デジタルカメラをいじりだして20年。フィルムからデジタルに完全移行してからも早10年。
デジタル完全移行に伴い、カメラマンは家にもスタジオにも画像処理のための高性能デスクトップPCを構え、さらにはいつでもどこでもノートPCを携帯しなくてはならない時代になった。時代と共に「カメラ」も「PC(デスクトップ&ノート)」もどんどん高性能な機器を追い求め、買い換えて、その出費たるや「どんだけー!」と叫びたくなる(まぁその結果、仕事に結びついているのだからいいか……)。
ただ、ノートPCだけは、今まで100%満足したことがない。
ロケ先での画像保存のストレージ代わりとして、あるいはWebブラウジング用としてならどんなPCでもいいが、それだったら今はPCじゃなくて、タブレットでいい。だが、いまやカメラとPCを無線で接続し、撮影した写真を撮ったそばからPCに自動転送、さらにその場で検品、その場でレタッチ、という時代だ。ノートPCにもそれに耐えうるスペックや作業性を求めたいのだが、これまで使ってきたノートPCは、ディスプレイの階調性が良くない、解像度が低くて作業性が悪いといった理由で、レタッチやRAW現像などにはとても使えない……といったものが多かった。
今回紹介する富士通のノートPC「FMV LIFEBOOK TH90/P」は、超高解像度「IGZO」液晶搭載、ペン対応、タブレットにもノートにもなる変形機構など、「これはもしかして、今度こそは……」と思えるものだ。実際に見ていこう。
プロカメラマンだからこそ高性能なノートPCが欲しいぞ!
最近のPCは処理速度が早くなったとはいえ、カメラマンは写真を「RAW+JPEG」の「最大解像度」でバシバシ撮るから、ファイルサイズは半端なくデカくてストレージ容量を食うし、データの読み込み処理などに時間がかかると仕事にならない。現像にも強力なマシンパワーが必要だ。だから、写真家が使うノートPCは、とにかく高性能でないといけないわけだ。
というわけで、まずはTH90/Pのスペックをチェックしてみよう。
品名 | LIFEBOOK TH90/P |
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CPU | インテル® Core™ i5-4200U プロセッサー (最大2.60GHz) |
OS | Windows 8.1 64ビット版 |
ディスプレイ | 13.3型ワイドWQHD(2560×1440) Wide Angle液晶 フルフラットファインパネル IGZO(タッチ/ペン入力対応) |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 約500GBハイブリッドHDD (HDD+NAND型フラッシュメモリ) |
ネットワーク | LAN(1000BASE-T対応), ワイヤレスLAN(IEEE 802.11a/b/g/n準拠)、Bluetooth ワイヤレステクノロジー Ver.4.0+HS準拠 |
USB/HDMI | USB3.0×2、HDMI出力×1、LAN端子 |
サイズ(W×D×H)突起部含まず | 320.8×235×17.1~19.3㎜ |
CPUは「インテル® Core™ i5-4200U プロセッサー」。最新のモバイルCPUなので処理能力は充分だ。メモリは8GB(DDR3L SDRAM PC3L-12800)。Photoshop(※)で画像編集をするにも余裕がある。
(※)Photoshopはプリインストールされていないので注意!
ストレージは「約500GB ハイブリッドHDD」で、SSDとHDDの良いところ取りだ。 SSDならではの快適感を持ちながら、RAWデータを満載してもひとまず安心の容量となっている。バッテリーはJEITA 1.0準拠で約12.5時間駆動と、1日がかりのロケでも怖くない。
そしてディスプレイは13.3型ワイドなのに2560×1440ドット / 1677万色のタッチパネル! そしてそして外部出力は最大4096×2304ドット 1677万色。憧れの4K出力だ!
どうやら、スペック面は写真家の仕事に耐える充分なもののようだ。しかし、もちろんディスプレイの画質が良くなくては、RAW現像&レタッチなんてしたくない!ので、そのあたりも確認してみよう。
仕事で活用してみたぞ!
