FINANCE Watch
米公平開示ルールの日本企業への影響を調査~大和IR

  大和証券グループ(8601)のIR(投資家向け広報)コンサルティング会社、大和インベスター・リレーションズは19日、米国SECが昨年10月23日に適用した公平開示(Regulation Fair Disclosure)ルールが日本の証券アナリスト、ファンドマネージャーの情報収集活動にどの程度影響を及ぼしているか、日本の66社、75人にアンケート調査を実施した。また、これと同時にインターネットIRでの動画配信についても調査した。

  調査結果によると、米国公平開示ルール実施後、日本企業の一部にこれまでアナリストや投資家に伝えていた情報に関して、開示しない姿勢が出始めていると指摘する向きが回答者の34%となった。入手しにくくなった項目は「月次売上」や「月次動向」が最も多く、次いで「将来予想利益」。企業側から証券アナリスト、ファンドマネージャーに情報開示を拒んだ理由を伝えるケースは45%と、半数以下にとどまっている。

  一方、動画配信では「決算説明会の動画」の視聴経験者は、全体の4分の1程度にとどまった。なかで、「よく利用している」が4%、「利用したが問題が多い」とする回答が20%に達した。また、利用上の支障としては「音声を上げると周りに迷惑がかかる」が31%と最も多く、「画質に問題」が20%、「映像・音声が途切れがち」が17%、「質問ができない」が9%となっている。

  米国の公平開示ルールは、日本企業には適用外になっている。それにもかかわらず、アンケート結果をみるとIR活動の方向性を「公平開示」に向けて修正する動きが顕在化しつつあることが伺える、と大和IRではみている。

  その影響について、現時点では「判断するには時期尚早」とする半数の回答者からも、いままで入手できていた情報が得にくくなるなど、いわゆる「ディスクロージャーの後退」現象が起きていることを示唆する事例やコメントが寄せられたという。

  また、環境的な問題もあるがアナリストや機関投資家が実際の説明会で得られる情報と同じ情報をインターネット上で求めていることも示されたとしている。具体的には、各社のWebページで多くみられる決算短信など過去の情報よりも、説明会資料や経営計画など将来を予想できる材料としての情報を欲しているという。

  調査のまとめでは(1)企業側にパブリックにできない(が、これまでアナリストらに伝えていた)情報は開示しない姿勢が生まれ始めている(2)企業がインターネットを活用する上で視聴者が情報を入手しやすい方法で動画を含む説明会情報を発信すれば、アナリスト、機関投資家にとってのメリットが大きい―と指摘している。

  今後については、日本も米国と同様にコンファレンス・コールやインターネットを利用したIRに大きくシフトしていくとみており、その一方で誰でも閲覧できるネット上に企業側がアナリストらのニーズを満たす将来情報をどこまで出すことができるか、多くの議論と曲折が予想されるとしている。

■URL
・大和インベスター・リレーションズ
http://eir.daiwair.co.jp/
・アンケート調査結果(PDF)
http://eir.daiwair.co.jp/pdf/pl010219-1.pdf
・調査結果グラフ(PDF)
http://eir.daiwair.co.jp/pdf/pl010219-2.pdf
・デジタルIRサービスを本格展開~ジェネラルソリューションズ調査結果グラフ(PDF)
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/25/doc1777.htm

(別井貴志)
2001/02/19 14:58