対応機種が増加し、Wi-Fi同時接続も可能に
Miracast/WiDi対応ワイヤレスディスプレイアダプター
「Push2TV PTV3000」
2013.7.18 清水理史
サムスンやLG、シャープ製端末でも利用可能に
NETGEARから発売されているMiracast/WiDi対応のワイヤレスディスプレイアダプター「Push2TV PTV3000(以下PTV3000)」がファームウェアのアップデートにより、大幅に使いやすくなった。
製品自体は昨年末に発売されたものから変化はないが、今年3月に大幅に機能が強化されたうえ、その後も2回ほどファームウェアのバージョンアップが重ねられ(2013年6月時点の最新版は2.2.16)、従来の弱点が克服されている。
そもそも、ワイヤレスディスプレイアダプターとは、PCやスマートフォンの画面をワイヤレスで家庭用のテレビなどに表示するためのアダプターだ。ワイヤレスで画面を転送するための規格には、Intelが中心となって推進している「Intel WiDi(ワイダイ)」と、Wi-Fi Allianceが推進する「Miracast(ミラキャスト)」という2種類の規格が存在するが、本製品は、このどちらにも対応したアダプターだ。
本体背面に用意されたHDMIポートを利用し、家庭用のテレビなどとHDMIケーブルで接続後、WiDi対応のPCやMiracast対応のスマートフォン/タブレットから無線接続すると、PCやスマートフォンの画面をワイヤレスでテレビに表示することができる。
プレゼンのためにPCの画面を表示したり、スマートフォンやタブレットに保存されている写真を大画面のテレビに表示するといった使い方が手軽にできる製品だ。
昨年末に発売されたときは、Miracastで接続できるスマートフォンがソニーモバイル製の端末程度と、かなり限られていたが、ファームウェアのバージョンアップがおこなわれる度に対応機種が増え、現在ではサムスンやLG、シャープ製端末の一部など、利用できる端末が増えてきた(詳細は以下を参照)。
比較的新しいモデルが中心となるが、さまざまな端末で使えるようになったことで、活用できる機会が増えてきたというわけだ。
機能アップで使いやすく進化
このように、対応機種が増えたことで身近になったPTV3000だが、機能的にも大幅に向上している。
たとえば、昨年末に登場した時点では、Intel WiDiとMiracastが別の動作モードとして搭載されており、接続する規格に合わせて、本体のボタンを押して動作モードを切り替える必要があった。
しかし、現状のバージョンでは、同一ユーザーインターフェイスで動作するように改善されており、起動後、WiDi端末から接続すればWiDiで、Miracast端末から接続すればMiracastで、といったように接続してきたクライアントによって自動的に動作モードを切り替えることが可能になった。
また、5GHz帯での接続が新たにサポートされた。たとえば、スマートフォンを自宅のアクセスポイントに5GHz帯で接続している場合、2.4GHz帯に切り替えることなく、そのまま5GHz帯でインターネット接続とMiracastによる画面出力が可能だ(Wi-Fi同時接続対応機のみ)。
このほか、特定の機種のHDCP出力の問題が解消されたり、WiDiのレイテンシが改善されるなどの改善も行われており、実用性が高くなったという印象だ。
なお、ファームウェアのアップデートは、以下のように、一旦、ファームウェアアップデートモードに移行してから実行する形式となる。定期的にファームウェアをチェックして、こまめにアップデートして使うことを推奨する。
Miracast接続とWi-Fi通信を同時に実現
もちろん、まだ発展途上の規格となるため、利用する際は対応機種に十分注意する必要がある。単に画面を表示できるかどうかも機種によって異なるが、接続後に、同時にWi-Fiを利用できるか、著作権保護された動画を出力できるかどうかといった機能に違いがある。
たとえば、今回利用してみた中では、以下の表のように、それぞれ利用できる機能が異なっている。
機種 | OS | Miracast接続 | Wi-Fi同時接続 | 著作権保護された動画の再生 |
---|---|---|---|---|
GALAXY S4 | Android 4.2.2 | ○ | ○ | × |
Xperia Tablet Z | Android 4.1.2 | ○ | × | × |
ARROWS A 202F※ | Android 4.2.2 | ○ | ○ | ○ |
Wi-Fi同時接続可能な機種は、Wi-Fi接続時でも何も意識せずにMiracastで接続することができ、Miracastで画面を出力したままWi-Fiを利用してインターネットに接続することができたが、Xperia Tablet Zは、Miracastで接続すると「スクリーンミラーリングを使用するためWi-Fiを切断します」と表示され、インターネット接続が無効化されてしまった。
本体に保存されているデータを画面に表示するという用途であれば、Xperia Tablet Zのように画面出力のみ可能な機種で問題ない。また、Youtubeの動画など、インターネット上のコンテンツであれば、Wi-Fiが使えなくても、3G/LTEで通信できる機種であれば問題ないが、LAN上のDLNAサーバーに保存されている動画の再生画面を出力したいなどという場合は、Wi-Fi同時接続が可能な、GALAXY S4のような機種を利用する必要があるだろう。
ただし、前述した表にも記載されているように、GALAXY S4は著作権保護機能のある動画の再生に対応していない。たとえば、NTTドコモのdビデオの映像、nasneで録画したテレビ番組などは、GALAXY S4で再生しようとすると、「保護コンテンツにアクセスできませんでした」と表示され、再生がキャンセルされてしまう。
現状、Miracast接続、Wi-Fi同時接続、保護コンテンツ動画再生のすべての機能に対応している端末は、同社が公表している対応機種表によると、GALAXY Note II、GALAXY SIIIαのみとなる(編注:編集部で試したところ、「ARROWS A 202F」を使い、nasneに録画した地上デジタル放送をWi-Fi経由で「DiXiM Player」で再生、さらにそれをPTV3000に出力することが可能だった)。
シャープ製のAQUOS PHONE EX(SH-04E)やAQUOS PHONE ZETA(SH-06E)も機能的には全対応だが、Wi-Fi同時接続時のパフォーマンスに難があるため、今後の改善待ちといったところになりそうだ。
タイムラグは若干あり
実際の使用感としては、やはり若干のタイムラグがあるという印象だ。もちろん、画面をテレビに表示してプレゼンしたり、動画を再生するといった使い方であれば何の問題もなく、むしろワイヤレスで、手軽につながることに「これほど快適か!」、と感心させられるが、素早い操作が要求されるゲームなどは、若干、操作とのズレが気になる。
試しに、Miracastで画面を出力しながら、ストップウォッチを動作させてみたのが、以下の写真だ。スマートフォン側が55秒36の表示のときに、テレビ側は55秒10と、0.26秒の遅れとなった。通常はまったく気にならないレベルだが、やはりゲームなどは注意が必要と言えそうだ。
とはいえ、スマートフォンからスクリーンミラーリングを起動するだけで、サッと画面がテレビに表示されるのは、快適の一言で、世のリビングや会議室のすべてのテレビが対応していてくれれば、プレゼンや情報共有が楽になるのにと、つくづく感じてしまう。
対応機種を所有している場合は文句なしに買いだが、前述したように、今後もファームウェアのアップデートによって対応機種が増えていく可能性が高いため、目を離せない製品と言えそうだ。
(Reported by 清水理史)
関連リンク
- ネットギア PTV3000 製品情報
- http://www.netgear.jp/products/details/PTV3000.html