4月下旬に満を持して発売されるLGエレクトロニクスの液晶モニター「E2350VR」。LEDバックライトを採用し、独自の超解像技術「Super+ Resolution」をはじめとする高画質化技術の数々を詰め込んだこの製品の実力を、西川善司がいちはやく検証する。
E2350VRは、1920×1080ドットのフルHD23インチ液晶パネルを採用したLEDバックライトモニターだ
導光型のLEDバックライトを採用しており、これまでのCCFLバックライト採用モニターに比べると、段違いの薄さだ
画面サイズは23インチ(58.4cm)で、表示面積は約51cm×約29cm。これはA4サイズの紙を縦に並べて約2枚半分に相当し、パーソナルユースには最適な大きさとなっている。
モニター部の最薄部は16mm程度で、アーム接続部分の最厚部でも39.2mmと薄い。
液晶パネルはTN型だが、視野角は上下160°/左右170°を確保できている。公称応答速度は5msで、動画表示にも必要十分なスペックを有する。
採用バックライトは白色LED。LEDモジュールの配置は、消費電力に優れ、なおかつ本体の薄型化にも貢献する導光型を採用している。E2350VRで採用されているのは液晶パネルの外周にLEDを配置し導光板と拡散板を組み合わせた方式で、近年の技術進歩もあって、輝度ムラはほぼ解消されている。少なくとも輝度の均一性能において、従来の冷陰極管(CCFL)採用機に劣る部分はない。
E2350VRを実際に手にとって第一に感じたのは圧倒的に軽いと言うこと。下部を持てば片手でも持てるほど軽い。重量は台座スタンドなしでわずか3.1kg。15インチ画面サイズの高性能ノートPCの重さとほぼ同じ…と思ってもらっていい。
「台座スタンドなしの重さが軽いからと言っても、設置時の重さが重ければ意味がない」という突っ込みが入りそうだが、実は、このE2350VR、台座スタンドなしで自立できる設置機能があるので、本当に3.1kgの本体のみでの設置利用が可能なのだ。
円形のスタンド部を取り外し、アームを倒すと、フォトフレームライクな設置が可能になる |
前から見たところ。これまでにない設置スタイルといえる。シンプルながらグッドアイディアだ |
どうするかというと、モニター部から伸びたアーム部分にボタンがあり、これを押すことで上下の首振り機構の上限を広げることができる。アーム部の末端が曲面加工されているので、こことモニター部の下辺を設置させて、フォトフレームのような机に直に置いた設置スタイルでの使用ができるのである。モニター部の下辺には、この設置スタイルを想定したクッション材が備え付けられているので、机などを傷つける心配はない。
「多画面マニア」の筆者としては、外出先でもマルチモニター環境を実現したいと常々考えている。最近では、「複数台のノートPCを持っていくよりも、もう一台モニターを持っていった方が原稿作成効率が上がるかも知れない」と考え、“出張多画面マニア計画”を真剣に考えていたほどなのだが、E2350VRならば、冗談抜きで普通にトランクに詰めていくこともできそうだ。
実際、このフォトフレームライクな設置スタイルは、ノートPCと横並びに設置したときに、ノートPC側の液晶画面とナチュラルに横並びに設置することを想定して備わった機能なのだとか。
ノートPCから外部出力用のモニターとして使う場合、高さがそろうのでデュアルディスプレイ環境での使い勝手が非常に良い |
どう活用するかは、ユーザーの自由だが、とにかく、このフォトフレームライクな設置スタイルと軽量ボディは、E2350VRの大きな魅力となっていることは間違いない。
もちろん、標準添付される台座スタンドを接続すれば普通の液晶モニターっぽく設置することも可能だ。
それでは早速、気になる画質の方を見ていこう。
まず、PCをつないだ場合、DVI-DとHDMIの双方で、1920×1080ドットの解像度で正しく表示が行えることが確認できた。1080pのドットバイドット表示は、線分表示も非常にきめ細やかで美しい。曲線部や斜線の表現においても、RGBサブピクセルの分離感はほとんど見えず、1ドット1ドットが"その色"でフルカラー発色しているように見える。
