第１１回：『贅沢な骨』
つぐみよ、杉作Ｊ太郎と永瀬正敏に揉まれたことを誇りに！

　基本的に敬称略してきた当連載だが、“杉作Ｊ太郎”だけは、ボクが敬愛して止まない人物なので“さん”付けさせていただきたい。マンガを筆頭にコラム、テレビ出演など、ファンを自称するボクでさえ把握できないほど雑多で、気の遠くなるような仕事量をこなすハードワーカー、それが杉作さんの実像。その辺にも憧れるわけだが、加えてあの男くさい風貌（金正男と思われる不法入国者似）や気さくな喋りといった面にも惚れ惚れする。それでいて実にナイーブなハートの持ち主で、時に「いや～、田舎に帰って古本屋やろうと本気で考えているんですよ」なんて口にする。ボクの憧れる男性像が杉作さんには詰まっているのだ。

　杉作さんは映画出演もいくつか果たしている。そのひとつが『ねじ式』（98年）。原作・つげ義春、監督・石井輝男、そして主演・浅野忠信……これだけで、かなりきな臭い映画だと察していただきたい。表題の『ねじ式』以外にもつげ作品がオムニバス形式で織り込まれており、杉作さんが出演しているのは『もっきり屋の少女』のパートで、山奥にある飲み屋を切り盛りする少女“チヨジ”の乳首を揉みまくる酔客を熱演している。このシーンが鮮烈（ていうかエロ）な理由は、自分を投影しやすい杉作さん演じる客が、おかっぱの良く似合う純朴なチヨジを弄ぶ……というシチュエーションがたまらないからである。

　そのチヨジを演じていたのが、『贅沢な骨』での“コノ娘”つぐみである。久々に見た彼女は、少女時代のトラウマで自分を汚い存在としか思えない女性となっていた（髪型のせいもあって一時期の遠藤久美子に似てます）。つぐみと言えば、『月光の囁き』（99）で見せた眼帯姿にときめいたマニアもいたようだが、今回はそれを受け継ぐかのように、骨折した足に包帯を巻き、松葉杖をつくシーンが頻出する。果たして、眼帯や包帯といったアイテムが“コノ娘”に直結するかどうかは疑問だが、少なくとも絶対数の需要はあるはず。一般向けとしては、ベッドシーンがかなりエロく仕上がっているので、そちらをお楽しみに。

　もうひとりのヒロイン・麻生久美子もホテトル嬢という役柄だけあって、絡みのシーンが幾度も登場する。いわゆる“トップ”は見えないものの、下着はあらわだ。彼女の数多い出演作の中でも、もっとも官能的であろう演技も拝見できる。

　物語には、彼女たちふたりのヒロインと絡みのある男が登場する。そのおいしい役を演じる男優、それは永瀬正敏だ。ボクにとっては「またか！」である。彼は『みゆき』（83）でも、宇沙美ゆかりと三田寛子というふたりの“みゆき”を両天秤にかけるおいしい役柄だった。公開当時のボクたちの周辺では、「だから、妹の方が絶対いいって！　大丈夫、血はつながってないんだから」などと、『真剣10代しゃべり場　今日のテーマ“恋人にするならどっちのみゆき？”』といった議論を毎日のように交わしてた。その時代のボクにとって、実写映画版『みゆき』はアニメとのギャップ以上に、永瀬へのジェラシーが印象として残ってしまった。今回、それらの思い出が、18年ぶりに津波となって押し寄せたのだ。『みゆき』も『贅沢な骨』も、永瀬ではなく仮に杉作さんだったとしたら、ジェラシーどころか、完全に杉作さんとシンクロし、ウハウハしながら鑑賞できたことであろう。

　そんな「モテたくて」な自分を押し殺し、冷静になってつぐみについて考えると、ベッドシーンの経験値が相当高い女優なことに気がついた。なぜなら杉作さんと永瀬という両極端なタイプから乳房を揉まれた女優など、つぐみ以外皆無だからだ。彼女がこれからどんな男優と絡もうと、杉作さんと永瀬の間に位置するであろう。この経歴を誇りとして、これからも女優の道を突き進んで欲しい。特にベッドシーン!!

（佐藤ろまん）

【関連サイト】
□『贅沢な骨』OFFICIAL SITE
http://www.movie.co.jp/zeitaku/