[Vol.1]「キレナビ」編集長 伊藤春香さん

カメラが自然と入り込んでいる暮らし。カメラを持ち歩く楽しみ。日々キラキラしていることを切り取る喜び。カメラのある生活を楽しんでいる女子に密着する企画がスタート。初回はWeb業界を中心に「はあちゅう」の名で親しまれている、美容クーポンサイト「キレナビ」編集長の伊藤春香さん。




やわらかで、ふんわりとした、女性らしさの漂うたたずまい。編集長の仕事だけでなく、書籍の執筆、個人的に運営しているWebサービスの開発など、とにかく慌ただしい日々を送る伊藤さん。そんな身の回りのことをすべて楽しんで受け止めながら、丁寧に暮らしているように見える。最近寝てますかと聞くと「ちゃんと1日4時間は寝ていますよ」と笑う。伊藤さんのブログを見ていると更新時間が真夜中や明け方の日もあって、明らかに寝不足っぽいんだもの。

伊藤さんと筆者との“一方的な出会い”は、私が大学生の頃にさかのぼる。ブログが流行り始めた頃、伊藤さんと彼女の友人とで運営していたブログ「さきっちょ&はあちゅうの恋の悪あが記」が大人気となり、例に漏れず私も注目していた。Web好きな大学生にとってふたりは憧れの存在。ブロガーとなって世界一周なんて夢みたいだから。そこで有名ブロガーとして一躍、時の人となり、今でも伊藤さんの勢いは止まらない。最近たまたまお話しする機会があり、少し親しくしてもらっている。

写真は人生の記録 大事な瞬間を見返すために撮る

それにしても伊藤さんは常にカメラを持ち歩いている。しかも一眼。OLのバッグに常に一眼なんてとてもクール! 写真を撮るようになったのは、やはりブログがきっかけだった。「写真が多い方が文章以上に伝わると思うんです」。臨場感や雰囲気をもっと表現したい。大学生の頃に某カメラメーカーのモニターをすることになった。撮った写真をサイト上へアップするため、毎日写真を撮る習慣がついた。かわいい、おいしそう、きれいなど、五感にビビッと働きかけてきたものは撮影し、大切な瞬間の記録として残す。

五感にふれたものは見逃さない

ブログの評判が上がるにつれ、写真を大事にしようという気持ちも高まっていったという。伊藤さんは食事の様子をブログに書くことも多い。私はそれをいつもニヤニヤしながら見ている側。焼肉の写真、人と笑顔で写っている写真、店内の写真……何だか温かみがある。「〜だから撮りたい」という積極的に撮影したい気持ちが芽生え、最近では美味しいごはんを食べに行ったとき、必ずすべての料理を撮影する。「以前は食事のときにカメラを出すことに抵抗がありました。その場を壊す気がしていて」と昔を振り返る。

「写真にはキレイに写ろう」の思いが芽生え始めた

そんな気持ちがなくなったのは、楽しかったり、忘れたくなかったりする瞬間を、かたちとして残したいという思いが生まれたこと、いい写真を撮ろうとこだわる周りの友人に影響されたことが大きい。「写真って後で見返すと本当に楽しいんです。人生の記録というか。かたちとして残す分、いいものを撮りたい」。最近ではモノだけではなく、人の写真も撮るようになった。伊藤さんが撮る人物は友人、恋人、家族など、そのときに同じ空間にいる人たち。

仕事の一環で「キレナビジン」というFacebookコンテンツ用に、美人女性を撮影することもある。こちらはiPhoneで撮影しているらしいが、モットーとしているのは、ベストな瞬間を狙って撮ることで、その人が一番キレイに見えるような写真に仕上げること。今やキレナビジンは、キレナビFacebookページの人気コンテンツとなった。キレイに写ってもらうためには、適切にディレクションすることも大切。それを体得したのは、伊藤さんが写真を撮るようになったことで、自身もキレイに写ろうという意識を持つようになったことと関連がある。

皆で写真を撮ろうというとき、髪やメークを直す女子と直さない女子とがいる。昔は後者だったという伊藤さん。写真で日々を記録するようになってからは、後で見返してショックを受けないようにと、なるべく身だしなみをチェックするようになった。「人を撮影する機会も多いので、どんな写真に仕上がるかを意識するようになりました。自分も撮られたときに、必ず写りを確認するようになりました。それが仕事にも活かされているのかと」とやわらかく微笑む。

撮った写真はすぐに確認

どんなに小さな変化でも気付くようになった

撮った人物写真は、友人に友人を紹介するときに使うことも。見せてもらったところ、どれも柔らかい表情のいい写真ばかり。このような笑顔を引き出せるのはどうして……? 「もちろん後で本人に見せますが、こっそり撮ることが多いです(笑)。カメラがあると皆意識しちゃうので」と非常にお茶目だ。まったく気付かなかったけれど、私の写真もこっそりと撮られていたことが、おかしい。改めて見返すときに「この人ってこんな表情をするんだ!」と、その場ではなかった発見もあっていいのだとか。

そこから相手をもっと好きになることもある。人を撮影するようになって、相手の変化に気付くようになったことが何よりも大きいのだとか。「人だけではなく何かモノを見ていても、何気ない瞬間に感動したり、小さな変化も見逃さないようになりました」。

気になるものは何でも撮ることでステップアップ

愛用しているカメラはSONYのNEX-5とNikon 1 J1の2台。NEX-5は北川景子さんのCMにやられたのと、世界最軽量というワードに惹かれた。「加工モードにして撮ることが多いです」。加工の良さは新鮮な発見があること、絵のように変化すること、独特な味わいが出ることなど、ニュアンスが変わるという面が大きい。Nikon 1 J1はもらいもので、コンパクトなのでごはんを食べに行く日には持ち歩く。普段から写真を撮りたい人にとって、カメラの持ち運びやすさは重要。

愛用中のSONY NEX-5とNikon 1 J1

好きなもの、気になるものは何でも撮ってみる。その中から捨てていくことで、お気に入りの一枚が残る。最高な瞬間を撮れたことに気持ちよさをおぼえ、それが次の写真へとつながっていく。それには筆者も同感。カメラは伊藤さんの生活に、今やなくてはならないもの。セットのようでもあり、子どものようでもある。カメラを持って旅をするなら「香港かカリフォルニアです」と即答した。何気ないものでも何でもおもしろく撮れそうだからと、好奇心のかたまりを見せていた。

(2012/7/6)
池田園子
1986年生まれ。岡山県出身。2005年に上京。楽天でポータルサイト運営、某ITベンチャーでメディア運営を経てフリーのライターに。Web、ガジェット、新しいモノ、会社、働き方、恋愛、イケメン系のネタを主に書く。コミュニケーション全般が好きで、人が好き。愛用カメラはPENTAX K-rとRICOHのCX4。取材で人を撮り、散歩しながらも撮っています。(ホームページ)(Twitter)