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VRハードウェアの基礎知識。歴史や仕組み、3大VR HMDの比較まで

「VRコンテンツ開発ガイド 2017」試し読み/その1

株式会社エムディエヌコーポレーションから発売中の書籍「VRコンテンツ開発ガイド 2017」今回から数回にわたって、本書の中身を少しだけ紹介していきます。

西川 善司 著/古林 克臣 著/野生の男 著/izm 著/比留間 和也 著
B5判 / 224P
ISBN978-4-8443-6666-9 / 価格(本体2,600円+税)
2017年05月16日発売

今回は西川善司氏によるChapter 1「近代VRの基礎知識」より「VRハードウェアの基礎知識(概論)」の試し読みをお送りします

トライゼット 西川善司

テクニカルジャーナリスト。高校時代からパソコン誌へのプログラムの寄稿、商業ゲームソフトの移植業務を受託。その後、日立製作所を経て記者業務に転向。ゲーム開発技術以外に、映像技術、自動車技術にもフォーカスした取材を行なっている。http://www.z-z-z.jp/blog/

VRハードウェアの基礎知識(概論)

まずは、「VR(Virtual Reality:仮想現実)とはなにか?」という基礎知識から、2010年代の近代VRの基盤技術について整理してみたいと思います。

2016年はVR元年といわれています。これは、直接的には、HTC Vive、Oculus Rift、PlayStation VR(PSVR)といった3大VRヘッドマウントディスプレイ(HMD)が実際に発売されたことが、大きなきっかけとなっています。

ヘッドマウントディスプレイの発展

VRの歴史は古く、文献を当たれば1960年代くらいに現在のVR-HMDの原形のようなものが開発されていることがわかります。1980年代~1990年代になると今の形のVR-HMDに近いものが実用化されています。ただし、当時としてはとても高度な技術と高性能なコンピュータの演算パワーを必要としたため、業務用やプロフェッショナル向けとして活用されていたに過ぎませんでした。

しかし、この時代、VRというキーワード自体は、ある程度認知度を上げていたのは事実で、VRを題材にしたアニメ、漫画、小説、SF映画などは、この時代にいろいろと誕生しています。

1990年代は、VR製品が民生向けに提供されることはありませんでしたが、HMDは民生向け製品が登場しています。ソニーが1996年~1999年の間に「グラストロン」シリーズとして製品化して発売したのがその代表格です 。任天堂が1995年に発売した、スコープ状の本体をのぞいてプレイするゲーム機の「バーチャルボーイ」は、「バーチャル」という名前が付いていましたし、いかにもVRっぽい雰囲気で訴求されていましたが、スコープをのぞいた先にあるCG世界は固定化されており、いわゆるVRとは違うものでした。

グラストロン(PLM-50)
1996年~1999年の間にソニーが販売していたHMD。

2000年代になると、グラストロンシリーズも生産終了となり、いったん、民生向けHMD製品の系譜は途絶えることになります。しかし、2011年にソニーが有機ELディスプレイを採用したHMD製品「HMZ-T1」を発表します。解像度は1280×720pixelで、一応HD(ハイデフ)画質ですし、価格が約6万円という「頑張れば手が届く価格帯」で発売されたことで当時は相当な人気商品となりました。以降、2013年まで毎年モデルチェンジを行うほど、ソニー側も力を入れていた商品となりました。なお、HMZ-Tシリーズの最終モデル「HMZ-T3」は2013年に発売され、2015年4月に生産を終了しています 。

HMZ-T3
ソニー製HMDの2013年モデル「HMZ-T3W」。有機ELパネルを採用しているのが特徴で、3D立体視対応、解像度は720pixel。VR対応機能はない。

HMZ-Tシリーズは「20m先に仮想画面サイズ750インチの大画面を見ることができるHMD」として登場しましたが、暗闇の中に大画面が浮いているという点ではグラストロンやバーチャルボーイなどと同じで、VR体験には対応していませんでした。

