先週は、セタ(4670)やスクウェア(9620)など6銘柄だけが上昇、ジャレコ(7954)やシステムソフト(7527)など他の21銘柄は下落した。日経平均が1週間で約600円下落する劣悪な相場環境のなか、ゲーム株も例外視されることなく大幅安となる銘柄が目立った。とくに、一世を風靡したジャレコは売りが先行し、約20%も下落した。
●無謀な挑戦
先週の値上がり率第1位は「セタ」が獲得した。しかし、セタといってもご存知でない方が大半であると思われる。このセタはパチスロ製造・販売の最大手アルゼ(6425)の子会社であり、アルゼのパチンコ・パチスロマシンに対する開発支援業務を手掛け、パチンコホール向けプリペイドカードシステムの製造・販売をしている会社なのである。過去に発売したゲームソフトの中では、「スーパーリアル麻雀」や「森田将棋」などの高年齢向けゲームで有名であり、画像システムなど高い技術力を有していると言われている。
しかし、最近では“アルゼ色”が強くなってきていることから、新規のゲーム開発から手を引き、パチスロ関連に特化する方向を打ち出している。だから、そのうちこの“ゲーム株”の中から外れてしまう可能性があると私は危惧している。しかし、なぜセタが1位となることができたのであろうか。その最大の理由は「出来高の少なさ」にあると考えられる。一般的に、証券業界では、セタのように会社の資本金が比較的小さく、市場に出回っている株(浮動株)が少ない株のことを「品薄(しなうす)株」と表現する。品薄株は、市場性が薄いだけにその株価の値動きは荒く、リスクも大きい。
3週前の9月28日に品薄株「セタ」はその週で唯一「415円」で3千株の商いが成立した。しかし、翌週には1千株すら出来ず、全く商いが成立しないという事態に見舞われた。そして、先週は1週間でたった5千株しか出来なかったが、その全てが「450円」という株価で商いが何とか成立した。つまり、2週越しで415円から450円へ株価が変動し、しかも僅か5千株で8%もの上昇を果たしたことによって、1位の座を獲得したのである。
従って、もしこのコーナーでセタを毎週1位にしたいのなら、あなたのポケットマネーで一所懸命「セタ株」を買えば、簡単に1位になれるかもしれないのである。ちなみにゲーム株のなかでセタと同じくらい品薄なのは、ティーアンドイーソフト(9611)とシステムソフト(7527)である。少し“財力”に自信のある方は挑戦してみてはいかがだろうか。
●オタク世界からの脱出
株式相場が全体に軟調な中、上昇率第2位を獲得したのはスクウェア(9620)であった。スクウェアと言えば、「ファイナルファンタジー」を思い出さずにはいられないだろう。シリーズ9作目である「ファイナルファンタジーIX」は、7月7日の発売以来、9月24日までの集計で263万本発売した。しかし、この現状にスクウェアは甘えてはいけない。この上を行くゲームソフトが存在するのである。そうあのエニックスの「ドラゴンクエストVII~エデンの戦士たち~」である。このドラクエVIIは、同期間に350万本以上売上げているのである。
1位が「ドラクエ」で、2位が「FF」で理解した。それでは第3位は何であろう。それは、10月18日に東証2部に新規上場するバンプレスト(7854)の作品のひとつ「スーパーロボット大戦α」である。それはどんなゲームかというと、創世紀から現在までの、数ある“ロボットアニメキャラクター”が一堂に介し、壮絶な戦いを繰り広げるシュミレーションRPG(ロールプレイングゲーム)の代表作である―。といっても、全く何をいっているか分からない人のために簡単に説明すると、「機動戦士ガンダムVS.マジンガーZ」や「ゲッターロボVS.コン・バトラーV」といった昔なつかしの超有名ロボットアニメキャラクターたちが戦うゲームなのである。
今まで、テレビや映画を一方的に“見る”という形でしか参加することができなかったアニメの世界が、自分でそのキャラクターを“操作”することによって疑似体験できるというのはマニアにとってはまた格別な思いがあるのだろう。最近コナミ(9766)のカードゲーム“遊戯王”が爆発的な大人気となっているが、一部で小中学生に限らず大人たちを巻き込んでの壮絶なバトルが繰り広げられているのは、今や社会常識でもあるようだ。
この子供の遊びに大人が参戦するという現象を不可思議に思う人たちも多数存在するとは思うが、「ゲーム=子供の遊び」という時代は過去のものとなりつつあるようだ。マジンガーZやガンダムを見て育った子供たちが、今や大人になり、親になり、そして彼らの子供たちと“同じゲーム”で遊ぶ。そういった時代の流れが、ある意味「マニア」であるとか「オタク」の世界であったものを、より「一般的」なもの、そして「家庭的」なものへとボーダーレス化を許容している。
だから、これからゲームメーカーが過去以上に繁栄していくためには、ある狭い領域の人たちだけをターゲットにするのではなく、もっと幅広いカテゴリーの人たちを対象にしたゲームを開発・販売する必要があると考えることができよう。今度コナミは、10月28日に野球を題材にしたカードゲーム「フィールド・オブ・ナイン」を発売する。
そして続いて12月7日にはTBS系の人気番組「筋肉番付」を題材としたトレーディングカード(収集や対戦して遊ぶ)を発売する。いずれも前作の「遊戯王」に比べ大人も参加しやすい野球などのスポーツが対象となっており、そういった意味で、時代の流れに非常にマッチしたものだと考えることができる。
●今週の展望
今週は突然ではあるが、タカラ(7969)に注目してみたい。それは決して「銀座にリカちゃん専用売り場」を設置するからではない。本当の理由は、今月の20日に家庭用のカラオケ装置「e-kara」を発売するからである。「e-kara」はマイク一体型で、楽曲や歌詞などが入った専用カートリッジを本体に差しこみ、家庭のテレビに接続して使用する簡単なカラオケ機である。
本体の希望小売価格は5,800円、カートリッジは2,480円となっている。そして、タカラは、来年の3月末までに本体を100万台、カートリッジは300万個の販売を目指すという。ざっと合計すると132億円強になる。タカラの年間売上高の予想が450億円であるから、およそ30%に当たる部分をこの「e-kara」で達成してしまうことになる。そして極めつけが、このテレビコマーシャルを担当するのが、あの人気アイドルグループ「モーニング娘。」であることだ。カラオケ自体の価格も安いが、タカラの株価470円も“モー娘。”を買うにはちょっと安いと思われる。
ということで、今週は“リカちゃん”のみならず“モー娘。”のタカラに期待!ということで締めさせて頂くが、呪文を唱えるたびに株式相場が悪化するので、本日はこのようにして終了させていただきたい。・・・「やくそう→つかう」
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/10/16
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