先週のゲーム株は、イマジニア(4644)や翔泳社(4778)など多数の銘柄が大幅上昇。一方、アスキー(9473)やコーエー(9654)などは下落となった。日経平均が週初に大幅上昇した影響もあり、特に直近で売り込まれていた銘柄の反発が目立った。株式相場全体にやや底入れムードが広がったことも、下値不安が解消したと見られる銘柄に押し目買いを入れる要因となったようだ。
●上がったとはいえ・・・
先週の値上がり率トップは、イマジニア(株価975円→1320円)が獲得した。先週、特に好材料を発表したわけではないが、直近での値下がり率があまりにも大きく、その反動で買われた公算が大きいものと思われる。そもそも、今年の最高値である4650円(2月25日)から最安値である890円(10月31日)までの下落率は実に80%に上り、株価が5分の1になった計算になる。なかでも10月2日に9月中間期の経常損益が2億円の赤字(前年同期は7千万円の黒字)に転落すると発表した際には、株価が一気に290円(1390円から1100円)も下落した。
「現在の株価はあまりにも売られ過ぎ」と判断を下した投資家が買いを入れ、株価が上昇したのであろう。次に、上昇率第2位の翔泳社(株価150万円→198万円)に目を移すと、今年の最高値は2050万円(2月28日)、最安値は129万円(10月30日)と、こちらも大幅な下落(94%)となっている。とは言っても、実際は6月27日に1:2の株式分割を実施しており、修正株価で計算した場合は87%の下落率となる。こちらは、11月6日に業績の上方修正を発表しており、1カ月間で2度目の修正に強気の見方が広がったことにより大幅上昇となったようだ。
さらに、上昇率3位のバンプレスト(7854)(1360円→1650円)に目をむけると、この株はご存知のように10月18日に東証2部に新規上場した際、初日が売り気配で値が付かなかった銘柄である。翌10月19日にようやく初値1690円(公募価格2800円)が付き、10月31日には1300円まで下落した。それがその後やっと1650円まで戻ったのだから、「上がった」と言っても公募株を保有している人にとっては“焼け石に水”としか言えないだろう。そのような公募株を買ってしまった投資家の気持ちを理解するために、次に簡単な問題を用意してみたので一緒に考えてほしい。
●「率」の誤謬
問:ここにAという株があります。このA株は第1週目で25%上昇したが、第2週目では逆に25%の下落、そして第3週目で再び25%上昇したが、最後の第4週目では25%の下落となってしまいました。果たして、このA株はこの4週間のトータルで「上昇」したのでしょうか、それとも「下落」したのでしょうか?
この問題を見た瞬間、「上昇も下落もしてないじゃないか」と思う人も多いことだろう。しかし、ここで良く考えてほしい。例えばAという株の最初の株価を1000円と仮定し再び考えてみると理解しやすい。つまり、第1週目に25%上昇したのだから1000×1.25で1250円。第2週目は25%下落したのだから、1250円×0.75で938円(小数点以下四捨五入)。そして、第3週目は再び25%上昇し938円×1.25で1173円。最後に25%下落し1173円×0.75で880円となるのである。
そうすると、そう正解は「下落(損)」しているのである。一般的にわれわれは、株価の騰落をパーセント(率)で測ることが習慣となっている。しかし、この“率”というのは多少「くせ者」であり、われわれの数字(株価)に対する感覚を麻痺させやすい性質をもっている。つまり、今回のバンプレストの話に置き換えると、先週の上昇率「21%」というのはあくまでも、1360円で買った人の話であって、公募株を買った人にはほとんど意味がない。先週の上昇幅290円は公募価格(2800円)に対しては僅か「10%」にしか相当せず、だから“焼け石に水”という理論になってしまうのである。
●暗黙の不可侵条約
先週、話題が一番多かったのがバンダイ(7967)であった。先ほどの子会社バンプレストの株価上昇は勿論のこと、特に10月25日に今期連結純利益が前期比8倍に上方修正されてからは、株価が堅調に推移していることも注目点となっている。12月に投入される「ワンダースワンカラー」の見通しが明るいことに加え、ソニー(6758)のプレステ2の登場以来DVD市場が急拡大していることもDVDソフトの制作・販売子会社であるバンダイビジュアルにとっては追い風になっている。
DVD販売本数ベースでは8月にビデオカセットを初めて上回るという業界全体の勢いもあり、バンダイビジュアルがバンダイの今期連結経常益の約1割を占める規模にまで成長しているというから驚きである。その他、ワンダースワンのプログラムコンテストを開き、ゲーム機用のソフトを一般ユーザーから募集する企画している。募集用の専用ホームページで、応募を受け付け、最優秀作には賞金50万円などを贈るという業界では珍しい企画もある。現在、携帯ゲーム市場では任天堂が「ゲームボーイ」で圧倒的なシェアを誇るが、バンダイが以前言っていた「ゲームボーイとワンダースワンとは、ユーザー層が違う」という本当の意味が、最近理解できるようになってきたようだ。
●今週の展望
今週はズバリ、システムソフト(7527)に期待したい。それは、会社側の正式発表ではないのだが、一部報道により合併することが伝えられたからである(11月11日現在)。その記事によると、合併相手となるのは、大型汎用機やネット技術で実績のある開発ベンチャーの「ナスビイ」(決して“懸賞生活”をする会社ではない)であり、この合併によりシステムソフトは次世代携帯電話のネット関連システムの開発・販売会社に転換し、今後その収益力を高めるという。この合併報道がされた先週の金曜日にシステムソフト株は終日売買停止となっており、今週売買再開となった場合は“一波乱”ありそうだと睨んでいる。
ということで、今週は「システムソフトに期待!」ということで締めさせていただくが、先週前半に折角反発した株価も週後半には失速。今年の年初来安値1万4333円を守れるかどうかも心配になってきたので、今週は以下の通り作戦を変更しておきたい。
・・・・・・「いのちだいじに」
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/11/13
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