時代が一気に動くことになるのは2013年です。Oculus社が開発したVR-HMDの「Oculus Rift」が、ゲーム業界あるいはコンピュータエンターテインメント業界に大きな衝撃をもたらしました。この「Oculusの衝撃」が、冒頭で述べた「2016年、VR元年」につながっていくことになります。

近年のVRブームの発端となったOculusショック

そもそも「VR」とはいったいどういうものなのでしょうか。VRの用語としての定義にはあいまいな部分がありますが、少なくとも「HMDをのぞき込んで映像を見たり、音声を聞いたりするシステムのこと」ではありません

ユーザー(被験者)に「現実世界とは別の仮想世界にいるような体験を提供すること」が主題であり、それが可能であれば、手段としてはHMDでなくてもかまいません。ただ、技術的な視点から見て、そのような体験を提供するのにもっとも効果的なアプローチがHMDだということで、VR対応のHMDの開発がいろいろと試みられてきたのです。

VR対応HMD(VR-HMD)の実現には、HMDにユーザーの首や身体の動きをリアルタイム追従するメカニズムが必要になります。Oculus Riftに代表されるVR-HMDは、装置の外観こそHMZ-Tシリーズとよく似ていますが、ヘッドトラッキング機能が内蔵されているために、ユーザーの頭部の動きに合わせてCG世界を全天周に渡って見回すことができます

2013年にリリースされたOculus Riftの試作版、通称DK1(Development Kit 1)では首の「上下の傾き」「左右の首振り」「時計回り、反時計回りの回転」の「3軸自由度」までの対応が実現されていました。左を見ればCG世界の左の情景が見え、首をかしげればそのCG世界で首をかしげたように見えるわけです。DK1はVR対応型HMDとして、2013年3月のゲーム開発者会議(GDC)の展示ブースにてプロトタイプが一般公開され、日本を含む世界のゲーム業界から熱い視線が注がれることとなりました

Oculus Rift
2013年に販売されたOculus Riftの開発者向けプロトタイプ「Oculus Rift DK1」、DK1 Kickstarter時のコンセプトデザイン。。1280×800pixelの液晶パネルを左右に分けて利用する構造のため、1眼あたりの解像度は640×800pixel。

こうした展示会でVRデバイスのプロトタイプが限定的に公開されることは今までにもあったことはあったのです。しかし、Oculus社はこのプロトタイプを「開発者向け評価キット」の形でテスト量産し、300ドル(当時の為替レートで日本円にして約3万円強)で販売を開始したことが大きなセンセーションを生みました。しかも、2013年内に6万台を出荷したというからすごいものです。当時から、複数の日本のゲームスタジオでも評価を開始しており、最初から日本のゲーム開発シーンからの注目度は高かったといえます

近代VR-HMDが「手の届く価格帯」にできたのはなぜ?

Oculus RiftのDK1が、テスト量産的な試作モデルでありながら300ドル、日本円で3万円台でリリースされたことは大きな驚きでした。それまで、VR-HMDは業務用・プロ用を想定した製品だったということもありますが、数百万円はするものだったからです。下の写真は2007年にリリースされたクレッセント社のVR-HMD「HEWDD-768」で、2009年モデルは基本システムが840万円でした。HEWDD-768は、LCOS(Liquid Crystal on Silicon:反射型液晶)パネルを採用した小型プロジェクタを2台内蔵し、片目あたりの解像度は1280×768pixelで、VR-HMD自体の重さは約2.0kgありました。最終的に、Oculus Riftの製品版はDK1の2倍の600ドルになってしまいましたが、PlayStation VRは400ドルですし、840万円と比べればだいぶ安価だといえます。それにしてもどうしてここまで安価にできたのでしょうか。実はこれにはちゃんとした理由があります。

HEWDD-768

第1の理由は、その構成パーツが安価なありもののパーツで成り立っているためです。なにしろOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRで採用されている映像パネルはスマートフォンなどに採用されているものとほぼ同じものです。つまり、比較的安価に提供されている部材なのです。

