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3月の注目Palmware情報

牟田嘉寿(Muchy)
Webサイト「Muchy's Palmware Review!」を運営。情報の早さ、使い方の解説がていねいなことでは定評があり、Palmユーザーならぜひ活用したいサイトだ。著書「WorkPad最強化パック600(アスキー出版局)」のほか、多くの雑誌に執筆。


■ カラーデバイス

 パームコンピューティング社が日本で設立され、海外に続き、日本でもPalm IIIcとPalm Vx(共に日本語版)が先日発表されました。スペックは既に報じられた通りですが、なんといっても、パーム初のカラーデバイスである、Palm IIIcが話題をさらいました。日本IBM社のWorkPad 30Jよりも少しだけ縦に長く、重くはなりましたが、カラー液晶は想像していた以上の視認性です。

 解像度を320×320ドットにした方が実用的であるとか、電池の保ちが短くなり使い勝手が悪くなっても仕方がないとか、パームのカラー化には以前より賛否両論がありましたが、カラーデバイスの登場と共に当然予想されるカラーアプリの登場で、パーム市場が活性化されればそれはそれで良いことです。

 現に、後でご紹介するカラーアプリはどれも素晴らしいもので、カラーの魅力を味わうことができます。また、Windows CEやザウルスなどと比べ、どうしても店頭で並んだときのインパクトに欠ける面がありましたが、このカラーデバイスにより、今までパームに見向きもしなかった方が手にとって実際に試すチャンスが増えれば、パームの利用者層の広がりに一役買ってくれることでしょう。

 カラーデバイスであるPalm IIIcは、英語版が既に海外で発売されており、山田 達司氏のJ-OS IVを使えば日本語化することができます。ただし、初めてパームを購入される方には、4月半ばからの発売を予定されているPalm OS日本語版を搭載したPalm IIIc日本語版を待った方が良いでしょう。

▽J-OS IV
http://muchy.com/review/josiii.html


■ カラーアプリ(ゲーム)

 カラーの魅力を引き出すのは、なんといってもゲームです。ここでは、カラーに対応したゲームをいくつかご紹介させていただきます。

 まずは、Astraware Software社の秀作ゲーム3つが早速カラーに対応しています。浮遊感がなんともいえないシューティングゲームAstroids、トランポリンで火事から人を救うアクションゲームFire!、そして、完成度の高い縦スクロールシューティングゲームZap!2000は、Palm IIIcを手に入れたらまず遊んで欲しいゲームです。どれもゲームボーイ顔負けの完成度を誇ります。

 そして、Palm IIIcにバンドルされるCD-ROMに同梱されることが決まったリバーシゲームpotelo(FocV Project)の完成度の高さには、目を見張ります。カラーテーブルで盤や駒の色を変更することができたり、メッセージがすべて日本語化されたりと、わかりやすさは同種のゲームの中でも群を抜きます。

 また、全国のお父さんパームユーザー必携の将棋ゲームといえば、竹前 昌明氏のPocket将棋です。こちらもカラーとなり、駒や盤が非常に見やすくなっています。特に盤の色が木目調になったお陰で、将棋独特の雰囲気を出すことに成功しています。

 さらに、パズルゲームの分野では、Konstantine Klyatskin氏のLines COLORが挙げられます。縦横斜めに5つ同じ色を並べれば消えるという単純なルールながら、奥の深いゲームに仕上がっています。

 最後に、カードゲームでは、Pyramid Solitaire(Seahorse Software社)とKlondike(Electron Hut)をご紹介させていただきましょう。Klondikeは、Windows 95/98にも同梱されていることでも有名です。手前にある山をうまく利用して、AからKまでを順に右上にある4つのカードボックスに並べていきます。クリアするには、高い戦略性を要求されます。一方で、Pyramid Solitaireは、足して13になる組み合わせを作り、ピラミッドを崩していくという単純明快なゲーム。気分転換には必携の1本といえるでしょう。

 このように、カラーは、ゲームというジャンルで特に威力を発揮します。その魅力を知ってしまったら、モノクロ液晶にはもう戻れないでしょう。

▽Astroids
http://muchy.com/review/astroids.html
▽Fire!
http://muchy.com/review/fire.html
▽Zap!2000
http://muchy.com/review/zap2000.html
▽potelo
http://muchy.com/review/potelo.html
▽Pocket将棋
http://muchy.com/review/pocketshogi.html
▽Lines COLOR
http://muchy.com/review/linescolor.html
▽Pyramid Solitaire
http://muchy.com/review/pyramidsolitaire.html
▽Klondike
http://muchy.com/review/klondike.html


