対角24.1インチ(24.1型)の画面サイズは、机の上に置いての30~50cmという視聴距離では、視界にちょうど全画面が収まる理想的な大画面サイズだ。
この"デスクトップ大画面"とも言うべき24.1型に、1920×1200ドットというフルハイビジョン+αの解像度を組み合わせてPCモニター製品としてまとめあげたのが、EIZO FlexScan HD2452Wになる。
せっかくのこの"デスクトップ大画面"。PC専用だけで終わらせるにはもったいなさ過ぎる。…ということで、FlexScan HD2452Wは、PCモニター製品でありながらも、贅沢にもアナログビデオ機器とデジタルビデオ機器の接続機能までも与えられた。
アナログビデオ接続機能としてはコンポジットビデオ入力、Sビデオ入力、そしてD4入力の3系統の端子が与えられ、平均的なテレビ製品か、それ以上の接続性を有している。
デジタルビデオ接続機能は、このデジタルAV時代において今やなくてはならない接続端子「HDMI端子」で与えられる。HDMIのバージョンは1.2aで、一般的なデジタルAV機器との接続性は万全だ。PCディスプレイながらも、このHDMI端子を2系統も備えているのは、かなりの贅沢仕様といえるが、昨今ではビデオ機器だけでなく、ビデオカメラやゲーム機に至るまでがHDMI接続に対応してきているので、ありすぎて困ることはない。
PCだけでなく、様々なメディアを表示するポテンシャルを備えた、このFlexScan HD2452Wのようなディスプレイ製品は、最近では「AVマルチモニター」と呼ばれており、その元祖的存在がFlexScan HD2452Wの先代モデルFlexScan HD2451Wであった。
その先代FlexScan HD2451Wに対して、とても引き合いが多かったのは、ゲームモニターとしての用途だった。ソニー・プレイステーション3(PS3)は最初からHDMI端子を標準装備としていたし、マイクロソフトXbox360も後期モデルはHDMI端子を標準装備としてきており、FlexScan HD2451Wはパーソナルにハイビジョン・ゲーミングが楽しめる"デスクトップ大画面"として大きな支持を得ることとなったのだ。
そこで二代目のFlexScan HD2452Wでは、ゲームモニターとしてのポテンシャルを高める様々な改良が行われた。
ゲームモニターに求められる資質は
一つ目の「動画表示品質」の高さは、いまやモニター製品の基本性能といっても過言ではない。特にゲーム画面は一般的なテレビ映像よりも激しく画面全体が動く映像が表示され続けるため、残像が強いと映像が見にくいだけでなく、敵が狙いにくい、敵の動きが読みにくいというような、プレイヤーに「ゲームプレイの不利」としてのしかかる。FlexScan HD2452Wでは液晶の中間階調での応答速度の低下を過電圧駆動により低減させるオーバードライブ回路を先代から引き続き搭載させ、動画表示品質を高めている。
よく「プラズマの方が動画に強い」といわれるが、これは一般的な映像の視聴に限っての話。プラズマは色生成をRGBサブピクセルの明滅頻度で行う時間積分式フルカラーであるため、画面内を縦横無尽に視線を巡らせるゲームプレイでは、個人差または機種によっては色が分離して見える「色割れ」現象が知覚されることがある。筆者は現行プラズマテレビ製品でも色割れを確認しており、ゲームプレイに限ってはFlexScan HD2452Wのような動画対応型液晶の方を推す。
二つ目の「表示遅延の少なさ」はゲームプレイでは生命線ともいえる要素なのだが、一流のテレビメーカーでもおろそかにしがちだ。最新のテレビ製品であっても、一部の製品では内蔵された高画質映像エンジンが映像処理に時間がかかり、表示遅延を引き起こすものが存在する。通常の映像視聴では映像と音声さえ同期していれば気にならないが、ゲームプレイにおいてはプレイヤーに「不利」が生じる。たとえば敵の攻撃に対してプレイヤーがどんなに最速に反応したとしても、すでにモニター側の映像表示が遅れていては間に合わない。そこでFlexScan HD2452Wでは高画質化ロジックは可能な限りバイパスさせる「スルー」モードを搭載させた。このスルーモード時には表示遅延を先代と比較して最大約2フレーム分(60分の2秒)も短縮させることに成功しており、表示遅延を業界トップレベルの約1フレームにまで抑えている。