第2の理由は、基本構造そのものが比較的シンプルなためです。もっともシンプルなのは、PlayStation VRです。PlayStation VRは5.7インチの有機ELパネルの中央に仕切り板を設けて囲い、眼球装着位置に「のぞき窓」をつくって、そこに安価な拡大レンズをあてがっているだけの構造となっています。下で紹介する「携帯型VRグラス」も基本構造はPlayStation VRと同じです。

携帯型VRグラス
URL●https://www.d-wackys.net/
スマートフォンに接眼レンズをあてがっただけの簡易スマホゴーグル。基本構造はOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRもこれと同じ。写真はPanoramic Worlds製の「携帯型VRグラス」という製品。コンパクトで携帯できるので便利。

簡易的な拡大レンズをあてがっただけでは、見える映像は歪んでしまうわけですが、表示する映像側を、拡大レンズによる歪みを中和するような「逆歪み」を与える形で描画してしまうことでつじつまを合わせられます。

光学的な歪みを映像生成側で吸収する仕組み
レンズを通して見ると歪んでしまうようなら、表示する映像のほうに逆歪みを与えて描画することでつじつまを合わせられる。
実際のVR-HMDに採用されている接眼レンズを通して方眼紙を見たときの情景。糸巻き状に外周が凹んで歪んでいるのがわかる。

例えば、四角形として表示したいオブジェクトがあったとして、これを拡大レンズを通して見たとき、拡大効果によって糸巻き状の凹みを帯びてしまうようであれば、その四角形の各辺を、ややふくらませた樽状に歪ませて描いてやるのです。こうすることで「拡大レンズの糸巻き歪み」と「樽状に歪ませた四角形」は互いに中和しあって、各辺がまっすぐな四角形を見せることができます。

逆歪みを与えた映像
歪みを中和するために樽状にふくらませた描画を行って映像を生成する。
それぞれの歪みが中和しあって、ユーザーが見る映像はこのような正常な拡大像となる。

前出のHMZ-Tシリーズなどでは、矩形の映像パネルで表示される映像を光学的に拡大しつつも、その際に出る歪みを、光学的に吸収していました。これには複数のレンズを組み合わせる必要がありますし、大前提として高度な光学設計も必要になってきます。これらは当然、大きく開発・製造コストにかかってきます。しかし、近代VR-HMDの場合は、接眼レンズが拡大レンズ1個ですからシンプルです。この拡大レンズの光学特性(拡大像がどう歪むか)さえ、把握できれば、映像の出し方はソフトウェアの調整(レンダリングの仕方)で実現できることになります。こうして、近代VR-HMDは大幅なコスト削減に成功したのです。

実際の描画は、いったんは通常通り四辺形上に描画し、描画し終わった映像に対して変形を施す流れで実践されます。ここにも最適化のウンチクがありますが、これについては後述することにします。

三大VR-HMDのスペック比較

2017年3月時点の市場で入手可能なVR-HMDは、マイナーなものまでを含めるとかなりのものがあります。ただ、ハードウェア、ソフトウェアの両面からエコシステムがうまく確立できていて、世界規模で展開できているものというと、ここまでも何回か名前を挙げているOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRの3つになるでしょう。これらは「三大VR-HMD」のように認知されています。下の表が三大VR-HMDのスペックをまとめたものになります。

三大VR-HMDのスペック比較表

表をふまえた上で補足の解説をしていきます。画角は左右の目、両方の目から見た映像の画角です。人間は正面を向いたときに両目で180°~200°くらいが見えるといわれています。もちろん、視野外周はぼやけて見えます。現在の三大VR-HMDの「100°」という値は、それと比較すると狭いように感じますが、ソニーHMZ-Tシリーズのような映像鑑賞用HMDの画角が45°だったことを考えれば、十分広いといえます。先進的なVR-HMDでは、180°を超えたものも出てきており、このあたりは技術進化と共に拡大されることもあるでしょう。

映像パネルは三大VR-HMDではどれも有機ELを採用していますが、1枚パネルを採用したのはPlayStation VRだけとなりました。Oculus RiftはDK2までは1枚パネルでしたが、製品版では左右の目に1枚ずつの独立した有機ELパネルを割り当てる構造となりました。HTC Viveも同様の2枚パネルデザインを採用しています。

