電子メールは、現在のビジネスにおいては、電話と同じように重要なコミュニケーション・ツールとなっています。ビジネス関係で会う人の名刺には、メールアドレスが必ずといってもいいほど入っています。
多くの会社では、自社で電子メールサーバーを運用したり、電子メールサービスを提供しているデータセンターを利用したり、インターネットプロバイダー(ISP)のメールを使ったりしています。ただ、名刺をもらったときに、ISPのメールアドレスだったりすると、ちょっとその会社の信用度や先進性を疑ったりします。やはり、電子メールは自社ドメインを取って運用した方が、イメージとして信用度がアップするように感じます。
ISPでも、取得した独自ドメインを使った電子メールサービスを提供しているところはありますが、スパムメール対策やウィルス対策が無かったり、あってもオプションだったりします。また、ISPの電子メールサービスは、個々のユーザーのサーバーメールボックス容量は非常に小さいことが多いので、メールデータは各人のパソコンに受信したのち、すみやかにサーバーメールボックスから消去するという使い方が主となるでしょう。
一人のユーザーが、特定のパソコン1台だけを使っているなら、それでも問題はありません。しかし最近では、一人のユーザーが会社のデスクトップパソコン、モバイル用のノートパソコンなど、複数のパソコンを使用している状態が当たり前になってきています。そうした状態で、ひとつひとつのパソコンに電子メールをダウンロードしていると、メールが分散して、必要なメールがどこにあるのか判らなくなります。やはり、電子メールは一ヶ所に集まっていて、デスクトップパソコンでも、ノートパソコンでも、同じメールボックスにアクセス出来るようにした方が使いやすいのです。
ほかにも、ISPメールは社内のシステムとの統合が難しく、ユーザー管理が煩雑になるなどの問題もあります。となると、やはり社内で独自にメールサーバーを用意し、柔軟に利用したくなります。
ただ、社内で電子メールサーバーを運用するには、ある程度の投資と運用コストがかかります。例えば、社内にサーバーのハードウェアとサーバーソフトウェア、メールサーバーソフトウェアを購入する必要があります。それに加えて、メールサーバー対応のアンチウィルスソフト、迷惑メール防止のアンチスパムフィルターなど、電子メールを運用するだけでも相当のソフトウェアが必要になります。さらに、最近ではコンプライアンスの観点から、古い電子メールでも改ざんができないアーカイブへの保存が求められているため、信頼性の高いメール保存手段まで必要となります。
さらに重要なのは、電話と同じように企業の重要なコミュニケーション手段となっている電子メールは、メンテナンスなどでシステムダウンすることが簡単にはできなくなっているということです。言ってしまえば、1年365日24時間運用する必要が出ています。
さすがに金融機関のオンラインシステムほどの可用性は求められないにしても、しょっちゅうメンテナンスでシステムダウンするメールサーバーは使いモノにならないといわれてしまいます。また、システムダウンしないように運用するには、運用上のコストもかかってしまいます。
■自社でメールサーバーを運用するには、これだけのコストと手間がかかる。クラウドサービスにすれば、自社での負担を軽減できる上に、付随するさまざまなメリットもある
運用コストを考えると、自社で電子メールサーバーを運用できるのは大企業に限られてしまいます。更に言えば、大企業にとっても電子メールの運用は負担の大きなモノになってきています。そこで注目されているのが、電子メールをオンラインサービスとして提供している『Exchange Online』です。
Exchange Onlineは、電子メールサーバーとして定評があるExchange Serverをマイクロソフト社自身がクラウドサービスとして提供しています。このため、社内でExchange Serverを運用するよりも低コストで、信頼性の高い電子メールが利用できます。しかも、ISP提供のメールサービスにくらべて、はるかに多機能な上、社内システムとの統合も容易になっています。
Exchange Onlineのサービスは、今までのデータセンターでの電子メール運用とは違い、マイクロソフト社が提供しているExchange Server上に複数の企業が相乗り(マルチテナント方式といわれている)することで、運用コストを下げています。
このあたりは、全世界に数億台あるWindowsパソコンのUpdateを行うために用意されているWindows Updateやコンシューマー向けのWindows Live、Bingなどの検索サービスなど、膨大なサーバーを全世界規模で安定して運用しているマイクロソフト社ならではです。
マルチテナント方式の電子メールサーバーといえども、自社ドメイン名で電子メールが運用できますし、自社の電子メールが、Exchange Onlineを利用している他の企業とごちゃ混ぜになることもありません。しっかりとしたセキュリティにより、それぞれの企業の電子メールはキチンと区別され保護されています。
実際にメールを利用する社員にとっても、クラウド上にあるExchange Onlineなら、いろいろなメリットがあります。
