モニターを買う時は値段で決めている? それともメーカー? 私はまずチェックするのが「株式会社ナナオ」もしくはブランド名「EIZO」のラインナップである。モニターを多く扱っているショップで「一番良いモニターは?」と聞いてみて「ナナオ」もしくは「EIZO」と必ず答えると言っても過言ではないぐらい最高に良いモニターをずっと出している会社だ。
そのナナオが先日発表した「FlexScan LCD」シリーズの最新機種が「FlexScan HD2451W」である。
この機種は、動画表示をより強化した機種だと聞いている。「え? 動画はほとんど見ないよ!」という人もいれば「DVDでガンガン見ているぜ!」とか「おいらゲーマーさ!」という人もいる。今まで個人の趣味に特化したモニターを買えば良かったが、パソコンOSがWindowsVistaになり、より動画を見る機会も増えそうだ。現に私はデジタルカメラで撮影した画像処理やWeb、Excelデータ等の仕事にしか使わず、動画はテレビと決めていた。しかし昨今気になるサッカーは別の部屋で見なきゃならず、仕事の手が止まってしまう。PinPでこのモニターの右上にでも小さく表示して見たいシーンで全画面に変えて……などなど夢は持っている。
この「HD2451W」はそんな私のためにHD規格やHDMI入力などが装備されマルチな仕様になっている。私は写真家なので、静止画表示のテストをしてみることにした。
パソコン用モニターは液晶モニターが主流となった今日でも、プロやコアなユーザーはいまだにCRTモニターに固執している人も少なくない。EIZOブランドのCRTモデルの販売終了時に買いに走ったカメラマンやデザイナーがたくさんいたのは事実である。もちろん私も最終機種である21型「FlexScanT966」を大事に大事に使っているのである。そんな固執型の人もいれば、パソコンを買ったときに付いているモニターや安いモデルで十分と思っている人も多い。もちろん使用目的によっては問題はないだろうが、そのままデジタルカメラの画像を見て色や明るさ階調などをあれこれ評価してないだろうか!?
そこでCRT21型2003年製「FlexScan T966」と液晶17型2003年製「FlexScan L567」の両方と、「FlexScan HD2451W」を比べてみることにしよう。
下の写真は各モニターの解像度に合った評価用画像を作り、各モニターに表示して撮影している。各モニターは工場出荷状態にして白の階調がわかる明るさに設定した。撮影はニコンデジタルカメラ「D2x」のRAWで撮影し、同じ条件になるよう現像している。写真をクリックすれば画像のみを撮影したものが表示されるので見てほしい。残念ながらカメラのレンズを通しているため、見た目とは変わってきている。また読者の環境によってきちんと表示されるとは限らない。そこで液晶評価用画像も用意したので、それを表示して自分のモニター性能を確認してほしい。最近のモニターならばグラデーションがムラなくきれいに表示され、左下の黒の階調(5ステップで表示)がすべてわかるだろう。もし見えなければ設定が悪いか、表示できないモニターの可能性がある。
画像評価用サンプル写真(1280×800)
グレイスケールは白(255・255・255)(250・250・250)~(0・0・0)とRGB表示を5ステップづつ変えて表示してある。
※クリックすると画像が拡大します
部分アップを見てみると、違いが顕著にわかる。カメラで撮ると黒が潰れやすいので黒の階調などはわざと明るくして視覚的にわかるようにしてある。
FlexScan HD2451Wの場合
FlexScan T966の場合
FlexScan L567の場合
これだけで「DH2451W」がCRT(T966)や古い液晶(L567)に勝っていることがわかるだろう。それならどこまで見えるか試してみよう。グレイスケールのRGB(255・255・255)(253・253・253)~と2ステップにしてみた。
下記のサンプル写真を表示して同じようにRAWで撮影。黒い部分と白い部分を別に現像。現像時にコントラストをなくし視覚的にわかるように極端なレベル調整したものだ。皆さんもサンプル写真を表示してどこまで見えるか試してほしい。
[DH2451W] グレイスケールサンプル写真
[DH2451W] 白い階調は白側の(255・255・255)と隣の(253・253・253)の差がある事が分かる。
[DH2451W] 黒の階調は黒側の(0・0・0)と(2・2・2)の差がはっきり分かり2の数字も読み取れる。
これだけ白側も黒側も階調をしっかり持っていて、もちろん中間調も問題はない。かといってコントラスト比1:1000と高いのでメリハリのある写真になっている。
さて色ではどうだろう? 印刷を想定してCMYK上で最低の色合いである各色1%と白との差が見えるかCRTの「T966」と古い液晶「L567」と共にテストしてみる。モニター表示した全体写真を撮り、また表示したサンプル画像のみを個々にRAWで撮影した。現像時にコントラストはなしで彩度を最大にしている。それを極端なレベル補正で微かな情報を際だたせてみたものだ。
1の右半分 K(黒)1% = RGB(253・253・253)
2の右半分 C(シアン)1% = RGB(253・255・255)
3の右半分 M(マゼンタ)1% = RGB(255・253・255)
4の右半分 Y(イエロー)1% = RGB(255・255・253)
(各色左半分は白)
モニターはコントラストと彩度が高いと一見きれいに見えてしまう。見た目がきれいなら良いという人ならばかまわないが、ハイエンドユーザーと自負しているのならば「色の再現性」にも気を配らなくてはならない。もちろんデジタルカメラで撮ったものの再現性がしっかりしてないとレタッチして他のモニターやプリントで見るととんでもなく違ったものになりかねない。そこで最後にEYE-ONE Display2を使って色の再現性と色域をチェックしてみた。
Flex Scan HD2451W
Flex Scan T966
Flex Scan L567
左に表示されているグラフは補正した状態を表している。HD2451Wはほとんど直線で補正されず優秀なことがわかる。CRTのT966だと各色ズレが生じて曲線も蛇行している。L567は暗い所で上方に補正されている。色域はT966が他に比べ狭く、HD2451WとL567だと同じ広さだが多少分布域に差が出た。
ここまできれいな直線の製品はそうない。一つ上のランク・・つまりプロ向けの製品に引けを取らない再現性である。これだけ見たら色や階調が大事だと思う人はCRTは卒業できるだろう。そして液晶ならば何でも良いという考えも危険なことが十分理解できると思う。
今回は色と階調についてテストしてみたが、次回は使い勝手などのレポートだ。お楽しみに。
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雑誌、広告等の仕事の傍ら、ライフワークとして自然や 癒される空間を求めて国内外を旅している。撮影対象はICチップからアフリカ象まで幅広い。デジタルカメラは1995年からコンパクトからプロ機までテストレビューに携わる。自宅ではフェレットをこよなく愛し、我が家で生まれた5匹と暮らす。いつかフェレットの写真集を出そうと企み中。HPは http://homepage2.nifty.com/nao-w/