一ヶ谷兼乃の「AIBO EXPO '99」レポート
■ AIBO EXPOとは?
AIBOといえば、知る人ぞ知るソニーが開発した自律型の犬型エンターテインメントロボット。6月1日の発売日には、25万円という本体価格ながら、インターネット上で限定販売された3000台を、20分ほどで売り切ってしまって話題になった。
雑誌やTVなどでのAIBOの露出度は高く、知名度が高いわりに、なかなか実際にAIBOに触れることはできなかった。そうした要望に応える形で開催されたのが、10月30日、31日の両日にわたって原宿のハナエモリビルで開催された『AIBO EXPO '99』だ。
『AIBO EXPO '99』では、これまでAIBOに触れる機会のなかった方やオーナー向けに、さまざまな展示が行なわれた。さほど広くはない会場では、先日発表されたスペシャルエディション「ERS-111」が一般向けに展示公開されたほか、前モデル「ERS-100」やAIBOが製品化されるまでに製作された試作モデルなどの展示、AIBOオーナーが連れてきたご自慢の愛犬によるレースなどが行なわれた。
97年に製作された試作モデル |
98年に製作された試作モデル1 |
98年に製作された試作モデル2 |
98年の試作モデルの解説パネル |
■ PRESS DAYの模様
以下では、AIBO EXPOの一般公開に先だって10月29日に開催されたPRESS DAYの模様を紹介する。
PRESS DAYでは、パソコン関連媒体だけでなく、テレビ局や新聞社をはじめとしたさまざまな関係者でごった返していた。また、このPRESS DAYには、AIBOの初代モデル「ERS-110」のオーナーも招待され、AIBOレースへの開催、オーナー同士の交流が行なわれた。
予定時刻より15分ほど遅れて、プレゼンテーションステージが始まった。オープニングでは、グッドデザイン賞の受賞報告があり、AIBOユーザであるパフィーと渡辺満里奈からのビデオレターも紹介された。
パフィーのビデオメール |
渡辺満里奈のビデオメール |
スクリーン中心のパフォーマンスが終わると、このAIBOを世に送り出したソニーのデジタル クリーチャーズ ラボラトリー所長 土井利忠常務からの挨拶と共に、前日フランスで行なわれた「ERS-111」の記者発表会の模様が報告された。「これまでヨーロッパで行なわれたどのソニー製品の発表会よりも盛況であった」とのコメントがあり、今回はじめてヨーロッパでも発売されるAIBOへの自信を覗かせた。また、土井所長からは「1980年代はコンピュータの時代、1990年代はインターネットの時代、次には AIBOをはじめとするエンターテイメントを目的としたデジタルクリーチャーの時代が来るだろう」との発言もあった。
続いて、スペシャルエディションのプロモーションVTRがメインステージ上のスクリーンに映し出された。数分にもおよぶVTRは、新型AIBOが人の手から手に受け渡され、人との触れ合い、コミニュケーションを前面にイメージされた内容のものだ。VTRが終わるとステージの両袖から新型AIBOが登場した。
AIBOが登場し、ステージ上のディスプレイに置かれると、AIBOスペシャルサポーターの浜崎あゆみが登場。独特の語り口で、AIBOへのコメントが行なわれた。今回のAIBOには、グレイシルバーとメタリックブラックの2色が用意されており、ソニーから彼女の希望したグレイシルバーを贈呈。希望理由は「メタリックブラックのAIBOは、ちょっと恐い」ということであった。AIBOを手にとってのトークの最中には、AIBOが動き出す場面があり、まだまだAIBOに慣れておらず困ったような表情も見せてくれた。
ソニー常務 土井利忠氏 |
AIBOをプレゼントされた浜崎あゆみ |
RoboCup-99での「Sony Legged Robot League」 で優勝したフランスのパリ・ロボット研究所のチーム「三銃士」によるデモンストレーションでは、実際の試合の場面のVTRを交えて解説がなされた。「Sony Legged Robot League」で行なわれた競技とは、AIBO 3体を1チームとしたミニサッカーゲーム。3体のAIBOは それぞれゴールキーパー、ディフェンダー、フォワードと機能するプログラミングが行なわれ、自律してゲームを行なう。VTRや「小さな三銃士」と呼ばれるAIBOを使ったデモストレーションを見ると、「これがAIBOなのか」と思わせるスピーディな動きで、ゲームが行なわれた。
