実際に映像を見てみた感じでは、画質の傾向は先代FlexScan HD2451Wとよく似ている。ハイコントラストでありながらも、過度な味付けを行わない、モニターライクで自然な色あい…すなわちナナオのいうところの「ナチュラルコンフォート」画質が実現されている。これはナナオが展開する液晶テレビ製品FORISの高画質化テクノロジーがそのままFlexScan HD2452Wに継承されていることの証でもある。
採用液晶パネルは24.1型サイズで先代と同一のVA(垂直配向)タイプ。VAらしくコントラストは最新世代の液晶テレビ並みの1000:1を達成しており、動的バックライト制御と組み合わせれば3000:1にまで到達する。先代と同様にオーバードライブ回路を搭載。その恩恵もあって応答速度は中間階調域で6msと毎秒60コマ(60fps)表示に問題ない速さ。視野角も上下左右全方位に178°と広い。
画質周りで特筆すべきなのは1080/24pモードの映像に対応したという点。
1080/24pとは、フルHD解像度の映像で毎秒24コマ(24fps)表示とするフォーマットのことで、主に映画やアニメのソフトなどで採用例が多い。従来の映像機器では24fpsを60fpsに変換して表示するのが主流で、24fpsの映像を検出すると1コマを2/60秒間表示し、次の1コマは3/60秒間表示するような動作をさせていた。つまり、毎秒24コマの映像を毎秒60コマの映像として疑似表示していたのだ(12×2+12×3=60)。これを特に「2-3プルダウン(3-2プルダウン)表示」というが、この表示方法では画面が上下、あるいは左右、または前後奥行き方向に動くようなシーンで「カカ・カク、カカ・カク」というような感じで段付きな動きとして知覚されることがあった。
1080/24p対応のFlexScan HD2452Wは、24fpsを等倍して48fpsとして表示する。各フレーム表示時間が2:3比となってしまう従来の2-3プルダウン表示と違いスムーズな動きで映像を表示できるのだ。
ちなみに、この機能を活用するためには映像機器側にも1080/24p出力に対応したものが必要になるわけだが、身近なBDプレイヤーとしての地位を確立しつつあるプレイステーション3(PS3)がこれに対応しているので、それほど敷居の高い機能ではない。FlexScan HD2452Wユーザーならば積極的に活用して欲しい機能だ。
AVマルチユースモニターという製品においてキモといえば画質に並んで重視されるのが、やはり接続性。
FlexScan HD2452Wの接続性は、好評を博した先代FlexScan HD2451Wをそのまま継承している。FlexScan HD2452Wでカットされた端子は無い。
PC入力はアナログRGB(ミニD-SUB15ピン端子)1系統と、デジタルRGB専用のDVI-D端子1系統の合計2系統を装備。HDMI入力は2系統を配備。HDMIのバージョンは1.2aとなっている。アナログビデオ系はコンポジットビデオ入力端子、S2ビデオ入力端子、D4入力端子を各1系統ずつ持っている。
今世代ゲーム機を最高画質で接続する事例でいけば、PS3、Xbox360 EliteをHDMI接続、wii、初期型Xbox360、そして、新型PSP(PSP-2000)をD端子接続という接続スタイルが実現できる。PC接続にDVI-D端子を接続するのであれば、初期型Xbox360をアナログRGB接続するのもいいだろう。音声入力端子もRCAピンプラグタイプを2系統持っており、それぞれコンポジット/S2ビデオとD4入力端子のためのもの。
USBアップストリーム端子も2系統持っており、これは2系統あるPC入力のそれぞれに対応したものになる。つまり、DVI-D端子で接続したPCからのUSB接続と、ミニD-SUB15ピン端子で接続したPCからのUSB接続を別系統として取り扱えるのだ。FlexScan HD2452W側面にはUSBダウンストリーム端子が2系統あるので、つまり、ここにキーボードとマウスなどを接続すれば2台のPCを1セットのキーボードマウスで使う「PC切り換え機」的にも活用できるというわけだ。
FlexScan HD2452Wにはスピーカーは内蔵されていないが、ヘッドホン端子とミニステレオジャック端子を装備しているので手持ちのヘッドホン/イヤホンやアンプ内蔵PCスピーカーを接続できる。前述のアナログビデオ入力に対応した2系統の音声入力の音声は入力切り換えに連動してヘッドホン端子/ミニステレオジャック端子から出力できるのが便利だ。
