FlexScan HD2452Wはゲームモニターとしての機能が充実したために、それを中心に紹介してきたが、最後となる今回は、FlexScan HD2452Wの本分ともいえる"PC"モニターとしての機能について見ていくことにしたい。
FlexScan HD2452Wの画面サイズは24.1インチ。表示画面の寸法でいうと横約52cm×縦32cmもあり、A3用紙よりも一回り大きいといったらその大きさが実感できるだろうか。使用位置が画面から30~50cm程度の机に置くデスクトップ使用形態だと実際かなりの大画面という実感だ。
解像度は1920×1200ドット。PCではよく用いられるUXGA(1600×1200ドット)解像度の縦解像度1200ドットをそのままに、横をフルハイビジョンといわれる1920×1080ドットの1920ドットに広げたものになっている。
画面アスペクト比は映像コンテンツとして一般的なワイド画面の16:9ではなく、16:10となるのだが、ビデオ表示時には上下に未表示領域を設けてのアスペクト比維持の表示モードもあるので実用上はなんの問題もない。
Windows XP世代、Windows Vista世代のPCであれば、標準で1920×1200ドットの画面モードを作り出せるし、なにしろUXGAの使い勝手を横長に拡張したイメージなので、PCのデスクトップ画面をとても広く快適に使える。
ちなみに、ハイエンドPCゲーマーやハードコアPCユーザーに人気のベンチマークソフト3DMark Vantageの最上位テストモード、「Extreme」モードは、1920×1200ドットの画面でないと実行すらできない。最新PCゲームも続々と1920×1200ドットの画面モードをサポートしてきていることもあり、PC環境下で最先端グラフィックスを楽しむにはFlexScan HD2452Wはおあつらえ向きなのだ。
PCモニターの素性を持つFlexScan HD2452Wだけに、PCとの接続親和性は高い。
デスクトップPC製品では完全に主流となり、ノートPCでの採用例も増えつつあるデジタルRGB接続のDVI端子も実装されている。FlexScan HD2452Wに搭載されているDVI端子はアナログRGBに変換できるDVI-I端子ではなく、デジタル専用のDVI-D端子である点に注意したい。なお、DVI端子はFlexScan HD2452Wでは「PC1」として管理されている。
そして、未だノートPC製品などを中心に外部モニター端子として採用率が高いアナログRGB接続方式のミニD-Sub15ピン端子もちゃんと1系統完備しており、こちらはFlexScan HD2452Wでは入力系統「PC2」として管理されている。デスクトップPCとノートPCとでFlexScan HD2452Wを兼用使用する…なんて活用スタイルもありだろう。
そして忘れてならないのはHDMI端子。
HDMI端子はなにもビデオレコーダーやプレイステーション3のためだけの端子ではない。ここにPCを接続することもできるのだ。
最近のグラフィックスカード製品ではHDMI端子を搭載したものが多くなってきているので、そうした製品を使えばHDMIケーブル一本でFlexScan HD2452Wに接続することができる。FlexScan HD2452WにはHDMI端子が2系統搭載されており、これが「HDMI1」「HDMI2」と管理されているので、PC接続用の「PC1」「PC2」と合わせれば合計4系統のPC入力が可能と言うことになる(ただしHDMIでPCと接続した場合、最大でも1080pまでしか出力できない)。
そしてDVI端子しかもたないPCばかりのユーザーでもがっかりすることはない。市販のDVI-HDMI変換アダプタやDVI-HDMIケーブルを利用すれば一般的なPCでもFlexScan HD2452WにHDMI接続することはできる。
PCとFlexScan HD2452WをHDMI接続した際にはPC画面を高品位に映し出すために、以下の設定を行おう。これはFlexScan HD2452WがPCからの映像をビデオ映像として認識してしまわないようにするための設定になる。
まず、リモコンの[MENU]ボタンを押してメニューを開き、「カラー調整」を選択。
ここの右端付近の「詳細設定」の階層メニューに入り、以下の設定を行おう。なお、「輪郭補正」「ゲイン」「ガンマ」はそのままでOK。
コントラスト拡張は表紙映像に応じてバックライトの輝度とガンマ補正を動的にコントロールする機能で、暗い映像では黒浮きを押さえるためにバックライトを暗くする制御が入る。映画などの映像鑑賞では味わい深い画調になり効果を発揮するが、PC画面では常に階調レベルを安定させて表示させた方が都合がよいので制御は不要だ。「無効」と設定しよう。「有効」としていると、写真レタッチや図版作成時などにおいて、その時点での映像の状態に呼応して暗部の表現が動的に変化してしまう。
続いて、「本体設定」メニュー階層下の「カラースペース」設定を確認しよう。