ロボカップの試合VTR。 三銃士チームは圧倒的な強さ |
優勝チーム「三銃士」。 パリ ロボット研究所のチーム |
(ゴールキーパー) |
(フォワード) |
優勝したAIBOを使ってのデモ。ゴールキーパーはボールがゴール近くにくるまでは、ゴールの前に留まっている。ボールが近くにくると、ゴールを背にしてボールを押し出す。フォワードは、遠くにあるボールに近づき、うまくまわり込み、相手ゴールにボールを押し込む |
その他にも、競技のために開発された技術のデモが行なわれた。1つはAIBOをブランコに乗せ揺り動かすと、内蔵された加速度センサーや角速度センサー、視覚を元にタイミングよく重心移動を行ないAIBO自身がプランコを漕ぐもの。もう1つは、AIBOを乗せた床が斜めになっても、内蔵センサーからの情報により、4本の足を自在に畳むことによって、本体を水平に保とうとするものであった。プログラミングによってAIBOは、非常に高度な自律動作を行なうことができることをアピールしたデモンストレーションとなった。
|
|
床が傾いても、4肢を上手に使って、バランスをとっている。傾きに対して、機敏に反応している |
ブランコのデモ。最初は小さな揺れが、タイミングの良い体重移動を行ないAIBO自身が漕ぐことで、揺れがだんだん大きくなっていく |
その後は、ERS-110オーナーによるAIBOレースが開催されたり、会場内でオーナー同士の交流が行われた。集まったAIBOオーナーを見る限りでは、男女の比率は同等か女性が若干多かった。また、AIBOの価格を反映してか、10代のオーナーは少なく、20代後半から30代、40代が中心となっている。連れられてきたAIBOは、自分なりの工夫をされているものが多く、リボンやバンダナをつけたものから、カッティングシートで鮮やかに彩られたものもあった。生きた犬猫用のキャリアボックスや可愛いバスケットで会場に持ち込む場面も見られ、単にロボットとしてではなく、ペットに極めて近い感覚でAIBOを楽しんでいるようであった。
|
|
AIBOレース。A/B/C/Dの4枠で同時にスタート、最初にゴールしたAIBOが勝利者。AIBOはピンクにもっとも反応するために、吊り下げたピンクのボールを使ってレースを行なう |
ステージ前のロボカップデモ用のスペース。オーナーが持ち寄ったAIBOが放し飼いされていた |
■ スペシャルエディション ERS-111
新AIBO「ERS-111」と前AIBO「ERS-110」との外見からの違いは、耳が若干大きくなり形状が変わった、シッポが4関節であったものが短くなり3関節となった、色が変わったということである。また、ファームウェアが更新され、動作やセンサーから受け取った情報の処理なども変更されている。各ブースでの新AIBOを見る限りでは、動き自体も機敏になっている印象を受けた。
新型のAIBO2体 |
初代AIBO ERS-110 |
現時点では、ERS-110ユーザへのERS-111同等のファームウェアの公開などは行なう予定はないが、既にERS-110ユーザからのリクエストは数件入っており、ソニーサイドでは検討を行なっている最中だということであった。
また、ソニーでは、AIBOに関しての情報はWEBページだけでなく、直接ユーザーへ電子メールを送付して行なっている。AIBOに関してのリクエストや意見に関しては、積極的に検討していきたいとのことで、このような形態を採用している。ユーザー登録なども、インターネットで購入された情報を元に行なわれる。AIBOを譲り受けたり、譲渡された場合にも「AIBOカスタマーリンク」へ連絡し、オーナーであることが確認されれば、ファーストオーナー同様のサービスを提供されるとのことだ。
◎関連URL
AIBO(ERS-110)プレスリリース
http://www.sony.co.jp/soj/CorporateInfo/News/199905/99-046/index.html
AIBOスペシャルエディションのプレスリリース
http://www.sony.co.jp/soj/CorporateInfo/News/199910/99-076/
AIBO製品情報
http://www.sony.co.jp/soj/aibo/
(一ヶ谷兼乃)
|