三つ目の「情報量の多い画質」は、ゲーム開発側が仕込んだ"ネタ"を何一つ漏らさず満喫するための性能だ。テレビ、DVDといった一般的な映像では中間階調付近の輝度で多くの色情報量を与え、最暗部や最明部はアクセント的な使い方をした階調割り振りをしている。3Dゲーム映像の場合はそうした常識にとらわれず、リアルタイムかつダイナミックにライティングされるため、それこそ最暗部から最明部までの階調を使い切った映像になることも多い。一般的なテレビやディスプレイでは一般的な映像視聴に合わせた画質を作り込んでいるため、ゲーム映像にそぐわない階調特性で映像を表示してしまうこともあるのだ。FlexScan HD2452Wでは階調特性を映像表示情報量の多い方向にチューニングした画調モード「ゲーム」を新搭載しており、ハイダイナミックレンジなゲーム映像の表示を正確に表示することができるようになっている。
こうしてみてきても分かるように、FlexScan HD2452Wは、数ある現行のテレビ製品、モニター製品の中にあって、数少ない「まじめにゲームプレイに取り組んだ」製品なのだ。
FlexScan HD2452WはPCモニター製品ではあるが、筆者的には「至高のゲームモニター」の側面をも兼ね備えていると考えている。
今回は「ゲームモニター必須3箇条」のうちの三つ目、「情報量の多い画質」に着目した評価を行ってみることにした。やはり、それには最高レベルのグラフィックスを実現した最新3Dゲームがふさわしいと言うことで、コナミのPS3専用最新ステルスアクションゲーム「METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS」(以下MGS4)を選択した。
さてさて。
多くのFlexScan HD2452WユーザーはPS3とFlexScan HD2452WをHDMIケーブルで接続していると思うが、ちゃんとFlexScan HD2452Wで最高の画質を得るためのセッティングになっているだろうか。
ここからはこれまでのレビュー記事とは違って、PS3とFlexScan HD2452Wとのコンビネーションで最高画質で最上のゲームプレイをするためのセッティングを指南したいと思う。
まず、PS3のメニューを立ち上げ、「ディスプレイ設定」を開いて設定を確認しよう。
ゲームのリアルタイムグラフィックスは基本的にベースバンド映像であり、クロスカラー低減フィルターはこれをHDMI伝送するのだから原理上クロスカラーは生じないので「切」設定にする。
また、一部のテレビ製品は8ビットデジタル階調のうち最暗部と最明部をクリップさせた16-235階調を採用しているものがある。FlexScan HD2452Wの場合は0-255のフル階調を受けることができるので、それぞれRGBフルレンジ(HDMI)は「フル」に、Y Pb/Cb Pr/Crスーパーホワイト(HDMI)は「入」とする。
PS3側の設定はこれでOKだ。
今度はFlexScan HD2452W側の設定を行おう。
リモコンの[MENU]ボタンを押してメニューを開き、「カラー調整」を選択。
「ブライトネス」「黒レベル」「コントラスト」「色の濃さ」「色合い」「色温度」はそのままでOK。ここの右端付近の「詳細設定」の階層メニューに入り、以下の設定を行おう。「輪郭補正」「ガンマ」はそのままでOK。
コントラスト拡張は表示映像に応じてバックライトの輝度とガンマ補正を動的にコントロールする機能で、暗い映像では黒浮きを押さえるためにバックライトを暗くする制御が入る。映画などの映像鑑賞では味わい深い画調になり効果を発揮するが、ゲームのような明暗がめまぐるしく変わったり、情報量最優先の用途では逆にこの制御が邪魔になることが多いので「無効」と設定しよう。特に今回テストプレイしたMGS4のように暗いシーンも多いゲームでは「無効」の方が暗部の情報量が安定するのでプレイしやすい(その代わりコントラスト感はそれなりになる)。
続いて、HDMI接続における「最重要の設定項目」の設定をしよう。
それが「本体設定」メニュー階層下の「カラースペース」設定だ。デフォルトでは「自動」になっていると思うが、これを「RGBフルレンジ」設定にしよう。
こうすることで前述のPS3側の「RGBフルレンジ(HDMI):フル」設定と適合してPS3の0-255階調出力をFlexScan HD2452W側で確実に0-255階調として受け付けるようになる。
