先週は、サミー(6426)やスクウェア(9620)が上昇、翔泳社(9478)やKCE東京(4780)などが下落した。10月18日に東証2部に新規上場を果たしたバンプレスト(7854)は、大量の売り物を浴び上場初日に寄付かないという異常事態に見舞われた。翌日、公募価格の2800円から44%も安い1690円で寄り付いたが、その後も軟調に推移したため、ゲーム株全般にもその弱さを波及させる結果となったようだ。
バンプレストの大幅下落に見られるように新規公開株に対する投資家の選別眼も一段と厳しくなっていることに加え、ゲームソフト業界の将来を懸念する声も挙がってきており、直近に新規公開を果たしたKCE東京を含めたゲーム株全体は、先週その弱さを露呈する形となったようだ。
●プレミアム商品はいま
先週もっとも下落したのは、上場したばかりのバンプレストであった。バンプレストはバンダイ(7967)の子会社であり、プレステ用ゲームソフト「スーパーロボット大戦α」で有名であることは先週にもお伝えした通りである。この「スーパーロボット大戦α」は4月から9月までの販売本数で、エニックス(9684)の「ドラクエVII」やスクウェアの「FFIX」次いで第3位の地位を確保している。そのため、バンプレストは将来を有望とまでは言えないまでも市場から期待されていた銘柄のひとつでもあった。
しかし、初値は公募価格の2800円を大きく下回る1690円で寄り付き、市場の期待を大きく裏切る形となってしまった。一般的に、証券会社でいうプレミアム商品(確実に儲かると思われる株や転換社債など)の代表格として、「新規公開株」の名前が良く挙げられる。新規公開株は、“数に限りがある”ということと、市場で価格形成される前段階で値段が決まるため“割安である”という2つのメリットがある。
最近の新規公開株で非常に良く儲かった例として、プリクラで有名なあのアトラス(7866)が大株主となっていた「鷹山(ようざん)」(9月1日店頭公開)が挙げられる。公募価格は1株400万円であったが、NTTドコモ(9437)の次世代携帯電話「W―CDMA」に使われる部品メーカーであることで前評判が高く、初値が1500万円位になるのではないかと事前から予想されていた。実際、初値はほぼ予想通りの1600万円となったわけだが、これを買った人はわずか2週間で1200万円もの利益を上げたことになる。
「こんな不景気なご時世に1200万円も儲けてやがってバチでも当たってしまえ!」と儲かった人をうらやむ気持ちも分からないでもないが、日本全国で(1人1株の配分として)1,250人もの人たちが実際にこの甘い汁を吸ったのは事実である。一般にこのような“プレミアム商品”の配分は、証券会社の自由裁量で決められていることが多く(最近では抽選方式を採用しているところもあるが・・・)、主にその証券会社の既存の大手顧客であったり、(将来大手顧客になり得る)新規顧客に配分されることが多い。
鷹山の例は極端であったとしても、その多くの新規公開株はいつの時代でも短期間で利益を生み出す“打ち出の小槌”的な役割を果たしてきた。だが、今はそうではなくなってきている。8月29日に店頭市場に新規公開を果たしたKCE東京も公募価格3200円のところ、初値が3000円となり、6%強も下回ったことはまだ記憶に新しい(10月20日現在では1420円と更に下落している)。KCE東京や今回のバンプレストは、本来あるべき姿であるプレミアム商品として購入した投資家も数多く、「期待を裏切られた挙げ句に今さら損切りして売るわけにもいかない」というのが現状でもあるようだ。これらのプレミアム商品がこれから子孫末代まで約1000年間保有する“ミレニアム商品”とならなければ良いのが・・・と、心配してしまう今日このごろである。
●大底のシグナル
ジャレコ(7954)が急落した。先々週末1390円であった株価が、月曜日には1300円(90円安)、火曜日には1100円(200円安)、そして水曜日には900円(200円安)と、一時ストップ安まで大きく売り込まれた。市場関係者の多くは、株価が大底をつけるときよく“コツン”という音が鳴るという。実際、本当に音が鳴るわけではないのだが、彼らの多くがこのように“鮮明な音”を耳にするらしい。今回のジャレコの動きもまさに、このコツンという音が聞こえたのであった。
水曜日の午前中に、ジャレコは前日のストップ安の流れを引き継ぎ、早くもストップ安売り気配(900円ヤリ)となっていた。しかし、誰もが連日のストップ安を予感したその瞬間、大量の買い物が入りこの売り物(数万株)をすべてさらってしまったのである。それからの戻りは実に早かった。株価は一気に上昇し、前日比変わらずの1100円まであっという間に駆け上ってしまったのである。「200円安の後の200円高」、これがコツンの正体であったのである。
そして、この底入れのシグナルは、日経平均でもしばしば聞かれることがあるという。1992年8月18日の安値1万4309円や98年10月9日の安値1万2879円の時などがそうである。最近では先週の木曜日に日経平均がこれに近い音を発したが、“コツン”という鋭い音というよりむしろ“トン!”という少し鈍い音であった。人によってその感じ方が異なるのだが、このコツンと、トン!との微妙な差が後々の株価の明暗を分けることになると思われる。いっそのこと誰にでも底が分かるように「ジャレコ!」なんて音が鳴ったらさぞかし面白いと思うのだが・・・。
●今週の展望
今週は先週に東証1部に上場した「カプコン(9697)」に期待したい。それは、某外資系証券会社が目標株価を5200円に設定し買い推奨していることに加え、異なるゲーム機(プレステ2とドリキャスやゲームキューブとXboxなど)の利用者同士がインターネット経由で対戦できる新作ソフトを、来秋にも発売するからである。最近発売されるゲーム機(ハード)の多くは、そのゲーム機本体が持つ高性能が災いして、その能力に見合うソフトが非常に制作しづらいというジレンマを抱えている。
しかし、今回のカプコンのように多機種で同時に使えるソフトがあったら開発費も回収しやすく、リスクもある程度低減できるものと考えることができる。さらに、東証1部に上場を果たしてからは株価の調子も非常に良く、大幅上昇の可能性も捨て切れないのである。ということで、今週は「カプコンに期待!」で、締めさせていただくが、なかなか安値圏から抜け出せない株式相場の本当の“復活”を祈って、今週は以下の呪文を唱えたい。・・・「ザオラル!」・・・「あれ?」
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/10/23
|