2001年度から政府系金融機関など特殊法人が発行する「財投機関債」に対し、兜町は熱い視線を送る。株式市況が冷え込み、新規上場案件が先細る中、1兆円規模の新たな発行市場に寄せる期待は大きい。しかし、序盤戦は外資系証券が主導権を握る展開となっている。
郵便貯金などは、これまで財務省(旧大蔵省)の資金運用部に預けられ、そこから各特殊法人に資金が配分されていた。しかし、行財政改革の一環で、この「預託義務」は今年3月末で廃止される。このため、特殊法人が資金を調達するには、(1)国に「財投債」を発行してもらう(2)自らが「財投機関債」を発行する―のどちらかになる。
●2001年度は1兆1,058億円
(1)は有利な条件で発行できるものの、事実上の国債となるため、国の「借金」が膨らんで長期金利の上昇を招くリスクが生じる。このため、政府は特殊法人の尻を叩いて(2)による調達を促し、2001年度は20機関が総額1兆1,058億円に上る財投機関債を発行する計画を2000年末にまとめた。
特殊法人は格付け機関と掛け合い、格付けを取得しなくてはならない。その上で、引受証券会社を選定し、機関債を発行する段取りになる。発行準備は最終段階を迎えたが、ある政府系金融機関の首脳は「これで改革につながるのか」と憤りを隠さない。
米系の格付け機関は、機関債を発行しようという特殊法人が、どれだけ国から補助金を受けているのかを査定のポイントにしているというのだ。事業の収益性は二の次にされ、国とべったり“癒着”する特殊法人ほど低いクーポン(発行利率)を享受できることになる。確かに、貸し倒れリスクを重視すれば、格付け機関の言い分は理解できなくもないが、特殊法人改革の趣旨とはギャップが生じる。
●みすみす外資に
さらに、特殊法人が引受証券会社を選定するにも、米系の格付け機関の情報が豊富な外資系に軍配が上がるという。前述の首脳は「市場原理だけで選んだら、主幹事は全て外資になってしまう」と指摘した上で、「国内勢に引き受けさせるのは政治的な配慮以外の何物でもない」とも言い切る。
日本の行財政改革の主導権を誰が握っているのだろうか。パッチワークの「改革」で誤魔化そうとしたツケを最終的に払わされるのは国民である。「市場」に疎い永田町と霞が関が、みすみす外資に収益機会を与えてしまう。日本版ビッグバン(金融制度改革)の末路が見えてきた。
■URL
・財務省・財政投融資制度の抜本的改革案(骨子)
http://www.mof.go.jp/jouhou/zaitou/za062.htm
・財務省
http://www.mof.go.jp/
(兜太郎)
2001/02/01
11:22
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