PCの"本体"というと、本質的にはCPUやメモリ、ハードディスクが収められたパソコンの"箱"(ボディ)を指すが、実際にユーザーがPCを使う立場に立つとマウスやキーボード、そしモニターといった人間と接する「インターフェース」の部分の方にこそPCの"実体"を感じるものだ。特にモニター装置はPCからの一切の情報"出力"を受け持つインターフェースであり、ことのほか重要になる。
パソコンの本体は3年も経てば「旧機種」のレッテルを貼られ、そのユーザーの頭にはことあるごとに「買い替え」の思考がよぎり出す。OSのメジャーバージョンアップなどがあれば、「買い替え」は必然性の意味すら持ち始める。いわゆる製品寿命というヤツがやってくるのだ。
ところが、モニターという周辺機器は長持ちするもので、「買い替え」は、本当にそれまで使っていたヤツがダメになったときなどのタイミングで行われる。だから、1台のモニターが複数のPC"本体"を渡り歩くように繋がれ、使い続けられることが珍しくない。PCの"本体"が変わっても、「自分のPCなんだ」という"実感"は、いつも見てきた、使い慣れたモニターが作り出している雰囲気に因るところが大きいと思う。
モニターは予算の許す範囲でできるだけいいものを選びたくなるのは、こういうところからくるのだと思う。
AVWatchでの映像機器専門の評価連載「大画面☆マニア」等にて画質うるさ方として知られる筆者が、今回、個人的にお勧めしたいのがPCモニター「FlexScan HD2451W/HD2441W」だ。筆者自身も相当気に入ってしまったこの製品を、なんと6回にわたってみっちりと紹介していきたいと思う。
今回発売されたHD2451W/HD2441Wは、PCモニターの本質的な機能を高次元でまとめながら、パーソナルユースに最適なマルチメディアモニターとしての機能まで集約した魅力的な製品だ。
液晶パネルのサイズは24.1インチ。表示面は横約52cm×縦32cmという大きさ。30インチオーバーの大画面テレビとまでは行かないが、視点位置が画面から30cm前後になるPCモニターの場合だと、この24インチという大きさは、結構大きいという実感がある。
解像度は1920×1200ドット。これは、20インチクラスの液晶モニターでは一般的な解像度である1600×1200ドット(UXGA)を、縦解像度を1200ドットで維持したまま横方向に広げてワイド化したイメージになる。
横解像度が1920ドットというと1920×1080ドットのフルスペックハイビジョンの解像度を連想するが、HD2451W/HD2441Wでは、縦方向の解像度はこれを上回っているため、フルハイビジョンの映像鑑賞では1920×1080ドットで活用でき、PCで活用する場合は1920×1200ドットで活用できることになる。
フルスペックハイビジョン解像度に対応していると言っても、実際にそうしたハイビジョン映像機器が接続できなければ意味がない。
HD2451W/HD2441Wは、この解像度性能を最大限に活用する狙いから、2系統のHDMI入力端子を実装しているのだ。そう、PCモニターでありながらデジタル映像機器を2台まで接続できてしまうのだ。
さらにHD2451Wでは、D端子入力、Sビデオ入力、コンポジットビデオ入力といったアナログビデオ入力端子群も取りそろえている。VHSビデオデッキやLDプレイヤーといったクラシックなビデオ機器が接続できるのはもちろん、D端子入力は1080i/720pまでのD4入力にまで対応しているので、HDMI登場以前のハイビジョン映像機器とのアナログ接続にも対応している。
HD2451W/HD2441WはPCモニター製品だが、実質的にはPCモニターとデジタルビデオモニターの合体製品だといえるかもしれない。
実は、1920×1200ドット解像度のPCモニターで、ビデオ機器接続にも対応したモデルは競合他社製品からも出ていた。ただし、「PCモニター製品」という看板だけに甘んじ、「ビデオ機器との接続はおまけ」という感じの製品が多かったように思える。そうした安価な製品で特に問題となるのが、表示はできるものの、アスペクト比を正しく維持することができないという手抜きだ。
FORIS.TVシリーズというテレビ製品を手がけ、しかも画質にこだわりを見せるEIZOが、そのような中途半端な仕様で製品を出すわけもない。
実際に、DVDプレイヤーやプレイステーション3をD端子ケーブル、HDMIケーブルで接続して様々な解像度モードでテスト視聴を行ったが、全てのケースで正常表示が行えた。
安価な競合製品では3:2となって表示されてしまい、なかば悪夢ともいえたアスペクト比4:3映像もHD2451W/HD2441Wだと、ちゃんと正しい縦横比で表示することが出来ていた。
もちろん、720p(1280×720ドット)、1080pや1080i(1920×1080ドット)のようなアスペクト比16:9の映像は、画面の中央1920×1080ドット分を使い、上下に未表示領域を残しつつちゃんとアスペクト比を維持して表示を行ってくれる。PCモニターなのに1080iのインターレース入力に対応しているのもうれしい。
HDMI、D端子、いずれで接続した場合でも、デフォルトのアスペクト比信号に反応して自動的にアスペクト比を維持した表示にしてくれる賢さにはちょっと感動すら覚える。こうした懐の深い対応力は競合にないアドバンテージだといえよう。
HD2451W/HD2441Wでサポートされるアスペクト比
まず、表示映像を見て驚かされるのが圧倒的な輝度ダイナミックレンジの高さだ。公称最大輝度スペックは450cd/m2とのことで、これは液晶テレビの明るさだ。平均的な液晶モニターが300cd/m2程度だから、HD2451W/HD2441Wは、PCモニターとしてはかなり高輝度出力に対応しているといえる。
ただ文字や図表が識別できればよいというモニターならばいざ知らず、映像鑑賞に耐えうる画質を実現するにはどうしても色ダイナミックの高さが必要だ。この根幹となる性能が輝度性能の高さなので、HD2451W/HD2441Wにとって450cd/m2は必要性能だったのだ。
輝度性能が高いと心配されるのが黒が鈍く光って見えてしまう「黒浮き」。文字や図版表示のためならば気にもならないが、映像鑑賞用途においては暗部の階調表現能力に関わってくる要素なので無視できない。HD2451W/HD2441Wでは黒表現に優れた垂直配向液晶を使い、迷光を低減する光学フィルムとを組み合わせており、これまた液晶テレビ並みの黒の沈み込みと暗部階調性能を実現している。バックライト制御を行わないネイティブコントラスト性能で1000:1というスペックもこれまた最新の液晶テレビ並なのだ。
従来の液晶モニターー
コントラスト拡張ON
FORIS.TVで培った高画質化技術を惜しみなく投入!
