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最新のVRハード・ソフトが渾然一体、身体感覚総動員! 開催中の「VR・ARワールド」の見所紹介

2017年6月28日から30日までの3日間、東京ビッグサイトにて「コンテンツ東京2017」が開催中です。コンテンツの制作や配信などをテーマとしたビジネス向けの商談会となっていますが、特設会場として「VR・ARワールド」が設けられ、最新のVRデバイスやソリューションが展示されています。今回は、その中から気になったものを紹介していきます。

東京ビッグサイトで開催中のコンテンツ東京2017
VR・ARワールドとは直接関係ありませんが、コンテンツ東京の会場入り口近くに展示されていた、昔懐かし「バーチャロン」のテムジン。思えば、メカデザインといいゲームそれ自体といい、かなり「VR」なコンセプトでしたよね、ということで載せてみました

老舗映像プロダクション「AOI Pro.」のVRは身体感覚総動員の豪華盛り

株式会社AOI Pro.(アオイプロ)は1963年設立の老舗の映像製作会社で、数多くのテレビCMを手がけていますが、昨年9月に発表した「VR Dream Match - Baseball」を皮切りにVR・AR分野へ参入。今回の展示会でも同社制作のVRアトラクション2タイトルをデモしています。

まずは、女性に手をひかれてVR空間の中を自然に自分の足で歩く……というコンセプトの「WONDERFUL WORLD VR Privater Tour [PROTOTYPE]」。

「WONDERFUL WORLD VR Privater Tour [PROTOTYPE]」

一本道のVR動画コンテンツながら、視線トラッキング機能を持つVRヘッドセット「FOVE 0」、筑波大学で開発された無限軌道の歩行装置「トーラストレッドミル mini」、VR用匂い発生デバイス「VAQSO VR」など、多くのデバイスを用いて可能な限り実体験に近づくバーチャル体験を目指しています。

実際に体験してみると、まずVAQSO VRの発生する香りがVR内への没入感をぐっと高めてくれます。歩行は最初こそおっかなびっくりでしたが、慣れれば右足を出し、左足を出し、と「普通に歩け」ます。安全装置は手すりくらいで、ハーネスの装着もありませんが、同社によれば、これまでに転んだりした人は出ていないとのこと。

アイトラッキングによるインタラクションは今回は用意されていませんが、視線のデータなどは取っており、その活用方法については検討中とのことです。

歩行装置の様子
プレイヤーはアクチュエーターで駆動する「手」を握ります。この「手」に身体を引かれることで、プレイヤーが自然に歩き出すのを促します
顔の前と足元に扇風機を設置して、風を発生
こめかみと耳たぶに脳波センサーを装着
左手首には心拍センサー
脳波センサーや心拍センサーの測定結果はモニターに表示されます

AOI Pro.のVR第一弾「VR Dream Match - Baseball」も体験可能。HTC Viveを用いたアトラクションで、プロが本気で投げる球速を体感する、というコンセプト通り、想像を超える速さで自分めがけて飛んでくる投球はかなりおっかなく、初見では思わず身体が反応してしまいました。

VR Dream Match - Baseball
VIVE用のコントローラーを取り付けたミットとバット。最初にキャッチャーとして投手の球速の恐ろしさを身をもって味わい、次に打者としてバッティングに挑戦、という流れです

VR参入を機に日本VR学会にも参画したという同社。アトラクションにかける本気度も凄まじいものがありました。

同ブースでは有限会社プロトタイプが開発した「GODSPEED VR airborne」も体感できます。変形式の体感筐体のかっこよさに痺れる体感型VRコンテンツです

スタンドアローンとPC接続、両対応のVRヘッドセット「pico neo dk s」が日本発売

中国を拠点とし、著名なVRヘッドセットの生産も手がけているというメーカー「Pico」。その日本法人となるPico Technology Japan株式会社は、単体で動作するスタンドアローン型でありながらPC接続にも対応するVRヘッドセット「pico neo dk s」をプレイアブルで展示しています。

Android 6.0と2K@70Hzのディスプレイ、Qualcomm Snapdragon 820などを搭載しておりヘッドセット単体で動作するほか、PCと接続することで、HTC Viveなどと同様のPC接続型ヘッドセットとしても動作します。また、PC接続機能がなくスペックもやや下の姉妹機「pico goblin」も用意されます。

「pico neo dk s」。プロセッサーがコントローラーに内蔵されており、コントローラー接続時はスタンドアローンのVRヘッドセットとして動作。さらにコントローラーを外して別の専用ケーブルでPCと繋ぐことでPC接続型ヘッドセットとして動作します。
「pico neo dk s」とPCを接続してのゲームプレイもブースで体験可能。モニター上のデモ画面を見るとSteamVRプラットフォームで動作しているのが確認できました
オプションとしてポジショントラッキング用のセンサーや専用VRコントローラーも用意されます