■ カラーアプリ(実用系)

 実用系のカラーアプリも続々と登場しています。ここでは、特に便利なカラー対応アプリをいくつかご紹介させていただきます。

 まずは、Palm IIIcのCD-ROMに標準搭載されているClub Photo社のAlbum To Goのカラー版です。このソフトを使えば、家族や恋人、お気に入りの場所などの写真を持ち運ぶことができます。しかもモザイクやラインアップ/ダウンで切り替わるスライドショー機能付きと、普通の写真ではまずできない方法で閲覧することができます。カラーならではの実用アプリです。直感的な操作で、標準搭載されてしかるべきソフトといえます。

 次に、Kanai氏の力作、世界の情報を一手にまとめたAbroad!、日本で役立つ様々な情報をまとめたJ-Info、そしてその簡易版J-Mateがカラーに対応しています。世界地図やアイコンがカラーとなることで、より直感的な操作が可能となりました。実用性に、カラーという要素が加わり、最強の情報ソフトとなったといえるでしょう。

 そして、安く買おう会の秋葉マップでは、秋葉原の地図がエリア別にカラーとなりました。今までは、アルファベットが広域図と詳細図を結ぶ唯一の要素だったものが、これにカラーも加わったことで、より一層各店舗を探しやすくなっています。秋葉原へ行かれる方には必携の1本ですね。

 最後に、カラー対応のドローソフト、TealPaint(TealPoint Software社)とBugMe!(Haus Of Maus)を挙げましょう。TealPaintは、本格的なお絵描きソフトです。10の編集ツールと、複数のデータベースへの対応、拡大編集機能、スクリーンショット機能搭載など、少し動作は重めですが、お絵描きとしての機能は、これ以上ないほど充実しています。一方で、BugMe!は、お絵描きというより、手書きメモソフトといった方がしっくりきます。基本は手書きメモを描いた後に、簡単な操作でアラームを鳴らすように設定できます。プレビュー機能が秀逸で、カラー対応といっても、あくまで実用性を重視している点に好感が持てます。

 このほかにも、iambic Software社のTinySheetもそのカラー対応版が、現在鋭意開発中です。正式版が楽しみですね。

 このように、実用系のアプリの中でも、写真や地図、お絵描きという分野では、カラーは重宝します。各開発者が、趣向を凝らして自らのソフトにカラーという要素を追加して、より分かりやすくなっていくさまは、拝見していて非常に魅惑的です。

 逆に、標準搭載のアプリがほとんどと言っていいほど、カラーを活用していないのが残念。サードパーティに任せるという割り切りの良さとも取れますが、店頭でまず実際に試すのはこの標準アプリだけに、例えば、予定表の土曜と日曜をそれぞれブルーとレッドにしたり、To Doの期限期限が過ぎたものは色が変わったりと、もう少し工夫して欲しかったところです。

▽Album To Go Color
http://muchy.com/review/albumtogocolor.html
▽Aborad!
http://muchy.com/review/abroad.html
▽J-Info
http://muchy.com/review/jinfo.html
▽J-Mate
http://muchy.com/review/jmate.html
▽秋葉マップ
http://muchy.com/review/akibamap.html
▽BugMe!
http://muchy.com/review/bugme.html
▽TealPaint
http://muchy.com/review/tealpaint.html


■ 通信アプリ

 パーム市場の盛り上がりと共に、通信関連でも、さまざまなアプリが登場しています。ここでは、今月注目の通信アプリについて、いくつかご紹介させていただきます。

 今月の一押し通信アプリは、薄井智雄氏のDataDive!です。基本的な使い方は、データベースを出先で簡単にダウンロードし、小説やソフトなどを利用できる点にあります。このときパソコンは一切必要ありません。他にも、任意のデータベースをアップロードしたりと、その活用範囲は非常に広いです。

