先週のゲーム株は、角川書店(9477)やKCE東京(4780)などが上昇し、ソニー(6758)やタカラ(7969)などが下落した。特に注目度が高かったセガ(7964)は、先々週末発表の業績下方修正を嫌気し、一時690円まで売り込まれた。また、ソニーも先々週に発表された業績の影響で、年初来安値を更新した。ゲーム株全体としては、先々週の大幅下落の反動で反発する銘柄が多数見られたが、大半の銘柄に“底入れ感”が乏しく、下値不安を残す展開となった。
●急落したとき空くもの、埋めるもの
先週の値上がり率第1位は角川書店であった。角川書店というと「書籍」や「雑誌」というイメージが強いが、ソフト事業での売上げが約17%占めているほか、デジタル化へ積極的であるなど、現在では「書店」というイメージとはかけ離れた存在となっている。最近ではコンテンツ配信でシンガポール政府と合弁したり、有線ブロードネットワークスの高速ネット接続実験に参加するなど、ネット関連事業にも積極的に取り組んでいる。しかし、その積極策が裏目に出てか、先月20日に9月中間期の連結経常利益予想を7億3,200万円に下方修正するなど、その成果はいまだ表れていないようだ。
そして業績の下方修正をした際、株価が2日連続ストップ安するなど、大幅下落となったのである。そして先週、中間期の連結経常利益を7億1,200万円と発表したあとは、逆に株価が上昇。前回発表した数値とさほど変わらない数値ではあるが、どうやら「売られすぎ」との見方が台頭したらしいのだ。確かに、角川書店株は9月29日に高値5070円を付けてから、10月25日の安値2720円をつけるまで約1カ月間で約46%も下落している。
しかし、「売られすぎ」だからいって「買い戻す」というのも単純すぎる話で、実際は“株価チャート”にちょっとしたヒントが隠されていたようである。それは、先ほど「2日連続でストップ安」と指摘したが、チャートで見てみると、この2回のストップ安によって2カ所の“窓”が空いているのだ。最初にストップ安した「3650円から4150円の間の窓」(1番目の窓)、2日目にストップ安した「3150円から3650円の間の窓」(2番目の窓)とすると、合計2カ所の窓が空いている。
そして、株価は10月25日に安値2720円を付けた後、“窓を埋めに行くために反発に転じた。まず、10月31日に3950円まで値を戻し「2番目の窓」を埋めた。その翌日4080円まで上昇し「1番目の窓」をほぼ埋める形となった。また、先週値上がり率第3位のナムコ(9752)も同様な動きをした。10月5日の急落時に2900円から3050円の間で、窓を空けており、その後10月10日には2450円まで下落する場面もあったが、先週水曜日の11月1日には一時2970円の高値を付けることで、この窓の半分を既に埋めているである。
●潜在的エネルギー
それでは、なぜ空けた窓を埋めにいくのであろうか。当然“売られすぎ”“買われすぎ”ということも考えられようが、どうやら市場参加者の潜在的なエネルギーに起因しているように思われる。具体的に説明すると、一般的な投資家は株式の注文を出す際に大きく分けて「成行」か「指値」かをまず指定する。しかし、角川書店やナムコのように“急落”(特に売り気配で値がつかない状態)した場合は、成行注文の投資家はともかく、指値注文の投資家は売買が成立しないことが多い。要するに「この価格で売り買いしたいのに出来ない」という投資家が多く出現することになる。
当然、その欲求は株価を動かすエネルギーになり、それを満たすために株価がわざわざ上昇すると考えられるのである。これは、勿論急落に限ったことではなく、急騰したときにも同じことが言える。急騰した銘柄が一回大きく下がってから、再び上昇に転じるのはこのためであると考えることが出来るのである。
先週、「セガ(7964)のツッコミ買いに期待!」と言ったのは、この“窓埋め”に期待してのことであった。「株価チャートって意外と正直なところがあるものだ」と再確認した次第である。
●捨てるに捨てられないもの
セガが、他社ハードにソフト供給を行うという歴史的な決断を発表した。セガは今まで他社ハードにソフトを供給したことはなく、自社ハード(ドリームキャストやセガサターンなど)にのみソフトを供給してきた。しかし、通期の連結決算が4期連続の赤字になることもあり、経営を現方針のままで推し進めることは出来なくなったようだ。現在、世界の家庭用ゲーム機市場は、ソニー、任天堂(7974)、セガの国内3社の寡占状態にある。そこへ、来年米マイクロソフトが「Xbox」(エックスボックス)を手に乗りこんくることが分かっている。
セガは、この来るべき4社体制から自ら排除されるかの如く、今回の方針を打ち出したのだ。しかし、専門家の目にはその方針による改革は“甘い”と映ったようだ。第1点目として、今回のソフトの供給が、「旧作ソフトのみ」であり、新作ソフトの供給は見送られていること。第2点目は、「ドリームキャスト事業から撤退しない」という点である。「ハードを制するものが業界を制す」というゲーム業界の鉄則から言えば、セガは完全に負け組であり、潔く“一ソフト会社”に成り下がるべきであると思われるのである。
しかし、大川功会長兼社長曰く「世の中白と黒ばかりではない。グレーの領域もある」とドリキャスを捨てまいとしている。「もしセガがソフト会社になったら、さぞかし素晴らしいソフトが出来上がるだろう」と考える人は少なくなく、今後の大英断を期待したいところである。
そんな中、10月末にセガの米国法人からマスコミ関係者に送られてきた「『ドリームキャスト』と『プレステ2』に関する事実と迷信」と題する資料のある一節が非常に興味深いのでご紹介する。その中で「なぜ、消費者は通信用モデムを内臓していない『プレステ2』(300ドル)に『ドリームキャスト』(149ドル)の2倍の値段を払ってまで購入するのか」というセガ社員の“嘆き”とも聞こえる部分がある。この文章からも分かる通り、セガの焦りが相当強いことと、再建への道がかなり険しいことがうかがえる。セガの大復活を期待したい。
●今週の展望
今週はズバリ「アルゼ(6425)」に注目したい。なぜならば、パチスロの新機種「ドンチャン2」を販売するからである。「ドンチャン2」は、その名の通り「ハナビ(出荷累計台数約10万台)」「オオハナビ(出荷累計台数約18万台)」の人気キャラクター「ドンチャン」がモチーフの後継機種であり、過去2機種の出荷台数を上回るものと期待されている。それに加え、現在の株価が割安であるということである。
2001年3月期の連結一株利益は660.38円と非常に高く、現在の連結PER(株価収益率)は9.6倍と割安感が目立つ。チャート上も「底バイ」の状態から先週末に5日移動平均線と25日移動平均線がゴールデンクロスしており、今後騰勢を強める可能性が高いと思われる。 ということで、「アルゼに期待!」で締めさせていただくが、15000円台を回復できない株式相場に対して今週は以下の“作戦”に変更しておきたい。・・・・・・「ガンガンいこうぜ!」
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/11/6
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