テレビやレコーダーを手軽に無線化
デュアルバンド450Mbps対応
4ポートワイヤレスコンバーター「WNCE4004」
2012.10.26
ホームネットワークを現実のものに
テレビに搭載された映像配信サービスを視聴したり、ゲーム機のネットワーク機能を使って対戦ゲームをプレイしたり、テレビ録画に対応した周辺機器を使ってネットワーク経由で録画した映像を楽しむ。
少し前までは敷居が高いように感じられたホームネットワークが、家電製品の進化とネットワーク対応によって、とても身近な存在になってきた。
しかしながら、このようなホームネットワークを支えるインフラに目を移してみると、その主流はまだ有線LANというケースも少なくない。そこで、ぜひ活用したいのが、有線LANの機器を簡単に無線化することができるワイヤレスコンバーターだ。
一見、無線LANルーターのような外観だが、実際には無線LANの子機に相当する機器で、背面の有線LANポートにテレビやゲーム機、レコーダーなど、有線LAN接続の機器を接続することで、通信を無線化することができる。
このジャンルの製品は、これまで主に無線LANアクセスポイントとのセットで提供されることが多く、また、同じメーカーのルーター+コンバーターのセット以外の環境で使おうとすると設定が難しい場合があり、あまり活用されてこなかった。
しかし、ようやく、この状況も変化しそうだ。ネットギアから登場した「WNCE4004」は、同社の2.4/5GHz 450Mbps対応無線LANルーター「WNDR4500」との組み合わせで真価を発揮するのはもちろんだが、たとえ他社製の無線LANルーターと組み合わせた場合でも、非常に簡単に家電を無線ネットワークに参加させられる製品になっている。
小型サイズに4つのLANポートを搭載
まずは、基本的な部分をチェックしていこう。本製品は、最大450Mbpsでの通信に対応した2.4GHz/5GHz両対応、IEEE802.11n/a/b/g準拠のワイヤレスコンバーターだ。
本体サイズは、幅138mm×奥行き106mm×高さ32mmと小型で、背面に100BASE-TX対応のLANポートを4つ、通信用のアンテナを2本搭載している。
LANポートは100Mbpsまでにしか対応していないが、テレビやレコーダーなどの家電製品側の対応も100Mbps対応のものが多いことを考えると実用上は十分で、むしろ100Mbpsの複数台の機器を450Mbpsの無線LANで余すところなく通信できるような設計になっている。
もちろん、デスクトップPCなどを接続して無線化することも可能だが、100Mbpsの速度を考えると、PCは「WNDA4100」のようなUSBの無線LANアダプターを、家電は今回の「WNCE4004」を、という使い分けをした方が効率的だ。
なお、標準では横置きで使用する設計になっているが、付属の台座を本体側面に差し込むことで、縦置きでの利用も可能になっており、テレビの背面などに設置しやすくなっている。底面には壁掛け用の穴も開いており、比較的、自由に設置できる。こういった細かな配慮は、設置場所が環境によって異なる家電向けの製品としては、うれしい配慮だ。
他社製無線LANルーターともつなぎやすい
本製品の最大の特長と言えるのは、そのつなぎやすさだ。これまでのワイヤレスコンバーターの場合、はじめから親機とセットで販売されている場合は設定が不要で簡単だが、そうでない場合は、親機との接続に結構手間がかかるケースがあった。
WPSなどのボタン設定で接続できれば良いが、そうでない場合は、ワイヤレスコンバーターの標準のIPアドレスを調べてから、同じ範囲にPCのIPアドレスを固定し、ユーティリティを起動して、設定ページを表示したり、接続先を設定するといった手間が必要な場合があり、無線LANの設定に慣れたユーザーでも苦労する場合があった。
しかしながら、本製品は、こういった手間がまったくかからない。まず、親機側がWPSに対応している場合は、本体のWPSボタンを押して接続設定が可能となっている。
感心するのは、WPSで設定できない場合でも手間がかからない点だ。本体の電源をオンにし、何も考えずにPCを有線LANで接続し、ブラウザを起動すると、自動的にWNCE4004の設定画面が表示される。