ハイスペックな仕様と、美しい画面表示。そしてクルクル動いて楽しいディスプレイ。こいつは仕事で活用しがいがあるかもしれない! というわけで、早速持ち出してみた。
カメラと無線でつなぐ
前述したように、現在の仕事スタイルは、ノートPCとカメラをWi-Fiで接続し、撮ったそばから転送していくのが基本だ。撮影中にカメラからケーブルがつながっていると非常に邪魔なので、やはり無線であることは重要。
TH90/PはPCなのでもちろんWi-Fiはあるし、Wi-Fi接続&転送用のソフトも利用できる。とりわけ、カメラメーカー純正の高機能なカメラコントロールソフトを利用できるのは、Windows PCならではのメリットだ。カメラコントロールソフトを用いれば、撮影した写真をノートPCに自動転送したり、ノートPCからカメラのシャッターを切ったり…… といったことが可能になる。
アウトドアなど、Wi-Fiルーターが存在しない環境では、アドホック接続(PCとカメラを一対一で直接接続)もできる。ただ、私の所有しているNikonのワイヤレストランスミッター「WT-5」だと、ソフトがまだWindows 8.1に対応していないせいでアドホックが使えない(もちろん今後バージョンアップで使えるようになるのは時間の問題だろうが)。
そこで今回の外出時には、USB電源供給で使えるアイ・オー・データの「WN-TR2 ポケットルーター」を介してTH90/Pとカメラを無線接続してみた。
旅先でレタッチと送信
昔の話だが、旅先で修正した画像をクライアントに送ったところ、「ムラがある」と指摘があった。そのムラ、どうもノートPCのディスプレイではうまく表示できず、PhotoshopでRGBの数値を見ながら手探りで泣く泣く作業したという経緯があった。それ以来私は、厳密なRAW現像&レタッチが必要なときは、ロケ先から帰宅してから家のディスプレイできちんと確認しながらの作業にさせてもらっている。
……だが、このTH90/Pなら、高精細で階調性も良いので、作業もしやすく、しかもPhotoshopにも対応する筆圧対応ペンまで付いている。自宅同様……とはさすがにいかないまでも、出先での急ぎの仕事もクオリティアップできそうだ。
大型モニターと連携・・・もうデスクトップはいらなくなるかも
TH90/Pは前述の通り、HDMIポートから最大4096×2304ドットの出力が可能だ。スタジオでは、TH90/Pをそのまま使い慣れた大画面の外部ディスプレイにつないで、ロケ先で撮った画像のレタッチなどもできる。
ちなみに、TH90/Pの画面を回転して「タブレットスタイル」の状態で外部ディスプレイに接続し、表示をミラーリングモードにすれば、TH90/Pをペンタブレット代わりに使うことができる。付属のペンは筆圧対応なので、Photoshopでは繊細なタッチでレタッチできる。
外部出力は4Kに対応しているので、4Kテレビなどに接続すれば高精細な写真を大画面で楽しむこともできるだろう。
クライアント仕事にも大活躍
撮影はひとりですることもあれば、クライアントが同席する場合もある。そういうときはクルッと画面を回して「バリアススタイル」に。「どんなもんでしょう?お客様!」とばかりに撮影したばかりの写真を見せることができる。もちろん、撮影時以外でも打ち合わせなどで役立ちそうだ。
以上、TH90/Pを試用してきたが、ロケ先でも、スタジオでも、カメラマンの携行ノートPCとして様々に活用できそうな可能性を秘めている。TH90/Pをカメラと共に肌身離さず持ち歩き、家(スタジオ)では高品質な外部ディスプレイにつないで活用など、オールラウンドに活用できそうだ。ちなみにストレージは約500GBとはいえ、2~3回の撮影で埋まってしまう可能性もあるので、家やスタジオには大容量のNASを備えておくのがおすすめ!