同社によれば、両製品は来月7月10日から販売開始の予定。ただし当初は法人向けがメインになるようで、家電量販店などを通じた一般販売については検討中という段階のようです。気になる価格は「pico neo dk s」が60000円前後、「pico goblin」が39800円前後とのこと。

ハシラスも「無限に歩ける」VRアトラクションを試作

VRアトラクションの製造・販売などを手がけるハシラスのブースでは、初出展となる歩行式VRアトラクションが体験できます。

ハシラスが出展するVRアトラクション装置

これは、中心を軸に最大6名のプレイヤーがぐるぐる回転することで、VR空間を無限に歩き続けられるというもの。似たような仕組みを持つ装置としては東京大学の「無限回廊 – Unlimited Corridor」がありますが、それと同様の錯覚を利用しています。つまり、人間は実際にはまっすぐ歩いていなくても、見ている映像がまっすぐ進んでさえいれば、そのように錯覚する、というもの。

装置は最大6人で同時に利用できるため、VR体験施設で利用する際にも客の回転数を高められるというメリットがあります。

今回の展示ではこの装置を利用した「肝試し」のコンテンツを体験できました。プレイヤーが一列に並んで夜の林や洞窟、神社といった恐ろしげなスポットを自分の足で歩いて進んでいきます。

回転部分。床にボルト等で固定されているわけではなく、重りを使って動かないようにしています
よく病院で使われるような歩行補助具につかまって自分の足で歩いていきます。VRヘッドセットとしてHTC Viveを採用。MSIのバックパック型PC「VR ONE」と接続しています

HMDと非HMDを共存するVR体験を提供するタケナカ

映像などコンテンツ制作とハードウェアを組み合わせたソリューションを提供し、近年はプロジェクションマッピングの制作を多く行なっているという株式会社タケナカのブースでは、HMDと非HMDを組み合わせたVRコンテンツ「VR×LED 360VIEW 宙の華」を体験できます。

周囲360度および天井、床まで全て液晶ディスプレイで覆われたVRルームに数人のプレイヤーが入室。その中で、HMDをかぶったプレイヤー1名がVR空間で何らかのアクションを起こすことで、液晶ディスプレイに映し出された風景に変化が現れ、HMDをかぶっていない残りのユーザーはそれを楽しめる……という趣向です。HMDを装着しないプレイヤーはトラッキング用のセンサーを身につけることで、HMDをつけたプレイヤーのVR空間に出現します。

……というように説明は受けたのですが、肝心のHMDがマシントラブルのため、筆者はVRルームの体験のみとなりました。ただ、周囲すべてを液晶ディスプレイで覆われたVRルームの臨場感と幻想的な美しさは目を見張るものがあります。

周囲360度に加え、天井と床まで液晶ディスプレイで覆われたVRルーム
HMDをかぶらないプレイヤーは位置トラッキングのためのVIVE Trackerを装着

タケナカは他にもプロジェクターと可動式ミラーを組み合わせたプロジェクションマッピング技術を展示。既存のプロジェクターと可動式ミラー、そして制作ソフトとサーバーを組み合わせることで、これまで高価なムービングプロジェクターを使わなければ実現できなかった「移動するプロジェクションマッピング」を低コストで実現できるとのことです。

展示ではパナソニック製のプロジェクターと可動式ミラーを組み合わせていた
部屋中を縦横無尽に巡るプロジェクションマッピング。プロジェクターの投射はテレビの内容ともリンクしています。映像の位置決めなどを行うソフトウェアは比較的簡単に扱う事が可能とのこと

視野角220度のHMDや驚愕のフォトグラメトリー3Dモデル作成システムなど

他にも注目すべき出展が数多くありました。ここからはダイジェストで紹介します。

パナソニックブースでは、今年の初めにCESで展示された視野角220度のHMDを体験できました。4枚の液晶パネルを搭載するビジネス向けのハイスペックモデルです
同じくパナソニックブース。3Dデータを現実の立体物に投影する3Dプロジェクションマッピング。3Dデータと現実のオブジェクトの間の位置合わせが簡単な作業で行える事が特長です。
3Dスキャニングなどを展開するAvattaのブースでは、大量のデジタルカメラで囲んだフォトグラメトリー3Dスキャニングブースを展示。人物の顔を大量のカメラで同時に撮影することで、超リアリスティックな3Dモデルをスキャン&生成します。
元スクウェア・エニックスCTOとして知られる橋本善久氏が設立したリブゼント・イノベーション株式会社ではHTC Viveを用いたテニスシミュレーターを体験可能。テニス好きである橋本氏のこだわりが反映されているとか

「コンテンツ東京2017」は6月30日(金)まで東京ビッグサイトにて開催中です。ビジネス向け展示会という性質上、ビジネス目的以外での一般入場は受け付けていませんが、VRやARをビジネスで活用したいという方は行ってみることをお勧めします。