先週のゲーム株はジャレコ(7954)が大幅に上昇し、次いでトーセ(4728)やイマジニア(4644)などが上昇した。他のゲーム株も揃って堅調に推移し、26銘柄中上昇した銘柄は実に24にも及んだ。一方で、KCEO(4729)やセタ(4670)などが下落し、特にKCEOの下落率は13%にも及んだ。先週の相場はIT関連銘柄が総じて反発基調だったのが幸いして、そのコンテンツ事業であるゲーム株も共に物色されたということが上昇要因として挙げられそうだ。
●ジャレコがなくなる!?
先週は何といっても話題の中心はジャレコだろう。8/4の株価が490円だったのにもかかわらず、8/11には732円にまで急騰してしまったからだ。上昇率は実に49%にも及ぶ。なぜそんなに上昇したのだろうか? 理由は簡単である。「買収」されたからである。買収をしたのは香港最大のネット関連企業といわれる「パシフィック・センチュリー・サイバーワークス(PCCW)」。この巨大企業がゲームに限らずアニメーションや音楽といった総合的なコンテンツの制作拠点を得るために、ジャレコに白羽の矢を立てたのだ。
ジャレコはこの買収によってPCCWの傘下に入り、多大なメリットを享受することになる。まず、1つめが「アジアで展開するインターネット事業のコンテンツとして、ゲームソフトが提供できる」ということ。2つめが「PCCWのブロードバンド・インターネット向け双方向サービスであるNOW(Network of the world)の日本語版サービスを事業化し、将来の中核事業として育成することができる」ということ。さらに3番目が「PCCWの強大な資本力を背景に、財務基盤の強化が図れる」ということなどである。
市場がこれらの材料を評価して株価急騰に至ったわけだ。ちなみにジャレコは10月末に社名変更し「パシフィック・センチュリー・サイバーワークス・ジャパン」(PCCW―J、仮称)に変身する。やはりジャレコはなくなるのだ。
●簡単に株価を動かす方法!?
2番目に上昇率が高かったのがトーセだった。トーセが上昇した理由は、実に簡単。8/8に大和総研がトーセ株の格付けを「A」にしたからである。格付けの理由は「ゲームソフト開発アウトソーシングの需要拡大を追い風に、中期的に業績急拡大を見込む」ということらしい。しかし、株価格付けとは一体何なのか、ご存知でない方もいらっしゃると思うので簡単に説明してみたい。
そもそも株価格付けとは、今後その株が上がるのか、下がるのか、それとも変化しないのかをアナリストたちが判断した「株価予想」なのである。大和総研の場合、今後半年・1年のパフォーマンスがTOPIX(東証株価指数)を10%程度以上上回ると予想する場合には「A」を、プラスマイナス10%程度以内にあると予想する場合には「B」を、10%程度以上下回ると予想する場合には「C」をつけることになっている。
最近になってこの株価格付けを重視する投資家が増加傾向にあり、格付け情報によっては、株価が大きく上下することが頻繁に起こるようになってきている。というよりむしろ投資家や証券マンが過敏反応を起こすまでになっている。そしてその弊害として、本来重要であるべきはずの企業が発信する情報の方が相対的に影が薄くなっているというのが現状であるようだ。そもそも、全く当たらない格付け情報もあるので皆さんも注意をしなければならないだろう。
●「メダロット」って何?
イマジニアが上昇した理由は、先週のゲーム業界に限らずソフト開発会社株全般が揃って堅調だったことが原因だ。特に、年初から春先にかけて高値を付けた銘柄(特に情報通信関連やハイテク関連銘柄に多いのだが)はここ最近までに株価が3分の1や4分の1にまでに下落したものが多数出現し、そのような銘柄が先週一斉に大幅反発したのだ。イマジニアもその中の1つだったというわけである。ちなみに高値は2/25の4650円、安値は7/31の1500円である。
しかし、何も材料がないといったことはなく「メダロット3」という大人にはちょっと縁遠そうな(?)ゲームが流行っているのだ。「メダロット3」とは同社のゲームボーイソフトのシリーズ3作目であり、自分だけのロボペット「メダロット」を作りライバルと対戦できるというRPGなのである。また、8/4には「メダロッチアドバンス」という通信対戦機能搭載の時計型ロボット育成ゲームが登場したばかりではなく、さらに9月にはメダロットのオフィシャルカードゲームを発売することになっている。
オフィシャルカードゲームといえば爆発的な人気を呼んだあのコナミ(9766)の「遊戯王」を思い出さずにはいられないだろう。そのような背景からイマジニア株が”連想買い”されたというわけである。
●お兄さんはツライ?
一方、KCEOだけ何故大きく下がったのであろうか。実は、兄弟会社であるKCET(KCE東京)が8/29に店頭に株式公開することが決まったからなのである。親会社のコナミから見れば、一人っ子のKCEOにKCETという新しい息子が誕生したことになる。当然親なら兄弟をあらゆる点で比べてしまうだろう。
今回の場合はたまたまKCETのほうがKCEOよりも(株価の比較において)優秀だったのだ。「お兄さんであるKCEOの立場がなくなった(!?)」というのが下落の最大の理由である。お分かり頂けただろうか。
今週は、”ダメ息子”のKCEOに声援を送りたい。あまりにもKCETとの比較は可哀相であると考えるからである。KCEOは8/3から株式分割により株価が買いやすい水準(8/11現在54万円)に下がっているし、これからオリンピックシーズンを迎えるにあたって、「がんばれ!ニッポン!オリンピック2000」をPS版とDC版を8/31に発売するというのも話題性があって良い。また、親会社のコナミの株価は堅調に推移しているのに加え、8/29に優秀息子のKCETが誕生すれば、御祝儀買いも期待できるではないか。KCETの株価次第では意外高もあるかもしれない考える。だから今はじっと我慢して、安くなった”ダメ息子”に期待を寄せたい。
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/08/17
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