被写界深度とは、写真のピントが合っているように見える範囲のことを言います。この範囲内に被写体があればくっきり描写され、この範囲から外れるとボケて描写されます。また、その範囲が狭い状態を「被写界深度が浅い」、広い状態を「被写界深度が深い」と表現します。つまり背景の木の葉などを輪郭が見えないほどホンワリとボカしたいときは、被写界深度を浅くすればいいわけですね。
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被写界深度の浅い写真
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被写界深度の深い写真
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被写界深度は主に「絞り」「レンズの焦点距離」「被写体までの距離」の3つで決まります。
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被写界深度:浅い |
被写界深度:深い |
絞り(F値) |
開放(小さい) |
絞る(大きい) |
レンズの焦点距離 |
望遠(長い) |
広角(短い) |
被写体までの距離 |
近い |
遠い |
「絞り」は撮影モードを‘絞り優先AE’にして‘F’で表示された数字を小さくすることで絞りを開けてピントの合う範囲を狭く、背景のボケをより大きくすることができ、逆に数字を大きくすれば絞りが閉じて遠くまでピントが合うようになります。
「レンズの焦点距離」は例えば18-55mmのズームレンズであれば、55mmは望遠側なので18mmの広角側よりもボケやすいということになります。「被写体までの距離」とはレンズと被写体との距離のことなので、3つの要素をまとめれば、絞りの数値を小さくしてレンズの望遠側で被写体に近寄って撮れば被写界深度は浅くなって、ボケの大きな写真を撮ることができるという理論になります。
そして、デジタルカメラの場合はもうひとつ被写界深度を変える要素があります。それはCCDやCMOSなどのセンサーサイズです。このセンサーサイズが大きければ大きいほど被写界深度を浅くすることができるのです。
例えば、1/2.3型(約6.2mm×4.6mm)のセンサーサイズを採用しているコンデジよりも、4/3型(約17.3mm×13mm)のミラーレス機のほうがボケやすく、さらにAPS-Cサイズ(約23.6mm×15.8mm)のデジタル一眼レフのほうがもっとボケやすいということになります。ですが、使用するレンズや撮影状況にもよりますので‘要素のひとつ’として覚えて置いてください。
構図を変えずにボケをコントロール!
それでは実際に被写界深度の変化を見てみましょう。前述のように被写界深度を決める要素はひとつではありませんが、構図を変えずに簡単に被写界深度を浅くしたり深くしたりできるのは「絞り」の要素なので、‘絞り優先AE’モードを使って絞り値を大きくしていきます。ピントはすべて画面左の一番手前のパンダに合わせています。
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■絞りF2.8
画面左の一番手前のパンダだけにピントが合っていてその他はボケています。 |
■絞りF4.0
画面中央の手前から2番目のパンダの輪郭がはっきりしてきました。 |
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■絞りF5.6
2番目のパンダはよりくっきりと、3番目のパンダも輪郭が見えてきました。 |
■絞りF8.0
一番奥のパンダの輪郭が見えてきました。 |
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■絞りF11
一番奥のパンダの表情が捉えられるようになりました。 |
■絞りF16
全体的にシャープな描写になってきました。 |
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■絞りF22
被写界深度がもっとも深い状態です。 |
絞りが開放のF2.8のときは被写界深度が浅いのでピントの合っている範囲が狭くてボケが大きくて、絞ったF22のときは被写界深度が深いので奥のパンダも見えるくらいピントの合っている範囲が広くなりました。
この例では、テーブルフォトとしては立体感があって全体のスタイリングが見えるF5.6くらいがちょうどいいでしょう。また、パンダを人間に例えてこの写真を集合写真として見てみると、立体感は薄くなりますがF22まで絞り込んで一番後ろの人まで写してあげたほうがいいですよね。そこで絞り値を大きくするときの注意点ですが、絞り込むほどシャッタースピードは遅くなってブレやすくなりますので、なるべく三脚を使用するかISO感度を上げてブレないようにしましょう。
今回は「絞り」を調節して被写界深度をコントロールしましたが、その他の要素についてはまた別の機会にお話したいと思います。まずは絞り優先AEモードで自分好みのボケを作り出すことや、逆にいつも浅い被写界深度でばかり撮影している人は、隅々までピントの合った風景やスナップ写真を意識して撮ってみると新しい得意分野が生まれるかもしれませんので、ぜひ挑戦してみてください!