新ファームで機能は上位モデルと同等に
価格もお買い得になった「Ready NAS NV+ v2/DUO v2」
2012.06.15
リーズナブルでも機能に妥協したくない
「データの保存やバックアップ用にNASが欲しいけど、あまり費用もかけられない・・・・・・」。そんな悩みを持っている人も少なくないのではないだろうか?
今や家庭内に複数台のPCがあることも珍しくなく、スマートフォンやタブレットなどの新しいデバイスを使う機会も増えてきたが、それぞれの端末でデータを個別に管理するのは効率的ではないうえ、そもそも大容量のストレージを搭載しないスマートフォンやタブレットなどでは、写真や映像などのデータを保存できる容量が限られるため、安全にデータを保存できるどこか別の場所を確保しなければならない。
最近ではクラウドサービスの普及によって、オンラインにデータを保存することも可能になりつつあるが、映像などのGBクラスのデータを保存するには容量、回線の転送速度・転送量ともに限界がある。
その点、家庭内に設置できるうえ、どのような端末からも汎用的にアクセス可能で、しかもTBクラスの容量を確保できるNASは便利だが、価格を考えると手を出しにくかったり、難しいのではないかと尻込みしてしまう人も少なくなかった。
そこで注目したいのが、NETGEARから発売中のベアボーン(HDD別売)タイプのNAS「ReadyNAS DUO v2」だ。今年の1月に出荷が開始されたばかりの新製品だが、5月に大幅に機能を向上させた新ファームがリリースされ、さらに使いやすくなったうえ、今回、ネットギアと協業しているインターネット販売店にて価格キャンペーンが展開されており、従来の市場価格19,800円(税込)前後から12,800円(税込)前後になるようだ(購入できるECサイトについては記事最後のリンク集を参照)。あまり予算を確保することはできないが、機能や性能に妥協したくないという人に最適な製品と言えるだろう。
なお、同様に、前面にディスプレイを搭載した4ベイモデルの「ReadyNAS NV+ v2」も新ファームに対応し、同様の価格キャンペーンで従来の市場価格34,800円(税込)前後から23,800円(税込)前後になり、この2製品については、かなりお買い得感が高くなっている。今回は2ベイモデルの「ReadyNAS DUO v2」を中心に新ファームでの強化点を紹介していこう。
使いやすさに高機能をプラス
今回、新ファームの提供が開始されたReadyNAS NV+ v2とReadyNAS DUO v2は、前述した通り、2ベイと4ベイ、ディスプレイの有無(ReadyNAS NV+ v2が搭載)という違いはあるものの、いずれもCPUとしてARMコアの1.6GHz Single-core Marvellを搭載したコンシューマー向けのNASだ。
もともと、新世代のグラフィカルなユーザーインターフェイスを採用するなど、NASをはじめて使う人でも手軽に扱えるように工夫したエントリーモデルとなっていたが、今回、新ファームでよりハイエンドのユーザーにも満足できる多機能な製品へと進化したうえ、前述したように価格が改定され、より入手しやすくなった。
最新のファームウェアは、5月24日に公開されたRAIDiator 5.3.5(arm)で、以下のような点が強化されている。
- ファイル共有用のプロトコルとしてCIFS/AFP/HTTP/FTP/NFS/Rsyncをサポート
- サービス管理プロトコルとしてHTTPS/CIFS/AFP/NFS/FTP/ReadyDLNA/UPnP/SNMPをサポート
- システム設定のバックアップとリストアに対応
- UserとDomainの2つのセキュリティモード(ユーザーアクセス設定用)をサポート
- Remote Rsyncへの対応、Windows ServerやReadyNAS Vault(クラウドバックアップ)へのバックアップをサポート
- 完全なS.M.A.R.T情報のサポート
- ディスクスピンダウンの時間設定への対応
- HTTP経由での公開用Web共有のサポート
- 低速ネットワーク環境でファイルコピー時にdisk fullが表示される問題の修正
これまでのReadyNAS NV+ v2/DUO v2は、エントリーユーザー向けと割り切ることで、どちらかというと機能よりも使いやすさを優先してきたイメージがあったが、今回のバージョンアップで、上位のReadyNAS Ultraシリーズと同等と言って良いほどの機能を手に入れたことになる。
もちろん、上位モデルにはより高性能なCPUがされるなど、パフォーマンス面でのアドバンテージがあるが、ReadyNAS NV+ v2/DUO v2も決して遅いわけではなく、シーケンシャルで50~60MB/sのアクセス速度を実現可能となっている。
一般的なNAS製品の場合、リーズナブルな価格のエントリーモデルは遅いというのが定番だが、ReadyNAS NV+ v2/DUO v2であれば十分なパフォーマンスを得ることができるのも大きなメリットだ。
HTTPやFTPなどもアクセス可能に
実際に新機能について見ていこう。最大の注目はサポートするプロトコルが大幅に増えたことだ。これにより、PCから通常の共有フォルダとしてアクセスできるだけでなく、FTPやブラウザを利用したHTTPでのアクセスが可能になった。