Oculus Riftを分解した画像
画像提供 iFixit
Oculus Riftを分解してみると搭載映像パネルが2枚構成になっていることがわかる。

PlayStation VRはコストを重視したためこの方針を選択し、一方のOculus RiftとHTC Viveは、各ユーザーの両眼距離(瞳孔間距離)に合わせて映像パネルの間隔を機械的かつ物理的に調整できる機構を設けたために、あえてコストの高い2枚映像パネル構造を選択したとみられています。この設計思想の違いは価格にも現れています。

ペンタイル型とストライプ型とは、RGB(赤緑青)のサブピクセル構造の違いを表しています。ペンタイル型配列では、Gのサブピクセルは解像度ぶんありますが、RとBのサブピクセルは隣接するGサブピクセルに共有されるのです。逆にいえばGの色はフル解像度で再現されますが、RBの色は隣接するGから最大公約数的な駆動を余儀なくされます。端的にいえば、ペンタイル型配列のほうが解像感は落ちます。理論値で40%くらいは低下することになりますが、前述したように人間は緑色の解像感でごまかされがちなので視覚上はそこまでは低下しません。ただ、ストライプ型配列のほうが解像感に優れることはいうまでもありません。おそらく、Oculus RiftとHTC Viveは搭載映像パネルを2枚構成にしたことから、解像度に関しては妥協せざるを得なかったということなんでしょう。逆にPlayStation VRは表示品質・画質を重視したということだと思われます。

ストライプ型とペンタイル型
ストライプ型配列サブピクセル構造とペンタイル配列型サブピクセル構造。ペンタイル配列ではRBサブピクセルが隣接するGピクセルに共有されている。

システム遅延(Motion to Photon)とは、ユーザーが頭部を動かしたとして、それがVR-HMD内の映像パネルの表示に反映されるまでの総時間のことです。この部分は、映像パネルの表示(描画)応答速度と勘違いされてしまいがちで、「有機ELだから液晶よりもだいぶ速いはず」などと理解されてしまう人が多い気がします。有機ELパネルと液晶パネルとの違いが、システム遅延にまったく影響をおよぼさないかといえばそれはそうでもないのですが、それだけではないということです。

システム遅延について、具体的に説明します。まず、ユーザーが頭部(HMD)を動かした瞬間にストップウォッチが押されてスタートします。この頭部(HMD)の動きがホストコンピュータに伝達されてこの情報を処理した結果、HMDの最新の向きや位置が算出されます。このHMDの向きや位置に適合する新しい映像をホストコンピュータ側(GPU側)でレンダリングし、これを映像信号としてVR-HMDに伝送します。これを受け取ったVR-HMDが、映像パネルに映像データを書き込むと、やっとこれが実際に表示されます。このときにストップウォッチをストップして、そこまでの時間経過がシステム遅延ということになります。

このシステム遅延は小さければ小さいほどよいとされ、20ms前後が、VR体験としての最低必要要件だといわれています。

ところで、三大VR-HMDを技術的視点で見たときに、もっともその実現手法が異なっているのは、ユーザーが被ったHMDの動きや位置の検出方法です。これについては次のページで解説したいと思います。

VR-HMDごとの向き、位置検出方法の違い

三大VR-HMDと表現したOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRはそれぞれ、VR-HMDの動きや向きの検出方法が微妙に異なっています。どのVR-HMDも、加速度センサ、ジャイロスコープといった慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)からの情報をもとにHMDの向きや傾きを検知していますが、それだけではありません。最新のVR-HMDでは、外部に設置したセンシングシステムを駆使し、より正確な向きや傾きを検出するとともに、空間内における絶対位置(絶対座標)を取得するような仕様になっているのです。

