第10回PFFスカラシップ作品『空の穴』プレミア上映が行われる
6月29日(金)、『鬼畜大宴会』で衝撃的デビューを果たした熊切和嘉監督の待望の第2作『空の穴』のプレミア上映が、有楽町・東京国際フォーラムで行われた。これは今年、第23回を迎えた「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」のプログラムの一つで、当日は熊切監督をはじめ、出演の寺島進、菊池百合子らが舞台挨拶を行った。
『空の穴』は、北海道を舞台に孤独な中年男の不器用な恋愛を描いた作品。すでに海外では第30回ロッテルダム国際映画祭(国際比評家連盟賞スペシャルメンション授与)、第51回ベルリン国際映画祭に正式招待され、高い評価を得ている。日本ではこの日が初上映とあって、会場にはたくさんの映画ファン、また映画監督の黒沢清や是枝和裕といった映画人も集まり、ほぼ満席。作品への期待の大きさをうかがわせた。
上映に先駆けて行われた舞台挨拶には、熊切監督と出演者4人が登場。「この人で情けない中年男の恋愛映画を撮りたかった」と監督が出演を熱望したという寺島進、オーディションで抜擢された新鋭、菊池百合子、前作『鬼畜大宴会』に続いての熊切作品出演となる澤田俊輔、ウルトラマン・ティガなどのスーツアクターとしても活躍の権藤俊輔の4人。緊張した面持ちで必死に挨拶する初々しい菊池をはじめ、少し照れた様子の5人にはファンから温かい拍手と花束などが送られた。
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(写真:『空の穴』2001年・127分/ (C) ぴあ=フラミンゴ=ビームエンタテインメント) |
映画『空の穴』は、学生運動の仲間たちがアパートの一室で繰り広げる狂気を描いた前作『鬼畜大宴会』とは一転して、純朴で切ない恋愛映画。上映中、所々にちりばめられたユーモラスなシーンで、会場はたびたび笑いに包まれた。また、広い北海道の青空をスクリーンいっぱいに映し出したラストには、爽やかさと力強さが感じられ、"再出発"というテーマを観客に軽やかに伝える秀作だ。
映画上映後は熊切監督のティーチインが行われた。やはり観客の一番の質問は前作との大きな違いだが、それに対し、「一つのジャンルではなく、いろいろなタイプの作品を撮りたい」と監督。また、「主人公より年下の自分だからこそ、ヘンに美化せずに男のダメさを描くことができた」と語るなど、質疑応答は約30分間行われた。席を立つ観客はほとんどなく、また、一つ一つの質問に誠実に言葉を探しながら答える監督の姿が印象的だった。
映画は9月中旬、渋谷・ユーロスペースを皮切りに、全国で公開予定。
●熊切和嘉(くまきり・かずよし)
1974年生まれ。大阪芸術大学卒業制作として撮った『鬼畜大宴会』が、1997年のPFFアワードで準グランプリを受賞。一般公開もされ大ヒットを記録する。
●PFFスカラシップとは
自主製作映画のコンペティションである「PFFアワード」で入賞した監督の才能をさらに伸ばし、プロとして活躍する監督に育てることを目的としたもので、各入賞監督から募った新作の企画・脚本の中から選ばれた作品を、PFFのトータルプロデュースのもと長編劇場映画として製作するというもの。1984年からスタートし、これまでは橋口亮輔監督『二十歳の微熱』、矢口史靖『裸足のピクニック』、古厩智之『この窓は君のもの』など話題作を提供してきた。
【関連サイト】
・第23回ぴあフィルムフェスティバル
http://www.pia.co.jp/pff/23rd/
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