さらにいえばFlexScan HD2452WにはUSBオーディオ機能も搭載されており、接続した2台のPCからそれぞれのUSBオーディオデバイスとして利用できる。実際の音声出力はもちろん前述のヘッドホン端子/ミニステレオジャック端子から行う形態となる。
コンポジット/S2ビデオ/D4/HDMI映像入力に対応しただけでなく、オーディオ機能、USB機能をここまで充実させているのはFlexScan HD2452Wだけの特長だ。「1台のモニターで何でもかんでも映して鳴らしたい」というパーソナルユースの要望に、FlexScan HD2452Wの接続性は死角なしで応えてくれる。
先代FlexScan HD2451Wの静電式のスライドタッチインターフェースは近未来的かつメンテナンスフリーな操作系はユニークではあったのだが、スピーディな操作を好む上級ユーザーからはリモコンの採用希望が強く叫ばれた。かくいう筆者も「リモコンがあれば完璧なのに」とつぶやくことも多かったのだが、ナナオは、この声に素早く対応。早速、FlexScan HD2452Wにはリモコンを付属させてきたのだ。
このリモコン採用はもしかすると先代ユーザーが一番うらやむ機能といえるかもしれない。とにかく基本操作がとても行いやすくなった。
リモコンの[MENU]ボタンを押してメニューを出し、十字キーでメニュー操作ができるし、外部スピーカー/ヘッドホン音量もテレビリモコン感覚で直観的に上げ下げができる。
入力切り換えも映像カテゴリで分けられた[PC][VIDEO][HDMI]をそれぞれ押すことで順送りに選択できるので非常にスピーディに希望の入力にたどり着ける。例えば[PC]を押せばミニD-SUB15ピン、DVI-Dの入力が交互に切り換わるのだ。先代FlexScan HD2451Wのようにメニュー画面から入力系統を選択しなくて済むので、単純に切り換え効率は3倍になったといえる。
画調モードの切り換えも[カラーモード]ボタンで、アスペクトモードの切り換えも[画面サイズ]ボタンで、メニューをまさぐることなくワンタッチで切り換えられる。
前述した2台のPCからUSBを別系統接続した場合のUSB系統切り替えまでリモコン上の[USB]ボタンで切り換えられてしまうのも心憎い。細かい機能だが、FlexScan HD2452WのPCモニターとしての本分を忘れていないという手応えを感じる。
先代FlexScan HD2451Wにも搭載されていたPC画面表示時に、アナログビデオ入力/HDMI入力の映像を子画面として表示できるピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)機能は当然FlexScan HD2452Wにも搭載されているのだが、この機能をリモコンで操れるようにも改良された。
リモコン上の[PinP]ボタンを押せば瞬間的に子画面が表示され、この状態で入力切り替えを行えばその希望の入力を子画面に表示できる。子画面位置を変更する[表示位置]ボタン、ビデオ画面側を全画面表示する[全画面]ボタン、出力音声を切り換える[音声選択]ボタン、子画面表示の透明度を変更する[半透明]ボタンもあり、PinP機能を使用状況に合わせてスピーディに操れるのだ。先代FlexScan HD2451Wではおまけ機能的だったPinP機能は、FlexScan HD2452Wではリモコン搭載によって利便性が向上し、「使える機能」として昇華された気がする。
例えば、ゲーム画面を子画面表示しておき、対戦ロビーに対戦者が来るまで、PCのメイン画面でPC操作…対戦相手が来たら[全画面]ボタンでゲーム画面側の方をメイン表示に切り換える…といったことが可能だ。PinP機能はゲームユーザーにも便利なのでぜひ活用しよう。
先代FlexScan HD2451Wはゲームモニターとしても注目された製品となった。だからこそゲームユーザーからの要望もたくさんナナオに寄せられたようで、FlexScan HD2452Wにはゲームモニターとしての嬉しい機能が複数新搭載されている。
その筆頭にあげられるのが「スルーモード」の搭載だ。
リモコン上の[スルー]ボタンを押すことで切り換えられるスルーモードでは、FlexScan HD2452W内の映像処理エンジンの高画質化タスクをバイパスし、直接表示プロセスに移行させることで最大2フレーム分の表示遅延を短縮できるようになっている。時間にして最大60分の2秒(=30分の1秒)の遅延短縮が実現されたのだ。これは対戦格闘ゲーム、リズムアクションゲームのようなタイミングにシビアなゲームをプレイするユーザーにとっては非常にありがたい機能となる。
二つ目のゲームユーザー向け機能は特殊画面サイズモードの搭載だ。
