FINANCE Watch
衝撃の「IT特別省」構想<上>~旧郵政官僚が賭ける“逆転ウルトラC”

  郵政・自治・総務の3省庁を統合した総務省の旧郵政官僚の間で、密かに「IT特別省」の設立構想が進んでいる。同構想は、総務省の情報通信政策局と総合通信基盤局のIT2局を独立させ、さらに経済産業省(旧通産省)の「情報4課」も取り込んで、IT行政の専門官庁を創設しようというものだ。中央省庁再編の結果、総務省に埋没してしまった旧郵政官僚が“復活”を賭ける“逆転ウルトラC”といえる。

  ●2003年をターゲットに
  その実現には、発足したばかりの1府12省の枠組みが大きなカベとなるものの、旧郵政官僚は、自民党・郵政族議員の政治力とIT行政の是正を求める外圧を頼りに、突破を図る構えだ。とりわけ、郵政3事業を担う総務省の郵政事業庁が公社化され、行政組織に“余枠”ができる2003年に、「IT特別省」創設のタイミングがかかってくる。

  22日に首相官邸で開かれた「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(新IT戦略本部)」の初会合。ここでも「情報通信の監督官庁と競争促進に向けた機関は、組織的に分離すべき―日本版FCC(米連邦通信委員会)の創設」という“産業界の声”が提出された。経団連がアンケート報告としての要望を提出したもので、またも通信行政の「政策」と「規制」の機能分離、言い換えれば「総務省のIT部局の解体・再編」が明記されていた。しかも、NTT(9432)グループに対する完全資本分離の要求を抑え、“最優先項目”として掲げられた。

  通信行政の機能分離は昨年のIT戦略会議でも議論されたが、旧郵政省の巻き返しで棚上げとなった議題だ。しかし、IT戦略会議を発展的に解消して新設された新IT戦略本部は、5年以内に日本を「世界最先端のIT国家」にするための重点計画を3月までにまとめ、その後も進捗状況をフォローアップしていく。

  ●一転して攻勢に
  通信行政の機能分離は1度棚上げされたものの、「フォローアップのたびに“ゾンビ”のように蘇ってくる。旧郵政官僚が毎回火消しに追われているうちに、いずれ総務省のIT部局はもたなくなるでは」(通信企業役員)との見方もある。追い詰められるIT部局の旧郵政官僚が、霞が関で拠って立つ余地はなくなるのか―。

  そこで、総務省IT部局の旧郵政官僚の間で、一転攻勢に出る「IT特別省」の秘策が練られている。旧郵政省の郵政3事業を受け継いだ郵政事業庁が、2003年に郵政事業公社へ移行し、行政組織がひとつ減るのを機に、情報通信政策局と総合通信基盤局のIT2局を“省”に独立させようという構想だ。

  しかし、廃止される郵政事業庁は“庁”であって“省”ではない。「内閣法」および「国家行政組織法」が定める行政事務の第一義の組織単位は“省”であり、“庁”では法律1本、予算1組すら独自につくれない。そもそもIT2局だけで“省”を設けるのは非現実的といえる。そこで、外圧の“力学”が浮上してくる。

  ●現行のIT関係組織と「IT特別省」構想の模式図
総務省
<10局1外局>
情報通信
政策局
総合通信基盤局
郵政企画管理局
郵政事業庁
(2003年に公社)
経済産業省
<6局3外局>
商務情報政策局
・情報政策課など4課
IT特別省
<4局>
通信政策局 総務省から
電気通信局
放送行政局
経済産業省・情報政策課など4課による局
 ※郵政企画管理局は廃止へ

  [<下>は30日に掲載します]

■URL
・郵政事業庁、総務省揺るがす火ダネに~将来は民営化も
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/10/doc1610.htm

(川路昭夫)
2001/01/29 11:13