発色の傾向は過度に記憶色に振らないナチュラル指向。彩度の高い画調がお好みならば、映像エンジン「f-ENGINE」のモードセレクトにて「ムービー」を選ぶといい。発色が艶やかになり、さらにコントラスト感も増す。若干だが発色に黄味の強さを感じるようならば、「色温度」モードをデフォルトの6500K設定からsRGB設定に変えるといい。
f-ENGINEのモードセレクトを「ムービー」にすることで全体的にコントラストと彩度が増す |
ゲーム機との接続は、HDMI接続のPS3、DSub15ピン接続のXbox360でテスト。PS3は1080pのドットバイドット表示を確認。Xbox360もアナログRGB接続ながら1920×1080ドットの画面モードで正常に表示が行えていた。フルHDモニター製品にはアナログRGB接続時のドットバイドット表示をサポートしていない製品もあるので、ここもE2350VRの好評価ポイントとなる。
実際にPS3用でアクションゲームをプレイしてみたが、ゲームプレイに支障が出るような表示遅延や残像は認められず。
さて、HDMI端子は出力する側の映像機器によって階調レベルのデフォルト設定が異なるのがやっかいで、これに対応する設定変更ができないモニター製品も多いのだが、E2350VRは、ちゃんと調整が可能となっている。
[MENU]>[PICTURE]項目の「BLACK LEVEL」の「LOW」「HIGH」の二つの設定がこれに該当する。LOWがHDMI階調レベル0-255の機器との接続向けの設定で、HIGHがHDMI階調レベル16-235向けの設定だ。PS3と接続した際、PS3側の「ディスプレイ設定」を「フル」(0-255)とした場合はE2350VR側のBLACK LEVELをLOW設定にする必要がある。逆にPS3側を「リミテッド」(16-235)とした場合は、E2350VR側はHIGH設定にしなければ正しい階調が得られない。
ただし、PS3でブルーレイを再生したときは、デジタル色差信号の階調レベル16-235で伝送されるので、E2350VR側をHIGH設定とすることで正しい階調が得られる。PS3とE2350VRを組み合わせて使用するユーザーは、以上のことを覚えておいて損はないはずだ。
PS3でブルーレイ映画ソフトを再生したときの「f-ENGINE」の画調設定は、彩度優先ならば「ムービー」がいいが、ナチュラルな味わいをベースにしつつもちょっとだけ彩度を豊かにしたいという場合は「ゲーム」も悪くない。
「f-ENGINE」とLEDバックライトの制御により最大コントラスト比5,000,000:1相当を実現しているということで、コントラスト感も十分。一般的な照明下で視聴する上では目だった黒浮きもない。暗部の階調を重視したい場合は「f-ENGINE」の画調設定を「標準」にするといい。
f-ENGINEとLEDバックライトの調光により、最大コントラスト比5,000,000:1を実現 |
E2350VRは倍速駆動機構は持たないが、液晶パネルそのものの応答速度が高速ということもあって、カメラパン時などの残像は最低限となっている。少なくとも、安価な液晶モニター製品で見られる"うねる"ようなホールドボケはない。
さて、E2350VRには、目玉と言える超解像機能「Super+ Resolution」が搭載されている。
「超解像」とは、実際の情景をカメラなどのデジタル撮像機器で撮影したり、解像度変換などの際に失われしまった解像度情報を復元する処理のことだ。例えば、カメラで撮影したときの解像度低下は、「カメラの撮像処理を逆戻しするシミュレーションを行うこと」で理論上は、高解像度映像に戻すことができる。実際には、失われている情報も多いので、言葉でいうほど簡単ではないのだが、その失われてしまった情報については、各メーカーが独自の予測技術を用いて補完していくことになる。その補完アルゴリズムは高度なものが要求されるため、注目はされている技術ではあるが、まだその採用製品は多くはない。
そんな中、E2350VRは、LG独自の超解像処理「Super+ Resolution」を標準搭載したディスプレイ製品として登場したのだ。超解像処理を搭載したPCディスプレイは未だ数少ないため、この機能はE2350VRの最大の訴求点となっている。