たとえば、社内運用の電子メールサーバーの場合、外出先のパソコンや携帯電話からアクセスできなかったり、できるとしてもVPNなどの特殊な方式でネット接続してからでないと不可能だったりします。 しかし、Exchange Onlineを利用すれば、出張先などの外部からでも、社内の電子メールサーバーを利用するのと同じような感覚で利用することができます。もちろん、社内の電子メールサーバーと同じようにセキュリティ性の高いアクセスが提供されています。
PCが壊れたら、重要なメールも無くなってしまいます。Microsoft Online Servicesなら大丈夫。
多くの企業では、外部からメールサーバーへのアクセスを許していないため、いちいちメールを確認するために会社に戻らなくてはならない。
Microsoft Online Servicesなら、外出先からでも会社のメールにアクセスできる。
運用側にとっては、システムダウンが許されない電子メールをクラウドのExchange Onlineにするだけで、電子メールサーバーのハードウェアやソフトウェアなどの面倒な運用をマイクロソフト社に一括して任せることができます。例えば、セキュリティ面からいえば、Exchange Serverのセキュリティパッチなども、Exchange Onlineなら、マイクロソフト社が常に最新のアップデートを行ってくれます。もちろん、Exchange Online自体が冗長化されているため、ユーザーが知らない間に電子メールサーバーのアップデートが済んでいることになります。
これなら、1年365日、ダウンすることがない電子メールサービスを社内に提供できます。システム管理者にとってExchange Onlineは、これだけ可用性を高めても、運用のすべてをマイクロソフト社が面倒見てくれるため、手間のかからない電子メールサービスといえます。
メールサーバーの管理・運用・メンテナンス…手間のかかるそれらの作業に右往左往するのはもうやめましょう
■使い慣れたMicrosoft Outlookを使用できるのが、Exchange Onlineのいいところ
Exchange Onlineは、Exchange Serverのクラウド版なので、Outlookをメールクライアントとして使うと非常に便利です。
Exchange Onlineは、多くのメールクライアントでサポートしているPOP3も採用されています。このため、ほとんどのメールクライアントをExchange Onlineのメールクライアントとして利用できます。しかし、Exchange Onlineと最もフィットしているのがOutlookです。
例えば、Outlookを利用すれば、単にメールを読んだり、出したりするだけでなく、社員全員で連絡先(アドレス帳)や仕事を共有することができます。会社全体で連絡先を共有すれば、社員一人一人が名刺管理をしなくても、連絡先のメールアドレスや住所、電話番号が簡単に管理できるのです。
また、Outlookを利用すれば、個々のユーザーの予定表を一覧することもできます。この機能を使えば、ミーティングを行うメンバーの空きスケジュールをOutlookで確認して、手軽にミーティングを設定することができるので、いちいちメールでスケジュールを尋ねたり、電話でスケジュールを確認しなくてもOK。Outlookで会議依頼のメールを出せば、各人の参加・不参加状況も簡単に管理できます。
■OutlookとExchange Onlineなら、関係者のスケジュールを共有&見やすく一覧できる
Exchange Onlineは、電子メール自体をクラウド側に保存しておくために、PCにトラブルが起こって、HDDがクラッシュしても、重要なメールデータは、キチンとExchange Online側で保存されています。もちろん、スケジュール帳、連絡先、仕事などのデータも保存されています。
Exchange Onlineにぴったりなメールクライアントは、Outlookです。しかし、さまざまなPCや携帯電話などがある環境では、当然のことながらOutlookを利用できない局面も出てきます。例えば、共用のPCでメールを読みたい場合や、外出先で移動中にモバイルデバイスからメールチェックする場合などです。
そこで、Exchange Onlineでは、Webブラウザーを使ったアクセス機能「Outlook Web Access(OWA)」が用意されています。
OWAを使えば、Webブラウザーを使ってExchange Onlineにアクセスして、メールを確認する事ができます。もちろん、PCにはメールデータは残りません。これなら、出張先のホテルのビジネスセンターにあるパソコンを使っても、セキュリティ上も安心です。
■Accessは、Outlookと同じユーザーインタフェースになっています。ユーザーは、Outlookでも、OWAでも違和感なく利用できます
■Windows MobileからExchange Onlineにアクセスすることできる。
OWAは、Webブラウザーで表示されるとはいえ、ユーザーインタフェースはOutlookとほぼ同じモノになっています。このため、OWAの操作方法を一から覚える必要はありません。Outlookを知っていれば、OWAも簡単に利用できます。
Exchange Onlineは、各種スマートフォンから簡単にアクセスできます。スマートフォンからメールを読んだり、書いたりすることはもちろん、Outlookが持っているスケジュール帳、連絡先にアクセスすることもできます。
