SpeedStepテクノロジーPentium搭載ThinkPad600X
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正雪
普段は愛機ThinkPad 600を肌身離さず持ち歩く、「どこでも同じ環境でパソコンを」を信念としているヘビーキャリアーのモバイラー。あとはThinkPadでゲームができれば、というのが現在の願い。最近はパソコンでのDVD環境構築を楽しんでいる。
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毎年恒例のインテルのCPUの発表が、今年も1月に行なわれた。目玉はなんといってもSpeedStepテクノロジーを搭載したモバイルPentium IIIである。バッテリ駆動時とAC電源時とで消費電力を切り替える、モバイル環境での使用を考慮したCPUだ。今回はこのCPUを搭載したIBMのThinkPad600X(2545-5FJ)をレポートする。
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最新鋭のThinkPadと言ってもデザインは2年前と全く変わらない
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■ ThinkPad600Xの“X”の意味
ご存じの方も多いと思うが、ThinkPadの型番には独特のパターンがある。例えばThinkPad560を見てみると560、560E、560X、560Zという型番でモデルチェンジを行なっている。これらのモデル間の主な変更点はマザーボードなど内部的な部分で、外観にはほとんど変更が見られない。同一デザインのまま3年近く一つの商品をもたせるのは、海外のブランド物の製品では良くあることだが、押さえるべき所をきちんと押さえているという事のあらわれであろう。
このモデルチェンジの傾向は、全てのモデルに当てはまるわけではないが、大方以下のような傾向が見られる。
○○○ | 無印とも呼ばれ最初のモデル |
○○○E | マイナーチェンジ版。若干の機能拡張と細かな改善がある |
○○○X | 大幅な機能拡張がある |
○○○Z | とどめのバージョン、完成されている |
通常、モデル「Z」はデザイン的に目新しさが無くなるためにあまり注目される事はないのだが、560Z、380Z、770Z(日本未発表)など名機が多い。770Zなどは、(一年前ではあるが)当時の最高の技術を投入した、まさにフラッグシップと言えるモデルである。但しお値段の方も約100万円とそれこそ高嶺の花のマシンである。またモデル「X」は本体自体のアーキテクチャーが前のモデルに比べ大幅にアップしている場合が多い。実際「無印」と「E」の差より「E」と「X」の差は遙かに大きい。その性能差は今回の「ThinkPad600X」においてもあてはまっている。
■ 筐体は同じだが…
ThinkPad600Xは、従来モデルと外観ではほとんどその違いを区別できない。蓋をオープンしたときに見える「600X」のプレートと、アームレスト上の「Intel inside Pentium III」のロゴくらいからしかそれを判別できない。当然好評であったキーボードや高級感を出すラバーコーテング的質感のボディもそのままである。筆者はこの質感が大好きである。以前はThinkPad535やThinkPad560でも採用されていたこのコーティングが最近のThinkPad240やThinkPad570では見られないのが残念である。
機能的にはCPUを始めかなりの改良が加えられている。今回はマザーボードから、全く別設計になっているようである。そのためなのか、その筐体を裏返してみれば、膨らみの部分が本体後部まで広がっているのがわかる。この膨らみは、よく鞄から本体を出し入れする人は、手に持った感じが今までのThinkPad600と明らかに違っていることで良くわかるだろう。ほんの数ミリの厚みの違いなのだが慣れという物は恐ろしい。
裏面をよく見ると、今回新たに蓋が一つ増えている。実はこれがThinkPad600Xの大きな特徴の「ミニPCIスロット」である。蓋を開ければ中にはLucentのモデムが挿さっている。もともとThinkPad600シリーズはウルトラスリムベイを採用するなど、拡張性に優れているのが魅力であった。今回のミニPCIスロットの採用により、また一つその可能性が開けたのは非常に喜ばしい。今後このミニPCIが準規格化され、オプションが出てくるようになれば結構面白くなるだろう。気になったのは、デザイン的な点もあるのだろうが、このミニPCIのモデムカードから本体のモデム用のモジュラーのコネクターまでケーブルが内部的に引き回されていることである。
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裏の微妙な膨らみと蓋が今までのモデルとの違い(左が600E、右が600X)
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このスロットがミニPCIのソケットでLucentのモデムが挿さっている
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今までのオプションはメモリを除いて使用可能だ(左からウルトラスリムHDDアダプタ、2倍速DVD-ROMドライブ、Zipドライブ)
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今回メモリがPC100対応となり、従来機との互換性がなくなった
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ハードディスクの蓋のようなこんな所にもちょっとした改良がされている(青いプラスチックが補強部分)
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■ 他社のSpeedStepモデルと比較するとIBMのポリシーが出てくる
ThinkPad600Xの機能拡張の中で、モバイル的にもっとも興味深いのがSpeedStepテクノロジーの採用である。実際どの程度使えるのかというところは誰もが気になる所であろう。クロックの変化はCPU測定用のユーティリティ(WCPUCLK)などを使ってみると、ACを抜き差しする度にクロックが動的に変化するのが見て取れる。これでバッテリー駆動時間が何割か延びるというのだから、外部での使用を考えると非常に助かる機能である。
ThinkPad600Xがモバイル環境で使えるかというと2.5kgの重量はかなりのものである。筆者はこの重量に慣れてしまっているのであまり気にはならないが、最近の傾向からいうとちょっと苦しいことは間違いない。ただ、SpeedStep対応の650MHzのモバイルPentium IIIを搭載したノートの中でこのThinkPad600X(2645-5FJ)が意外にも最軽量なのである(3月1日現在)。どちらかといえば、重く大きいというイメージのあるThinkPadにとってこのことはちょっと驚きである。
