先週はジャレコ(7954)が大幅高し、テクモ(9650)や角川書店(9477)なども上昇した。一方、アトラス(7866)やKEC東京(4780)、KCEO(4729)などは下落した。特にひと際目立ったのはジャレコの上昇であり、凄まじいものであった。1週間で約95%も上昇し、9月1日に930円だった株価が8日には1810円となった。
●理由は買い推奨?
先週のジャレコは、まさに龍が天に昇るかのごとく凄まじい勢いで上昇した。先々週に、「香港のインターネット関連企業のパシフィック・センチュリー・サイバーワークス(PCCW)がジャレコ株の公開買い付け(TOB)に成功した」と報じられたときは、まだ株価は動く気配すらなかったのにである(900円)。なぜならば、一般投資家も既にその買収の事実を知っていたし、たとえ買収が成功したところで特別な材料になると皆が感じなかったからである。
しかし、先週の月曜日あたりから徐々に雰囲気が変わってくる。株価が上がるのである(1030円)。「なぜ株価が上がって不思議なんだ?」とお思いになる方もいらっしゃるとは思うが、われわれの職業柄、明確な上昇理由がないと、すごく不思議に感じてしまうものなのである。「この株はこれこれこういう理由で上がった」と説明が付かなければ、株を語る資格がなくなってしまうのである。だが、火曜日に株価はさらに上昇する(1230円)。そしてさらに不思議になってきた。「この株はつい3カ月前には300円だったはずだ」とか、「たとえジャレコがPCCWの子会社になったとしても、会社の将来が保証されているわけではない。」とか、色々なことを考えてしまうのである。
その思惑に反して株価はさらに勢いを増してゆく。6日(水)は1310円。7日(木)には1510円。そして8日(金)には、とうとう1810円に到達した。上昇の理由は、実は簡単なところにあったのである。某外資系証券会社が「買い推奨」のレポートを出していたのである。そして、そこに記載されている1年後の目標株価を見ると、なんと「2000円」と書いてあったのである。さらに中期的な株価目標は「4000円」と書いてあった。
●株価が上がって誰が得をしたのか
ジャレコは、来年からPCCWのブロードバンド・インターネット向け双方向サービスであるNOW事業を開始する。ここで、将来の主力コンテンツとなるアニメやゲームの制作・加工・配信などを手掛け、日本でのブロードバンド戦略展開に必要なプラットフォームをPCCWに対して提供していくこととなる。
ところで、今回の株価上昇で誰か得した人(企業)はいないのであろうか。日本の企業で3社ほどあるのを発見した。それは「オリックス」と「電通」、そして「ぴあ」の3社である。この3社はジャレコ1株を328円で既に取得していたのである。取得株数はそれぞれオリックスと電通が90万株、ぴあが30万株である。現在のジャレコの株価は1810円となっており、その1810円から328円を差し引くと1482円となる。そして90万株保有している場合はそれらを掛け算して「13億3,380万円」という巨大な数字が現われてくる。これが、「オリックス」と「電通」のジャレコ株での含み益である。「お金持ちはさらにお金持ちになる」という図式が改めて確認できたようだ。
●がんばれセガ
先週はジャレコが大きく上昇したことで他の株の影が薄くなってしまった。そんな相場展開のなか、1000円台割れのピンチを迎えていたのがセガ・エンタープライゼス(7964)であった。ソニー(6758)の「プレステ2」、任天堂(7974)の「ゲームキューブ」とライバル会社が次世代ゲーム機を販売・発表するなか、現行機「ドリームキャスト」の販売不振の影響で、セガの株価が先週火曜日に1080円の安値を付けていたのである。
個人的にはセガのゲームは他社のゲームと比べ引けを取らないと思っているし、好きなゲームも多い。特に最近はまったのが「ダービーオーナーズクラブ」という競馬ゲームであり、今回はセガへの応援歌のつもりで思い切って紹介してみたい。「ダービーオーナーズクラブ」は家庭用のゲームではなく、街中のゲームセンターに設置してあるアーケード用ゲームである。
一見、普通のコインゲームのように見えるが、実際はお金を入れてプレーする。まず、最初に8席設けてあるなかの1つの席に座り500円を投入する。すると自分専用のモニターの中で1頭の子馬の馬主になることができる。そして、その子馬に自分の好きな名前を付けて調教を開始する。そして調教して強くなった馬を、周りの人たちが調教した馬とレースで競わせるのである。
レースの模様は前方の巨大なスクリーンで放映され、自分の席に設置してあるボタンを連打することによって自分の馬を自由にリモートコントロールできる。レースが終了すると愛馬に餌をあげたり、会話を交わしてコミュニケーションをとることができる。そして、ゲームが終了すると自分の愛馬のデータが磁気カードに記憶されて出てくる。次回このカードを持って行けば、違うゲームセンターでもプレーが可能なのである。非常に面白いゲームであり、競馬に興味のない方でも一度プレーされることをお奨めしたい。
●今週の展望
先週大きく上がったジャレコは、ブロードバンドコンテンツ分野での活躍が期待され、株価が上昇したものであった。今週は、今まさに“背水の陣”となっているセガに注目してみたい。なぜならば、先ほど説明した通り、かつてない安値圏で推移していることに加えて、大人を本気にさせるノウハウと実力を持っていると考えられるからである。
任天堂の「ゲームボーイ」やバンダイの「ワンダースワン」が子供用であったのに対して、セガは、「ダービーオーナーズクラブ」のようにバーチャルリアリティーの世界で大人を十分楽しませてくれる。今後、家庭用のゲーム機を通じてブロードバンドエンターテイメントの世界が本格化した場合、お金を持っている大人を相手にできるかどうかが、最も必要な条件になってくる。現時点では、「セガ」だけがネットワークゲーム市場の覇者になるための必要条件を全てクリアしていると考えられ、“背水”からの一発逆転を狙ってみたい。
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/09/04
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