PC向けのユーティリティであるRAIDarを利用したり、ブラウザからReadyNASのIPアドレスを指定してアクセス後、「設定」をクリックして設定ページを表示すると、サービスの欄に「SMB」、「AFP」、「NFS」、「FTP」・・・・・・、などとサポートするプロトコルとその起動状況がランプが表示される。もちろん、各プロトコルのボタンをクリックすれば即座にサービスを停止することも可能だ。直感的な設定ができるのは相変わらず便利だ。
実際にファイル共有などで利用するプロトコルを設定したいときは、「共有」の設定ページを利用する。共有フォルダを新たに作成するか、作成済みの共有フォルダを選択すると、右側に共有プロトコルの選択画面が表示される。ここで、FTPやHTTPなど、使いたいプロトコルを指定することで、そのフォルダをどのような方法で共有するかを個別に設定できる。
たとえば、HTTPの場合、共有フォルダで「HTTP」にチェックをすれば、即座に共有が可能になる。ブラウザを利用して「http://IPアドレス/webshare」にアクセスすれば、HTTPを有効にした共有フォルダが表示される。スマートフォンやタブレットなどから共有フォルダのデータにアクセスしたいときなどに便利だ。
FTPの場合も設定に大差はない。FTPでアクセスできるようにしたい共有フォルダを選択後、FTPにチェックを付けて有効に設定し、アクセスを許可するユーザーを選択すればいい。これで、コマンドプロンプトなどからFTPで接続すれば、許可した共有フォルダを表示することができる。
最近ではFTPを使う機会は減りつつあるが、遠隔地との大容量のデータのやりとりなど活用すると便利そうだ。
このほか、同様に共有の設定画面からフォルダを選んで「ReadyDLNAサービス」をオンにしておくことで、家庭用のテレビやスマートフォンなど、DLNA機能に対応したデバイスから、共有フォルダに保存した写真や音楽、映像などのデータを再生することができる。
これまでのバージョンのReadyNAS NV+ v2やDUO v2は、単純にPCからファイルを保存したり、保存したファイルを読み取ることが主な機能となっていたが、今回のバージョンアップで、より多くの機器からの接続をサポートしたことになる。
ちなみに、セキュリティモードとして、Domain(Active Directory)がサポートされたのも大きな進歩だ。小規模なオフィスでも、ADを使ってアカウントを管理している場合は、本製品のようなリーズナブルでありながら、ADをサポートしたNASは非常にありがたい存在だ。
クラウドバックアップにも対応
また、こちらも個人用というよりは、SOHOや小規模オフィス向けの機能となるが、バックアップとして新たに「ReadyNAS Vault」を利用可能になった。
ReadyNAS Vaultは、いわゆるクラウドバックアップ機能だ。5GB/$5.95/月(超過分$0.4/GB)、もしくは50GB/$199/年(超過分$0.25/GB)の有料サービスとなるが(30日間無料で使用可能)、NASのデータをクラウド上のストレージに暗号化して保存することができる。
使い方も簡単で、バックアップの設定画面から、アカウントとして利用するメールアドレスとパスワードを指定して登録を実行後、オンラインの設定ページからバックアップしたドライブとスケジュールを指定するだけとなる。
もちろん、バックアップしたデータは手軽にリストアすることができるうえ、ブラウザを利用してオンラインでファイル単位に閲覧することも可能だ。
このほか、Rsyncを利用して、ReadyNAS間でデータを相互にバックアップしたり、Windows搭載のファイルサーバーや他社製のNASに対して、バックアップを実行することもできる。従来バージョンの製品よりも安心して大切なデータを保管できるようになったと言っていいだろう。
初心者はもちろん上級者も満足の一台に
以上、新ファームと新価格で魅力的になったReadyNAS DUO v2を紹介したが、多彩なプロトコルへの対応やクラウドバックアップなど、上位モデルに匹敵する機能を搭載しており、価格を考えると、かなりお買い得な製品と言える。
ウルトラブックやスマートフォン、タブレットなど、ストレージ容量の少ないデバイスが増える中、データの保存先やバックアップ先として使えるううえ、テレビなどの家電も含めたホームネットワークでさまざまなメディアを共有できるようになることを考えると、一家に一台、はじめてのNASとして、ぜひ用意しておきたい存在と言える。
もちろん、初心者だけでなく、かなり高度な使い方ができるようになったうえ、ReadyNASならではの豊富なアドオンも利用できるため、中上級者にも満足できる製品になっている。既存のNASからのリプレイスはもちろんのこと、リーズナブルなので追加用のNASとして検討する価値のある製品と言えそうだ。
(Reported by 清水理史)
関連リンク
- ReadyNAS DUO v2 製品情報
- ReadyNAS NV+ v2 製品情報
- ReadyNAS Duo/NV+ v2用ファームウェアRAIDiator arm version 5.3.5 ダウンロード