ゲームユーザーの中にはビンテージゲームのスケーリング表示を嫌う人たちがいる。これはオリジナルのドット表現を重視するためで、ある意味ハイエンドオーディオマニアの超原音主義とよく似た「こだわり思想」だ。
FlexScan HD2452Wではこうした思想にも配慮するため、480i/480pの低解像度ゲーム映像を拡大表示せずにドット・バイ・ドット表示する「リアル」モードと、縦横2倍に拡大しただけの「2xリアル」モードを搭載したのだ。これらの機能はリモコン上の[ゲーム-サイズ]ボタンでワンタッチに切り換えられる。
特殊画面サイズモードと言えば、PSPを接続したときの専用拡大モードも搭載されている。新型PSPには映像をテレビ出力する機能が搭載されたが、PSP側の問題で、メニュー画面こそテレビの画面一杯に表示されるものの、ゲーム画面は小さく表示されてしまうという機能制約があった。FlexScan HD2452Wには、このPSPのゲーム画面映像出力時に特化した表示モード「ポータブル」モードを備えており、一般的なテレビ製品では小さく表示されてしまうPSPゲーム映像を、なんと全画面拡大表示※することができるのだ。ちなみに、この機能、昨年、筆者がFlexScan HD2451W紹介記事でPSPを接続したときにボソっとつぶやいた要望であった。まさか対応してくれるとは思わなかった。ちなみに、こんなマニアックな機能を搭載しているモニターは世界で唯一、FlexScan HD2452W以外にはない。
※PSPの画面解像度が480×272ドットで、16:9なのに対し、FlexScan HD2452Wの画面解像度が1920×1200ドットで16:10のため、上下に若干の未表示領域が出ます。
そして、地味ながらも嬉しいのが「ゲーム」向けの画調モード(カラーモード)が追加されたこと。
一般的な映像では黒はしっかりと沈めた方が美しいが、ゲームプレイにおいては暗闇に潜む敵へ先制攻撃を仕掛けたり、暗闇に沈んだ抜け道やアイテムを探し出すには暗部階調をやや持ち上げ気味の画調の方が遊びやすかったりもする。かといってブライトネスやコントラストを調整してしまうと常に暗部階調が持ち上がった映像を見ることになり、屋外シーンやムービーシーンなどでは画質的に不満が出る。
FlexScan HD2452Wでは[カラーモード]ボタンを押すことで1タッチに画調が切り換えられるので、通常時は「sRGB」/「スタンダード」モードなどの標準的な画調にし、暗いシーンのときにはガンマカーブを持ち上げた「ゲーム」を選択することができるのだ。
FlexScan HD2452Wにはこの他にも「シネマ」「ダイナミック」(ビデオ系の場合)といった映像タイプごとに特化した画調モードも用意されており、[カラーモード]ボタンを押すことでこれらにも順送りで切り換えられる。ゲームプレイだから[ゲーム]モードにする…という考え方ではなく、映像表示がしっくり来なかった場合は[カラーモード]を押して自分にとってしっくりする画調を探しだすといいだろう。これは、画調モードの切り換えはメニュー操作をしなければならなかった先代FlexScan HD2451Wでは難しかった、新しい画調モードの活用スタイルだ。
念のために言っておくが、ゲームモードの機能がやや大きく取り沙汰され気味のFlexScan HD2452Wだが、PCモニターとしての本質機能は、いつも通りのEIZOブランドクオリティなので安心して欲しい。
今回、さりげなくも全てのユーザーにとって嬉しいのは、FlexScan HD2452Wは店頭販売されるということだ。先代FlexScan HD2451Wは直営通販のみだったが、FlexScan HD2452Wは直営ショールームに行かなくとも、地元の店頭でも実機を見て購入できるようになったのだ。価格はオープン。なお、ボディーカラーは、ブラックとチタニウムシルバーの2色展開となっている。
こうしてみてくると、追加機能項目だけをみれば、FlexScan HD2452WはFlexScan HD2451Wからのマイナーチェンジモデルということになるだろう。しかし、その追加された機能の全てがクリティカルに大きなユーザーメリットを生むものばかりなだけに、マイナーチェンジはマイナーチェンジでもビッグ・マイナーチェンジだといえる。FlexScan HD2452Wは、先代のヒット商品FlexScan HD2451Wの進化形であると同時に、AVマルチモニターの1つの完成形といえるかもしれない。
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