噂のトライバンド(5GHz×2+2.4GHz)機を先行体験 ネットギア「Nighthawk X6 R8000」
2015.03.18 清水理史
5GHz帯×2系統、2.4GHz帯×1系統のトライバンドに対応したネットギアの「Nighthawk X6 R8000」を同社のテストルームで先行体験することができた。トライバンドのメリットはどこにあるのか、買う価値があるのか、その実体に迫ってみた。
2台のアクセスポイントを1台に集約
イベント会場など、人の集まる環境でスマートフォンがつながりにくくなったり、極端に速度が低下したりする、そんな経験をしたことがある人も少なくないだろう。
似たような状況が、今、自宅の無線LANでも起こりつつある。
PCにスマートフォン、タブレット、ゲーム機、テレビ、デジタルカメラ、Webカメラなどなど・・・・・・。
ここ数年で、自宅の無線LANに接続する端末は飛躍的に増えてきた。ざっと数えても、10台、もしかすると20〜30台などという猛者もいるだろう。
もちろん、単につながるだけではない。スマートフォンのSNSのやり取りやオンラインゲームのデータが次々にやり取りされているかと思えば、PCがギガ単位のファイルをダウンロードしていたり、Webカメラによってリアルタイムに映像がストリーミング配信されていたりと、そのデータは大容量なだけでなく、ひっきりなしに電波で飛び交っている。
もちろん、その対策として、無線LANはIEEE802.11acなど、高速な規格へとアップグレードされてきた。単純にアクセスポイントと端末の間の速度が速くなれば、1台あたりが占有する通信時間は短くなる。
無線LANに限らず、電波を使った通信では、基本的に同一空間中に、同一周波数の電波で通信することはできない。家庭内の端末が通信する際は、他の端末が電波を発していないかをあらかじめチェックし、自分が通信できるまで待つことになる。
一見、複数台の端末が同時に通信しているかのように見えるかもしれないが、実際には非常に短い間隔で、各端末が順番に通信しているだけなのだ。
とは言え、こういった処理もさすがに、端末の台数が2桁になってくると、限界が見えてくる。
IEEE802.11acなのに思ったほど速度が出ない・・・・・・。ネットワークゲームなどで遅延が気になる・・・・・・。などというときは、同じアクセスポイントを共有している家庭内の機器が足を引っ張っている可能性があるわけだ。
とは言え、IoTなどというキーワードが叫ばれる中、今後、無線LANに接続する機器が増えることはあっても、減ることはあり得ない。
そこで登場したのが、ネットギアのトライバンド機「Nighthawk X6 R8000」だ。最大1300MbpsのIEEE802.11acに対応した無線LANルーターだが、その5GHz帯の無線LANアクセスポイント機能を、何と2系統搭載しており、2.4GHz帯と合わせて3系統のトライバンドに対応している。
イメージとしては、IEEE802.11ac対応の無線LANルーターを2台合体させたような製品と考えるとわかりやすいかもしれない。
前述したように、無線LANでは、同一空間中に同一周波数の電波を使って通信することはできない。しかし、周波数を変えれば話は別だ。
つまり、Nighthawk X6 R8000では、2系統ある5GHz帯で、片方は36ch〜48ch(W52)、もう片方は52ch〜64ch(W53)といったように、周波数を分けることができるわけだ。
別々の周波数なら同時に通信することはまったく問題ない。こうすれば、1系統に10台、もう1系統で10台と、端末を振り分けることで、大量の端末の通信を捌くことが可能になるわけだ。
家族には内緒で自分専用の周波数帯を
では、具体的に2系統をどう使い分ければいいのだろうか? これにはいくつかのケースが考えられる。
・均等分配
前述したように台数ベースで均等に分配してしまうのが、もっとも単純なケースだ。10台+10台で分配してもいいし、今ある機器+これから追加する予定の機器といったように、単純に分配してしまうこともできる。
あまり効率的な方法ではないが、大量の端末で1台のアクセスポイントを共有するよりも遙かにパフォーマンス面でのメリットは大きい。あまり頭を使わなくても、それなりに効果がある方法だ。
・機器分配
機器の種類で使い分けるというのも悪くない使い方だ。たとえば、テレビやゲーム機などの家電系を1系統、PCやスマートフォンなどをもう1系統と分配しておくとシンプルで管理しやすい。後々、機器が増えてきたとしても、種類ごとに接続先が決まっているので、どちらにつなぐか悩まなくて済むのもメリットだ。
とは言え、これも効率的か? と言われると、必ずしもそうとは言えない。ゲーム機でオンラインゲームを楽しんでいる最中に、テレビでビデオ配信サービスなどを利用されてしまう可能性もある。
・用途分配