 MsgAgentは、メールやネットニュース閲覧・編集機能を内蔵している高機能ソフトです。動作がかなり重めなのが気になりますが、なにより、ネットニュースのPalmwareで、初めて日本語を正式サポートしているものが登場した意義は大きいです。フィルタ機能など、一部実装されていない機能があり、正式版で完成度が一層高まることに大いに期待しています。

 また、Mocha W32 PPPも、最新版ではさまざまな拡張が行なわれ、ほとんどのソフトで使えるようになっています。ユーザーインターフェイスも一新され、より使いやすくなりました。ダイアルアップルータ感覚で、クレイドルに置いたPalmをパソコンのモデムやLANでネットワークに接続できる感覚は新鮮。SnapConnectなどのパーム専用モデムを購入される前に、通信アプリを試されたい方は是非使ってみましょう。

▽DataDive!
http://muchy.com/review/datadive.html
▽MsgAgent
http://muchy.com/review/msgagent.html
▽Mocha W32 PPP
http://muchy.com/review/mochaw32ppp.html


■ 予定表アプリ

 ToriAheadsは、手書きメモでさっとメモしておき、あとで清書して標準搭載のアプリの項目を作成できる支援ソフト。ボタンが画面に用意されており、非常に直感的で使いやすいPalmwareに仕上がっています。

 iambic Software社のAction Namesは、最新版では予定表とTo Doに加え、アドレスの機能も加わっています。英語版と比べ、アドレス機能でやや機能面で劣りますが、これから段々と補完していくとのこと。日本独自の機能も搭載されており、本格的に日本市場へ参入しようと考えている海外の会社の熱意を感じます。

 年間カレンダーが欲しい方には、YewCalも便利。一画面にコンパクトに年間カレンダーが表示され、上下ボタンで前後の年へ移動できる快適操作性が良いです。

▽ToriAheads
http://muchy.com/review/toriaheads.html
▽Action Names
http://muchy.com/review/actionnames.html
▽YewCal
http://muchy.com/review/yewcal.html


■ DAソフト

 まずは、DAランチャーであるDAL環境設定版(山田達司氏)です。今までは、HackMaster(DaggerWare社)が必要で、アップデートや削除時などにさまざまなTipsが必要でしたが、このDAL環境設定版では、環境設定のDALパネルとして組み込まれるため、一切のTipsが必要ありません。ただ、DAL環境設定版と、使いたいDAソフトをインストールするだけと、敷居が非常に低くなりました。

 DAソフトも、オートオフまでの時間を自由に変更できるAOCtrl DA(北村珠一氏)など、非常に充実してきています。

▽DAL環境設定版
http://muchy.com/review/dalkankyosettei.html
▽AOCtrl DA
http://muchy.com/review/aoctrlda.html
〇DAソフト一覧
http://muchy.com/review/dasoft.html


■ ユーティリティ

 日本語入力支援ソフトとして、PO-BOXをご紹介させていただきます。50音のソフトウェアキーボードでひらがなを入力するか、手書きでキーボードエリアにひらがなを描くかで、次々と候補が絞り込まれていきます。標準の変換辞書はそれほど賢いものとはいえませんが、ない単語をその都度登録していくことで、学習機能の相乗効果で使い手に馴染んだものへと段々と進化していきます。

 また、AutoSyncというユーティリティが、今月大幅な機能強化と共にバージョンアップしました。指定した時間、曜日に自動的にローカル/モデムHotSyncを実行するHackソフトで、設定した時刻にPalmシリーズの電源が入っていなくても自動的に電源が入り、HotSyncを自動実行してくれます。
 例えば、CHEEBOW氏のPiloWebで、インターネットから必要な情報の取り込みをタスクマネージャ等で自動で行なうようにし、その後このAutoSyncを使い自動でHotSyncするように設定しておけば、朝起きたらHotSyncも終わってWebの情報が既にPalmに流し込まれているという面倒臭がり屋さんには夢のような使い方ができるわけです。

▽PO-BOX
http://muchy.com/review/pobox.html
▽AutoSync
http://muchy.com/review/autosync.html
▽PiloWeb
http://muchy.com/review/piloweb.html