デフォルトでは「自動」になっていると思うが、これを「RGBフルレンジ」設定にする。こうすることでPC側の0-255階調出力をFlexScan HD2452W側で確実に0-255階調として受け付けて表示できるようになる(逆に言うと、この設定を行わないとPCやグラフィックスカード製品によってはFlexScan HD2452Wがビデオコンテンツの16-235階調として受け付けてしまうことがある)。
PCを複数台使う人は増えてきており、中には3台、4台を同時に使う人も少なくない。たとえばハイエンドユーザーやプロフェッショナルユーザーは、レンダリング用、エンコード用、編集用、文書作成用、ホビー用などなど用途別のPCを一つの場所で使い分けていることが多い。たとえその複数台のPCを同時使用することはなくても、つなぎ替えやセレクタなどを使用せずに、リモコンでワンタッチに使用PCの入力切り替えができるのは便利だ。
また、FlexScan HD2452Wは親子画面による二画面同時表示機能を持っているが、この機能をPC映像だけで使いたいときにもPCのHDMI接続は有効だ。FlexScan HD2452WではPC1入力とPC2入力の映像の親子画面は仕様上できないが、PC1とPC2のどちらかを親画面にしてHDMI1とHDMI2のどちらかを子画面にしての親子画面表示は行える。メインPCをPC1、PC2に接続し、レンダリングPCやエンコーディングPCなどのセカンドPC以降をHDMI接続し、時々状態チェックや簡易オペレーションで親子画面の子画面上で操作する…というのは実用的な使い方として、あり…なはずだ。
PC連係機能も一般的な専用PCモニターを凌駕するほど充実している。
一番多くのユーザーに恩恵をもたらすことになりそうなのがUSB2.0機能だ。
FlexScan HD2452WにはUSBハブ機能が搭載されており、USBアップストリーム端子とPCとを接続し、キーボードやマウスなどのUSB機器をFlexScan HD2452W側に接続すれば使える。PCを机の下に置いた場合など、USB機器類とPC本体が離れている際には、ユーザー位置に近いFlexScan HD2452W側にUSB機器を接続して使うことができるのだ。
こうしたUSBハブ機能は、一般的なPCモニター製品では搭載例が多いのだが、FlexScan HD2452Wでは実はこの機能も一歩進んだものが搭載されている。
なんと、FlexScan HD2452Wでは、USBアップストリーム端子も「PC1」「PC2」の2系統実装されているのだ。逆に言うとFlexScan HD2452Wに接続したUSB機器を2台の別々のPCにスイッチングできる機能を搭載しているのだ。
たとえば、1セットのマウスとキーボードをFlexScan HD2452Wのダウンストリーム端子に接続しておき、2系統のPC1とPC2のUSBアップストリーム端子を別々のPCに接続したとする。ここでリモコンのUSB接続のPC1、PC2系統切り替えを行えば、この1セットのマウスとキーボードで交互にPC1、PC2を操作することができるのだ。そう、つまりPC切り替え的な活用ができてしまうのである。
また、FlexScan HD2452WにはUSBオーディオ機能も搭載されている。アップストリーム端子に接続したPCからFlexScan HD2452WをUSBオーディオとして認識させることができる。FlexScan HD2452W自身にはスピーカーは内蔵されていないが、音声出力自体は本体正面左側面のヘッドホン端子、または背面のミニステレオジャック音声出力端子から行える。アンプ内蔵スピーカーやヘッドホンを組み合わせればPCサウンドも楽しめるのだ。深夜時など、音を外に出さずにヘッドホンでPCゲームや音楽プレイを楽しむ際などには便利なPC連係機能となる。
さて、今回は「テーマがPC」ということだったので、PCゲームに挑戦したいと思う。
現時点のPCゲームで、ダントツで3Dグラフィックスが美しいPCゲームといえばやはりEAの「CRYSIS」ということになるだろう。
「CRYSIS」は、ハンガリーの新興ゲームスタジオCRYTEKが開発した一人称視点タイプの3Dシューティングゲーム(FPS:First Person Shooting)だ。2007年末に発売されたタイトルで、決して最新タイトルというわけではないが、Windows Vista時代のDirectX10世代プログラマブルシェーダ4.0対応GPUに積極対応したPC専用タイトルというと、未だにこのCRYSISを超えるものが見あたらない。
最先端のリアルタイム3Dグラフィックス技術を駆使して作り込まれた映像は、凄まじくリアルで、またアーティスティックにも美しいのだが、グラフィックスカード(GPU)にとってはとてつもなく高負荷であり、その部分が逆に発売当初から話題となった。
発売当時は、いうなればCRYSISの方がPCスペックを超えてしまっていたと言っても過言ではなかったのだ。そして発売から半年が過ぎた6月、やっとGPUメーカーから、CRYSISの最高位設定の映像美を現実的に楽しめるハードウェアが登場した。