接続する機器の通信内容が把握できているのであれば、用途で分配するのも悪くない選択だ。前述したように、ゲーム機で頻繁にオンラインゲームなどを楽しむことがあるのであれば、ゲーム機で1系統を占有し、他の端末をもう1系統に集約してしまうという手もある。
同様に、映画などのストリーミング配信を途切れさせたくない場合やビデオチャットなどで遅延が気になるといった場合なども、この方法で占有させる手はあるだろう。
・時間分配
家庭では、無線LANを利用する時間帯が人によって異なるということはよくある。たとえば、昼間はお母さんと次男、夜はお父さんと長男といったような場合、時間帯で重なるユーザーを各系統に分割してしまえばいい。
前述した例なら、お母さんとお父さんで1系統、長男と次男でもう1系統といったように分配すれば、同じユーザーがアクセスポイントを共有しなくてすみ、他の人のトラフィックに悩まされることなく利用できる。
実際には、ここまではっきり時間帯を分けることはできないかもしれないが、さらに用途などまで考慮すれば、同じ時間帯にヘビーに使うユーザーをうまく分離できるはずだ。
・自分専用
最後に、実はオススメなのが、1系統をひっそりと自分専用で使うことだ。家族の端末は1系統に押し込めておき、自分が使う端末は、そこから分離させておく。こうすれば、家族の誰かが大量のデータを通信していようが、まったく関係なく、自分専用の周波数帯を思う存分使うことができる。
大容量のファイルをダウンロードしても文句を言われないだろうし、遅延が気になるゲームの邪魔をされることもない。なんと贅沢な使い方だろうか。
パフォーマンスを確保する工夫も満載
このように、2系統の5GHz帯を同時に利用できるNighthawk X6 R8000だが、そのパフォーマンスを支えるための工夫も数々搭載されている。
CPUこそ最大1300Mbps対応のIEEEE802.11ac機「Nighthawk X3 R7000」と共通の1GHzデュアルコアプロセッサーだが、これに加え無線LAN用のオフロードプロセッサーを3基搭載している。これにより、CPUに処理が集中することを避けると同時に、各プロセッサーで無線LANによる通信を専門で処理することが可能になっている。
機能的にも、従来のR7000には搭載されていなかった「Dynamic QoS」を搭載し、ゲームやストリーミングなど、通信内容によって優先度を自動的に設定して、特定の通信を高速に処理できるようになっている。
逆に言うと、ゲームなど、優先的に処理される通信を別系統に隔離することで、他の通信が影響を受けないようにすることもできるので、この面でも5GHz帯が2系統あるNighthawk X6 R8000のメリットが活きてくると言える。
さらに、新機能として「Smart Connect」と呼ばれる機能も搭載されている。これは、2系統ある5GHz帯の両方に同じSSIDを設定しておくことで、あたかも1つのSSIDのように動作させ、必要に応じて自動的にバンドを振り分ける機能だ。管理画面のチェックボックスで選ぶだけなので設定の手間もいらない。
これにより、速度の異なる端末、たとえば最大433Mbpsのスマートフォンと866MbpsのPCを同時に接続した場合、遅い端末と速い端末を自動的に判断して、それぞれを適切に分離し、遅い端末が速い端末の通信に影響を与えることを防ぐことができる。
実際にどのように動作するかは、製品版が登場して以降のお楽しみと言えるが、さまざまな工夫によって高いパフォーマンスが確保されていることになる。
発売が楽しみ
以上、4月下旬発売予定となるネットギアのNighthawk X6 R8000について紹介したが、かなり実用性が重視された無線LANルーターと言えそうだ。
現状、無線LANルーターは、IEEE802.11ac Wave2対応の4ストリームMIMO機が最速の座にある。これは、これで端末間の純粋な転送速度を追求するユーザーにとって意義のある製品だが、まだ端末側の対応が進んでいないため、その実力を発揮しきれない。
しかし、今回のNighthawk X6 R8000は、2系統の5GHzを使って、多くの端末を収容してもパフォーマンスの低下を避けられるという現在のニーズに合った製品となっている。
無線LANルーターの購入を検討している人の中には、ハイエンドの無線LANルーターは自分にはハイスペック過ぎると考えてしまう人も少なくないが、このNighthawks X6 R8000は同じハイエンド製品でも、きちんと、その方向性が一般家庭に向いている。
今、無線LANにつながっている機器の台数と、今後、つながる可能性がある台数を冷静に考えてみて欲しい。その台数が2桁に達するようであれば、本気で検討する価値がある製品と言えそうだ。
(Reported by 清水理史)
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