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企業にとって、NASをどのように導入、運用していけば良いのかは非常に重要な課題だ。何の計画もなく導入すれば、台数が増えるごとに管理や運用の手間が増大し、最終的に手に負えないシステムになってしまう。
購入時の経緯や全体の運用状況を把握している担当者が健在ならまだ良いが、人事異動などが発生した場合、複雑になってしまったシステムをどう引き継げばいいのかが大きな問題になることも珍しくないだろう。
同様の課題は、システムとしては比較的単純なNASやファイルサーバーでも発生しやすい。特に、部署やフロア単位に個別のNASを導入したり、本社とは離れた全国の支店にNASを設置する例などでは、事前に導入や運用の計画を立てずに、NASを導入すると、後で導入や運用が煩雑になり、苦労が絶えないことになる。
複数台のNASをいかに手軽に導入し、遠隔地を含めいかに効率的にNASを運用していくかは、製品を選定する段階から留意すべき非常に重要なポイントとなるわけだ。
では、具体的にどのような機能に注目して製品を選べばいいのだろうか? 複数台のNASを導入する場合を考えたとき、まずチェックしたいのが設定情報の複製が手軽にできるかどうかだ。
例えば、ネットギアの法人向けの高性能NAS「ReadyNAS Pro」などの場合、複数台のNASを導入する場合を想定して、USBメモリー経由での設定情報の複製が手軽にできるように工夫されている。
まず、最初にリファレンスとなるNASを一台セットアップする。通常の設定と同様に、Webベースの設定画面から、ディスクの構成や共有フォルダーの設定、ユーザーやグループを設定しておく。
続いて、この設定情報をファイルに書き出す。「システム」の「設定のバックアップ」から保存した情報を選び(全部、もしくは共有アクセスやユーザーなど機能単位で保存可能)、PCへと設定ファイルをダウンロードして、USBメモリーに保存しておく。
その後、新しい「ReadyNAS Pro」を用意し、初期設定時にUSBメモリーを使って設定情報を適用する(設定ページからファイルを指定して復元することも可能)。これで、リファレンスとして設定したのと同じ設定のNASができあがるわけだ。
もちろん、IPアドレスやNASの名前などは個別に設定する必要があるが、この機能によって、ユーザーやグループ、共有フォルダの設定などは、NASを何台設置する場合でも一括で設定することができるというわけだ。地方の支店にNASを設置したい場合などでも、この方法を利用すれば、短時間で事前に設定を済ませることができるため、現地での設置作業を簡略化できる。
また、この方法には、ユーザーアカウントやグループ、共有フォルダなどの設定情報を複数台のNASで統一できるというメリットもある。フロア単位、拠点単位で個別にユーザーや共有フォルダを管理するのも1つの方法だが、統一した設定の方が、故障時の交換なども容易なうえ、ユーザーの共有フォルダの運用ルールなども全社で統一しやすいだろう。
2台以上のNASを導入する予定がある場合は、設定の複製が手軽にできる「ReadyNAS Pro」を選ぶメリットが大きいだろう。
もしも、現状、Windows ServerのActive Directory(以下AD)を利用している場合は、この管理下にNASを置いてしまうのも運用管理的なメリットがあるだろう。
「ReadyNAS Pro」には、「ReadyNAS Pro」上でユーザーを管理する「ユーザ」モードと、Windows ServerのADを利用してユーザーを管理できる「ドメイン」モードという2つのセキュリティモードが容易されており、環境に合わせて手軽に切り替えることができるようになっている。
標準では「ユーザ」モードになっているが、設定ページの「セキュリティモード」で「ドメイン」を選択し、参加するドメイン名や管理者のアカウントなどを設定すると、既存のWindows Serverドメインに接続し、ADに登録されているアカウントを「ReadyNAS Pro」から参照できるようになる。
前述したUSBメモリーによる設定情報の複製と異なり、この方法のメリットは、ADにユーザー管理を一任することができる点だ。ADに参加させると、自動的にAD上のユーザーやグループが「ReadyNAS Pro」上にも登録され、このユーザーを利用して共有フォルダのアクセス権を設定できる。
もちろん、AD上で新たに登録したユーザーやグループが「ReadyNAS Pro」上にも反映されるので、管理者はAD上でのみユーザーを管理すれば良いことになる。これなら、複数台のNASのユーザー管理も効率的にできるだろう。
これまでWindows Serverのファイルサーバーを運用してきたという企業も少なくないうえ、今後もメールや業務アプリケーションなどの認証用にWindows Serverが不可欠という場合もあるが、「ReadyNAS Pro」であれば、このような環境との共存や移行も手軽にできるというわけだ。
NASの運用管理という点では、障害情報をタイムリーに確認できるようにしておくことも非常に重要だ。
「ReadyNAS Pro」の場合、信頼性の高いファンや筐体によって、そもそも高い信頼性が確保されているうえ、ディスクの故障についてもX-RAID2によって、故障時での継続利用や交換が手軽にできるようになっているが、それでも障害をタイムリーに確認し、いち早く、その対策をすることは何より重要と言える。
このような障害報告機能として、「ReadyNAS Pro」には、SNMPによるネットワーク監視機能もサポートされているが、より手軽な監視方法として、ディスクやファンの障害、ディスク容量の不足などの情報をメールで送信する機能を搭載している。
この機能は、非常に手軽に設定できるのが特徴だ。一般的なメール警告機能と同様に、「ReadyNAS Pro」内部のSMTPサーバーを利用したり、カスタムで外部のメールサーバーやポートを手動で指定することもできるが、警告の送信に「Gmail」などを指定することが可能となっており、サーバーやポートなどの面倒な設定をしなくて済むように工夫されている。
送信する情報も任意に選択可能だ。警告イベントとして、「基盤温度」、「ディスクの故障」、「ディスクに空きがない」、「ディスク温度」、「ファン」、「電源」、「クォータの超過」、「UPS」、「ボリューム」、「電源ユニット」などが用意されており、運用状況によってこれらを組み合わせることができる。
実際、この機能を設定しておけば、障害を素早く確認することが可能だ。送信されるメールは英語となるが、どの部分に障害が発生したのかを的確に知ることができるため、管理の目が届きにくい遠隔地のNASの状況も的確に把握できる。
もちろん、遠隔地のNASの場合でも、ポート443をフォワードしておけば、インターネット経由で設定ページにアクセスして、詳細な状況を確認したり、必要に応じて設定変更などの対処をすることができる。
物理的なHDD交換に関しても、X-RAID2によって、装着するだけでリビルドが可能になっていることもあり、障害からの復旧を試みる場合の労力も少なくて済むだろう。
なお、余談だが、以前に紹介した「ReadyNAS Replicate」を利用すると、インターネット上のWebページに拠点ごとの「ReadyNAS Pro」をグラフィカルに表示し、プロパティからディスクの温度や状態などを確認できる。こういった機能と組み合わせることで、遠隔地の管理も効率的にできるだろう。
このように、「ReadyNAS Pro」は、複数台の導入、Windows Serverとの共存、障害監視など、実際に企業内の環境で利用する際にあると便利な機能がしっかりと搭載されている。
NASの選択基準としては、価格とパフォーマンスが大きなウェイトを占めると考えられるが、それだけでなく、以前に紹介したバックアップ機能などの耐障害性、省電力機能、そして今回の展開・運用機能と、「導入後」に視点を置いて製品を選ぶことが重要となる。
そういった意味でも、効率的な展開・運用ができる「ReadyNAS Pro」を選ぶメリットは大きいと言えるだろう。
(Reported by 清水理史)