PCで写真JPEGを見たときにしろ、ハイビジョン映像を見たときにしろ、HD2451W/HD2441Wでは、暗色の表現がちゃんと漆黒からなだらかに始まっており、暗色に存在感があることに気が付くかも知れない。輝度性能が高い製品ではどうしても高輝度に頼った表示になりがちだが、HD2451W/HD2441Wでは暗部階調がしっかりしているので、ことさら体感コントラストが高く感じるのだ。"明"と"暗"を理想に近い形で同居させることをこの価格帯の製品で実現させたことには拍手を送りたい。
さて、もちろん、PCモニターとして長時間使うケースではこのままだと眩しすぎるのではないかと思う人もいるだろう。HD2451W/HD2441Wには使用環境の明るさを検知してバックライトの輝度を制御して適正輝度に抑える「明るさ自動調整」機能も備わっているので、PCモニターとして活用する際にはこれを有効にするといい。
HD2451W/HD2441Wは、階調性能だけでなく、色の表現能力も高い。HD2451W/HD2441Wの映像エンジンは映像をガンマ補正や色域処理をRGB各10ビット制御で行っており、ポテンシャル的には、標準的な1677万色を遙かに上回る10億色を各画素単位に与えられる。10億色が区別できるかは別にしても、写真、DVD、ハイビジョン映像のいずれを見ても、色ディテールの豊かさは実感できる。
標準解像度のDVD映像を見たときにも、解像感が一段階上がったように見えるのはこの性能のおかげだ。石畳や路面の微細凹凸や、森の葉々の形の1つ1つ、肌の下から伝わってくる柔らかい血の気…などなど、DVD映像では解像度的に潰れてしまっているはずのディテールが、色の微妙な違いによって表現され、見るものに解像感として伝わってくるのだ。
この性能はハイビジョン映像でも効果が実感でき、フルHDがさらにパリっとした画に見える。
動画性能については回を改めて紹介するが、オーバードライブ回路により残像を低減できいることから、映像が動いているときでも、この色ディテールから生まれる高解像感は体感できる。
PCディスプレイでありながら動画性能を引き上げるオーバードライブ駆動回路を採用。液晶テレビではお馴染みの液晶駆動技術だ
テレビライクな2画面機能をも搭載する
HD2451WとHD2441Wとの機能差は、HD2441WにD端子、Sビデオ端子、コンポジットビデオ端子などのアナログビデオ入力がないくらいのもので、映像表示部の性能は全く同じだ。2系統のHDMI端子はHD2441Wにもちゃんとある。インターレース映像のプログレッシブ化(IP変換機能)や、2画面表示機能(PinP:Picture in Picture)もあるし、各映像系統の音声入力を表示映像に連動して切り換えることができる機能も共通だ。アナログビデオ入力端子の必要性に応じて、HD2451WとHD2441W、どちらを選ぶべきか検討するといいだろう。
HD2451W/HD2441WはPCモニターとしてメインに使っていけるのはもちろん、映像鑑賞、ゲームプレイといったその他の用途においても「正しい表示」が行えることが特長になっていると思う。アナログビデオがインターレース映像ならば適宜IP変換を入れてくれるし、アスペクト比も自動認識で維持してくれるのでかなり賢い。
さらに、優秀な階調性能、色ディテール性能は、ホビー用途だけでなく、デザインワーク用途、アーティスティックな用途においても、その威力を十二分に発揮するはずだ。
多様な映像機器が繋がる高い接続性を身につけたモニター製品は徐々に増えてきてはいるが、全ての機器からの映像出力を「正しく」「賢く」そして「美しく」表示する性能をもったものはまだ少数派だ。
HD2451W/HD2441Wは、その中でも特に優良種であると筆者は思う。
画面をここまで傾けることも!
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大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。AV WatchではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。