そこで、E2350VRの超解像機能がどういった活用が出来るのか、実際に、様々な映像を視聴して調べてみることにした。
映画視聴などで常用するならば、この超解像処理機能(LG独自の超解像技術ということで、Super+ Resolutionという名称が与えられている)は、映画視聴などで常用するならば、柔らかく適用される「弱」設定がお勧めだ。E2350VRの超解像処理は低解像度映像だけでなく、1080pのブルーレイ映像にもちゃんと効いており、有効にすると髪や布の質感が向上したり、通常状態では埋没していた淡いハイライトが浮きだつようになり、解像感が増すようになる。
オフ | 弱 | 中 | 強 |
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オフ | 弱 | 中 | 強 |
オフ | 弱 | 中 | 強 |
オフ | 弱 | 中 | 強 |
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オフ | 弱 | 中 | 強 |
オフ | 弱 | 中 | 強 |
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オフ | 弱 | 中 | 強 |
一般的な超解像処理では陰影表現の増強に注力した処理を行うが、E2350VRのものは、色味の変化にも積極的に介入してくるのが面白い。たとえばE2350VRの標準画調では、肌色などがPCモニター特有のやや冷ためな色合いになっているのだが、超解像処理を有効にすると、人の肌らしいふっくらとした柔らかな赤味までが復元される。E2350VRの超解像処理は、解像感がもうちょっと欲しいときだけでなく、色ディテールがもう少し欲しいときなどにも使うといい。
この「Super+ Resolution」、LG独自の技術により、処理による映像出力の遅延を最小限に抑えているという。そうした処理を実現しているハードウェア/ソフトウェアの技術的な詳細については、次回以降の記事でお伝えしたい。
接続端子。電源コネクターも含め、すべて背面にレイアウトされているため、見通しがよく、プラグ着脱もしやすい
接続端子パネルは背面にレイアウトされている。映像用接続端子としてはDVI-D端子、DSub15ピン端子、HDMI端子の3系統が実装されている。
DVI-D端子はPCとデジタルRGB接続するための端子だがHDCP対応なのでDVI端子を備えたDVDプレイヤーなどのデジタルAV機器との接続にも利用できる。
HDMI端子はデジタルAV機器との接続用の端子だ。また、PS3やXbox360などのHDMI端子付きゲーム機との接続にもおあつらえ向きの端子となる。さらに、PCとのデジタルRGB接続にも流用が可能だ。
DSub15ピン端子はアナログRGB接続のための端子で、DVI端子を持たないパソコンとの接続に利用するのが主たる用途となるはず。ゲーム機ではXbox360がアナログRGB接続に対応しているので、PS3とXbox360の今世代ゲーム機の両方をE2350VRに接続したい場合は、これを利用するという手がある。
なお、入力端子ではなく出力端子に分類されるものだが、背面にはヘッドフォン端子も備わっている。これはHDMI端子経由で伝送されてきた音声を聞くためのものだ。実際に、筆者がPS3とE2350VRをHDMI接続してみたところ、PS3の音声はここに接続したヘッドフォンから正しくステレオで聞くことができた。
E2350VRはPCモニター製品にカテゴライズされるが、ユーザーの活用の仕方を工夫すれば、ゲーム機やAV機器を繋いでのマルチメディアモニター的に運用することも可能な製品となっているのだ。
特にPS3とHDMI接続するだけでE2350VR単体で、PS3の映像をフルHDで楽しめ、さらにヘッドフォンからそのサウンドまで聴けるというのは、パーソナルゲームモニター商品としての価値を高めていると思う。
E2350VRは、ベゼル(額縁)部に突起したボタン類がない。
操作パネルはタッチセンサー式。力を入れる必要がなく、反応は軽快