このタイミングでプレイするならば、やはりフルスペックの3DグラフィックスをFlexScan HD2452Wの1920×1200ドットの高解像度で楽しみたい。ということで、NVIDIAから登場したばかりのウルトラハイエンドGPU「GeForce GTX280」を入手してプレイすることにした。
GeForce GTX280は世界最大の14億トランジスタのモンスターGPUで、3Dグラフィックスを処理するプログラマブルシェーダユニットが240基も実装されており、その演算能力は合計で約1テラFLOPSにも達する。1テラFLOPSといえばわずか3年ほど前まではスーパーコンピュータの持つ演算能力だ。約1テラFLOPSのグラフィックスパワーから生まれた美麗映像をFlexScan HD2452Wはどのように可視化してくれるのか。3Dグラフィックス技術と映像機器評価を専門としている筆者にとっては、これ以上ないテーマなので、仕事とはいえ、テンションは最高潮に上がりまくりなのであった。
さて、筆者はFPSゲームをプレイするときには、ロジクールのレーザーゲーミングマウス「G9」と、今は絶版中のマイクロソフトの左手専用PCゲームコントローラ「SideWinder Strategic Commander」を用いているが、今回も、このマストアイテムで気合い十分にプレイに臨んだ。
FlexScan HD2452WとPCはDVI接続。
PCとのDVI接続では「カラースペース」の設定は不要だ。また、DVI接続時の「コントラスト拡張」は最初から「無効」になっているのでこれも設定不要だ。ナナオは、このあたり、ホントよく分かっている。
ところで、FlexScan HD2452Wユーザーとなったときに、もしかしたら、1つ、疑問に思うことがあるかもしれない。
そう、PC入力画面では表示遅延を低減させた「スルー」モードが選べない点だ。
これについても実は抜かりはないのだ。FlexScan HD2452WではPC入力時はデフォルトで高画質化ロジックをバイパスして入力同期モードで動作するため、遅延が、ほぼ"ない"のだ。これはFlexScan HD2452Wユーザーは豆知識として覚えておこう。
1920×1200ドット。FlexScan HD2452Wのフル表示がこちら。アスペクト比が16:10になるので画角は1920×1080ドットより狭くなるが、縦解像度が高くなり、さらにフル画面表示となる。一番のお勧めがこれ |
1920×1080ドット。アスペクト比が16:9になるので画角は広がる |
1600×1200ドット。アスペクト比4:3となるので左右の画角が狭い |
実際に最初からエンディングまでをプレイしてみたが1920×1200ドットの高精細表示はやはり圧巻。縦解像度がフルHDの1920×1080ドットよりも高い分情報量が多いのも嬉しい。
全画面が縦横無尽に動き回るFPSゲームで液晶には厳しい動画像になるわけだが、尾を引くような残像もなく、プレイに支障はなし。視線を画面内に巡らせても不自然な見え方もしない。応答速度的にも不満はなしだ。カラーモードは「sRGB」モードでもいいが、暗いシーンではやはり「ゲーム」モードがプレイしやすかったことを報告しておこう。
ちなみに、GeForce GTX280の性能の高さも相当なもので、全設定を最高位にした1920×1200ドット解像度でも、ほぼ全てのシーンで30fpsに近いフレームレートはキープできていた。FlexScan HD2452Wの1920×1200ドットパネルでドットバイドット表示でCRYSISをプレイするにはGeForce GTX280は有効なアイテムだといえそうだ。
さて、これまで、この連続集中的なFlexScan HD2452Wの評価の中で、FlexScan HD2452Wのゲームモニターとしての性能を評価してきて、その実力の高さを確認できたわけだが、やはり、購入を検討している人は、FlexScan HD2452Wの本分である「PCモニター」の性能や使い勝手の良さも気になってきたはずだ。
HDMI入力端子にもPCを接続することでPCが4系統もつながる接続性の高さと、これを応用してPC二画面を親子表示できる利便性などは、新しいPC活用のスタイルをももたらす。また、USBアップストリーム2系統機能は2台のPCを1セットのマウス&キーボードでコントロールできるというPCモニターの範疇を超えたPCユーザビリティの向上を実現する。
今回の評価では、そのFlexScan HD2452WのPCモニターとしての実力と、ゲームモニターとしての性能の高さを同時に実感できたわけだが、特にPCモニターとしての優秀さが分かってもらえたのではないだろうか。
FlexScan HD2452Wは究極のPCモニターであり、至高のゲームモニターであり、どちらもおまけ機能ではなく、どちらも"本分"の機能として実装されているのだ。
(トライゼット西川善司)
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