WNCE4004は、親機に接続できれば、親機側のDHCPを利用してクライアントにIPアドレスを割り当て、接続できなければ自身のDHCPサーバーを起動してクライアントに自動的にIPアドレスを割り当てる。そして、ブラウザからのアクセスを自動的に設定ページへとリダイレクトし、親機への接続設定へと誘導してくれるのだ。
前述したように、このWNCEは、2.4GHz、5GHzともに450Mbpsに対応した製品となっているため、その真価を発揮させるのであれば、同じく2.4GHz、5GHzともに450Mbpsに対応した無線LANルーター「WNDR4500」との組み合わせで使うのがベストだ。
しかし、すでに他社製の無線LANルーターで環境を構築している場合でも、このWNCE4004であれば、このようにWPSに対応していない製品との接続にも、まったく苦労することがないわけだ。
こういった他社製品との組み合わせで、つなぎやすい製品というのは希少な存在で、この工夫は高く評価したいポイントだ。
つながりやすさも文句ナシ
WNCE4004は、このような「つなぎやすさ」だけでなく、その「つながりやすさ」も高い特長となっている。
実際にテストした結果は以下の通りだ。木造3階建ての住宅の1階に親機となるWNDR4500した状態で、各階からPCを使ってFTPによる速度を計測したが、ほぼ有線LANの100Mbpsの上限をフルに使い切る結果が得られた。
※単位:Mbps
※サーバー:NAS + FTPサーバー
※クライアント:VAIO Z VPCZ21J(Core i5-2410M/RAM4GB/128GB SSD)、Windows 7 HomePremium
※100MBのZIPファイルを転送したときの速度を計測
※5GHz帯を利用
さすがに3階では、GETで若干の速度低下が見られるものの、それでも実効で70Mbpsオーバーをマークしているのは、かなり優秀だ。
今回のテストでは、5GHz帯を利用したが(最大速度450Mbps)、やはり空いている5GHz帯のメリットは大きい。最近では、スマートフォン向けのアクセスポイントが乱立していることから、2.4GHz帯は混雑して使い物にならないが、5GHz帯ならばまるで渋滞している隣の道路を眺めながら風を切ってドライブするかのように、快適に利用することができる。
冒頭でも触れた通り、本製品の用途としては、家庭用テレビでの映像配信サービスの利用、ゲーム機でのゲームのダウンロードやオンライン対戦、レコーダーやNAS製品とのDLNA連携といったところだが、こういった用途でも、実効で70Mbpsで通信できれば、まったく問題ない。
試しに、今年の夏に発売されたソニーコンピューターエンターテインメント製のnasneと、ソニー製の液晶テレビブラビア(KDL-22EX420)を利用してみた。1Fに無線LANルーターと有線接続したnasneを設置し、3階にはWNCE4004と接続したテレビを設置。nasneのチューナーで受信した放送をテレビでライブ再生してみたが、映像が途切れるようなことはなく、非常にスムーズに再生することができた。
ほかにも、たとえばWNCE4004にnasneを接続して、テレビアンテナのコネクターがある部屋に設置するという使い方もできる。4つLANポートがあるWNCE4004にフルに4台のnasneを接続すれば(PS3から制御できる最大数も4台)、地デジチューナー×4、BS/CSチューナー×4、500GB×4=2TBで、しかもワイヤレスで設置場所を選ばないテレビ録画環境の誕生というわけだ。
これはなかなかのインパクトだろう。
有線LAN機器を設置フリーに
以上、ネットギアのワイヤレスコンバーター「WNCE4004」を紹介したが、非常につなぎやすい設定の工夫が秀逸なうえ、高いパフォーマンスと安定した通信によって、複数の有線LAN機器を無線化できる利便性は高く評価したいところだ。
ネットワークに繋がるテレビや録画機器も増えてきたことを考えると、リビング、もしくはテレビの脇に一台置いておきたい存在と言える。
今後、スマートテレビのように、テレビの機能はより高度になり、ネットワークが不可欠になることを考えても、いまから準備しておいて損はないだろう。
(Reported by 清水理史)