入力映像のアスペクト比を維持したまま表示する「オリジナル画面比」機能
2つのウィンドウを見やすくタイリングして並べてくれる「DualWeb」機能
これらの光点のいずれかに触れると、画面下部にメニュー画面がポップアップ表示され、使用頻度の高い6つの操作項目が現れる。
[MENU]が画調調整用メニュー、[SMART+]がE2350VR特有の高画質支援機能を調整するためのメニュー、[SUPER+RESOLUTION]が超解像機能関連の調整項目、[AUTO]はアナログRGB接続時の同期調整、[INPUT]は入力切り替えだ。
タッチセンサーは、見た目としてクール…という美点があるだけでなく、一般的なボタンとは違い、経年劣化がしにくいという長所もある。
さて、このメニュー項目のうち、活用をお勧めしたいE2350VRならではの機能としてピックアップしておきたいのが「自動輝度」機能と「オリジナル画面比」機能だ。
「自動輝度」機能は、使用環境の輝度に応じてバックライトの明暗を調整してエコに貢献するものだ。明かりを消してやや暗めの部屋で映画やゲームを楽しみたいときなどに活用するといいだろう。
また、E2350VRには、PC接続時限定(Windowsのみ、Macは未対応)で、PCオペレーションとE2350VRの高画質支援機能を相互連携させて活用するためのユーティリティソフトウェア「Easy Set Package」が付属してくる。このソフトウェアによって提供される主な機能は2つだ。
1つは、「DualWeb」機能と呼ばれるもの。これはWeb画面、各種ドキュメント画面、その他の任意のソフトのウィンドウを、デスクトップに綺麗に2画面並べて表示させる機能だ。Web画面を見ながら原稿を書いたり、エクスプローラで開いた写真のサムネイル画面を見ながらブログを書く際などには便利に使える機能だ。デフォルトでは面積比1:1で液晶パネルを均等に分割して2画面表示を行う設定となっているが、その表示割合はカスタマイズ可能。また、左右の入れ替えやウィンドウのタスクバーへの出し入れのためのショートカットキーは、自分な好きなキーを割りあてられる。
もうひとつは「Cinema Mode」。これを有効にすると、動画再生時に、デスクトップやWebページの動画部分のみを明るく表示して再生を行ってくれる。動画サイトを視聴する際などに、動画の部分だけを集中して見たい、というときに便利な機能だ。
E2350VRの価格は30,000円程度。フルHD解像度パネルを採用して、HDMIを含む3系統入力にも対応したマルチユース対応のPC液晶モニター製品としては破格にコストパフォーマンスがいい。
特筆すべきは、これにくわえ、高画質化映像エンジンと超解像処理機能が搭載されているという点。この部分は、安さだけをウリにしたPC接続専用の一般的なPCモニター製品にはない特徴であり、ユーザーが少しでもPC以外のAV機器やゲーム機を接続する機会を想定するのであれば、製品選びにおいて強い訴求ポイントとなるはずだ。
ちなみに「もう少し小型でいい」という人には21.5インチのモデルE2250VRも設定されているので、そちらもチェックすべき。画面が小さい分、E2250VRは価格も安く28,000円前後であり、E2350VRよりもさらにリーズナブルだ。E2250VRは画面がやや小さい以外は、機能面ではE2350VRと全く同等。接続端子はちゃんと3系統あるし、高画質化映像エンジンと超解像処理機能の両方も搭載している。
※当初、E2350VRの価格を24,000円前後、E2250VRを23,000円前後と記載しておりましたが、2010年4月20日現在の市場価格を反映した記載に修正いたしました。
PCもつながるフルHDゲームモニターを欲しかった人、あるいはPCもつながるフルHDビデオモニターが欲しかった人、E2350VRおよびE2250VRはかなり有力な選択候補となるはずだ。
次回の記事では、LGエレクトロニクスの技術担当者に話を聞き、E2350VR/E2250VRの技術についてさらに深く迫っていく予定だ。
(トライゼット西川善司)
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