さらに、Windows Mobile対応のスマートフォンとExchange Onlineを組み合わせれば、スマートフォンを紛失したり盗難に遭ったときに、リモートからWindows Mobile対応のスマートフォンを使えなくしたり、内部のデータにアクセスできなくする「リモートワイプ」機能が利用できます。この機能を使えば、携帯電話を高いセキュリティ性を持って利用する事ができます。
携帯電話としては、最近注目を浴びているブラックベリー端末もオプションを導入することで、Exchange Onlineと連携して利用することができます。
電子メールを利用していて問題なるのが、サーバーメールボックスの容量です。最近では、メールに様々なデータを添付したりすることが多く、すぐに容量不足になります。特に、自社でメールサーバーを運用している場合は、メールのために新たにディスクを購入するということが困難であるため、サーバー上にメールをため込んでいるユーザーに対して、不要なメールを削除してもらわなくてはいけなくなります。
Exchange Onlineでは、1メールボックスの容量は1メールボックスあたり25GB(スタンダード版)が割り当てられているため、数年間のメールをすべて保存しておいても、大丈夫な容量となっています。
メールボックスの増減も、オンラインで簡単に、一瞬にして手続きできるため、自社でメールサーバーを運用しているときのように、HDDの容量を増やすのに、1年がかりの計画になるといったことはありません。
また、すべてのユーザーのメールボックスを拡張するのではなく、必要なユーザーだけメールボックスを拡張できるので、コスト的にも無駄なく使用できます。
■メールボックスを拡張
メールボックスを必要に応じて簡単に増やすことができます
クラウドのメールサービスを利用する時に気になるのが、スパムメールやウィルスに冒されたメールの扱いですが、Microsoft Online Serviceでは、Exchange Server用ForefrontのExchange Online版「Forefront Online Protection for Exchange」が標準でスパム・ウィルス対策に対応しています。
このソフトを使ことで、Exchange Online側でスパムメールをフィルタリングしたり、ウィルスに冒されたメールをブロックしたりできます。これらなら、ユーザーがOutlookでメールを確認する前に、チェックされているため、安心して利用できるわけです。
さらに、Forefront Online Protection for Exchangeのスパムフィルターやウィルス定義ファイルは、Exchange Onlineを運用しているマイクロソフト社が、一括してアップデートを行っているため、管理者がアップデートをし忘れて、最新のウィルスをスルーしてしまうこともありません。
このほか、コンプライアンスに対応したメールの保管、ポリシーベースのメールの暗号化などの機能もオプションで用意されています。
■Forefront Online Protection for Exchangeは、クラウドのMicrosoft Online Services上でウィルスメールをチェックしたり、スパムメールをフィルタリングする。
このように、Exchange Onlineは、いろいろな機能を持っています。しかし、運用はマイクロソフト社が行ってくれるため、手間いらずです。さらに、セットアップや日常の管理もWebブラウザーで簡単に行えるため、専任のIT管理者で無くても簡単に使用できます。
Exchange Onlineは、社内メールサーバーよりも手軽で、なおかつISPのメールサーバーよりも多機能、数人の個人事務所から、数千人の企業まで利用できるクラウド型のメールサービスといえます。
Exchange Onlineの便利さや管理の簡単さは、使ってみないとわかりにくいですが、マイクロソフト社では、Exchange OnlineやSharePoint Onlineを含めたMicrosoft Online Servicesの30日間無料で利用できるトライアルを行っています。これを試せば、Microsoft Online Servicesの便利さがよくわかるでしょう。
また、無料トライアルから、そのまま有償版に移行することもできるので、無料トライアルで使い勝手などを確認して、データをそのまま活かしたまま実運用を行うことができるのも便利です。
次回は、WordやExcel、PowerPointなどのOfficeソフトと連携して利用できるSharePoint Onlineとインスタントメッセージング機能のOffice Communication Online、オンラインミーティングを実現するOffice Live Meetingなどを紹介していきます。
「Business Productivity Online Suite(BPOS)」は、今回紹介したExchange Onlineのほか、SharePoint Online、Office Communications Online、Office Live Meetingの4 サービスを包含する統合コミュニケーション & コラボレーション サービスです。 Microsoft Online ServicesのWebページから、実際にサービスを無料トライアルすることができます。無料トライアルサービスには、手続きなしですぐに体験できる「体験サイト」と、専用の管理サイトと記憶域を利用できる「30 日間無料トライアル」の 2 つの方法があります。 |
トライアルの詳しい手順などはリンク先の手順書などをご覧ください。