Oculus Riftでは、HMD側に組み付けられた44個の赤外光LED(IR-LED)を赤外光カメラで検知して、HMDの位置や向き、傾きを算出します。前出のIMUの情報も加えて、より正確な位置、向き、傾きを決定するのです。Oculus Riftは、HMDの背面側のストラップにもIR-LEDが組み込まれています。赤外光カメラがとらえている「IR-LED配列」がこの背面ストラップのIR-LEDの配置パターンだった場合は、ユーザーが後ろを向いていることを検出できます。

Oculus RiftのIRカメラ
HMD側に組み付けられたIR-LEDを赤外光カメラで検知して、HMDの位置や向き、傾きを算出する。

PlayStation VRは、このIR-LEDと赤外光カメラの仕組みが、可視光LEDと可視光カメラ(RGBカメラ)になっただけということがいえます。IMUからの情報と可視光カメラでとらえた映像をもとに、HMDの位置、向き、傾きを算出するわけです。PlayStation VRがなぜ可視光LEDを採用したかの理由はシンプルです。これはPlayStation 3(PS3)時代から実用化されてきたPlayStation Moveモーションコントローラーと、PS3用USBカメラPlayStation Eyeによる「可視光LED×可視光カメラ」技術ベースのモーション入力システムのプラットフォームを継承したためです。PlayStation VRでは、合計9個の可視光LEDが実装されていますが、うち2個は背面ストラップ側に実装されているので、ユーザーが後ろ向きにも対応できているのです。

PlayStation Camera
©Sony Interactive Entertainment Inc. All rights reserved.Design and specifications are subject to change without notice.
IMUからの情報と可視光カメラでとらえた映像をもとに、HMDの位置、向き、傾きを算出する。

HTC Viveも、IMUを使っての基本的な位置、向き、傾きの検出を行う方針は同じですが、外部設置のセンシングシステムの構造は前出2つのVR-HMDとはだいぶ異なっています。まず設置する外部設置センシング装置の個数が違います。Oculus RiftやPlayStation VRは単一のカメラ装置を設置しますが、HTC Viveでは2つのLighthouse Base Stationを設置します。そして、この外部に設置する装置の役割もHTC ViveではOculus RiftやPlayStation VRとはだいぶ違います。HTC ViveのLighthouse Base Stationはカメラではなく赤外光レーザーエミッターなのです。エミッター(Eimitter)とは放出するという意味です。つまり、カメラのように光を受けるものではなく、光を放出する装置なのです。HTC Viveでは、室内に設置した2基のLighthouse Base Stationから赤外光レーザーを室内全体に向けてスキャン照射しています。10msの単位時間ごとに縦照射、横照射という具合で2軸の照射を時分割で行っているのです。逆にHMD側には複数の赤外光センサが実装されています。そのどれかが赤外レーザーを受光したとすれば「今、Lighthouse Base Stationが縦・横どちらの方向にスキャン照射しているのか」「照射したレーザー光はHMD側に到達するまでどのくらい時間かかっているのか」の情報からLighthouse Base Stationから見たHMDの一意的な方向と距離が求められます。

つまり、HTC ViveとOculus RiftやPlayStation VRとでは、HMD側と外部設置センシング装置の役割が真逆だということです。HTC Viveの方式は、Lighthouse Base Stationの個数の面でコストが高くつきます。しかし、HMDの位置は比較的シンプルな幾何学計算で高速に行えるため、画像処理・画像認識的なアプローチが必要になるOculus RiftやPlayStation VRよりは高精度で演算負荷も低い利点があるとHTCは主張しています。

いろいろ解説してきましたが、まとめると、首の「上下の傾き」「左右の首振り」「時計回り、反時計回りの回転」まではIMUだけでなんとかなりますが、これにユーザーの「左右の移動」「前後の移動」「上下の移動(高低の移動)」までの検出を加えた6軸自由度の対応には外部設置のセンシングシステムの存在が不可欠で、その部分には各社の設計思想の違いが表れているということです。

この先の内容は?

以上、Chapter 1の内容の試し読みをお送りしました。Chapter 1はこれ以降も、よりバリエーションに富んだVR HMDの紹介や、VRコンテンツにおける基本的なソフトウェア技法解説などが掲載されています。

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