドコモのネットワークに対応

それでは、実際に製品を見ていこう。本体サイズは、109.9mm (長さ)×68.9mm(幅)×14.6mm(高さ)で、重量は127gとなっており、モバイルルーターとしては、ほぼ一般的なサイズ。少し大きい印象を抱くかもしれないが、カバンに入れたり、ポケットなどに入れて持ち歩くのには苦労しない適切なサイズとなっている。

デザインはマットなブラックとシルバーのツートン。シンプルな構成になっているものの、前面のディスプレイを囲むようにデザインされたピアノブラックの三角形のアクセントと、それに合わせて微妙な凹凸が表面に入れられており、なかなか凝った印象を受ける。

ボタンやコネクタは側面に配置されており、上部に電源ボタンと画面上の設定項目を選択するときなどに利用するナビゲーションボタンが配置され、下部に充電/PC接続用のmicro USBポートと2つのアンテナポートが用意されている。

image 正面
image 背面
image 上部
image 下部

注目は、スライドさせることで姿を現すアンテナポートだが、これはいまのところ使い道がない。先日掲載されたニュース記事「ネットギアの2.4/5GHz対応モバイルルーター「AirCard AC785」はクレードルも強烈、ただし国内発売は未定」で明らかにされたが、海外では「アンテナクレードル」が別途提供されており、このアンテナポートを使って、無線LAN、および4G/3Gの通信範囲を拡大できるようになっている。しかし、残念なことに、このアクセサリーは国内での提供は未定だ。

image いまのところ使用不可なアンテナポート

話が少し逸れたので、元に戻そう。通信に利用するSIMは、背面のカバーを取り外すことで装着できる。カバーを開け、2000mAhのバッテリーを取り外すと、Micro SIMスロットが姿を現すので、ここにSIMをスライドさせるようにして装着する。

対応するバンドは、国内では4G LTE(800/850/1500/1700/1800/2100MHz)と3G HSPA+(800/850/1700/2100MHz)で、基本的にはNTTドコモのネットワークに対応となっており、メーカーとして公式に対応しているネットワークはNTTドコモのみとなっている。

image 背面のカバーを取り外し、さらにバッテリーを取り外すとSIMを装着できる

動作確認済みのSIMカードも、同社の製品仕様ページから参照可能となっており、2015年7月時点では、パナソニック Wonderlink、DMM mobile、ぷららモバイルLTE、BIGLOBE、OCN モバイル ONE、IIJmio、NifMo、U-NEXT(U-mobile)、TNC(モバイル4G/D)が掲載されている。

スマートフォンからでも設定可能

実際の使い方は、さほど難しくない。回線とセットで提供されるモバイルルーターと異なり、SIMフリーの本製品では、利用する回線事業者に応じて「APN」と呼ばれる接続先の設定が必要になるが、PCやスマートフォンから設定可能だ。

image 利用するには、装着したSIMに合わせたAPN設定が必要

たとえば、スマートフォンから設定する場合の例を見てみよう。PCの場合はブラウザを使って設定できるが、スマートフォンから設定する場合は専用アプリを利用する。まずは、Google PlayやApp Storeから「AirCard」アプリをダウンロードしておこう。

ちなみに、AirCardアプリは、Android、iOS版に加え、Windows Phone版も用意される。国内での一般向け販売も開始されたうえ、次期Windows 10もモバイル版が利用できることを考えると、こういった幅広い機種への対応はうれしい限りだ。

image AirCardアプリを利用して設定ができる
image Windows Phone用アプリも提供される

アプリの準備ができたら、AirCard AC785に接続する。電源投入後、WPSなどを利用して無線LANでスマートフォンを接続する。

接続後、AirCardアプリを起動すると、本体の設定が可能になるので、「ネットワーク」設定の「APN」に、回線事業者から指定されたAPNやユーザー名、パスワードなどを設定すれば完了だ。