■ ハードウェア&サービス

 今月下旬に発売された赤外線ポート付き携帯電話NM502iは、NM207との互換性が非常に高く、過去の通信ソフトという資産をそのまま使え、さらには本体のみならずACアダプタまでも小さく軽く薄くなり、極めつけはiモードと着メロ機能搭載、ハイパートーク対応で音質向上と、NM207で不満だったほとんどすべての部分が改良されています。面倒なケーブル要らずで、気軽にネットワークに接続できるという素晴らしさは、このNM502iでしか味わえません。

 また、先月ご紹介させていただいたTRGpro専用アプリとして、DTMF KeypadとCF2DOCが登場しています。
 DTMF Keypadは、プッシュ回線の固定電話からダイヤルできるソフトです。アドレスから任意の電話番号を呼び出すこともでき、電話機のプッシュボタンを押す必要がなくなります。TRGproのスピーカー機能をうまく活かしたアプリといえます。
 CF2DOCは、コンパクトフラッシュにあるテキストファイルをDOC形式に変換することができます。例えば、Windows CE機などで編集したテキストをコンパクトフラッシュ経由で、Palmで閲覧することができるわけです。DOC形式からテキスト形式に変換することができないのが残念ですが、バージョンアップによる機能追加に期待しています。

 キーボードでは、ThinkOutside社から折り畳みキーボードが登場しています(Visor用、Palm V用、Palm IIIc用があります)。かつてのバタフライキーボード(ThinkPad 770)を思わせる優れたギミックは、Palmユーザーのみならず、広く注目を集めることでしょう。ソフトウェアドライバと共に、キラーハードといえるほどの高い完成度を誇ります。

 そして最後に、PDA工房のボタン交換サービスをご紹介します。WorkPad c3の良くいうと渋いデザイン、悪くいうとオヤジ臭いデザインを、自分の気に入ったカラーのボタンへ変更できます。また、プラスチック製のボタンは、金型を一から起こして作っており、細部にまでこだわっています。全9色から選択できますので、興味があればサービスを受けられてはいかがでしょうか?

〇NM502i
http://muchy.com/review/nm502i.html
〇TRGpro
http://muchy.com/review/trgpro.html
▽DTMF KeyPad
http://muchy.com/review/dtmfkeypad.html
▽CF2DOC
http://muchy.com/review/cf2doc.html
〇Stowaway for Visor
http://muchy.com/review/stowaway.html
〇Stowaway Keyboard
http://muchy.com/review/stowawaykeyboard.html
〇ボタン交換サービス
http://muchy.com/review/buttonservice.html


■ 終わりに

 昨年の連載記事第1回で、筆者が予想したとおり、今年、Palm市場がかつてないほど盛り上がりつつあります。2000年の1発目として、先日発表されたパーム市場初のカラーデバイスの登場が、各メディアを賑わしました。そして他のPalm OSをライセンスされている各メーカーの動きもまだまだ静かですが、その足音は確実に近づきつつあります。

 そんな中、筆者はますます今年のPalm市場の成功とその広がりを確信してやみません。パソコンでは大きすぎ、携帯電話では小さすぎ……、この2つの間を埋めるのが、PDAの役割です。なかでも、Palmデバイスほど、パソコンとの連携が簡単で、カスタマイズ性に優れ、そして携帯性に優れたPDAは、他にはありません。

 Palmがこの路線を維持するためにも、豊富な機能は要らないと考えます。あくまで他の周辺機器を利用する形、つまり無線によるデータのやり取りを可能にするBluetoothのような技術で携帯電話との接続を可能にしたり、コンパクトフラッシュスロットを搭載したりメモリースティックを搭載したりして、パソコンや他のPDAを利用するような存在であり続けて欲しいと切に思います。そして、Palm市場の広がりと共に、各メーカーのPalmデバイスを活かす、魅力的な周辺機器の登場に期待します。ソフトウェアとハードウェア、双方の盛り上がりが、Palm市場の確固たる礎を築くためにはどうしても必要なのです。

 最後に、本連載は今回でひとまず終了となります。今回、Webメディアでは、Muchy.com以外で初めて連載という形で執筆させていただきました。PDA全般を取り扱い、Palm以外のPDAにも興味がある方がご覧になるモバイルセントラルで、Palmに関する記事を自由に書く機会を与えてくださったインプレスの工藤さん、ならびにモバイルセントラルスタッフの方々に感謝します。

 今度は「Muchy's Palmware Review!」でお会いしましょう!

(牟田嘉寿)
2000/03/30


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