他社の傾向は14インチクラスの液晶を搭載し、重量3kgを超えるオールインワンタイプ。モバイルとはほど遠い卓上型のパソコンとなっている。またバッテリーもかなりの容量のものを搭載している。聞けばSpeedStepテクノロジーはそのデザインがかなり難しく、そのために筐体が必然的に大きくなるとの説明を聞いたことがある。そんな中で同じ筐体の中に上手くまとめ上げたIBMの技術力・デザイン力には久々に感心した。
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ユーティリティでCPUのスピード変化を実感する(タスクバーに注目)
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■ やっぱり試してみたいDVD
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とうとうRPC-2となってしまったDVDドライブ
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ThinkPad600Xで筆者のモバイル環境はパワー的に格段に向上した。そこで試してみたいのは何といってもDVD再生である。以前のThinkPad600(2545-41J・PentiumII 233MHz)に比較するとその環境は格段に良くなっている。ビデオチップのNeoMagic製MagicGraph 256ZXや6倍速のDVD-ROMドライブも非常に頼もしい存在である。残念なのは以前から話のあったドライブ側のリージョンチェックが今回のモデルから採用されてしまったことだ。ドライブ自体はリージョンコード2の固定ではなく、5回まで変更可能な仕様になっている(5回変更後は変更できない)。変更に関しては、付属のDVD再生ソフト「DVD Express」から行なえる。筆者のように米国仕様のリージョンコード1のDVDも楽しみたいという人にとっては、以前のDVD-ROMドライブがそのまま使用できるので、後は複数のDVD再生ソフトでリージョンを切り替えるという形で使用できる。
DVDの再生に関してはさすが650MHzのパワーといった感じで、再生はスムーズである。ただ付属のDVD Expressはパソコンのバンドルが主であり、性能的には比較的オーソドックスなものである。「ノンインターレース」のサポートなど最近の機能満載のDVDソフトからみるとちょっと寂しい。そこで画質にも定評のある「WinDVD2000」を導入した。設定はかなり負荷をかけるものにしたのだが、特に問題なく動作した。WinDVD2000は今回のバージョンからコントローラーも小さくなり、あまりじゃまな感じがしなくなったのはとても良い。
DVD再生でどの程度バッテリーを消費するのか、このWinDVD2000を使ってテストしたところ、500MHzの省電力モードでは約100分、650MHzの通常モードでは約90分という程度というところであった。まあThinkPad600Xのバッテリー自体はそんなに大きなものではないので仕方ないと言えば仕方ないが、移動中のDVD再生ではやはり「PowerBattery」のお世話になりそうである。
余談ではあるが、今回WinDVD2000の入手に当たって、その制作元Inter VideoのWebサイトから直接購入した。方法としてWebで代金を支払った後、お試し版をダウンロードし、再度Webにアクセスして取得したIDを入力し製品版をロードする。この方法だと、早期に(しかも安価に)製品を入手できる。サポートは英語になるが、製品はちゃんと日本語版を選択できる。また、何度でもダウンロードできるので、うっかり消してしまっても心配はない。インターネットの高速化に伴い、このようなネットでの製品購入・入手方法は今後も普及してくると考えられる。
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付属のDVD Expressではドライブのリージョン変更が可能(ただし5回まで)
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高速CPUには高画質と定評のあるWinDVD2000がよく似合う
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■ Windows 2000で遊んでみる
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Windows2000でやっとACPIをサポート
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ThinkPad600Xシリーズには個人向けモデルと企業向けモデルが存在する。面白いのは個人向けモデルはこの2645-5FJだけである。SpeedStepの機能が付いている最上位機種が個人向けで、通常のスペックのモデルが企業向けとなっている。また企業向けのモデルではWindows NTとWindows 2000のプリインストール版が用意されている。
SpeedStep機能搭載のモデルにはWindows 2000のモデルがないが、これもWindows 2000は企業向きと割り切っているからだと思われる(ただし、米国ではWindows 2000モデルが販売されている)。個人的にはWindows 2000はプラグ&プレイをサポートした事から、企業系のノートユーザーに一番恩恵があると思っている。
Windows 2000の導入に関しては日本IBMのホームページでドライバーが公開されており、ダウンロードすることで簡単にできた。Windows 2000にした時の大きな変化はパワーマネジメントとしてやっとACPIを正式にサポートしたという所であろうか。
■ ThinkPad600Xはフラッグシップと言えるのか?
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12GBのHDDは日立製
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ThinkPad600Xは現行のThinkPadの最上位機種となるモデルである。ThinkPadの700番台がなくなって以来、600番台は一応フラッグシップ的な役割のモデルとなっている。ちょっと残念なのは、このThinkPad600Xがスペック的には同時発表のVAIOなどにかなりの差を付けられているという事である。個人的にはビデオのスペックやHDDの容量など、かつての700番台の様な気合いが感じられないのがちょっぴり寂しい。特にビデオに3D機能が搭載されていないのは残念である。できればミニPCI対応の3Dビデオカードなどをオプションで出して対応などしてくれると非常にありがたいのではあるが……またHDDが日立製というのは実に意外。思わず何故?と考えてしまった。
ただ、以前のデザインを保ち、持ち運びが可能な大きさと重さという点を維持したデザインは、モバイルマシンとしてはそこそこ評価できるものであろう。このThinkPad600Xはこれからも出張のお供として頼りになるマシンとなるであろう。
■日本IBMのPCホームページ
http://www.ibm.com/jp/pc/
■InterVideoのURL(現在は閉鎖中)
http://www.intervideo.com/
(正雪)
2000/03/09
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