試しに、IIJmio、NTTドコモのSIMを使って設定してみたが、いずれも問題なく接続することができた。

image AirCardアプリ。各種設定に加え、電波状態やバッテリーの確認、本体電源のオフなどが可能

標準では2.4GHz接続

スマートフォンやPCを接続する無線LAN機能に関しては、2ストリームMIMO対応のIEEE802.11nで最大速度は300Mbpsとなる。標準では、2.4GHz側を利用する設定となっているが、本体画面を見ながらの操作、もしくは設定画面からの設定によって、5GHzに切り替えたり、2.4GHz/5GHzの同時利用に切り替えることも可能となっている。

image 標準では2.4GHzのみだが、2.4GHz/5GHzのデュアルバンドでも利用可能

この同時利用が可能という点は、まさに本製品ならではの特徴となる。一般的なモバイルルーターでは、2.4GHzと5GHzを排他で切り替える場合があるが、本製品では同時にどちらでも利用できる。

このため、接続する台数が多くなった場合でも、接続する端末を2.4GHzと5GHzに振り分けることで、トラフィックを分散させることができる。本体ディスプレイからの設定では、2.4GHz/5GHzともに同じSSIDとなってしまうが、設定画面を利用すれば「メインWi-Fi」と「セカンダリーWi-Fi」のSSIDを個別に設定できる。

この機能を利用すれば、たとえば、イベント会場などで利用者に提供するホットスポットとして利用する場合、登壇者などの開催者側は5GHz、参加者には2.4GHzを開放するといった使い分けが可能だ。

ゲストネットワークとして設定することで、本機を起動するたびに新しいWi-Fiパスワード(暗号キー)を自動生成することも可能となっているなど、他の製品にはないユニークな機能も備えている。

image メインとセカンダリーの2つのSSIDを設定可能。2.4GHzと5GHzを個別に割り当てることもできるうえ、ゲスト用に毎回暗号キーを変更することも可能

ただし、ひとつ注意したいのが5GHz帯の制限だ。本製品では、5GHz帯の利用できるチャネルが36/40/44/48のW52となっているが、この帯域は屋外で利用が禁止されている(屋外利用可能なのはW56)。自宅や会議室、イベント会場など、屋内で利用する場合は5GHz帯をフルに活用できるが、5GHz帯を有効にしたまま屋外に持ち出したり、屋外で5GHz帯を有効にすると違法になるので注意が必要だ。

また、本製品では、バッテリーでの駆動時間を延ばすために、標準では無線LANの電波出力が低く設定されている。LTEの感度を考慮して、少し離れた場所に本機を設置したいという場合もあるかと思われるが、そういったときは設定画面で「Wi-Fi」レンジを「レンジブースト」などに変更しておくといいだろう。

バッテリー駆動時間もまずまず

バッテリー駆動時間については、定期的にpingとHTTP GETを繰り返すテストを実施したところ、9:00〜16:24まで、連続で7時間24分の駆動を確認できた。公称値には及ばなかったが、2000mAhとモバイルルーターとしてはさほどバッテリー容量が大きくないことを考えると、7時間を超える実測値は悪くない結果だろう。これなら、朝夕の通勤時間帯に利用したり、日中に外出先などで通信するには十分と言えそうだ。

なお、標準設定では、画面の明るさが「明るい」に設定されていたり、通信中に全面のLEDを点滅させる設定が有効になっている。これらの設定を調整すれば、実稼働時間をもう少し延ばすことも可能だろう。

image LEDをオフにするなど省電力設定を工夫する余地はある

お買い得なモバイルルーター

以上、ネットギアのモバイルルーター「AirCard AC785」を実際に使ってみたが、リーズナブルな価格でありながら、基本設計がしっかりとしており、お買い得な印象だ。国内では、同社初のモバイルルーターとなるが、海外では通信事業者向けに機器を提供しているだけあって、なかなか完成度は高い。

個人的には無線LANがIEEE802.11n止まりである点が惜しまれるが、モバイル環境では無線LANだけが高速でも意味はない。むしろ2.4GHzと5GHzを同時に利用できる点や、ゲスト用に毎回違う暗号キーを自動生成できる点などを高く評価したいところだ。

MVNOのSIMの認知度が向上し、スマートフォンでの利用だけでなく、PCやタブレットなどさまざまな機器で利用したいというニーズが高まっていることを考えると、なかなか使い勝手のいい製品と言えそうだ。

(Reported by 清水理史)

関連リンク

ネットギア AirCard AC785 製品情報
https://www.netgear.jp/products/details/AC785.html
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