PS3でブルーレイなどを見る場合や、パソコンを(DVI接続やVGA接続でなく)HDMI接続した場合なども、この設定で問題なし。
実際に、MGS4をFlexScan HD2452Wでプレイした際には、この他、画調モードを「ゲーム」にし、遅延を低減させる「スルーモード」に設定した。
MGS4は、スニーキングアクション、ステルスアクションとも呼ばれる、敵に見つからないように敵の勢力下に潜入することをテーマにしたアクションゲームだ。敵をただ撃ち殺してごり押しで進む一般的なアクションゲームとは違い、敵の動きをいかに早期に把握して、次の動きを予測できるか、または地形的優劣をいかに応用して侵攻できるかを楽しむものであり、戦略ゲームの要素も併せ持っている。
この元祖スニーキングアクション「METAL GEAR」シリーズは、リアリズムとSF要素を織り交ぜた独特な世界観をベースに、伝説の潜入エージェント、主人公ソリッド・スネークの冒険を描いた作品だ。このシリーズは日本はもちろん欧米でも圧倒的な支持を得ており、最新作MGS4は、その完結編ということで世界中から発売が待ち望まれていたゲームだ。また、PS3専用ということもあって、PS3の普及を促進する、キラーソフトとしても業界からの注目度も高い。これまでの連作の中で振りまかれた、米ソ冷戦時代に端を発したクローン人間「スネーク」の秘密と、正体不明の組織「愛国者達」にまつわる謎が、全て明らかになるという触れ込みもあって、PS3キラーソフトというよりは、筆者のようなMGSファン・キラーソフトといったほうが適切なのかもしれないが…。
いずれにせよ、今回の評価にあたってはオープニングからエンディングまで(!)、全てFlexScan HD2452Wでプレイしたのだが、通常プレイ時の三人称視点での奥行き→手前方向の3Dスクロールはもちろん、一人称視点でゲーム世界を縦横無尽に見回したときにも尾を引くような残像はなく、快適にプレイができた。もちろん遅延もなく、スピーディなボス戦も、対等に戦えた。
そして、映像がなにより見やすい。やはり、画調モード「ゲーム」、PS3&FlexScan HD2452WのHDMIフルレンジ同士の組み合わせは映像情報量が多く、特にトーンの暗いシーンが多いMGS4では効果が高い。単に暗部を持ち上げただけではなく、最暗部から最明部までがリニアに描き出されているので、映像表現としてのダイナミックレンジが広いのだ。
FlexScan HD2452Wの初期状態でPS3をRGBフルレンジ接続した場合 |
上記設定を施したFlexScan HD2452WとPS3をRGBフルレンジ接続した場合。奥の死体とアイテムがちゃんと見える |
FlexScan HD2452Wの初期状態でPS3をRGBフルレンジ接続した場合 |
上記設定を施したFlexScan HD2452WとPS3をRGBフルレンジ接続した場合。車体の陰の部分もうっすらと見え、さらにはタイヤの溝の描写もよく見える |
FlexScan HD2452Wの初期状態でPS3をRGBフルレンジ接続した場合 |
上記設定を施したFlexScan HD2452WとPS3をRGBフルレンジ接続した場合。画調モードは同じ「ゲーム」設定。背景の壁の模様や2人の装備のディテールもよく見える |
MGS4はゲームプレイも楽しいが、そのグラフィックスの情報量がとにかく凄い。草木、瓦礫、土埃、川といった背景物、敵キャラクタの衣装や装備のディテール、空き缶、机…車両に至るまでの小道具、大道具オブジェクトのリアリティ…画面に登場する全ての再現力が半端ないのだ。
「グラフィックスが美しい」…というありがちな表現ではなく、MGS4の場合は「グラフィックスの情報量が凄い」という表現の方が合っている。だからこそ、このオーバーキルな情報量を過不足なく表示できるモニターでないともったいないといってもいい。
FlexScan HD2452Wならば、その要求に応えられるポテンシャルを持っている。
(トライゼット西川善司)
(C)1987 2008 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.
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